灼滅者講座2:意志と言葉

    作者:七海真砂

    「それでは、第2回の灼滅者講座をはじめます」
     今回もよろしくお願いしますね、と最初の挨拶をした五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は、さっそく本題に入っていった。
    「前回の灼滅者講座のとき、皆さんから多くの質問がありました。中でも多かったのが『他の灼滅者さんと、上手に付き合っていくコツが知りたい』ですね。あとは『美術室を使いこなせるようになりたい』というものが多かったです」
     これらの題材は先輩側からも『詳しく教えてあげたい』という声も非常に多かった。
    「そこで、今回はこれらをまとめて取り上げていきたいと思います」
    「まとめて? どうやってですか?」
     聞いていた生徒から疑問が飛び出してくると、姫子は「ちゃんと考えてありますよ」と微笑んだ。
    「今回は、ひとつ挑戦しながら講座を進めていってみましょう。皆さん、自分のことを、他の人へ紹介する自信はありますか?」
     初対面の相手には、挨拶や自己紹介をするものだ。そこに『コツ』があると姫子は言う。
    「そのコツは、他の灼滅者さんと仲良くする時だけじゃなくて、いろいろな場面で活用できるテクニックなんです。こういったことは、実際に自分でやってみながら覚えるのが一番ですから……」
     さっきの『挑戦してみよう』は、そういうことらしい。
    「皆さん、筆記用具はありますか? それではこれから『サイキックを使って戦っている自分の姿』を書いてみましょう。あ、絵じゃなくて文章で書いてくださいね」
     姫子の話を聞いて、多くの生徒がどよめた。
    「ちょっとしたゲームみたいなものです。皆さんが書いた紙を私が見て『あなたが誰なのかを、ちゃんと見つけ出せるかどうかゲーム』みたいな感じだと思ってください」
     姫子が読んだ時に、あなたであることが理解できる文章を書かなければいけない、ということのようだ。とはいえ、いきなり書けと言われても、どうしたらいいのか分からない人も多いだろう。
    「なのでヒントです。『自分の姿』ですから、自分がどんな姿をしているのか、文章で表現する必要がありますね。あなたがどんな人なのか、手がかりが少ないと、誰なのか特定できないかもしれませんね。戦っているところですから、どんなサイキックを使っているのか、分かるようにするのも重要かもしれません」
     あとは、これを参考にして、どんな文章を書いたらいいか自分なりに考えてみてくださいね、と姫子は呼びかけた。
    「もし余白があったら、自分がどんなことを考えながら文章を書いたのか……も、教えてくださいね」

    「それから、第1回の講座の内容を踏まえて、自分で実際に実践してみるのも、大切ですよ」
     前回学んだ内容を生かして、教わった場所に行ってみてもいいだろう。クラスのたまり場に行ってみたり、クラブ活動をして、他の灼滅者と仲良くなるのも楽しいはずだ。
    「ちょうど『運動会』もありますので、そちらに参加してみるのも楽しくて、いいと思いますよ」
     運動会は、様々な学年の同じクラスで『組連合』を作って優勝を競う。同じ組連合の人達と同じ目的に向かって、いろいろ相談しながら運動会に参加してみるのは、学園に来たばかりの灼滅者にとって、とてもいい思い出にもなるはずだ。
     同席している先輩達が、うんうんと頷いている。
     もちろん、そうして自分で復習している時に浮かんだ疑問や、よくわからないことなどがあれば、今回の講座で、先輩に聞いてみるといいと思いますよ、と姫子は付け加えた。


    ■リプレイ

    (「はあ!? 面倒くせー……」)
     姫子の話を聞いたシグマ・コード(フォーマットメモリー・d18226)はいきなり言われて、思いっきりだるそうにしていたが、仕方なさそうにペンを取った。
     何度かそれをくるくる回したかと思うと、なんだかんだで真面目に取り組んでいく。
    (「サイキックと……あ、武器も書いた方がいいですよね。あとは……あとは???」)
     出雲・ノルン(雲心月性・d16355)は必要な情報を整理するところから始めたが、書くことが、たくさんありそうでいて上手く思い浮かんでこなくて、首を傾げて悩んでいる。
    「自分を客観視するのは難しいものだな」
     片倉・純也(ソウク・d16862)は自分自身の姿について書き出していたが、戦闘の様子まで一緒に、となると……?
     上手くまとめるのに難航しているようだ。
    「……いや、こうじゃなくて。ええと……」
     文章を書くのが苦手なことを自認している東里・シュウ(フィックルロンド・d18180)らも、書いたり消したりを繰り返しつつ進めていった。
    「これだけだと、俺は見つけられないよな。もっと俺について書かないと……」
    「こう、こういう感じだから……」
     教室ではいろいろ悩んだり、無意識のうちに体を動かしたりしつつ、試行錯誤を重ねて文章をまとめていく様子が見られる。
    (「……どうしましょう……」)
     戦闘中の自分の様子が思い出せずに苦戦するイレーナ・カフカ(中学生ストリートファイター・d18112)のような生徒もいる。イレーナの場合、戦闘中はハイテンションになってしまう反動か、戦ってる最中の記憶がほとんどないのだ。
     他にも、サイキックで戦った経験が少ないため、思うようにイメージできないと悩む生徒の姿が、多く見られた。
    「ぐぬぬぬぬ……」
     中には、何をどう書けばいいんだ! と悩むあまりに机へ突っ伏してしまった、熱海・光太郎(中学生ご当地ヒーロー・d17998)のような者までいた。悩みすぎて今にも、頭から煙が出てきそうな勢いだ。
    「できました」
     そんな中、早くも佐山・紗綺(高校生デモノイドヒューマン・d16946)らが書き上げて筆記用具を置いていく。
     川内・梛(スロートランス・d18259)も顔をあげると、クラスの奴らはどうかなー? と、見知ったメンバーの様子を確認していった。
     他の灼滅者達も、次々と書き上げてペンを置いていく。そうして難航していたメンバーもなんとか文章を完成させた頃、
    「それでは、回収しますね」
     みんなが書いた内容を回収すると、集まった先輩達が手分けをして目を通し、アドバイスの内容を考えていく。その間に、姫子が口を開いた。
    「ところで皆さん、『サイキックを使って戦っている自分の姿』と聞いて、どんなシチュエーションを思い浮かべましたか?」
    「シチュエーション?」
     文鳥・祈絲(中学生魔法使い・d18326)ら、多くの生徒が首を傾げている。
    「敵と戦っているところ……?」
    「そうですね、書いている皆さんの内容を見て回っていた感じだと、そのつもりで書いている人が多かったように思います。でも、戦う場面といっても、いろいろなものがありますよね」
     きょとんとしている生徒達に姫子が続けると、そういうことであれば、と宗像・陽心(鉄なる護り手・d11736)は手を挙げた。
    「私は乱取稽古中のつもりで書いた。相手も敵じゃない、練習相手だ」
     サイキックを使ってはいるが、あくまでも武術の訓練中というのが陽心の想定したシチュエーションだ。
    「あたしはブレイズゲートで戦っているところ」
     藍原・琴音(藍の歌姫・d10760)は、特定の場所で戦っている姿を書いている。この場合、相手は完全に敵だ。
    「ゾンビに襲われて、応戦しているつもりで書きました」
     敵を明確に考えてみた生徒は他にもいる。黒橋・恭乃(くっきんぐじぇのさいだー・d16045)は、攻撃してきた敵を返り討ちにする場面を書いていたし、
    「わたしたちは二手にわかれて戦いました」
     岩永・静香(苺魔法少女パフュームラヴァー・d16584)達は更にイメージを膨らませて、黒岩・りんご(凛と咲き誇る姫神・d13538)との戦いを書いていた。
     相手が明白なので協力の仕方を工夫してみたり、あるいはスミレ・シラカワ(絡み合う三極のエス・d16787)のように『りんごに味方して応戦する』など、いろいろなパターンが書き出されていたのが彼女達の特色だろうか。
    「わたし、仲間を回復しているところを書きました」
     そう、戦い方にもいろいろある。十皇・初子(黒燈・d14033)のように、誰かを回復している自分の姿を書いた者は多かった。那嘉川・真(痛みも辛さも乗り越える漢・d14239)のように、仲間を守りながら戦っている場面を想定したりと、仲間と一緒に協力している戦いを想定し、考えていた者もいる。
    「なにか怪物と戦っているところ、くらいは考えましたが……」
     そんなにいろいろ考えていませんでした、と三和・悠仁(影紡ぎ・d17133)が感想を漏らす。同じような声や、同意する頷きが、あちこちから返った。皆の話をひたすら聞いていた大御神・緋女(紅月鬼・d14039)なども、いろいろな場面での表現の仕方があることに、なるほどと感心している。
     全体的にみると、一対一のシチュエーションをなんとなくイメージした生徒が多かったようだが、今回の課題に挑戦してみた数百人が、全員同じシチュエーションをイメージしていたわけではない……というのは確かだ。
    「これは、どんなシチュエーションを考えたら正しいとか、正解があるわけではないんです。どれも『サイキックを使って戦っている自分の姿』であることは同じですけから。でも、文章はこんな風に『いろいろな解釈の仕方が発生することがある』ものなのだということを、知って欲しかったんです」

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    【マスターからの解説】
     姫子が出した課題は、キャラクターの視点から離れた用語で言うと『バトルピンナップの発注文章を書いてみよう』というものでした。
     (美術室コンテンツでは、このように『皆さんが戦っている姿』をイラスト化することもできます)

     しかし、これは美術室だけの話ではありません。
     イラストを作成する時も、
     キャラクターを通じて他の参加者さんと交流する時も、
     メインコンテンツの『教室』で冒険する時も、
     相手に伝えたいことは、すべて文章で表現していきます。
     サイキックハーツは『自分のことを文章にして、誰かに説明する・理解してもらう』という機会が、たくさんあるゲームなのです。

     そういった数々の場面で、上手に文章を書くコツがわかると、得しそうですよね!
     そのためのテクニックをお勉強するのが、今回の灼滅者講座です。
     美術室を中心に取り上げていますが、この内容は他の様々な場面で応用できるので、ぜひ覚えて、あちこちで生かしてみてくださいね。

     ちなみに、バトルピンナップの発注文章をいきなり上手に書ける人は、普通あんまりいないので、文章を思いつけなかったり、上手く書けなかったという人も、ぜんぜん落ち込む必要は無いですよ。
    (自慢じゃありませんが、私は最初もっと下手でしたからね!)
     今回の内容を参考にしながら、上手になっていけばいいんですから!

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    「では、皆さんが書いた内容を踏まえて、より詳しい解説をしていきましょう」
    「まず忘れちゃいけないのは『自分のことを全然知らない人でも、誤解なく理解できるようになっているかどうか』かな」
     最初にアドバイスしたのは長姫・麗羽(高校生シャドウハンター・d02536)だ。
     さっき言ったように、文章は色々な解釈の仕方があったりする。
     自分が『こういうつもり』で書いた文章を見て、相手も同じように考えるとは限らないのだ。
     説明不足の場所があると、そこでもイメージに差が出て、書いたときに考えていたことが100%伝わらないかもしれない。
    「『読んだ人が、どう思うだろうか?』って想像しながら書くのって大事だよ」
    「なるほど……」
     話しを聞いていた新沢・冬舞(夢綴・d12822)らは感心しながらメモを取っていく。その間に、先輩達はひとつ、例を出して説明していくことにしたようだ。
    「皆さんが書いた内容で多かったのは、大まかに、こんな感じの内容でした」

    「慎重な性格で、真剣な表情をしながら敵と戦っています。ポジションはクラッシャーで、縛霊手を装備しています。基本的にはサイキックの縛霊撃を使って攻撃していきますが、ダメージを受けた時は祭霊光で回復します。必要であればメディックに下がって回復に専念します……とまあ、このような感じで、自分の戦い方を詳しく書きだしている方が多かったです。決め台詞や、敵にかける言葉を一緒に書いている方も多かったですね」
     すちゃっと眼鏡をかけたエイナ・ルディレーテ(蒼き魔法と剣・d00099)が例を読み上げる。
     ちなみにこれは見本だ。実際にはそれぞれの性格や武器、サイキックが書かれていたといる。
    「ここに今までの話の内容をあてはめてみましょう。サイキックで戦っていることは分かります。使うサイキックの種類や武器もわかります。でも『あなた』を特定するには、ちょっと情報が足りないですね」
     では『あなた』を特定できる情報とは、なんだろう?
    「普段や、その時々の服装……顔立ちや、髪型、などが必要だろうか?」
    「わたしだったら『緑のツインテール』とかですね~」
     マイア・リトヴィノヴァ(空写し・d12816)が口にしたのを受け、リーシャ・クォルシム(小学生エクソシスト・d17631)が実際に書いた内容を思い返す。自分が乗るライドキャリバーの特徴も書いたが、そういえば、服装はさほど詳しく書いていなかった気がする。
    「あたしは常に白衣だね」
    「普段は制服ですが、戦うときは巫女服です」
    「私は鬼っ娘魔法少女プアオーガっ!」
     普段からこの姿だという殿辻・尚都(アルミニウムプライズ・d01744)のような生徒もいれば、姫子松・桐子(稲荷の巫女・d14450)や朝倉・くしな(鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)のように、いつもとは違う格好になるという生徒も少なくない。
    「服装って、人によって結構違うものなんだな……」
     バリエーションの豊富さに、皆の話を聞いていたヴォルフ・ヴァルト(花守の狼・d01952)たちは感心するばかりだ。
    「なら、服装はしっかり描いた方が良さそうだ」
     これはポイントのひとつかな、と生徒達はメモしていく。
    「なるほど。俺は、武器について書いてみた」
     桐生・秀行(紺碧の意志・d17364)が今スレイヤーカードに入れている無敵斬艦刀は、澄んだ瑠璃色の刀身が特徴だ。
     他にも、大切な武器の特徴を詳しく書きだしてみた生徒は多かった。武器の種類によっては『それをどう構えているか』といった、ポーズに言及していたものもたくさんある。
    「こういうのも、個性が出るっすね」
     少し重心を落とし、しっかりガトリングガンを構えて撃つという荒野・鉱(その眼差しの先に・d07630)のような者がいれば、ガトリングガンで敵を思いっきりぶんなぐるのが好きだという空裂・迦楼羅(焔鳳フライヤー・d00766)のような者もいる。
     桜木・和佳(誓いの刀・d13488)は自分の体に対して、とても大きなガトリングガンを使いこなしているし、マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)は味方すら舞い込みそうな勢いで、とにかく思いっきりぶっ放すのがスタイルだ。
     他にも、トリガー部分がユニークな形状をしていたり、赤や黒のガトリングガンがあったり、炎を纏って戦うなどなど……同じ武器でも、人によって扱い方が変わり、それによって見た目も違ってくることが分かった。
    「あとは全体のイメージとか、雰囲気も書くといいよ。『カッコいい』と『かわいい』だと、結構違うよね?」
     神宮寺・三義(路地裏の古書童・d02679)の言葉に、『カッコいい少年』と『かわいい少年』を思い浮かべてみると、結構違った人物像がイメージされる。『カッコいい少女』と『かわいい少女』でも同様だ。
    「たとえば『笑っているところ』でも、その人がどんな人かによってイメージ変わるよー。『元気っ子です!』と言うのと『いつも悪巧みしている悪戯っ子』って言うのとじゃ、思い浮かぶ感じが違わない?」
     長谷堂・葵(赤く輝く熱血ヒーロー・d06749)の言葉に、みんなで想像してみる。
     明るくて元気はつらつとした満面の笑顔と、何か企んでいそうな「にしししし」なんてセリフが似合いそうな笑顔……なるほど、笑顔にも違いがあるようだ。
    「なるほど。こういうのを書けばいいんだね~」
     ためになるなぁ、と大宮・さくや(フジヤマガール・d11846)たちは感心しながら先輩達の話に耳を傾け、熱心にメモやノートをとっている。
    「だが、だからといって文章が長くなりすぎてもいけないぞ」
     たくさん書いた方がいいと考えがちだが、簡潔にまとめる工夫も必要だとシンシア・ダムド(ファイアスターター・d08608)が話す。

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    【マスターからの解説】
     サイキックハーツで文章を書く時には、大抵『何文字以内で書かなければいけない』というルールが決まっています。
     美術室であれば、300~400文字くらいで、自分の姿を表現しなければいけない場合が多いです。
     灼滅者講座に参加する時は、300文字まで書けますから、実はとても実戦的なトレーニングになっていたのですね。

     説明したいことが、たくさんある人は、300文字だと大変かもしれません。
     では、上手く文章をまとめるコツですをお話します。
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    「まず大切なのは自分の特徴、これは外せないというポイントを抽出することではないだろうか」
     天地・玲仁(哀歌奏でし・d13424)は「俺の場合、これが絶対に欠かせないな」とチョーカーを指す。
    「これが無ければ俺ではないと言える」
     そのくらい明確な特徴であれば『絶対にはずせない』ポイントとして、一番上の方に書き出しておく。
    「前髪はいつも真ん中で分けているが、長さは……まあ、普通だな」
     男子としては平凡な短髪具合だろう。なので、とりあえず前髪のことだけ書いておく……といった優先順位をつけていくのだ。
    「大事なところは言葉にして、そうじゃないところは軽く触れる程度にして……? どれを一番伝えたいか、考えてくのは難しいね~」
     それは、まさに雨宮・悠(夜の風・d07038)が文章を書きながら苦心した場所でもある。
    「文章の書き方自体も、工夫の余地がありますよね」
     千菊・心(中学生殺人鬼・d00172)は箇条書きを選んだひとりだ。『服装』と『身体特徴』と『戦闘』の3つに項目分けもしている。
     整理された情報が読みやすいというのは、一理ある意見だろう。
    「そういえば、俺『ソニックビートを使っているところ』って最初に書いたな」
    「俺も地獄投げって宣言した」
     葉室・みらい(中学生ファイアブラッド・d01578)や青柳・琉嘉(天信爛漫・d05551)のように『どのサイキックを使っているか』を最初に書いて、それから詳しい説明に入っていった者も多いが、これも情報の整理の一環だろう。
     一番上は、一番最初に目にする場所だから、そこに重要な情報が入っていると分かりやすいという利点もある。
     『どっしり仁王立ちをして高笑いしているところ』『戦闘前にサイキックソードを構えて、深呼吸している』など、ポーズが特徴的だったり、重要だという場合はそこから書き始めてもいいだろう。
    「情報を分かりやすくするということであれば、他にも工夫の余地はいろいろありますよ」
     たとえば『帽子をかぶっています』と書いた生徒が複数いたのだが、
    「帽子にもいろいろあるよね。僕は野球帽!」
    「なるほど。私は、つばの広い、大きな黒いとんがり帽子をかぶっているよ」
     崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)と宮塚・檸檬(紡ぐ黎明の糸・d01247)の帽子は、同じ帽子でも見た目がまったく違った。
     『どんな』帽子なのか……帽子と聞いて、真っ先に思い浮かべるものは、人それぞれ違うはずだ。つまり姫子が言っていた『人によって解釈が違う文章』になってしまうわけだ。
    「どんな帽子でも構わない人ならいいけど、そうじゃないと誤解されちゃうかもしれない」
    「自分の中でイメージがあっても、言葉にしなければ伝わらない……なるほど」
     同様の文章は、外見や服装を説明する際にいくつか見られた。
     たとえば『紫陽花色の長いマフラーが特徴です』と書いた生徒がいたが、紫陽花は青色だったり、ピンク色をしていたり、見た目がバラバラの花だ。
    「女性だからピンク色のマフラーだろう、と想像して探していたら、青いマフラーの人は見落としちゃうかもしれません。『紫陽花のように、いろいろな色が混ざったマーブル模様のマフラーだろう。これは個性的だから目印になるな』と探していると、紫色のマフラーの人は見落としちゃいますね」
     これだけだと、相手とイメージするものが変わってきてしまうので、分かりやすい表現で書くことも大事だというわけだ。
     他にも、『夜空のような色』など、人によってイメージする色が変わってしまうそうなもの、抽象的なたとえを使っていた人は、一度確認しておいた方が良さそうだ。

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    【マスターからの解説】
     たとえば夜空にもいろいろあります。紺色をイメージしていたら「夜なら真っ黒に違いない」という解釈もありえますね。
     こういう時はインターネットの検索サイトを利用してみると、その単語に合致する画像をいろいろ見れるので『その言葉に複数の解釈がありそうかどうか』を判断しやすいでしょう。
     みんなが同じイメージを持てるのであれば、なにかに例えること自体は問題ないので、確認しながら上手く使っていきましょう。

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    「できるだけ、具体的なイメージが思い浮かぶような工夫がいるんだな……」
     しかし難しい、とつぶやく夢野・光(性別不明・d13251)だったが、
    「そうでもないよ。書き方次第だよ。たとえば私は古代の中国で着ていたようなドレス姿なんだけど……」
     錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)の服装を、ざっと書くならこんな感じだろうか。ゆったりとした装束で色は赤、裾や襟はレースのようにひらひらしていて……。
    「これを『七夕の織姫様みたいな服装』って書いちゃうの。どう?」
     琴弓の服装は、こちらの書き方の方がイメージしやすそうだ。
     その説明で大体の人がイメージできるだろう……という言葉を利用するのは、文章を上手くまとめる時のポイントだ。
    「あとは3回読み返して、よーく確認するのも大事じゃな」
     と語るのは九曜・亜門(白夜の夢・d02806)だ。誤解を招くかもしれない表現だけじゃなく、文章の書き間違いや、漢字の書き間違いなども起こることがある。
    「文章だし読みやすい工夫があると、更にいいわね」
     難しい漢字を使って『読めない!』なんてことになると、探す以前の問題になってしまうもの、と冷泉・采明(帝鳳蝶の救済哲学・d00244)も付け加える。
    「詳しく書こうとして、逆に文章が分かりづらくなってしまうこともあるから、そういった部分を見直していく必要もある」
     たとえば今回『とても可憐なお嬢様に見えるが、でも実はキレると超こわい女の子』のような、二面性がある性格だと書いている生徒がいた。
     これは、性格を詳しく伝える文章ではあるが、しかし、これを見た人は『可憐なお嬢様が頑張って戦っているところ』を探せばいいのか、それとも『ブチ切れながら戦う女の子』を探せばいいのか、悩んでしまうだろう。
     その性格が、外見にどう影響しているのかイメージしづらいと、ヒントになりにくくなってしまうのだ。
    「擬音やセリフなどは、相手がどんな人物なのか掴みやすいが、そればかりだと見た目のヒントは多くないかもしれないな」
     姿を伝えたい時は、ちょっと気を配ってみるといいだろう。

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    【マスターからの解説】
     読み手のことを考えながら書くのも、とても大切なことです。
     イラスト発注文章であれば、『どんなところをイラストにして欲しいのか』が伝わりにくいと、イラストマスターさんが悩んでしまいがちです。
     『いろんな武器やサイキックを臨機応変に使いこなす』というキャラクターさんの場合、個性は掴めても『どの武器やサイキックを使っている所を書いたらいいのか分からない』のです。
     戦闘のすべてを1枚のイラストにするのは難しいですからね(ストーリー漫画とかになってしまいます)。

     自分が戦っている最中のどこかを写真撮影するようなイメージで考えながら、どんな姿を一番書いてほしいのか、決めてみましょう。
     それから、ここまでのアドバイスを参考にして書く内容を整理していくといいでしょう。

     また、美術室についての質問があったので、キャラクターが話すと不自然な内容をここで一緒に取り上げていきます。

     美術室は、誰でも利用できるコンテンツです。『新着作品』や『ギャラリー』などで、これまでに完成した皆さんのイラストを鑑賞できます(無料です)。
     自分のイラストを作成してもらうこともできますが、★が必要です(有料です)。
     美術室で『イラスト発注』を選ぶと、今イラストを発注できるイラストマスターさんと、そのイラストマスターさんが実際に描いたバストアップが見れますから、ここで自分の好みのイラストマスターさんを探すと便利です。
     新着作品やギャラリーで見かけたイラストの作者さんに自分もお願いしたい! という人もいると思います。ただ、ここに並ぶイラストマスターさんは、イラストの発注が不可能になっていることがあります。
     発注が不可能な人の中には、リクエストだったら出来る人もいます。リクエストは『こんなイラストを頼みたい』とイラストマスターさんに相談する機能です。イラストマスターさんの都合次第で、イラストを描いてもらえる場合もありますが、都合が悪い場合もあるので、発注と違って絶対に描いてもらえるとは限りません。

     美術室には『詳しい利用方法』というページがあり、コンテンツの使い方を解説しています。このページも、読んでみてください。
     完成したイラストで、どんなことができるのか……なども、このページにあります。

    ●ワンポイントアドバイス
     今回『これといって特徴を思いつけないので、あんまり書けることが無い』という悩みのある人が、何人かいました。
     これは、先輩の皆さんからのアドバイスを引用しましょう。
     困ったときは、イラストマスターさんに『おまかせ』です。
     装備している武器の細かいデザインや、ポーズなどは指定しなくても、イラストマスターさんが『あなたにぴったりなものは、これだ!』と考えて描いてくれますよ。
    「ここはこうして欲しい」「絶対にこれを書いてほしい」といったキャラクターの重要なポイントや希望を書いたら、プロにおまかせしてしまうのは、とてもいい手だったりします。
     イラストマスターさんはイラストのプロなので『ここをこうすると、いいイラストになる』というポイントをたくさん思いつけます。強いこだわりが無け部分は、プロにおまかせしてしまいましょう。
     私も、よくやります。

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    「けど、やっぱ難しいよな」
     千条・サイ(戦花火と京の空・d02467)は難しい顔だ。
     相手あっての文章だから、短くまとめつつ、誤解させないようにしつつ、あと嫌な思いをさせないように……と思うと、かなり悩んでしまうらしい。
    「やはり、相手のことを思いやるのが、一番大切じゃないでしょうか」
     自分がやられて嫌なことは相手にしない、なんて言ったりしますけど、と氷室・アスカ(藍色少女・d11177)が応じていく。
    「そうね。自分が楽しくても相手が嫌な気分になっていたら、よくないもの」
    「これは学園生活そのものにも通じているわね」
     うんうん、と多くの先輩達が頷いている。
    「あの。もし、そうなっちゃったときは、どうしたらいいんでしょうか? 嫌な思いをさせちゃったかなとか、反対に嫌な思いをしたり、とか……」
     それを聞いていた朝川・穂純(小学生神薙使い・d17898)が不安を口にする。これからの学園生活で、もしも……と気になってしまったようだ。
    「素直に謝る。これじゃないか?」
     そのつもりがなくても、そうと受け取れる言葉を言って傷つけてしまったのなら、古乃花・一獅(デスパレートストラグル・d13019)は直接でも手紙でも、謝るのがいいんじゃないかと考える。
    「言われた側になった場合も、いきなり怒ったり、悲しんで落ち込む前に、相手のことを考えてみた方がいいよな。本当に相手を傷付けようとして、そんなこと言う人は普通いないし。古乃花が言ったみたいに、そんなつもりはなかった……という場合がほとんどだろ?」
     ちょっとした誤解や行き違いが原因なら、こじれる前に解決できるだろうし、と神鳳・勇弥(闇夜の熾火・d02311)が語る。
     武蔵坂学園には、いろいろな人がいる。もしかしたら乱暴な話し方をする人を、気の弱い人が怖いと思ってしまうこともあるかもしれないが、だからといって、怖がらせようとしているわけじゃないのだ。
    「いろんな人が集まってるからオモロいんやし、相手の個性を肯定してみる方向性で考えてみるのは大事かもな」
     銀夜目・右九兵衛(ミッドナイトアイ・d02632)は、そうすると新しい何かが見えるかもしれないと頷いた。

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    【マスターからの解説】
     サイキックハーツでの交流は文章で行います。
     上で書いたように、考えていることを意図通りに伝えられない文章になってしまったり、別の解釈ができてショックを受けてしまう、ということが起こってしまうことがあります。
     さっきのアドバイスじゃないですけど、いきなり書き込むのではなく、3回読み直して「本当に大丈夫かしら?」と確認してから書き込む……など、一呼吸おいてからクラスのたまり場やクラブに書き込んだりしてみると、予防になるかもしれません。

     もし、そんな場面に遭遇したら、こう考えてみましょう。
     皆さんがサイキックハーツを楽しみたいと思っているように、他の人もサイキックハーツを楽しみたいと思っているのは同じです。
     相手を怒らせようとして、悲しませようとして、わざわざそう言ったわけじゃないんです。相手は、どんなつもりでこう言ったのでしょう……? 
     ちょっと想像してみて原因がわかれば、もうそれで問題は解決ですね。

     それと、不安だったり、発言するのが怖い……という方が何人かいました。
     気持ちはわかります。でも、それで何も言えなくなってしまうと、サイキックハーツの楽しさは半減以下です。サイキックハーツは、みんなで一緒に遊ぶ方が、より楽しくなるゲームだからです。
     実のところ、こういった他の人とケンカになってしまったり、トラブルに発展することは、まず滅多にありません。これは、先輩達がいろいろアドバイスしていたようなことを『みんな心がけている』おかげです。
     あなたが、もしちょっとしたミスや失敗をしても、みんなわかってくれますよ。
     失敗を怖がって、せっかくの交流を楽しめないとつまらないです。思いきってクラスのたまり場やクラブなどで発言してみましょう!
     発言しているうちに、どんどん慣れていって、こんな不安はいつの間にか吹き飛んでしまうものですよ。

     もし、話がこじれてしまいそうになっても、落ち着いて冷静になって、相手を思いやりながら話し合えば解決するものです。誰だってケンカを長く続けるのは嫌なものですから。
     頭に血が上っていると感じたら、少し落ち着くための時間を取ってクールダウンしてからにしましょう。相手がそう考えて、話を一度中断した時は、あなたも気付いていないだけで熱くなりすぎているのかもしれません。お互いに、ちょっと時間を置いてみるといいでしょう。
    ====================

     そうして、またひとつ灼滅者達が学んだところで、今回の灼滅者講座は、終わりとなるのだった。

    作者:七海真砂 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月31日
    難度:簡単
    参加:1598人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 4/素敵だった 45/キャラが大事にされていた 57
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