禁断のクシャミ!

     白蜘蛛・命(幻精界の姫君・d14776)は、こんな噂を耳にした。
     『木の下で10回連続くしゃみをすると殺しに来る樹木人が存在する』と……。
     エクスブレインの話では、この樹木人は都市伝説らしき、くしゃみさえしなければ現れる事がないようである。
     そのせいか、都市伝説が現れる事はほとんどなく、次第に噂も忘れ去られていたようだ。
     しかし、噂を信じていない学生達が面白がってクシャミをし始め、再び犠牲者が増えていったようである。
     しかも、クシャミをした学生達はみんな殺された木の栄養にされており、みんな行方不明扱いになっているらしい。
     そのため、次々と犠牲者が増えており、深刻な問題と化している。
     都市伝説はクシャミをした相手を狙ってくるので、それを利用すれば戦闘を優位に進める事が出来るだろう。


    参加者
    峰・清香(中学生ファイアブラッド・d01705)
    三影・幽(魔道の探求者・d05436)
    ファリス・メイティス(黄昏色の十字架・d07880)
    森沢・心太(隠れ里の寵児・d10363)
    結城・六六六(ジェノサイドリッパー・d12008)
    白蜘蛛・命(幻精界の姫君・d14776)
    生石・文喜(ドカタファイター・d17254)
    ジェイド・ディウロ(元傭兵は読書がお好き・d17796)

    ■リプレイ

    ●真夜中の並木通り
    「くぁ~……、ねみぃ。明日も学校あるんだよな……特別手当か何かで休みにならねぇのか?」
     ジェイド・ディウロ(元傭兵は読書がお好き・d17796)は眠そうに眼をこすりながら、仲間達と共に都市伝説が確認された場所で敵が現れるのを待っていた。
     だが、都市伝説が現れるのは、決まって深夜。
     そのため、眠くて眠くて仕方がない。
     それでも、何とかして眠気を覚まそうとして、コーヒーを一気に飲み干したが、その程度で屈する睡魔達ではなかった。
     気のせいか、余計に……と言うよりも、意地になってジェイドを眠らそうと必死になっているようだった。
     故に、とにかく、眠い。眠かった!
    「……とは言え、クシャミをしてはいけない、と言われると……、何だかむずむずしてきますね……。し、しないですよ……鼻をつまんででも止めます……! は、はっくしょん!」
     そう言って三影・幽(魔道の探求者・d05436)が、派手にクシャミをする。
     必死になってクシャミを抑えたものの、さすがに限界。
     そうは言っても、まだ一回。
     都市伝説を呼び出すためには、連続して10回もクシャミをしなければならない。
     それは簡単そうに見えて、実に困難。
    「まー、普通に考えれば10回連続で、くしゃみってありえないわな。そんな噂がよくもまぁ流れたもんだぜ」
     苦笑いを浮かべながら、生石・文喜(ドカタファイター・d17254)が口を開く。
     しかし、そのおかげで犠牲者が少なかったのも、また事実。
     おそらく、クシャミの回数が10回よりも少ない数に設定されていた場合は、もっと多くの犠牲者が出ていた事だろう。
    「これが花粉症の時期だったら、シャレにならない都市伝説だったな」
     最悪の事態を脳裏に浮かべ、峰・清香(中学生ファイアブラッド・d01705)が溜息をもらす。
     それこそ、この通りが死体の山で溢れ、あちらこちらに血溜まりが出来ていた事だろう。
     そうならなかっただけでも、まだマシと思うべきなのかも知れない。
    「……ん? あれは。……馬鹿だな。面白がって厄介事に足を突っ込むもんじゃないのに……」
     面白がってクシャミをしている学生達に気づき、ファリス・メイティス(黄昏色の十字架・d07880)が頭を抱える。
     どうやら、学生達は噂をまったく信じていないらしく、面白がってわざとクシャミをして、都市伝説が現れるかどうか確かめているだ。
     もちろん、そんな事をすれば確実に都市伝説が現れ、命を奪われてしまうのだが、『絶対に現れる訳がない』と思い込んでいるため、微塵も恐怖を感じていなかった。
    「おいコラ、君達ー。こんな時間に夜道を歩いてちゃキケンだろー? 早く家に帰りなさーい」
     メガホンを持ちながら、ジェイドが学生達に警告をする。
    「うるせー。帰るんだったら、そっちが帰れ!」
     学生の一人が逆切れした。
     それどころか、石まで投げてくる始末。
    「俺達は根性試しをしているんだよっ! ここで逃げたら、それこそチキンだろうが!」
     一番、威勢のいい学生が叫ぶ。
     この様子ではクシャミを10回するまで、絶対に帰る事はないだろう。
    「もう一度言います、早く帰ってください」
     警告混じりに呟きながら、森沢・心太(隠れ里の寵児・d10363)が王者の風を発動させた。
     それに合わせて、ジェイドが殺界形成を使い、学生達をジロリと睨む。
     その気迫に圧倒されて学生達が逃げていったが、クシャミをしていた本人はこのまま逃げてチキン扱いをされたくなかったのか、続けざまにクシャミをした。
    「そ、そんな事をしたら!」
     ハッとした表情を浮かべ、白蜘蛛・命(幻精界の姫君・d14776)が強引にクシャミを止めようとする。
     念のため、殺界形成も使っておいたが、意地になっているせいが、余計にクシャミを繰り返す。
     それと同時に近くにあった木が突然動き出し、学生を威嚇するようにして叫び声を響かせた。
    『……どちらにしても、与えられた敵を倒すだけ』
     次の瞬間、結城・六六六(ジェノサイドリッパー・d12008)が勢いよく木の上から飛び降り、、クシャミをした学生を守るようにして陣取った。
     その途端、学生が『は、穿いてない!』と騒ぎ立てたが、六六六はまったく気にしなかった。

    ●学生達
    「よぉよぉ、ようやくおいでなすったな。クシャミ10連発で殺しに来るたぁ、有名な某魔人様も吃驚な都市伝説だ。今まで人様をたらふく食った分のツケ、その身でキッチリ払って貰うぜ」
     慌てふためく学生の前に立ち、ジェイドが都市伝説を睨んでニヤリと笑う。
     だが、都市伝説が標的にしているのは、クシャミをした学生のみ。
     それ以外はまるで見えていないような扱いであった。
    「……申し訳ありませんが、ここで消えてもらいます」
     すぐさま都市伝説の行く手を阻み、幽がスレイヤーカードを構える。
     しかし、都市伝説は幽達にはまったく興味がなく、そのままクシャミをした学生めがけて突っ込んでいった。
    「う、うわあ! こ、こ、殺さないで!」
     だが、学生は動けない。腰を抜かして動けない。
     必死になって体を動かそうとするが、それ以上に全身が震えて動けなかった。
    「自業自得なのかも知れないけど、ここで殺らせるわけにはいかないからね」
     都市伝説の背中めがけて、命がヴォルテックスを仕掛ける。
     それでも、都市伝説は学生の命を奪うために、唸り声を響かせて迫っていった。
    「だったら、これでどう?」
     そう言ってファリスがナノナノのシェリルに合図を送る。
     それに合わせてシェリルが一心不乱にコショウをバラ撒き、ファリス達にクシャミをさせた。
    「くしゃん、くしゅん、はっくしゅん!」
     途端に都市伝説の狙いが、ファリス達に代わった。
    「今のうちに逃げろ。死にたくなかったら、な!」
     清香が学生に対して警告する。
    「お、お前達、死ぬぞ。死んじまうぞ。お、俺は悪くねえ。悪くねえからな」
     捨て台詞を吐きながら、学生が這うようにして逃げていく。
    「たくっ! だから警告しただろうが」
     不機嫌な表情を浮かべ、文喜が吐き捨てた。
     その間も学生は必死に這っていたが、ほとんど進んでいなかった。
     この様子では完全に逃げるまで、しばらく時間がかかるだろう。
     いまのところ、都市伝説の狙いは文喜達に向けられているが、それは後で学生も殺れると判断したため。
     文喜達を倒した後に再び命を狙われる事は確実だった。
    「そう簡単に僕達を殺れると思ったら、大間違いですよ」
     都市伝説を挑発しながら、心太がシールドリングを発動させる。
     それと同時に都市伝説が唸り声を響かせ、狂ったように心太達に攻撃を仕掛けていく。
    『……遅い』
     だが、六六六は表情ひとつ変えずに、都市伝説の攻撃を避けていった。

    ●都市伝説
    「悪意を持って事件を起こしているようには見えませんが……、人に危害を加える存在である以上……、放置するわけにはいきません。……申し訳ありませんが、ここで消えてもらいます」
     複雑な気持ちになりながら、幽が都市伝説に視線を送る。
     クシャミさえしなければ、暴れる事のない存在。
     逆に言えば、この状況を招いたのは、学生達だ。
     わざとクシャミさえしなければ、禁忌を冒す事がなければ、都市伝説が現れる事もなかったのである。
    「いくよ、ハスター。全力で、ぶっ飛ばしちゃおう!」
     そう言って命が魔杖【ハスター】を構えた。
     こうなった以上、退く訳にはいかない。
     例え、こちらに戦う意思がなくとも、命達が死ぬまで、学生の命を奪うまで、暴れ続けるのだから……。
    「俺の初仕事……、見事勝利で飾ってみせるぜ」
     自分自身に気合を入れ、文喜がロケットスマッシュを叩き込む。
     その一撃を食らった都市伝説が派手によろめき、悔しそうに唸り声を響かせた。
    「よし、いまのうちに……ハックション!」
     攻撃をしようとした途端、ファリスが大きなクシャミをする。
     それに続いて、シェリルもクシュンクシャンと鼻を鳴らす。
    「大丈夫か!?」
     ハッとした表情を浮かべ、清香がファリスの前に立つ。
     それと同時に都市伝説がここぞとばかりに、枯れた枝状の腕を勢いよく振り下ろした。
    「ただの薪如きが……、元傭兵様をナメんなよっ!」
     一気に間合いを詰めながら、ジェイドがブレイドサイクロンを使う。
     そのため、都市伝説は誰一人として傷つける事が出来ず、前のめりに倒れ込む。
    『……終わりよ』
     都市伝説の首元を狙い、六六六がディアーズリッパーを放つ。
     それと同時に都市伝説の首が飛び、断末魔を上げて跡形もなく消滅した。
    「すでに何人か犠牲者が出てしまっているんですよね。どうか、安らかに眠って下さい」
     都市伝説が消滅した事を確認した後、心太が彼らの冥福を祈って両手を合わす。
     だが、これで亡くなった人達も、ようやく眠りにつく事が出来るだろう。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月2日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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