修学旅行~白熱バトル、深夜のまくら投げ大会!

    作者:白黒茶猫

    ●修学旅行のしおり
     武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
     今年の修学旅行は、6月18日から6月21日までの4日間。
     この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
     今年の修学旅行は、南国沖縄旅行です。
     沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
     さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!

    ●修学旅行初日の夜
     各地の観光や様々な体験学習、自由時間を楽しんだ灼滅者達は、宿泊する旅館に戻っていた。
     そして買ったものを見せ合ったり、持ち込んだトランプや非電源ゲームなどで消灯時間まで目一杯遊んだり、各々好きなように過ごした。
     あとは明日に備え、しっかり眠って体を休めるだけ……。
    「なんてのはつまらないよな?」
     誰かがニヤリと笑いながら呟かれた言葉に、集まった灼滅者達は、枕を両手に同じ笑みを返す。
     『消灯時間過ぎたら枕投げするらしいぜ!』と声を掛けられたり聞きつけたりして、真面目な学友や見回りの教師の目を盗んで集まった者たちだ。
     集まった者は男女問わず、学年も小中高とさまざまだ。
     教師などに気付かれないように明かりを付けていないため、月の明かりで僅かに照らされる程度しかなく、その中途半端な光の差し込みのせいで逆に暗くなってる部分もある。
     そんな中で集まった者たちが、ルールを確認しあう。
    「タイムリミットは教師が見回りにくるまでの合間だから、あまり長くはないな。サウンドシャッターで音が遮断されてるから、多少騒ぐぐらいなら平気だぞ」
     但し、部屋の外で暴れれば当然音が聞こえるので注意が必要だ。
     この場所だけが戦場なのである!
    「時間も限られてるし、一回当たったらアウトな」
     先生たちの見回りはこわい。
     お説教されたくないから、あまり長引かせるのは得策ではない。
    「それと、最初の手持ちの枕は一人二つまでだ。旅館のだからあんま力入れて投げるなよ?」
     枕の数にも限りがあるためだ。
     更に全力で投げると、灼滅者は無事でも狙いが外れて当たった物が壊れたり、枕自体が破れたりする可能性もある。
    「生き残って、より多くの敵を倒した奴が勝ちってことで。もし一番多く倒した奴が誰かに倒されていた場合は、そいつにも敢闘賞ってことで賞品をやろうぜ」
     カウントはまくら投げに参加しない観戦者がしてくれるようだ。
     暗がりであるため、多少の誤差は愛嬌だろう。
    「勝者には、賞品代わりに有志が持ち寄ってくれたお菓子が進呈される。山分けな。ささやかだが、ご褒美があったほうが燃えるだろ?」
     中には罰ゲームっぽいのもあるかもしれないが……気にしてはいけない。
    「サーヴァントも一緒にいいの?」
    「ああ、人目もないしいいんじゃないか?」
     サーヴァントに当たったらサーヴァント使いも失格……などということはないが、最初に持って良い枕は二つまでということには変わりない。
    「だけどサイキックは当然禁止だ。ESPは……物を壊したりしない範囲でな。お説教食らうから」
     遊びとはいえ、修学旅行の途中だ。
     ハメを外しすぎないよう、節度は守らなくてはならない。
    「ズルは……敢えてするなとは言わないぜ? そういうのも戦術の内だしな」
     色々なリスクを背負う可能性も覚悟の上ならば……というところだろう。
    「まっ、うるさいことはこのくらいにして……こういうのは全力で楽しんだもん勝ちで、楽しませたもんは大勝利だ! それじゃ、修学旅行の定番のまくら投げ大会を存分に楽しもうとしようぜ!」


    ■リプレイ


    「修学旅行の定番! 枕投げ!」
    「バトルと聞いては、闘らないわけにはいかないっすねぇ」
    「ストリートファイターの血が騒ぐよ!」
     この日、この時を楽しみにしていた者達がスタートはまだかと枕を手にうずうずしている。
     すぐさま枕を投げれるようにする者や、あるいは狙われにくいよう壁際へ移動する者、策を仕込む者、様々だ。
    「あまり気乗りはしないが、どうしてもってんなら参加するか」
     などと気のないようなことを言いつつ、自分の枕はしっかりと確保している者もいる。ただのツンデレである。
    「それじゃあいくぜっ! スタートだ!」
     枕投げを待ち望んでいた面々を中心に、スタートと同時に一斉に枕が飛び交う。
    「さぁ、始まったよ。修学旅行の定番の枕投げ大会! 実況はボク、柿崎法子が担当するよ」
     音が遮断された空間で、法子が観戦組に向けて実況する。
    「はたしてより多くの敵を倒すのはいったい誰なのか! そしてお菓子を手にするのは誰なのか! ボクは信じています! 無事にこの大会が終わって皆でパイングミなどを食べるということを!」
     その瞬間、法子に流れ枕に当たった。立てたフラグのせいだろうか。
     愛用の枕を持って挑んだ明だが、布団に足を引っ掛けて転倒し、集中砲火を浴びてしまう。
    「勝負事や。慈悲はないんよ」
     真っ先に狙い撃ちした雪華は笑顔で言いつつ、すぐさま移動する。
    (「多分みんな私のことを忘れているでしょうね……ここは、この枕投げ大会で優勝して目立ってなんやかんやで思い出させ」)
     龍が脳内妄想していると、枕が腹部にクリティカルヒット。
    「うぼふ! かは……」
     赤い液体(ケチャップ)を吐きつつ、ダウンした。 

    「ふっふっふ……やるからには全力で行くで、この百発せんうぎゃッ!?」
    「あっ、ふ、ふらいんぐ、です? え、えと、ごめん、ね?」
     ほのかが名乗り上げている途中で、恋の投げた枕がほのかの頭にヒットする。
     今のはノーカンとなったようだ。
     改めて構え直したほのかが、近くに落ちてる枕とか使ってひたすら攻撃する。
    「集中砲火、です……っ!」
    「わ~ん、やっぱりやられた~」
     しかしほのかが補充しようとしたところで、れうが手持ちの枕を全て投げられ、当たってしまった。
     枕を投げ尽くしたしたれうは大急ぎで落ちている枕を回収する。
    「にゅ、今なのです……!」
     が、目の前に精一杯のため、月夜の投げた枕に当たってしまい、ほのかと同じ結果になった。
    「枕が来たのです! にゅっ!」
    「なんと?! で、でも、いっきにいけば!」
     恋が投げた枕は月夜に防御用の枕で叩き落され、若干ムキになりつつ一気に攻勢を仕掛けていく。
    「恋ちゃん、覚悟なのっ! いくよっ! ソレイユ!」
     周囲に枕がなくなった恋に、ナノナノのソレイユを連れて結月が攻撃する。
    「……うぅ、サーヴァントつかいさんは、ずるい、です!」
     恋は文句を言いつつ相打ち覚悟で枕を投げるが、自らを盾としたソレイユに阻まれてしまった。

     毅に真っ先に狙われたレンヤは、慌てて枕でガードする。
    「容赦ないねー。ならばこっちからも遠慮なく……っとぉ!」
     お返しにと毅目掛けて思いっきり投げ返す。
    「二人で盛り上がっちゃって……仕方ない、僕は他に狙いをつけるかな」
    「お前の、目標はこっち!」
     一人残された鎮は毅の妹である駒子を狙うが、それに気付いた毅が鎮へと狙いを変える。
    「他はともかく、お前等には手加減は一切しないぜ!」
     鎮はニヤリと笑いかけ、二人に狙われつ狙いを変えた勢いのままに投げる。
    「そんなもんくら」
     毅は鎮の枕を、枕で防御するも背後からの一撃で撃沈。
     相手は、守ろうとした駒子だった。
    「紳士が女の子をいじめるのはいけないなー?」
     鎮のほうは、毅と同時に投げたレンヤの枕に当たってしまっていた。

    「やるからには本気で勝ちに行った方が絶対楽しいよね? というわけで、みんな覚悟ー!」
    「……迅瀬の援護射撃する形のほうがいいかもな」
     郁は枕を両手に前に飛び出し、零治が集中砲火をされそうになる郁をサポートする。
    (「時浦がやってるみたいにやればいいのか」)
     悠埜は常に2個キープする零冶の真似をして、1つを攻撃用、もう1つを防御用として使う。
    「郁! そっち行ったぞ!」
     悠埜の声で郁は自分に飛んでくる枕に気付く。
    「これ、やってみたかったんだよね!」
     郁は両手でバランスを取りながら後ろに仰け反って回避すると、枕の軌跡がスローモーションに見えた気がした。
    「高校だけでもこういう体験ができてよかっ……」
     学生らしい楽しみを噛み締めていると、悠埜の顔面に当たる。
    「いってー……投げたヤツは……あいつか! やり返す!」
     顔面はアウトだが、ノーバンキャッチはセーフのようだ。
     今しがたぶつけられたばかりの枕を、投げた者目掛けて投げ返していった。

    「鞴王よ、この命に代えてもお守りします! スミケイナイト見参!」
     慧樹を初めとした吉祥寺中2-Dの面々が鞴を生き残らせるべく、布陣を取る。
    「あまーい! 鞴くんはやらせない!」
     羽衣が枕ぶんぶん振り回して鞴や仲間へと飛んでくる枕を叩き落し、昴が回収して仲間に渡していく。
    「無理は禁物、だよね」
     昴は時折羽衣が叩き落した枕に当たりそうになりつつも枕でガードし、着実に集めていく。
    「それっ、今だよーっ!」
     イリスが枕を投げつつ、仲間と連携して一斉に枕を投げ、枕の弾幕を作る。
    「軽いから投げづれぇー!」
     慧樹は枕を両手に持って壁に立ってやや上から角度をつけて投げるが狙いがズレて防がれてしまう。
    「スミケイ、パス!」
    「ぐあぁあ!?」
    「あ。スミケイごめん」
     羽衣が慧樹へ投げ渡した枕が、誤って慧樹に当たる。仲間同士でもアウトである。
     敵が投げた速度の早い枕と、柔らかく投げたパスで混乱してしまったようだ。
    「おかげで助かりました。草葉の陰で見守っていてください」
    「って死んでねぇよ!」
     慧樹のツッコミを流しつつ、防御を完全に仲間へ任せて攻撃に集中する。
     鞴は防御することを考えずに、投げた直後の隙を見極め、撃墜スコアを着実に伸ばしていった。

    「ど、どうしようアルゥ……こ、こうなったらぁ」
     枕を拾う隙が見つからず困り果てた明が、手近の者を捕まえ。
    「と~んでけ~」
     そのまま一本投げ。誰かが投げた枕へと当てる、逆転の発想だった。
     が、投げ技の大きな隙を見せた明も撃墜されてしまった。
    「う~。悔しいアル」
     そんなことを言いつつ満足したのか、その表情は満面の笑みである。

    「隙だらけだぞ!」
     陵華は壁歩きで壁を登って背を天井に向け、高所から背後を向いている者を狙う。
     続けて同様に壁歩きを使う一蜃へと枕を投げる。
    「女子は……やりにくいな」
     一蜃は枕を腕に括りつけた枕で叩き落しつつ、身長差を活かして落とすように投げる。

     冬織は霊犬イェフに枕を預け、自ら囮になりイェフに攻撃させようとする。
    「って、イェフ!? 何故俺を攻撃する!? そんなにお菓子食べたかったの!?」
     が、イェフは反旗を翻して自らの主を攻撃した。
     お菓子の魅力は主従の絆も超える、のかもしれない。

    「って、そういう作戦か!?」
     普段と違うウルルの浴衣姿に一瞬見惚れていると、ウルルは浴衣を肌蹴けた浴衣から覗く黒ビキニで誘惑する。
    「やーん、きょーすけちゃんのえっちー」
     などと言いながら京介を枕で殴りつける。アウトにはならないが、枕とはいえ結構痛い。
     そこへ飛んできた流れ枕から、京介は咄嗟に枕で防いでウルルを護る。
    「オレ以外に倒されるとか無しだぜ。オレが直接倒さねえと意味ねえ」
    「きょーすけちゃんこそ、わたし以外にやられちゃやーですよ」
     護られたウルルは、にへっと無邪気そうな笑みを浮かべて戦いを楽しむ。

    「有効打にはならないということは、何度枕で殴ってもOKということだね♪」
    「そりゃ、失格にはなんねぇけどな」
     智巳は布団を被りつつ浴衣姿の一子の枕殴打の猛攻を耐え続ける。
    「これは誤射ですよぅ誤射♪」
    「誤りでも射撃でもねぇだろこれ」
     ツッコミを入れた後、突然飛び上がって被ってた布団を一子に被せ、簀巻きにする。
     こうなれば『危なくなったらチラリしそうになる♪』作戦も使えない。
    「何発殴っても、OKなんだってなぁ?」
    「……布団隠れの術♪」
     智巳は布団の中に顔を隠してころころと転がっていく一子を追いかけつつ仕返しに布団越しに枕で殴っていった。

    「へっへ~、うさぎ兄とうちの黄金コンビの前に敵は無しっ! 狙い撃つぜっ!!」
    「オレに勝ったらお菓子奢ってやんよ!」
     由宇と稲葉が自信満々に直人を挑発する。
    「言ったな。お前のお菓子は俺のものだ……!!」
     大食い且つ食いしんぼな直人のはらぺこ魂に火が灯り、スタイリッシュモードを発動させる。
    「我らが覇道の前に立つ者無し! それが友人だとしても!」
     由宇がダブルジャンプで天井スレスレまで跳び上がり、ダンクシュートの如く枕を叩き込む。
    「由宇姐は、オレが守る! 秘技! まくらだいん……!」
     稲葉はヘッドフォンから流れるリズムに乗り、カッと目元をアップにして回転して全方向の枕を弾く。
    「あ、あれ? 世界がまわるうぅう!?」
     が、回りすぎたのか、目が回ってふらふらする。
    「これはハンガーこれはハンガーこれはハンガー……」
     遥香は学園のハンガーマスターから伝授された必勝の技を実行するべく自己暗示をかけていく。
    「ああもう感謝で言葉もありませんっ、マスターっ! ……ふにゃっ!?」
     勝利を確信して感動に打ち震えていると、顔面に枕がクリティカルヒット。
    「今の、変な悲鳴は……」
     直人が稲葉目掛けてスタイリッシュ投擲し、稲葉がふらふらと避けた先にいたのが遥香だった。
    「はらぺこ……だんぴーるぅ……」
    「大丈夫!? 衛生兵ー!」
    「スマン、遥香。お前の犠牲は無駄にはしないぞ……隙有りだ!」
     直人は倒れた遥香を心配する稲葉へと、投げつけたのだった。


    「始まったその瞬間から、もうそこは戦場。甘えは、許されない!」
     飛鳥がぐっと拳を握り締め、果敢に突撃する。
    「そこ、いただきなのー」
     が、単純な突撃のせいか、即座に茉莉の投げた枕がぼふっと当てられる。
    「い、いきなり撃沈!? そ、そんな~」
     HEROESはレナが作った布団バリケードを拠点にし、蝉時雨の面々は背中合わせで互いに死角をカバーしあって挑む。
    「日中遊んだ疲れを吹き飛ばす勢いで勝たせてもらうよっ!」
     イナリが三角に折ったお稲荷さんのような形の枕を投げつける。
    「っぶねー!!! 当たりかけたし……!!」 
     イレギュラーな変化に、蓮は危ない所ギリギリで避ける。
    「二つの枕が悪を討つ! いくぞ! 必殺! ルナティックピローシュート!!」
     名月は背中を戦友達に任せつつ、ヒーローらしく掛け声や決めポーズを取り枕を投げる。
     と思わせてフェイント。更に不意打ち。
     戦法はチキン仕様だった。
    「皆さん本気過ぎですよ……」
    「楽しい遊びかもしれないけどバトルだもん! 本気で行って、勝たないとね!」
     メルキュールは枕を叩き落しつつ熱気に気おされる。
     やる気十分の桜乃がぐっと更に気合を入れる。
    「手加減無用! 問答無用! 情け無用!」
     稜が足元を狙い、ドッジボールのように力いっぱい投げていく。
    「枕さんお願い!」
     キャッチできそうにないそれを、桜乃が防御用の枕を盾に防ぐ。
    「枕投げは日本の文化とお聞きしたのですが、こんなにハードなものだとは……」
     メルキューレは全力で投げられ飛び交う枕を見つつ呟く。
    「こういうの初めてだから凄く楽しいね。あはは♪」
     反面、陽は仲間と遊ぶ楽しさに、思わず声を上げて笑う。
    「ここは戦場よ。敵が全て倒れ伏すまで戦うのよ」
     嘩乃子の合図で一斉に降り注ぐ枕の雨を、山吹が畳返しごとき布団シールドで防ぐ。
    「さあ、今宵のグランギニョルを始めようか」
     智颯は無表情だが、誰よりも楽しむつもりで挑んでいる。
     性分ゆえに女性と小学生に対して手加減してしまう。
    「がんがん攻めてくぜ!」
     嘉市は常に枕を一つ確保しつつ、隙を狙って攻撃の手を緩めない。
    「当たらなければどうということはない!」
     仲間に当たりそうなのも含めて、稜が叩き落していく。
    「はい! これ使って!」
     ホナミは仲間の砲火の下で、全員の手に1つ以上枕を持てるよう、すばやく回収し、サポートに集中する。
    「ふっ、私はいいの。チームで戦い仲間を勝ち残らせる。これが私の枕投げ……! ところで賞品のお裾分けがしたい時は遠慮しないでね」
     ホナミはにこ、っと笑みを浮かべて言う。
     『要するにくれってことだろ』と思っても言わないのが人情だ。
    「枕投げのプロを舐めんなよー!!」
     蓮は背中合わせの仲間をカバーし、連携して枕を投げていく。
    (「目立つのは得策じゃないし、自分らしくないよね」)
     総一郎は虎視眈々と静かに皆が倒れて減るのを待ち、影から仲間を狙う相手を枕を投げて支援をする。
    「アターック!!」
     レナは顔面を狙い、枕を投げる。
    「――やらせはしない、よ!」
     仲間に当たりそうな枕を、嘩乃子がバシッと持ってる枕で叩き落す。
    「防御用は叩き落とすためだけじゃないの。これも戦略の一つ。私だってそう簡単にやられたりしないの」
     茉莉が飛んできた枕を受け流し、近くの別の相手へと当てる。
    「挟み撃ちだよ!」
     桜乃と嘩乃子が、山吹へと挟み撃ちを仕掛け、双方向から同時に投げつける。
    「ごふっ! お前はなるべく……い、生きろ……」
     それをリューネが庇いながら道連れにすべく枕を投げた後、リューネはがくっ、と芝居がかって倒れた。
    「そこのヒーローさん、ポーズ1つお願いしまーっす!」
     朱鳥が呼びかけると、ガムが平蜘蛛に乗って奮戦していたガムを始め、思わずポーズを取ってしまうHEROESの面々。
    「っと! 隙有りー!!」
    「ってお前は仲間だろー!?」
     仲間のツッコミを無視しつつ、朱鳥は枕を投げつけた。


    「うおっまぶしっ」
     明かり求めて移動した燐音は眼鏡に反射した月明かりを目晦ましに使い、眩んだ相手に枕を投げる。
    「何か癖になりそう、この楽しさ」
     燐音は光で目立った場所からすぐさま移動しつつ、呟いた。
    「皆、僕のお菓子タイムの為に礎となってくれ」
     耕平が超良い笑顔を浮かべつつ言う。
     お菓子タイム……もとい戦いの前では、年上も年下も女性にも、敬いも優しさも無い。
     摩那といえば、動かず、殺気を放たず、しかし隙は作らずの無心の境地。
    「こんなバトルマニアと一緒に居られるか! 私はもっと安全な場所に行くぞ!」
     咲夜は謎フラグを残しつつ、星葬剣メンバーから距離を取った。
     黒いRB団製サバト服を纏った刑一が、暗がりを転々としつつ、リア充目掛けて静かに枕を投げていく。
     ディアナが摩那の陰で匍匐前進しつつ、狙うは的が大きい刑一を狙う。
    「ふふっ、隙だらけデス!」
     ディアナが飛び出した瞬間、枕がぽふっと命中する。
    「……え、これで終わり?」
     あっけなく終わってしまった。
     続けてシャルロッテは刑一を狙おうとすると、刑一がシャルロッテの胸元を指し。
    「胸元肌蹴てる」
     不審な言葉に慌てて浴衣を確認すると、直後に頭に直撃する枕。
    「うぅ、今回も騙されてしまいマシタ……」
     肌蹴ているというのは刑一の嘘であった。
     同時に、シャルロッテの周りで男子が何人か撃墜され、ヤケに悔しがっていた。
    「黒いもふもふ、これはいい高級枕! 行くぞっ死ねぇぇ!」
    「がぅ~(訳:あっ待って佐那子! 私枕じゃな……きゃー!?)」
     気付いた時には既に遅く、興奮した佐那子に、ディアナ(黒犬)は華麗に飛んで行った。
    「ディアナー!!!!!」
     叫びも空しく、放物線を描いて飛んでいく。
    「ぷきゅ!?」
     同時に投げられる白犬もとい優希那が、空中で交差する。
    「こっち見てっ! はいっチーズ!!」
    (「ち、チーズ! じゃなくて助けてー!?」)
    「きゅきゅ~っ」
     一投する間も無くデストロイされた智恵美は、部屋の隅から華麗に空を舞うディアナと優希那を激写した。
     優希那のほうは飛ばされながらポーズまで決めている。
    「なんか白いもふもふしたすっごく知り合いぽいものを投げた気がするけど、気にしない!」
     優希那を投げた耕平はお菓子タイムのために奮戦していた。
    「なんかこの枕、もこもこして温かい? ……優希那?」
    「きゅ~」
     優希那のほうは摩那にキャッチされ、安堵の鳴き声を上げる。
    「さて、クラブの面子は……」
     治胡が振り返ると、空を舞う黒犬。
     思わず見惚れてしまい反応が遅れるが、見事に顔面でキャッチ。
    「……おお、ディアナ、無事?」
    「…あ、ごめんね、ありがとう」
    「いや、オマエが無事なら良かっ」
     顔に張り付いたままのディアナを下ろし、顔を上げると。
    「きゅ~……(訳:たしゅけて~)」
     顔面キャッチ2回目、今度は白犬。耕平と摩那に投げられた優希那が治胡の顔に抱きつく。
    「天城、オマエもか」
     摩那は犬変身した優希那だと気付きつつも、そのまま投げ返したのだった。
    「ああ、治胡さんずるーい!」
     ディアナと優希那をだきゅしてる治胡に、朱美がいいなの視線を投げかける。
    「きゅきゅ!」
     『もふもふしてくださってもいいんでしゅからねっ』と言わんばかりに仁王立ちする犬優希那を。
    「わたしもぎゅってする!」
    「これはもふもふするしかないデスネ」
     優希那は朱美とシャルロッテにもふもふぎゅっとされた。
     そんな隙だらけの姿を狙った相手が朱美へ枕を投げようとする。
    「妹を狙うヤツは、滅殺あるのみだ」
     兄である丞がすかさず枕を当てる。
    「しかし……目に毒だなぁ」
     浴衣が肌蹴け、肌を少し覗かせる治胡を見て呟く。
    「あァ……浴衣はどーしても肌蹴るな」
     視線に気付いた治胡は直しつつ、丞へ枕を投げると、気を取られていた丞はあっさり当たってしまった。


    「月チームに負けないようにガンバろーね!」
    「うん、月チームにも、他の人にも」
    「っしゃ、狙うは優勝のみだ。行くぜ太陽チームっ」
    「負けない、絶対に、勝とう、ね、みんな」
     あさひの元気な声に背を押され、続いて駒子や賢汰達もガッツポーズをし、深月紅が仲間を鼓舞する。
     男子や年上が沢山いる場を少し怖く感じていた駒子も、仲間達の姿に勇気付けられる。
    「みんなで、わいわい。……勝つ、がんばろ」
     切も当てるのは自信ないが、皆で楽しもうと決意する。
    「せっかくだから頑張っちゃおう、お菓子のためにも!」
     愛華の言葉で、お菓子に釣られて士気が上がる面々もいたり。
    「さー、楽しもうじゃねーか!」
    「太陽チームには負けないぞー!」
     ハガネや矢宵達も負けじとやる気を見せ、月チームを鼓舞していく。
    「唯ちゃん、勝利の女神はどっちに微笑むかな? さぁ、楽しく勝負だ!」
     おにゅーのネコさんパジャマを着たあさひが気合十分に宣戦布告。
    「ふふー……♪ 勝負だよ! ……あさひちゃん♪」
     唯達も楽しげにそれを受けた。
    「これは遊びでも真剣勝負ですわよ? 覚悟なさって?」
    「それでは、お手柔らかに」 
     クラスの女子お揃いのパジャマを着た日有と芽衣達が月チームに言葉をかける。
    「先手必勝だよ!」
    「いっくよー! えいっ!」
     シエラや優梨、葉月、あさひ達攻撃役が開幕と同時に一気に枕を投げる。
    「テツくんは盾ね、やよいを守って!」
     矢宵はキャリバー『テツ』を盾にする……が。
    「って、返って邪魔だ!? くっ、ここは地道に頑張るもん!」
     何発もの枕を浴びて早々に撃墜されてしまった。しかし一斉投擲を防げたのはよかった。
     夕月やギュスターヴが枕を枕を投げて相殺し、アヅマが枕二刀流で迎撃していくが、攻撃の手が多い。
     動き回るのが炬燵も、飛んできた枕に枕をそっと当てつつ避ける。
     太陽チームの熾烈な攻撃に対し、防御に集中している月チームの攻撃は散発的だ。
     更に狙いが逸れたのだろうか、大きく頭上で子を描く枕が二つ、太陽チームの後方に落ちる。
     日有や葉月達が枕を盾代わりに使い、それを難なく凌ぐ。
     防御役が叩き落とした枕をすぐさま芽衣や咲耶が回収する。
    「優梨さん、次の枕を」
    「はい、枕。どんどんいってね」
     そして芽衣や咲耶が装填手のように次々と攻勢に回る仲間に渡していく。
     『太陽』の名に相応しい熾烈な攻勢だ。
     美乃里は暗闇の見えづらい場所から攻撃の要となる葉月、優梨、芽衣、咲耶を狙うが、太陽チームの防御も硬い。
     暗く人で溢れる中を、盾代わりにしつつ縫うように動き回る光姫が遊撃手として月チームのガードを切り崩し、そこへあさひやシエラ達の投げる枕が降り注ぐ。
    「枕がそこにあるなら投げる。そんだけや」
    「わぁ、なんかカッコいい!」
     『いろいろ考えとると頭痛くなってくるし』と思っているのは敢えて口に出さずともいいだろう。
    「同じクラブの一員、我がライバルとして貴様だけは落とす! ……ってのは割りとどうでもいいけど常に被ってるその帽子は剥ぎとっちゃる!」
    「……そう簡単にはやらせないって!」
     紫廉はアヅマを狙って集中的に攻撃するが、枕二刀流で切り払われる。
     その防御をようやく崩しかけた……と思った瞬間。
    「ってグワーッ! 無念……ガクッ」
     アヅマを狙いすぎて、周りの注意が疎かになってた紫廉は上から落ちるように飛んできた枕に命中する。
    「この薄暗さじゃ、正面はともかく上からってのはそう対応できねーだろ」
     ハガネが頭の上へ落ちるよう、狙い済まし投げた枕だ。
    「命中力には自信があるのよ。当たりなさい!!」
     エインヘリアルは狙いは正確だったが、防がれて手持ちのなくなってしまう。
    「ニャッ!!」
     しかしすかさず猫変身して回避する。
    「小中高入り乱れての枕投げというのも凄いですね……」
     小学生にも勝てる気がしない夙は観戦を決め込み、枕が飛び交う光景を眺める。
     灼滅者の身体能力に性別や年齢に差はないとは言え、傍目には凄い光景だ。
    「アラタカ先生……いっしょに、がんばろ」
     花緒は枕を回収しようとする者を狙い、霊犬アラタカ先生は足元を駆け回ってかく乱しする。
     柚月が人陰を利用して忍び寄り、太陽チーム目掛けて枕を投げつける。
    「てぃ! なのでござるよ~……ってぎニャ!?」
     しかし同時にカウンターを受けてしまう。
     周囲を注意していた鎬が接触テレパスを使って声を出さずに注意していたのだ。
    「後ろががら空きにゃ!」
     だが更にクロが人陰でこっそりと猫変身し、大きく遠回りして太陽チームの背後に回りこんでいた。
    「眞扉さん、後ろ……っ」
    「そうはさせな、ふぎゅッ」
     狙われた日有に気付いた芽衣が注意し、優梨がその身を盾に庇う。
    「ごめんね……後は、お願い……がくり」
    「優梨さん……貴女の犠牲は、無駄にはしませんわ」
     どこか虚ろに手を伸ばし、芝居っぽく倒れた優梨。
     夙によって部屋の隅へと回収されていった。
    「容赦なくKILLだ!」
    「にゃっ!?」
     奇襲が成功したクロも、後ろからの襲撃を警戒していた朱音によって撃墜されてしまった。
    「わ、わ!?」
     愛華は狙われないよう部屋の隅へと位置取っていたが、隅っこは動き回るには狭く、倒された者が集まっており動きづらく、避けるのに苦心した。
    「はいっ、駒子さん」
    「よい、しょ。て……あ。枕じゃない」
     枕だと思って芽衣が渡したのはナノナノだった。
     誰かのナノナノが迷子になったらしい。
    「わ、わ。どうしよう、どこの子?」
     手渡した枕のはずがナノナノ?
    「あなたどこから来たの!?」
     迷子のナノナノを飛び交う枕からナノナノを守りながら芽衣がおろおろする。
    「いくよ! ボクの必殺サイドスロー!」
     あさひは唯目掛けて左手で投げる……と思わせ、そのまま振り抜いて右手で受ける。
    「こっちが本命!」
     そして右手で投げる。フェイントだ。
     ガードのタイミングをずらされた唯が当たりそうになったところへギュスターヴが割り込んで受ける。
    「こういうのも、サポート役のやることだろ? ……うん、当たっちゃったら大人しく戻るからね」
     戦闘モードが解除されたギュスターヴは部屋の隅へと自ら向かった。
    「枕がかなり少なくなってしまいましたわね……」
     日有が溜めていた予備の枕の貯蔵も減り、太陽チームの枕は数個と手持ちの盾代わりの枕だけになってしまった。
     攻撃の手を休めない太陽チームに対し月チームはあまり攻撃しない上に、雅が太陽チームが投げた枕を積み上げ、溜め込んでいたためだ。
    「……さて、次はこっちの番だな」
     アヅマがニヤリと笑みを浮かべる。
    「かーつのーはー……つーきぐみぃー……! とうっ……!」
     『月』は、太陽の光を受けてその身を輝かせる。
     月チームは溜め込んだ枕を使い、一転攻撃に回る。
     更に投げ網の如く、毛布が正面や上から次々と降ってくる。
     毛布ではアウトにはならないが、視界が遮られ場が混乱する。
    「悪く思うなよ、太陽チームには負けん!」
     そこへ脇差達月チームの面々が隙を突いて狙い撃つ。
    「回避……にゃん」
     美乃里が正面から向かって足元を狙うが、切が猫変身で緊急回避する。
     前に出たことによって狙われたが、側転でアクロバティックに回避していく。
     当たらないことを優先して回避し続けていた夕月は、飛び交う枕を回避する事に楽しみを見出していた。
     枕投げというより枕避けだが、本人はとても楽しそうだ。
     暗殺者のように人ごみに紛れ、不意打ちしていた黒は戦果をあげていったが。
    「もういいや! 当たってあげよう!」
     途中で飽きてしまったのか、自ら枕に当たりに行ってしまった。
    「よし! 今がチャーンス☆」
     碧月は仲間の後ろに隠れて囮代わりにしつつ、波状攻撃で攻撃していく。
    「……ず、ずるくないよ! 立派な作戦だよ!?」
     じとーっとした目で見られた気がして誰にともなく言い訳していると、枕が横から飛んでくる。
     枕が飛んでくるのは一方向だけとは限らない。
    「はっ、危なー……流れ枕にも要注意、っと!」
     ギリギリのところで避けつつ、碧月はまた別の仲間の背後へと移動していった。
    「最も手ごわい相手……」
     イグニドが観察していたところ、一番手ごわいのは狙う優先順位を明確にしている日有だと判断し、集中して狙っていく。
    「深月紅ちゃん!」
    「ごめん、あさひ、後は、任せた。頑張って」
     親友のあさひを庇い、深月紅は倒れた。そして隅に回収されていく。
    「任せて! 太陽チームはまだまだこれからだよ!」
     反撃で形勢逆転されたが、この反撃で枕も補充できた。
     まだ時間はある。太陽チームは諦めず、更なる攻勢に出た。


     参加者の半数が撃墜された頃。
    「先生が来ました。みなさん、寝たフリをしてください!!」
     アイスバーンの割り込みヴォイスが響く。
     一瞬固まったの隙を突き、隠れていたちょーほー部の面々が撃墜する。
     更に無防備を装ったシルビアが、アイテムポケットから取り出した枕で不意を打つ。
    「騙してしまって、すみません」
    「にゅふふ、姑息じゃ! とても姑息な作戦なのじゃ! にゃはははは!」
     謝るアイスバーンに対し、シルビアはとても楽しそうだ。
     そしてごろごろ転がり、すぐさま寝たふりをする一つの影。
    「ふふー、狙撃点は悟らせない。スナイパーの心得ですのよ」
     ちょーほー部に近づく者をスナイプしていく夜鈴だ。

    「私が見張り役として先生を追い払いましたので、、ご安心下さい」
     真の言葉で、混乱していた場が落ち着きを取り戻す。
     教師にESPを使った真は後でお説教されるかもしれないが、仲間の楽しい時間のためならばと覚悟した。

    (「ふっ、気品高く聡明なる私が敢闘賞を華麗に掻っ攫わせてもらうぞ」)
     布団で作った簡易塹壕の中で参三がニヤリと笑みを浮かべつつ潜む。
    「何!?」
     だが背後から布団をめくられ、手榴弾の如く枕を投げ込まれてしまった。
     布団塹壕の弱点は、暗がりでも目立つ事だった。

    「そら!」
     玲が投げられた枕を狙って枕を投げ、相殺して弾かれる。
    「隙ありっ!」
     宵が投げた直後の相手の足元を狙って投げる。
     が、ギリギリのところでかわされた。
     しかしワンテンポ遅れて投げられたサズヤの枕が避けた場所へ吸い込まれるように命中する。
    「おお、暴雨も空戯もやるな……!」
     玲は人が固まってるところへ投げ込みつつ、二人の様子を見て感心する。
    「おぉ……空戯がいつも以上に元気」
     乱戦のため、宵はサズヤに誤射してしまったが、ヒュッとかわす。
     しかし避けた先には玲の姿があった。
     危うく当たりそうになったところに、ビハインドのアルくんがその身を盾とする。
    「アルくんの犠牲は忘れないよ……っ」

    「コンビネーション発動!」
     葵が枕を投げると、朔之助がカッコつけて続けて枕を投げる。
    「ふっふー大丈夫、守ってあげるわ」
     二人へ飛んできた枕は、七が両手の枕で叩き落す。
    「連携はばっちり、まあ当然だな?」
     葵が仲間との連携に満足げに薄く笑みを浮かべる。
    「おっと手が滑ったぁー!」
     そこへわざとらしく声をあげ、七と葵へと投げ浸けられる枕。
    「えっあぶな……」
     不意を打たれた二人は間一髪で避ける。
    「次はマジに当てちゃうぜ?」
     ニヤリと笑って挑発する朔之助。
    「う、裏切りだーっ!」
    「面白くなってきたじゃないか。そういうことならまず君らからだ」
     お返しとばかりに、七と葵は朔之助へと全力で投げつける。
    「あっはっは! もうこれはこれで楽しいから構わないわ! 勝負っ!」
     連携と裏切り。
     相反する二つだが、どちらも仲良しパワーの成せる業だろう。

    「すまん、少し遅くなった。……よし、俺も今から参加するぞ」
     中盤になって、人数が減った代わりに積極的に攻撃する者が多くなった頃に、アインが混ざる。
    「私だって、やる時はやりますよぉ! えーい!」
     なおは両手で振りかぶって、思い切り投げるが、全く見当外れのほうに飛んで行ってしまった。
    「荒井は無理せずな! 小柄だから上手く俺に隠れてくれ」
     運動神経があまりよくないなおを護るべくイクトが前に立ちふさがり、ちくわ枕を振るう。
    「イクト君、右から来そうですよぉ!」
     なおも護られるだけでなく、仲間の危機を察知して声をかけていく。
    「ひゃっはー! 横投げ投法回転枕を喰らえー!」
    「卑怯っぽくて申し訳ないけど、確実だよね~」
     その間、利戈が枕を手裏剣のように投げ、ミカが相手が枕を投げる瞬間の隙を狙い、枕を投げていく。
    「我々には佐々野という優秀なディフェンダーが……」
     利戈がちくわ枕で獅子奮迅の活躍を見せるイクトを誇ろうとするが。
    「さあ皆、俺に構わず先に行け!」
    「って、フラグ立てんの早いよお前!」
     と言ったところで、アインが自ら盾になろうとするイクトの襟首を掴んで前に引きずり出すお茶目(?)を見せる。
    「よくやってくれた、イクト。……お前の犠牲、無駄にはせんぞ」
     盾として散った(犠牲になった)のではなく、盾(犠牲)にされてしまったイクトだった。
    「イクト君の勇姿、しかと見届けた!」
     実は暗くてよく見えなかったと言うのはミカだけの秘密だ。


    「おら、バトルロイヤルだ。手当り次第に当てるぞー」
     既濁は目に付いた者へ片っ端から枕を投げていく。
    「いつもは一緒にお勉強してるお友達だけど……覚悟ーっ!」
     ひよりの意気込みは十分だが、不馴れなせいか手元が危なげだ。
     クラスの面々目掛けて投げるが、二つとも使い切った後は枕を拾わずに避けに徹する。
    「ふぅははー! 俺と嫁の連携プレーをとくと見せてやる!」
    「って誰が嫁じゃーい!? さらりと恥ずかしいコトぬかすなぁ!」 
     式夜とエウロペアはクラス間とは別にペアを組んで攻撃役と防御役を入れ替えていく。
     式夜の霊犬お藤が枕を銜えて持ってきて補給もばっちりだ。 
    「右だ! いや後ろ!」
     クロノが割り込みヴォイスで此方を見ていない相手へ、見当外れの方向を言う。
     そして一瞬反応した隙に枕を投擲していく。
     貫はニット帽が万が一にでも脱げないように頭部を死守する。
     顔面に向かってくる枕は全て叩き落す勢いだ。
    「悪いけど、枕投げだろうが勝負は勝負! 俺は負ける気ねぇんだぜ」
    「それはそれで、ディフェンダー冥利に尽きるってものだ!」
     その結果神奈の盾にされているが、貫は気にしていないようだ。


     人数が大分減り、残ってる者が両の手で数えられるようになった頃。
     残っている者を応援したり、仲間とジュースを飲みつつ観戦したり、野次を飛ばしてみたりする者も多い。
    「大将首、貰った!」
     蛇変身で隠れ、様子を伺い続けた龍夜が終了間近でするりと抜け出し、鞴へと奇襲を仕掛ける。
    「お布団ガード!」
     それを羽衣が防いだところでタイムリミットが訪れ、勝負が決した。

    「これにて枕投げ大会は終了! さぁ、気になる勝者と敢闘賞の行方は!」
     法子の実況と共に、有志のカウントが集計され、勝者が発表される。
    「クラスの人は勿論、みんなで分けて仲良く食べたいですね」
     防御を仲間に任せて攻撃に集中し続けた吉祥寺中2-5の鞴。
    「闇夜に潜む仕事人、狸寝入りの夜鈴なのですわ」
     寝たふりで潜みつつスナイプしたちょーほー部の夜鈴。
    「太陽チームと………月チームの勝負は……引き分けかー……」
    「後で一緒に食べようね! 太陽も月も一緒に♪ 皆、ありがと!」
     桜塚中の勝負は引き分けたが、あさひと唯。
    「空襲こそ戦場の華よ!」
     そして敢闘賞はすぐさま撃墜されてしまったものの、枕爆撃で一気にスコアを伸ばした咲夜が獲得した。

     更に勝者とは別に、クラスや仲間内でもお菓子のご褒美もあった。
    「ご褒美に取っておきの水饅頭を贈呈だ!」
    「夕食のプリンをあげるぞい。でっかいやつな?」
    「私からはちんすこう! 色々種類があるから楽しくて、つい買い込んじゃってー」
     用意してきた面々から頑張りを称えられつつ、渡されるお菓子。

     配られた賞品は、お土産として買ったきっぱんやサータアンダギーや沖縄名物は王道。
     小樽名産ドゥーブルフロマージュやチョコレートといった普通のお菓子だけでなく、ジンギスカンの飴に加え、世界一不味いと称される飴まである。
     サラダ味の煎餅や、タコライス煎餅と言った辺りは比較的普通だが。
    「食べてみて美味しかったのをチョイスしてみたよ!」
     ナイアが『灼熱スナック ゲキカラ君』と書かれたお菓子を出す。
    「優勝賞品が罰ゲームになっている気がするけど……気のせい?」
     きっと気のせいではない。

    「まずい、先生が来たぞ!」
     そして最後の最後。
    「貴様ら、消灯時間はとっくに過ぎてるぞ!」
     今度は正真正銘、本当に先生がやってきた。
     灼滅者達は各種変身やESPを駆使して逃走したり、布団に潜り込んで狸寝入りしたり、派手に転んでどたばたと音を立てたり。
     こういう時もまた、学生らしい青春だ。

    作者:白黒茶猫 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月18日
    難度:簡単
    参加:153人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 15/キャラが大事にされていた 34
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