武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
今年の修学旅行は、6月18日から6月21日までの4日間。
この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
今年の修学旅行は、南国沖縄旅行です。
沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
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「星砂って知ってるかな? ……って、百聞は一見にしかずだよねぇ」
黄朽葉・エン(中学生エクスブレイン・dn0118)は、そう言うと小さなビンの蓋を慎重に開け『それ』を取り出した。
てのひらにあるのは星の形をした粒。
「可愛いでしょー? 小さいってだけでもズルイのに、星の形をしてるなんて反則だよねぇ?」
星砂を指先でちょんと撫でた後、再びビンの中に戻した。
「この可愛い可愛い星砂。沖縄の竹富島のカイジ浜や西表島の星砂の浜でいっぱい拝む事ができるんだよ。
20日の自由行動には竹富島や西表島に行くことも予定されてるんだ。竹富か西表か悩んだんだけど、今回は西表島の星砂の浜に行こうと思ってるんだ」
良かったら皆も行かない? エンはわくわくとした表情で皆を誘う。
なだらかな丘を下りて行くと、こんもりとした島がお出迎え。
透明度の高い海は魚がたくさん生息しており、波も小さく初心者でも安心してシュノーケルを楽しむことが出来る。
「今回俺が誘いたいのは夕方の星砂の浜だよー。 想像してみて? 太陽が落ちて、少しずつ夜の装いになり始める空。足元には星砂。海には……ヒトデが何か星っぽくない? 空にいるみたいだなーって思わない? ふふ、沖縄で空中散歩出来るなんて思わなかったでしょー」
エンの意識は既に西表島に向かっているようだ。虚空を見てうっとりしている。
「星砂を探すのも良いし、友達や恋人と語らうもの良いねぇ。夕陽を眺めるだけってのも贅沢な時間だと思うよ。夕方の海は昼とは違う顔を見せてくれるかもしれないからねぇ。足だけ海に浸したりしても、気持ち良いかもしれないねぇ。
夕方だから、そこまで日差しは気にしなくて良いだろうし、ゆったりした時間が過ごせたら良いなぁと思ってるよ。
……ん? 気になるけど独りで参加って寂しくない? って? だいじょーぶ。問題無いよ。俺も恋人とかいないしー? おひとり様参加だしー? 手持ち無沙汰だったら俺が相手するよー?」
当日の天気予報は晴れ。
島特有のゆっくりと流れる時間に任せて、それぞれ素敵なひとときを過ごしませんか?
星砂探しに夢中になり、足元が疎かな愛理に、炉亞はそっと手を伸ばす。
「星砂って色んな形があるのですね」
「形によっては、太陽の砂、とも言うらしいです」
拾った太陽と星を瓶の中に収め、互いにそれを交換する。
それは願いが叶うおまじない。
ふたりが思うのはひとつだけ。
いつまでも一緒にいられますように。
「これ、貰って良いの?」
みをきが差し出す一番星のような白砂に狭霧は声を震わせる。
「みをきちゃんありがと! 大好きっ!」
感激は言葉だけでは表しきれず、狭霧はその儘、みをきにダイブ。
予想外の行動に態勢を崩し仰向けに倒れるも、太陽を背に、星を手にした狭霧の笑顔を見てしまっては文句も言えない。
みをきにとっては狭霧こそが一番星なのだから。
火鳥、逢紗兄妹は、共に修学旅行に行けた記念にと、星砂を丁寧に瓶に詰めていた。
「星の砂、とはよく言ったものよねぇ。考えた人はとてもロマンチストなんでしょうけど」
「夜空から流れ着いた星の子つっても、面白いかもしれねえや」
「兄さんもロマンチストなのね」
「言ってろ。……ほら、交換」
受け取った瓶を胸に抱き、兄との思い出作りの場所にここを選んだ自分もロマンチストなのかもしれない、と逢紗は嬉しそうに微笑んだ。
沈みゆく夕陽も、それを受け輝く星砂も、何の意味もなさない。
小麦色に焼けた肌を惜しげもなく晒し、美凪と美波は既に二人の世界。
「バカンスと錯覚する程に焼いちゃったわねぇ」
それを聞いて美波が悪戯っぽく笑い、美凪の水着を少し捲り上げ、日焼けの跡を確認する。
愛おしさがこみ上げた美凪は、彼女をそっと引き寄せ、抱き締める。
美波の手からは、姉に渡す筈だった星砂がさらさらと零れ落ちた。
「そび、お星様。星砂、ありました!」
「あら、お星様あったの。良かったわね」
足が濡れても何のその。草灯に濡れた靴を預け、アスルは星砂探しに没頭する。
集められた星々はふたつの瓶に収められ、その行先は、ひとつは自分の分。もうひとつは草灯の分。
「こんぺいと、より。小さい、ですー」
アスルの言に、草灯は彼の頭を撫で、撫でられたアスルは嬉しそうに「うん!」と笑顔を見せた。
修学旅行での出来事を語る結弦を、祐一は優しく見守る。
「結弦はちゃんと旅行楽しめたんだな。水着も似合ってる」
「似合う? おおきにー♪」
事前にふたりで選んだ水着だが、改めて見られると少し気恥ずかしい。
そんな気持ちを知ってか知らずか、夕方の風がふわりと結弦の髪をくすぐる。
小さなくしゃみに気付いた祐一がすかさず自分のパーカーを結弦の肩に掛ける。
パーカーと共に元気も補充された結弦は話を再開させた。
思い出話はまだまだ尽きそうにない。
大切に星砂を拾い集める寿の姿に何かを感じ、お銀が「君の帰りを待つ者への土産か?」と問うてみれば、彼女は分かりやすく顔を赤くする。
「……べ、別に私は…そんなことは……、なくも、ないけども……」
旅とは斯くも人を解放的にするものか。
ぽつぽつと話し始める寿を煉火は見守る。
ふと顔を上げ、紅い海と白い砂浜を目に焼きつけた。
次にこの景色を共有したいのは……――、
「さて、ボクも小さな一掬いを持って帰るかな」
小さな願いを心に隠し、いつも通りの笑みを見せる。
「では私も、数粒拝借するとしよう。星に願をかけるのも悪く無い」
お銀も、ひとつふたつと星を集め始める。
星を掬う手を止めて猫子はそっと寿を見つめる。
恋をすることの出来る寿が羨ましい。
が、他人を模倣するのに精一杯な自分に、恋することが出来るのか?
心の中に澱のように残った感情は、暫く消えそうにない。
【桜堤2-2】のクラスメイト達から少し離れて、煌介と璃乃は、指から零れる星と、頬を撫でる風を感じていた。
「楽しい、すね」
「あぁ、せやね」
交わす言葉は少なくともきみのこころが笑う。それだけで。私は笑顔になれるのだから。
見つめ合う霊犬の麒篠とイリオモテヤマネコ。
先に動いたのは山猫の方。
目を逸らし去っていく山猫を、追いかけようとする麒篠……を玲が慌てて止める。
「あの子は襲ってはいけない子なんですよ」
その言葉を理解したのか、麒篠は欠伸をするとその場に座り込んだ。
砂浜よりも海よりも夕陽よりも。互いの存在が愛おしくて。景色などは目に入らない。
繋がった手の温もりと、さらさらと足をくすぐる砂の音は、確かに今ふたりがここにいる証。
どうか、これからも、この先も。どこに行っても、行かなくても。
特別な日も、そうじゃない日も、一緒に時間を、想い出を積み重ねたい。
樹は拓馬の手を強く握りしめてそう願う。
本当は乗り気じゃなかった。気晴らしに来てみたけれど。沈んだ気分は一向に晴れず、波に足を弄ばせながら、彩華はぼんやりと夕陽を眺めていた。
「へい、かーのじょー! 一緒に遊ばねー?」
軽薄な声と共に現れたのはヒトデ怪人……ならぬ、ヒトデを星のサングラスよろしく目に当てた洵の姿。
一瞬の沈黙の後、彩華の顔に笑顔が戻る。
笑って笑って、笑い過ぎて。涙が出そうになった頃。彩華に投げられたのは星砂の瓶。
「星の砂には興味なさそうだったけど、代わりに小瓶に入れてやっといた」
ぶっきらぼうな洵の優しさに、彩華は心から礼を言う。
得意げな笑みを浮かべながら、ヒトデを差し出す自らのビハインドに、藍花は声にならない悲鳴をあげる。
実は藍花はウネウネした生き物は大の苦手。少しでも天敵から距離を取ろうと、銀河の背中に隠れてしまう。
「あの、ソレは持ち帰れないよ!?」
「そうです、それ星違いだから……!」
銀河はビハインドの思わぬお茶目さを見て、つい微笑んでしまう。
星砂が充分に集まれば、ふたり手を取って立ち上がり、今日のひとときを忘れないように胸に刻む。
「黄朽葉にーちゃん、お誘い、ありがと!」
「おーう!」
勇介の快活な声が聞こえれば、エンは嬉しそうに片手を上げる。
「武蔵坂に来てよかった。普通の学校よりもずっと楽しい時間過ごせるし。誰かのヒーローにだってなれるし、将来の夢も見つけられたしさ。……オレ、役者になりたいんだ」
「夢を叶えた暁には、良い席を格安でよろしくー。観に行くからさ」
「おーう!」
次は雄介が元気良く片手を上げる番だった。
大きな容器を胸に抱いて、薫は大いに張り切っていた。
「友達が増えたからいっぱい持って帰る必要があるっす」
「集めるのは大変ではないでしょうか……」
心配する薫を横目に雅は、星砂探索を開始する。
「……と、アイちゃんも来てたんっすね、星の砂を集めに来たんっすか?」
視界の端に捉えたアイスバーンに気付き、ふたりは声を掛ける。
「その……潮干狩りですけど。星砂? それおいしいんです?」
「潮干狩りはここで出来るのでしょうか?」
「ご一緒にどうです?」
彼女の誘いを丁重に断り、ふたりは星砂収集を再開した。
ビハインドのユウヤと共に、鏡華は夕陽に染まる砂浜を歩く。
学園に来るまではこんな穏やかな時間が過ごせるとは思いもしなかった。
鏡華に出来たことは戦うこと、逃げ回ること。勿論、落ち着く時もなく、身体を休める場所もなく。
それでも今まで生きてこられたのはユウヤの存在があったから。
「……本当に、一緒にいてくれてありがとう。これからも頼むよ、煌哉」
その言葉に、ユウヤが照れたように微笑んだ気がした。
砂の中に隠れる星を見つけ出しては、瓶の中に閉じ込める。
持ち帰った星砂は砂時計に加工して、コレクションのひとつとなる。
「ご機嫌だねぇ」
後ろから掛けられる声に鷹揚に構えることが出来たのは、ここに流れるゆったりとした時間のおかげだろうか。
「瓶に詰めて、この時間ごと持って帰れたらいいなぁ」
「詩人だねぇ」
呟く楽太郎の声に、耳聡くエンが聞きつければ、
「僕、少しぶらついてくるよー!」
照れたのか、そそくさとその場を後にした。
渡す相手の笑顔を思い浮かべながら丁寧に星を瓶に詰める。
詰め終わった瓶を摘み、夕陽に翳せば、そこには今回の誘い手の姿が見えた。
「夕陽を眺めながら話をしよう」との瑠璃羽の誘いに、エンは恭しく胸に手を当て歓迎する。
日が沈む瞬間に、瑠璃羽の目に止まったのは可愛らしいハート型の貝。
ふたつ見つけたそれの行方は、ひとつは自分に。もうひとつはエンに。
「これは、君のハートを受け取ったって解釈で良いのかな?」
「勿論、違うよ♪」
「えー」
今は日常の喧騒を忘れて、のんびり過ごそう。但し、喧騒の原因は東雲にあるんだけど。
意地悪く言う八雲の声を聞こえない振りを決め込んで、由宇は早速星探しを始める。
篩を使って探す姿はどじょう掬いみたいだと、笑う由宇がふと真面目な顔をする。
「この感覚を忘れん様にね……戦いの感覚やないで、日常の感覚をさ」
日常を取り戻させてくれた他の誰かではない、由宇なのだと八雲は言い、改めて礼を言った。
はしゃぐ霊犬2匹と子供がひとり。
霊犬のシキテとくろ丸は、外に出す機会に恵まれない為、こういう時間は貴重だ。
今日は、お兄さんで保護者の気分のイチは、その光景を微笑ましく見守っていた。
存分に楽しんだ後は、2人と2匹で星砂探し。
痛いと思っていた星砂は、裸足の足にも心地よく、波の流れる儘に海辺を踊る。
空の星は掴めないけどこれなら、大丈夫。
笑顔で星を差し出すチセに、イチも同じく笑顔で受け取った。
沈む夕日の美しさより、あなたの方が奇麗で眩しい。
蔓の、飾り気の無い言葉と笑顔に、綾乃は思わず顔を赤くする。
友人以上恋人未満の関係は、もしかしたら、もう少し進展するのかもしれない。
「綾乃、大好きだよ」
蔓の好意に応えられる術を持たない綾乃は、切なく微笑み手をそっと握り返す。
友人以上恋人未満の関係は、もう少し、長引くのかもしれない。
ふたりで集めた星砂は、ふたつの小瓶に収められ、紫姫と緋月のお守りとして交換された。
妹に不意に問われる「幸せ?」の返事は言うまでもなく。
それは妹も同じだったようで。姉妹で共に過ごせる喜びをふたりは噛み締めた。
問いが終われば、その後に続く緋月の取りとめのない話に、紫姫は相槌を打つ。
黄昏に世界が沈む前に帰ろうと、姉の差し出す手に妹はそっと手を重ねる。
完全に闇に包まれる前に、妹の笑顔を心に刻もうと、緋月の方を見れば、彼女も同じように紫姫を見つめていた。
夕日に染まったレインの髪の色は普段と違い、眩しくて、とても奇麗。
自分の言に照れたように笑い、奏は夕日を眺める。
まだ明るいうちに集めておいた星砂を瓶の中に入れ、アイオライトも一緒に閉じ込める。
「レインさん」
海を眺めていたレインは、奏の声と差し出された小さな海を受け取る。
「おれからも。いつもありがと。……これからもよろしくな」
レインの手には、奏の為に作られた、月と星の飾りが着いたコルク瓶。
彼から手渡された空を胸に抱いて、奏は幸せそうに微笑んだ。
誰よりも愛しい人の肩を抱き寄せて、冬崖は、今までのこと、これからのこと、そして今、腕の中にいる櫂の話を聞きたがった。
それを受けて櫂はゆっくり話を始める。
辛いこともあったけれど、こうして笑っていられるのは冬崖のおかげ。冬崖の傍でずっと笑っていたい。
――、
櫂の瞳が涙に滲んだのは、悲しかったからでも、驚いたからでもない。
落とされたキスが、嬉しかったから。
【天文台中2A】のメンバーに与えられた、茉莉からの素朴なクエスチョン。
『何故、夕陽は大きく見えるのか』
「一日最後だから太陽もしっかり輝いとこうと思って、とか?」
「そーいうの、ふーぜんのともし火、っていうんだよね!」
奏恵の言に、恋が得意気に手を上げる。しかし、残念ながら何だか少し違うような気がする。
どうやら全員、理由は知らないらしい。一旦問題を棚上げにして星砂探しを再開する。
なかなか現れない星砂に焦れたのか、桜子が霊犬を見習い砂浜に両手をぺたり。
「ちょっと掘った方が見つかるみたいなのよね」
そう言うや否や、猛然と砂浜を掘り始めた。それを見たカミーリアも桜子を真似て、地面を掘り始める。
「カミーちゃん!? すとっぷすと~っぷ!」
わんこな気分だと、早々に穴掘りを中断した桜子の脇では、当初の目的を忘れ、穴を掘ることのみに集中し始めたカミーリアを慌てて止めるメンバー達。
「あれ? 神音くんは?」
きょろきょろと辺りを見回す視界の端に、星砂探しに夢中でどんどん集団から離れて行く神音の姿が。
実はテンションがこっそり上がりまくっている神音の腕を掴み、迷子になっては大変と、皆の元に戻らせる。
「夕日が溶けた海、素敵っすね」
迅に話し掛けるも、夕日の美しさに見惚れ、千結は上の空の様子。
ハッと我に返ると、メインは砂探しだと思い出し、砂に隠れた星を探す。
ためつすがめつ眺めてみれば、小さな粒は、小さくたって星の形。
奇麗で、どこか可愛らしい星を瓶に詰め、ふたつの小瓶をふたりで分ける。
幼い頃から迅に我儘に付き合って貰うばかりで、申し訳なさが心を占める。
だけど。もう少しだけ甘えさせて。
不甲斐なさを噛み締める千結の姿を見ながら、迅はまたふたりで出かける機会があれば良いのにと、そっと願う。
それは互いを慮る、優しい思いやりのすれ違い。
波打ち際ではしゃいでいた蓮二が不意にバランスを崩すのを見て、鵺白の頬に滴が伝う。
泡になって消えたら駄目だと、お伽話になぞらえて言ってみても不安な気持ちは氷のように張り付いて。
それを溶かすのは蓮二の体温。頬に触れた、優しい手が彼女の心をゆっくりと溶かす。
海は苦手だと言う鵺白に、自分も同じだと蓮二は返し。
君のいる海なら好きになりそうだと言う鵺白に、自分も同じと苦笑を零す。
幸せだと蓮二が言えば、鵺白も同じだと言い、また来ようと約束を交わす。
友達に星砂を贈りたいからと、雛は星探しに集中していた。
と、そこに、
「うわわ……波がー!」
悪戯な波が、雛の足元に忍び込み、足をくすぐりながら星を攫っていく。
波の悪戯にも負けず、遂に完成した3つの小瓶を眺めて、満足そうに頷く。
残った時間は遊んでも構わないだろう。冷たい海に足を浸して、雛は波と戯れた。
「夕日と海と波と戯れる少女たちか……絵になるねぇ」
【星空芸能館】のメンバー達の色とりどりの衣装と、夕日に染まる景色を見ながらファルケは頬を緩める。
「本当にちっちゃなお星さまだよ♪」
「1つ1つが幸せのお星様なんですよ♪ 小瓶に詰めれば、ほら、幸せの星の海♪」
くるみが初めてみる星砂に感激の声を上げれば、えりなが素敵な解釈を加える。
えりなの言葉を聞き付けて、砂が指から落ちる感触を楽しんでいた結月は、小瓶にそれを詰めてお土産にするのだと嬉しそうに微笑んだ。
空凛と花梨菜は、小瓶を取り出して少しずつ星をその中に封じ込めた。お世話になっている先輩や後輩、同居人の皆の分もと考えていたら、お土産はひとつやふたつでは足りなかった。
折角だから写真を撮ろうというファルケの提案に異議を唱える者はなく、皆の笑顔と海岸が、カメラの中に収められた。
織に湧いた悪戯心。
露利を引っ張り海へと入り、そこにいたヒトデをそっと手渡し。
不満気な露利へ、可愛いものが欲しかったのかと、からかい交じりに言ってみれば。
ヒトデはいつの間にやら織の頭へ。更には携帯のシャッター音。
「露……! 今すぐ其のデータ消して……!」
星を投げつけ、食ってかかるも露利はへらりと笑うのみだった。
星々の煌めきの中で生きることは、きっと、とても素敵なこと。
モイラの言に同意しつつも、己が醜いと暗に思う耀子は、本音を隠し微笑みかける。
「僕はね、愉しい事があったらいいなぁ……僕が出会ういろんな人と楽しい事があったら僕は幸せだよ」
暗い過去を払拭し、明るい未来を願う耀子に、モイラも、これからの自分がどう歩むのか楽しみだと星を眺めて微笑んだ。
この浜辺からイメージすることは? と美乃里に問われ、エンは暫く思案する。
「そうだなぁ、笑顔かな?」
浜辺に限らずこういう場所は、人は何かしら幸せを抱えてやってくる。
そういう空気が堪らなく好きだと、エンは照れ臭そうに答えた。
エンの言を聞いた後、美乃里は「子供っぽいかもしれないけど」と言ってから、星の川にいるようだと笑みを浮かべる。
写真の撮り方が分からないと言う由鶴に言葉は簡単に操作を教える。
風景を撮り、そして、言葉とビハインドの千尋を撮って、由鶴は満足そうな笑みを浮かべる。
「ほら、由鶴も……わらって?」
「……え?」
その儘で言葉の方を向けば、彼女の携帯に由鶴の姿が収められた。
写真は得意な方ではないけれど、何だか嬉しい。
由鶴は照れ臭そうな笑みを言葉に向けた。
夕方の海は初めて来るけどこんなに奇麗だったのか、と加奈が感嘆の声を上げれば、柚季も、私もそうだと同意する。
指から零れる星粒を、持って帰っても良いものかと逡巡するふたりの元へ、連れて行ってと星が囁く。
瓶へとそっと星を流すふたりの頭上に、気の早い星がきらりと瞬いた。
瑠璃のタイヤに付いた砂が、夕日を受けてきらきらと輝く。その脇には瑠璃が濡れてしまわないようにと、庵胡がしっかりと海側を歩いている。
1台と1匹の様子に、何となく楽しげな雰囲気を感じ取り、紫苑は目を細める。
うきうきと波打ち際を歩いていた瞳は、ふと足を止め、奇麗な貝殻を拾い上げ、旅の思い出にしようと友人に提案する。
ふたりは笑い合いながら星と貝を瓶に閉じ込める。
その姿をサーヴァント達がそっと見守っていた。
【井の頭中2年A組】の面々は連れだって浜辺へと繰り出し、星砂採集を開始していた。
凛月が腕まくりをして、張り切った様子で星砂探しを始めれば、京は見つからなくてもお土産屋で買えば良いかと気楽に構えて星探しに臨む。
「あれ? これが星砂なのかな?」
「それ、星砂だと思うよ!」
無欲の勝利か、京の手には幾つかの星砂がちょこんと鎮座。それを見て天狼が感激した声を上げる。
「見つかった? 俺は結構見つけた!」
「これなんかは大きくて星の形に近い!」
「さらさら~っと♪ あ、これとかそうじゃないかなぁ?」
「おー、意外と混じってるものだな」
コツを掴んだのか戦と結衣奈、里紗や陵華が戦利品を報告し合う。それを見ながら、ギィと雲龍が手に乗せた砂をさらさらと地面に零しては、その感触を楽しむ。
星砂集めが終わったら、思い思いに楽しい時間を過ごす。
美しい景色を眺め、この世界がダークネスに支配されているという事実を疑いたくなり、思わず感慨に耽っていたケイも今は笑顔を見せている。
その姿を指でファインダーを作ってのぞき込んでいた雲龍に天啓が閃いた。
そうだ。これを本物にしよう。
「ここで記念撮影をしていこうか!」
雲流の提案に反対するものは誰もいなく、海と夕日を背に、皆でカメラに向かう。
「帰ったら現像して貰えると嬉しいよ、雲龍くん!」
「よーし、みんな笑え。これ以上ないってくらいに」
タイマーをかけた雲龍は急いで仲間の元へと合流する。
そして。
今日のかけがえのない時間が切り取られた。
作者:呉羽もみじ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年6月20日
難度:簡単
参加:84人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 14/キャラが大事にされていた 1
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