修学旅行~ジェルキャンドル 海の思い出、閉じ込めて

    作者:雪月花

     武蔵坂学園では、毎年6月に修学旅行が行われます。
     対象となるのは、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達。

     今年の日程は、6月18日から6月21日までの4日間で、行き先は南国沖縄!
     沖縄の名所や名物を巡ったり、美ら海水族館を観光したり。
     勿論、マリンスポーツや離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
     南国の風土や海を楽しんで、楽しい修学旅行の思い出を作っちゃいましょう♪
     
    ●潮騒を聞きながら……ジェルキャンドル教室
     1日目、首里城観光の後は自由行動。
     街を観光したり、伝統を学んだりする以外にも人気なのが、沖縄ならではのお土産を手作り出来る体験教室です。
     ジェルキャンドルとは、文字通りガラスの器に溶かした可燃性ジェルを注いで作るキャンドルのこと。
     通常の蝋燭とは違って透明感があり、火を灯した時の光の反射もとっても綺麗ですよ♪
     海辺にあるジェルキャンドル教室では、一通りの材料が揃っているので初めての人でも簡単に綺麗で可愛いジェルキャンドルが作れます。

     ジェルキャンドルの作り方

     1:器選び
     ガラスの容器を選びます。
     立方体や円筒形、深型の灰皿のような形をしたものや、ハートや星型など色々な形とサイズのものがあり、大・中・小の容量によって金額が違います。
     一番人気は、お値段も大きさも手頃な中で、シンプルな形をしたものだとか。

     2:砂を敷く
     芯の丸型が付いている方を器の底側に置いて、真ん中に固定するようにスプーンで掬った砂を敷いていきます。
     砂は様々な色のカラーサンドの他に、沖縄の砂浜の砂も用意してあります。
     複数の砂を使う場合は、目の細かいものを先に敷きます。

     3:貝殻やガラスパーツなどを配置する
     貝殻や珊瑚の欠片、ビー玉や可愛い魚などの海洋生物を模したガラスパーツをピンセットで砂の上に置いていきます。
     出来上がった時にどんな風に見えるか、想像しながら配置していきましょう。
     貝殻や珊瑚などは、目の前にある砂浜で拾ってきたものを使用してもOKです。
     他にもプレートに日付やメッセージを書いて入れたり、燃えないものであれば思い出の品物を持って来て入れることも出来ます。

     4:溶かしたジェルキャンドルを注ぐ
     芯やスプーンに伝わせるようにして、器にジェルを流し込みます。
     ジェルは透明なものだけでなく、青や緑、ピンクや黄色などに色付けされたものもあって、一番人気はやっぱり青!
     ホットプレートに乗せた鍋の中で、溶かしたものを使います。
     一定の速度で、静かに流し込むのが気泡を少なくするコツ。
     また、魚のガラスパーツをジェルの中で浮かせる場合は、器の半分くらいまでジェルを入れて固め、パーツを置いてから残りのジェルを注ぎます。
     まるで魚が泳いでいるように見えますよ♪

     5:完成!
     ジェルが固まれば、世界にひとつだけのジェルキャンドルの完成です!
     数十分程で冷え、目安は器を触ってみて熱く感じなければ、もう大丈夫。
     みんなより完成が遅くても慌てないで。
     冷蔵庫に入れれば、5~10分程度で固まります。
     固まってもジェルなので、触ると少し柔らかいです(押しすぎてへこんでしまわないように注意してね!)。
     
     真っ青な空の下、広がるのはエメラルドやターコイズを溶か込んだような南国の海。
     白いサマードレスに麦藁帽子、三つ編みを垂らした少女が砂浜に足跡を付けていく……。
    「素敵です」
     いつか読んだ小説のワンシーンのような光景を思い浮かべて、園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)はうっとりと目を閉じ――。
     そこで気が付く。
    「み、みなさん……いつから、いらしてたんですか?」
     いつの間にか近くにいた生徒達の姿に、槙奈は修学旅行のしおりを抱き締めてオロオロし始めた。
     ここは学園のありふれた場所で、誰が通ってもおかしくないのに。
     赤くなってちょっと涙目の槙奈だったが、少し落ち着いてきたようだ。
    「みなさんも、修学旅行に行かれる学年の方でしたね。あの……1日目の自由行動は、どんなところに行くかもう決めましたか?」
     おずおずと尋ねながらも、彼女の表情は次第に和らいでいく。
    「私は、ジェルキャンドル教室に行こうと思って……とっても綺麗なキャンドル、上手く作れたら素敵な思い出とお土産になります……。
     あの、お願いがあるんです……」
     槙奈はちょっと緊張気味に切り出した。
    「みなさんも一緒に、ジェルキャンドル作りしませんか?」
     今度はさっきとは違う意味合いで、頬が紅潮している。
    「私、いつもはみなさんを見送ることしか出来ないですが……今回は危ないこともないし、みなさんと一緒に旅行できるなんて、夢みたいです」
     みんなで賑やかに、楽しい思い出が作れたら嬉しいと、槙奈は幸せそうに微笑んだ。

     窓から見える南国の海、潮騒を聞きながら。
     思い出を閉じ込めた、あなただけのジェルキャンドルを作ってみませんか?


    ■リプレイ

    ●砂浜にて
     深い色を湛えた沖縄の海が、陽光に輝いている。
    「アネゴ、アネゴ! 海が、空が! すごい綺麗でゴザルよ!」
     帽子もシャツもパージして海に飛び込みそうなウルスラを、
    「AHAHA! ウルスラ~待て待て~☆」
     千波耶が謎のテンションで追い掛けていく。
    「ウフフフはしゃぎすぎだぞチハヤもウルスラも待て~」
     鈴もだった。只1人留守番のメンバーにお土産をと張り切る【ミュージック!】3人娘を止める者は誰もいない。
    「……あ、潮の香りがしない」
     海も砂も太陽も、自分の故郷とは随分違っているようで、千波耶は足を止めた。
     ぶにっ。
    「うおおななな何でゴザルかこれ!?」
    「ウルスラ、ナマコが瀕死だよ! ポイしなさいポイ!!」
     ナマコよ、君のことは忘れない!

     なんてこともありつつ、キャンドルの材料探しが始まった。
    「……あら、これは」
     貝殻と海で削られ丸くなった硝子の破片、シーグラス(ビーチグラス)を探していたみやびは、赤味を帯びたそれを発見した。
    「元は香水瓶だったのかしら」
    「綺麗です」
    「他にも海底に数十年埋もれていた硝子瓶が、希に内部を化学変化させて、虹色に煌くようになったものもあるんですって」
     槙奈はみやびの話を楽しげに聞く。
    「おや、あの緑のは……ビーチグラスか。結構あるのかな」
     凜(篁)もまた、別の場所でシーグラスを見付けた。
    「楽しそうだな……」
     気紛れに変わる彼女の興味と表情に魅入りながら。
    「綺麗だ……まったく」
     銀助は照れつつも、せっせと綺麗な貝や珊瑚の欠片を集めていった。
    「転んで波被っちゃったよ~」
    「大丈夫ですか?」
     ドジっ子全開の瑠璃羽に、槙奈が慌ててタオルを出す。
    「でも、真っ白で綺麗な珊瑚とか貝殻が見付かったよ♪」
     瑠璃羽はびしょ濡れのまま笑った。
    「この青い海をね、留守番してる子のお土産にしようと思うんだ♪ 槙奈さんはどんなの作るの?」
    「私は可愛いのにしたいです」
    「綺麗にできるといいね♪」
     そこへシルバーアクセのモチーフにと、写真を撮っていた善四郎が顔を出す。
     彼は月型で夜に泳ぐ魚群のキャンドルを作りたいという。
    「槙奈さんはどういうキャンドル作るつもりっすか?」
    「器は丸くて、綺麗な熱帯魚やイルカさんを入れたいです」
    「それから、えっと……その服とっても似合っているっす。とてもキレイ、っす……」
     もじもじ告げる彼に、槙奈は頬を染めて「ありがとうございます」と微笑む。
    (「これ以上会話とか無理っす! 自分、恥ずか死ぬ!」)
     善四郎も真っ赤っかだ。
    「どれがいいかな……」
     シズクは沢山拾った貝から槙奈に選んで貰う。
    「これ、綺麗ですね。ジェルが色付きなら白い巻貝が映えそうです」
    「ありがとう。それじゃあ、これにするわ!」
     それと、とシズクは照れ気味に付け加える。
    「……こ、こう見えて貴女のこと結構信頼してるんだから、もっと自信を持って送り出してくれてもいいのよ?」
    「はい……シズクさんがいつもご無事に帰ってきて下さって、嬉しいです」
     槙奈はこくこく頷き、みんなと教室の建物へ向かった。

    「宇佐ちゃんにはツノガイ。綺麗なの、見つかったわ」
    「じゃあボクからはアポロ貝~♪ 尖がってて強そうなんだよ!」
     ほわーんとした表情の兎織に、レサは目尻を下げる。
    「それと……この珊瑚の欠片、どことなくエビっぽいわね。エルヴィラちゃん、こちらもどうかしら?」
    「えびたんはエビを入れるといいよ!」
     海老尽くしで、エルヴィラは「何で二人とも揃ってエビ推しなの?」と不思議顔。
    「だって強そうだし!!」
     今日もうさ耳な兎織がにぱっと笑う。
    「いいわよ! じゃあ私からもエビ渡してあげるから待ってなさい!」
     溶けるような暑さの中、エルヴィラは元気に砂の上を駆け出した。

    「あ、これ綺麗。……でも欠けてる」
     淡い桃色の小さな貝殻を手に、透かすように眺めるきすい。
     レンヤの視線に、彼女は「完璧すぎても性に合わない」と笑った。
    「そんな風に思うところが、きすいさんらしいね」
     と笑む彼は、ふと見付けた巻貝を手に取る。
     綺麗な光沢の貝と、柔らかなチョコレートブラウン。
    「ねーねー、これさ……似てない?」
     示すのは、互いの髪の色。
    「確かに、絶妙ー」
     二人の記念を手に入れたら、思い出を作りに行こう。

    ●海の思い出、器の中に
     教室では、和気藹々とジェルキャンドル作りが始まっていた。
    「女子……は、どういう……でざ、いん? が好きなの、だろうか……?」
    「そうですね……良かったら、一緒に作りましょう」
     妹に喜んで貰えるお土産をと悩む朔夜に、槙奈は少し考えてから微笑んだ。
     彼は三日月形を、真夜は立方体の器を選ぶ。
    「オレンジの砂に黄色の砂を重ねて、ペンギンを仲良く2つ並べてー」
    「可愛いですね」
    「槙奈さんも、完成したら見せてくださいね」
    「はい」
     円筒形の器を手に、砂を選ぶ槙奈と頷き合って、真夜も手許に集中し始めた。
    「やっぱり沖縄らしい、海モチーフが良いですわね。ねぇ、千架はどうします?」
     そう訪ねる芹夏に、千架はうーんと唸る。
     様々な形と大きさの硝子の器に、迷ってしまう。
    「千架は星の海ですの? とっても綺麗で素敵ですわ」
     芹夏は千架のアイデアで、熱帯魚が泳ぐ中に硝子チップも散らすことにした。
    「たくさんあって悩んでしまいますね……」
    「……パーツを全部入れたら、キャンドルにならないぞ」
     可愛い硝子細工達を前に決められずにいる十萌に、紗玖夜は突っ込みがてら自分の方にも入れたらどうかと助け舟。
    「うぅっ……ありがとうございます。でも雫石君の好みも聞かせて下さいね?」
     紗玖夜の選んだ金魚鉢型の器に、十萌は慣れない手つきで砂を敷き始める。
     彼も完成品を想像しつつ、青と白の砂を選んだ。
    「一緒に遊ぶ機会は初めてだよね、えへへ」
    「お、おぅ……そーだな」
     級友のカエデと凛(天)は、照れた笑みを浮かべる。
    「藍沢は親に作んの?」
    「カエはお母さんに、南の海をお土産に持って帰ってあげたいなーって」
    「優しいんだな。俺のは~……思い出用、かな。一緒に遊んだっていうさ」
     話しつつ凛は金魚鉢、カエデはハートの器を選ぶ。
    「折角だし、沖縄の砂を底に入れよう」
    「あっカエも同じ事思ったよ。やっぱ沖縄の砂入れるよねー」
     掬った砂をサラサラと、器に敷き詰め。
    「……って、あれ、きゃー、ずれた!?」
     パーツ配置に四苦八苦している麻琴を、寛子は「落ち着いてやれば大丈夫だよ!」と励ます。
    「寛子ちゃんの方は……おおう、可愛い。流石だわ……!」
     感激しつつ、一緒に頑張る麻琴。
     珊瑚や硝子の花に、麻琴は魚を、寛子はイルカを選んで。
    「ジェルは基本の青だね!」
     寛子の声に頷きながら、完成したらきっと何度も眺めてにやにやしちゃうと麻琴は思いを馳せた。
    (「しかし、これ……意外と難しいぞ」)
     聖に渡そうと水族館のイメージでパーツを配するアレスの目は、器に釘付けだ。
     彼女の方は、ハートの器に綺麗な珊瑚の欠片などを並べて。
     ジェルはアレスの髪のような、緑にしようなんて考えながら。
    「アレスくん」
     不意に名を呼ぶと、集中していた彼はハッとした。
     聖が「大好き」と続けると、アレスは何処か照れ臭そうに彼女の頭をそっと撫でるのだった。
    「この貝殻は上にビー玉をのせてみましょう。こっちの水晶はサンゴの横に置いて花畑みたくしましょうか?」
     加奈は器を回してどう見えるか確かめながら、ピンセットで慎重に水晶の花を配置した。
    「久遠さん、どう? きれいにできそう?」
    「僕こういう繊細な作業苦手で……」
     京音の声に自信なさげな真綾だけれど、彼女に教えて貰いながら少しずつ形にしていく。
    「ふふ、雀谷さんとあんなに仲良くなってたんですね」
     心配げだった瞭も、安堵の笑みを浮かべた。
     でもなんだか手持ち無沙汰。将真は「ピンセットで作業するのは慣れんな、手が震えてしまう」と言っていた割に、黙々と数個のキャンドルを作っているし。
     折角【ささかま部】面子で来たので、全員分ということらしい。
    「……俺も、皆の分のジェルキャンドルを作りましょう」
     瞭自身も将真は雨、京音は桜、真綾には波をイメージして手を進めた。
    「仰木くんのすっごく綺麗! さすがだね!」
    「繊細なイメージ素敵でさぁ」
     目を見張る京音に頷き、真綾も精一杯気持ちを込めて作ろうと指先に力が篭る。
    「薄桃色のきれいな貝を見つけたんじゃ」
     レオンと夢衣は、集めてきた素材を分け合った。
    「むー、難しい。レオンくん分かるー?」
     唸る夢衣と一緒に、レオンは小さな地球をイメージ。
     各々に想いを込めた透明、紅、紫の水晶のビーズと硝子の魚は、水色のジェルに浮かべようと想像する。
    「ずっと忘れない、大切な思い出に残る物になるようにいっぱい頑張らないと」
     呟く夢衣は楽しげな雰囲気で、レオンも微笑んだ。

     飾り付けを終えたら、いよいよジェルを流し込む。
     丁寧に配した飾りの上に青いジェルを注ぎながら、白焔はある少女の面影を思い浮かべる。
     不意に見せた笑顔――
    「……まったく。俺には似合わないね、こういうの」
     思わず呟いてかぶりを振り、仕上げに集中する。
     青緑のジェルに、みとわは魚を二匹浮かべた。
    (「らいととボクみたいに寄り添って、仲良く泳いでるみたいに見えるかな」)
     ふと息を詰めていたのに気付くとふふっと笑い、大好きな恋人の手許を眺める。
     頼人の器には二人の姓を捩り、赤と橙の太陽と黄色に細い青がマーブルされた二十三夜月が、透明から青に変わるジェルの中に浮かんでいた。
    「わ、らいとらしくて、素敵♪」
    「とわ」
     みとわに声を掛けられるまで、頼人も集中していたようで。
     後で写真を撮ろうと笑い合う。
     ジェルをグラデーションさせるはちょっと難しく、ジェルが固まらないうちに別の色のジェルを注ぐ必要がある。
    「あっ」
     上からエメラルド、紫、レモン色、青のグラデを斜めに作ろうとした若葉は、器を傾け折角の飾り付けを崩してしまう。
    「やり直しだよう」
     スタッフに手を借り、根気よく直していく。

    ●潮騒を聞きながら
     ジェルを注いだら、後は固まるのを待つだけ。
     神華は青い円筒の器をじーっと見詰めた。
     青い砂に青いジェル、海に煌く珊瑚礁。雲に見立てた白い貝殻が浮かぶ、沖縄の空と海のイメージだ。
     星が好きな恋人の為にと、雛のキャンドルは小さなヒトデの骨や硝子パーツ、星の砂を散りばめた夜空のよう。
    (「いつか、本物の沖縄の星空をムッシューと一緒に見られたら……」)
     青と紫の星空に、幸せな未来を夢見て。
     ニコロは冷めるまでの間、目を閉じ故郷トスカーナの海に想いを馳せた。
    「がんばらなくちゃ……な」
     小さく呟いて開いた瞳には、透明から青緑に移り変わるジェルの中で泳ぐイルカの姿が映った。

     完成したキャンドルを見せ合う【睦月】の面々。
     七は青系統の砂のグラデーションに、星の砂を撒いて。珊瑚に熱帯魚とマンタが泳ぐ。
     浴衣姿の壱は、星の砂に赤いパーツやヤシの木を飾って、夕日のような橙のジェルで仕上げて。
     燈も夕日の海をイメージして、砂も赤いグラデーションに熱帯魚や珊瑚、ビー玉が光る。
    「やっぱり女の子が作ると、可愛くなるもんやなぁ」
    「大鳥居のは?」
     内蔵助の声に七が見遣ると、彼は夕日の庭園を作り上げていた。
     沖縄の砂に枯山水風の模様。珊瑚は木に、貝は岩に見立てて。透明から赤に変わるジェルで味のある和の風情だ。
    「そう来たのね」
    「それぞれ個性の出た作品ですねぇ、蝋燭に今日の思い出を詰めているようで……うふふ」
    「世界にひとつだけのジェルキャンドルなんて、素敵だよね!」
     含み笑う壱と、明るく笑う燈。
     使うのが勿体無いからと、七と燈はもう一つ作る事にした。

     小さな器に星の砂とヒトデ。深い青から碧、透明のジェルを流し込んで。
     水面に浮かぶように、一枚の桜貝。
     気泡も波打ち際みたいだと、灯は完成したキャンドルを眺める。
    「ね、おひとついかが?」
     不意に声を掛けられた槙奈は「えっ?」と驚くのだった。
    「うふふ、中々のできばえですわ♪」
     ラピスラズリのキャンドルは、青い砂に星の砂を混ぜ、青いジェルをグラデーションさせたもの。
    『祝♪ 初沖縄記念!』と書かれたプレートやヤドカリ、各層に魚やイルカ、クジラが飾られ、仄かに良い香りがした。
    「うん、傑作!」
     砂に蓄光ビーズの星とシーグラスを埋め、インディゴの海にクラゲを浮かべたハナは満足げ。
    「ルーくんは夜の空?」
    「ハナの、海? お星様、ある。可愛い、ですー!」
     瞳を輝かせるアスルの方は、月に見立てた白いシーグラスが浮かぶ、透明から深い青に移り変わる空だ。
    「海の、青と。空の、青。ねー」
     二つ並べてにこにこと笑うアスルに、なんて贅沢なのかしらとハナも顔を綻ばせた。

    「綺麗に出来ました」
     円筒の器の青いジェルに魚や貝殻を浮かべたキャンドルに、真琴は掌を合わせて喜ぶ。
    「わーい。うまくできたよ!」
     潤子のキャンドルは金魚鉢型。白い砂に貝殻を散りばめ、水色から透明に移り変わるジェルで仕上げた。
    「はい真琴ちゃん、交換こ」
    「わい、ありがとう。大切にしますね」
    「わぁ……! シャルの作ったキャンドル、とっても綺麗なのです!」
     レンブラントは目を輝かせた。
     シャーロットの立方体の器には、波打ち際のような斜めの砂の上に海の深さを感じさせるグラデーション。
     レンブラントのキャンドルは、丸い器に星の砂。青から透明に変わるジェルの中を魚達が泳ぐ。
    「これはシャルにあげたくて作ったのです、受け取ってくれますか?」
    「ありがとう……私も、レンにあげたくて作りました。受け取ってもらえますか?」
     手こずっていた紗那も、星型のキャンドルを完成させた。
    「……でーきたっ♪」
    「でーきたっ♪」
     妹の桜音と声が重なる。
     桜音の器はハート型。二人とも緑のジェルに可愛い魚が泳いでいる。
    「これ、桜音にプレゼント♪」
    「これ、紗那にプレゼント♪」
     顔を見合わせて、姉妹はにっこり。
    「……二人して同じこと考えてたな♪」
    「えへへ、同じこと考えてたね♪ 紗那だーいすき♪」
     嬉しそうな桜音に、紗那も頷いて。
     心を込めた作品を交換し合えば、とても素敵なお土産になる。

     ブルーハワイ風に、茉莉花の助言でチェリーを飾って。
    「これ、受け取ってくれる?」
     光に手渡されたキャンドルを見れば、砂浜にビーズで描かれた『Stay with me』。
    「もっと早く言うべきだったけど……茉莉花ちゃん、大好きだよ」
     静かな告白に、茉莉花は自作のピンクのものと一緒にキャンドルを胸に抱いた。
    「あ、ありがとー。私も同じ気持ちだったのに、なかなか言えなくて」
    「良かったらボクとお付き合いしてくれないかな?」
    「うん。マリー、光くんのカノジョになりますね。えへへ……」
     初々しい空気の二人を、キラキラ煌くキャンドルが祝福しているようだった。

    作者:雪月花 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月18日
    難度:簡単
    参加:57人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 13/キャラが大事にされていた 4
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