修学旅行~星の海を揺蕩う 宮古島スターライトシー

    作者:志稲愛海

     武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
     今年の修学旅行は、6月18日から6月21日までの4日間。
     この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。

     今年の修学旅行は、南国沖縄旅行です。
     沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
     さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
     
    ●ナイトヒーリング――空と海の流星群
     楽しい修学旅行も遂に3日目、最後の夜となりました。
     そんなラストナイトを飾るのは、空と海の優しい星明かりたち。
     ウミガメも泳ぐ、神秘的な海ほたるの光満ちる宮古島の海に。
     修学旅行最後の夜、癒されにいきませんか。

     宮古島の海に太陽が沈んだ後。
     南国の海の景色は、昼間とはまた違った美しさをみせます。
     満点の星空に、さざ波の音、心地良い夜の海風……そして一面広がる、海ホタルの光。
     それは、海を覆い尽くす、満天の星のような神秘的な光。
     南国の海を仄かに照らす煌きは、きっと感動を覚える、非日常な癒しの風景。
     そんな無数の星空の下で、海ほたるを鑑賞しましょう。
     今回、海ほたるをみる方法は、ふたつ。
     ひとつは、船に乗りながらガラス越しに海中観賞ができる、ナイトグラスボート。
     もうひとつは、実際に海ほたる輝く海の中へと潜る、ナイトシュノーケル。

     まず、星空や夜光虫の光に囲まれ、夜の海へと漕ぎ出すナイトグラスボート。
     船底に張られたガラス窓から、照らした海中を覗きみれば、幻想的な煌きがそこに。
     少し水の中に潜るのが不安な人も、グラスボートならば顔も身体も濡れず安心。
     見上げる星空と広がる海の星の世界を進む、ロマンチッククルーズです。
     そして、より神秘的な世界に身を預けたい人には、ナイトシュノーケルがおすすめ。
     ライトの明かりを頼りに見る海中は、昼間とは全く違う世界。
     夜光虫がキラキラと光輝く海に潜れば、夜の熱帯魚やウミガメ、珊瑚礁、夜行性の生物が活発に動く姿などを観察できます。
     泳ぎが苦手な人や小学生でも、インストラクターがついているから大丈夫。
     安心して楽しく参加できます!
     そして、海の中の探検ももちろん楽しいですが。
     ぷかりとみんなで手を繋いで、海ほたる輝く夜の海に浮かんでみましょう。
     海の星に囲まれながら、空の星を眺め揺蕩えば――まるで星の世界にいるよう。
     修学旅行、最後の夜――空の星に海の星。
     南国ならではの癒しのスターライトシーを、どうぞ満喫してください!
     
    ●神秘的な夜遊びへGO!
    「ねー、修学旅行最後の夜、何するかもう決めてる? もし決まってなかったらさー、神秘的な世界に、素敵な夜遊びしに行かない?」
     飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)は修学旅行のしおりを開きながら、へらりと楽しそうに笑んだ後。慌ててしおりをテーブルに広げ、こう続ける。
    「あ、ナンパじゃないよ!? そうじゃなくて、これこれー。修学旅行3日目の夜にね、宮古島に海ほたる観に行かないかなーって」
     修学旅行3日目の夜に組み込まれている、宮古島で過ごす夜。
     海ほたるといわれている夜光虫が、海一面、星のように輝くのだという。
     それを、ナイトグラスボートやナイトシュノーケルでみて楽しもうというわけだ。
    「空と海の星に囲まれて進むグラスボートでさ、海中を見たりしながら夜の海のクルージングも素敵だしー。ナイトシュノーケルもしてみたいよね! それでその後、光溢れる海に浮かんで星空を眺めてみたりとかさ……すっごく癒されそうじゃない? よかったらみんなで最後の夜を楽しもーっ」
     もし不安なら一緒に潜ろー♪ と。
     遥河は、図書館から借りてきたガイドブックも一緒に机に広げながら。
    「折角だからさ、此処でしかみられない神秘的な夜の海を観に行きたいなーって。普段なかなかみんなといっぱい話せないから、修学旅行でお喋りして仲良くなれたらオレも嬉しいし。忘れられない楽しい思い出をさ、いっぱい作ろーよ!」
     わくわくした様子で、へらり微笑むのだった。


    ■リプレイ

    ●星の海を漕ぐ
     相棒からの、最終日の夜の御指名。
     都会の窮屈な空と違う、一面の星の世界。
     そんな光に溺れ、息を飲む燐音は。
    「燐音ちゃん燐音ちゃん、あれ見て」
     胸躍らせ掛けられた呼び声に、どしたー? と狭霧の視線を追えば。
     船底に流れゆく、沢山の海の星の煌き。
     そして海ほたるの流星に三度願い事をして、ちゃんと叶うかな、とはにかむ相棒に。
    「願い事、きっと叶うよ?」
     燐音は頭を撫で、頷く。だって相棒が頑張る姿が、目に浮かぶから。
     出逢いはまさに――空と海の、星の導き。
     船底から指す魚をすらすら答える魚々に、さすが詳しい、ダヨ……! と感心しつつも。
    「あ! あれがウミホタル……!? とっても綺麗、なのよう!」
     つい興奮し、どしんと思わず隣の人にぶつかったチロル。
     そして、彼――九条に詫びた二人は、良かったら一緒に見ないかとそう誘ってみて。
    「ん、そう言うのなら御一緒させて頂くよ」
     頷いた彼と、互いに自己紹介を。
     そして。
    「じゃぁきゅーちゃん、って呼ぶ、ダネ!」
    「……っ、きゅーちゃん? う、いや別に構わないけれど……」
     ちょっぴり不満げながらも、チロルに、キミ、もしかして先輩なのかい? と。
     ふと訊ねた九条に、魚々は答える。彼女も自分と同じ、中2だと。
    「浮輪はイラナイ?」
     そう首廻らせ訊いたあきつに、ボートなんだからいらねぇぞと、そう棗は返して。
     境界線のない空と海の光の世界を、暫し揺蕩う。
     そして船底の額縁を覗きみたあきつは、ぶるり思わず身を震わせるも。
     ふと目を移せば、違う舟を漕がんとする棗の姿。
     棗はそれを誤魔化す様に彼女の頭をぽんぽん宥め叩いて。
     海底の流れ星を見遣れば、漏れるのは、感嘆の吐息と。
     ……ま、悪くねぇな! 不敵に溢れる笑みがひとつ。
     ひとり、舟旅へ出たリヒトの心に自然と浮かぶのは。
     空と海と光、風と波の彩に揺蕩う、夢物語の詩。
     そして気付けば結構な時が経っていて。
     リヒトは心に留める――空と海の境界線のないこの景色を、ずっと、忘れないようにと。
     空も海も、両方の星を見たいから。
    「うわー、ガラス越しの海ってすごく綺麗だね」
     つい欲張ってきょろきょろするるりかに、焦らなくても海も空も逃げないしと、峻は言ってから。
     幻想的な青色発光の煌きと星空の瞬きを眺め、またひとつ、尾を引き星が海に還る様を指でなぞって。
    「るりか、流れ星見えたか?」
    「え? どこどこっ?」
     一層きょろきょろする後輩を見て、思う。
     食べてる時以外でこんなに楽しそうなるりか、初めて見た、と。
     瞳に映る景色は、水族館で見たものとまた違って。
    「すごい……これ、ホントに海の中?」
    「そうだよ。作り物なんかじゃない。この全部が自然なんだ」
     海の中にも星があるなんて知らなかったと呟くマリーに、頷くアカネは。
     敬意を払って守っていくべき、そんな綺麗な世界にいて欲しいと。
     そう願いつつも思う……守れてよかった、と。
     そして海の星を詠む占いがあったらと考えるマリーを見つめ、改めて誓う。
     これからも守っていく、と。
     思いを後押しする様に煌く夜光虫。
     そんな中、真剣に気持ちを紡ぐ夢の声に、玲も耳を傾ける。
     これまでの事や心に抱えた恐怖、そして。
    「玲ちゃんが、私とお友達になってくれて……本当に嬉しいの」
     沢山の事を教えてくれた友達に、ありがとうと。これからもお友達で……居てくれる? と。
     そんな夢の気持ちに、えぇ勿論ですと、玲は頷いて。
     これからもよろしくね、夢ちゃん――。
     夜光虫輝く中、憧れと親しみをこめて、そう応える。
     両手一杯に広げ見上げる、満天の星。
     そして見下ろせば、ガラス越しに見えるもう一つの星空。
    「海蛍だよね? ……でも、空から落ちてきた流れ星みたいだ……」
    「神秘的な光景……まるで星間旅行でもしているかのようです……」
     淡い光跡に見惚れていた唯人は、ふと何を願ったか生鏡に訊ねて。
     生鏡も、唯人に訊き返すも。
    「俺のは……内緒~」
     そうテヘ笑いし、唯人はこそり礼を言いつつ、記念撮影を。
     ガラス越しに海中を覗く姿勢で。
     星の海へと漕ぎ出す舟からの風景は、空と海の境が分からぬほど綺麗なのに。
     直人も稲葉も……意識するのは、互いの存在。
     何も言えずだんまりな稲葉に、ちょっとした意趣返しだと、知らんぷりを決め込む直人だったが。
     なのに、ズルいだろ……そうぱっと彼を振り返らせたのは。
     重なった掌から伝えられた――五文字の言葉。
     意地っ張りな親友を見れば、そこには、いつも通りの笑顔が。
     そして稲葉は眺める星に、見守っててください……そう、小さく祈る。

     修学旅行3日目の、夜の舟旅。
    「……海ほたるって、本当に、ホタルみたいにきれいに光るんですね」
     想像以上の煌きに驚くユッカに、エルディアスは光集まる海を指して。
    「ほら、ユッカさまあそこ、沢山光ってますわ。宝石みたいで綺麗ですわね~」
     闇に輝く宝石たちに見惚れるエルディアスを見て、ユッカは少しはしゃぎつつも思う。
     ここだけの美しさを一緒に楽しめるのが嬉しい、と。
     そして、手を握って。今度は二人きりでと、約束を。
    「うわぁ、綺麗」
    「本当に海がキラキラ光ってる。これが海ほたるなんだね」
     空や船底に光る星、泳ぐ魚や珊瑚を一緒に眺めながら。
     海ほたるは求愛する時も光るんだって――そう竜生は結月の手を取って。
     光ったりはできないけれど。
    「こうして居れば、僕もゆきに気持ちを伝えられるね」
     ぎゅっと手を握る彼に、視線を重ね微笑み返す結月。
    「うん。ゆきも、こうしたら、伝わるかな?」
     暗いから、頬が熱くて赤いのはばれないよね――と。
     過ぎ行く時はあっという間。
     だからこそ……この夢の様な夜に、心が沸き立つ。
    「幻想的だね」
     海色の瞳が映す、星の世界に瞳輝かせるお姫様。
     そんなお姫様の銀の髪揺らす風に乗せて。囁かれた柔らかなレンヤの声がすぐ傍で耳を擽れば。きすいも、自然と言の葉を零す。
    「きっと、こんなに綺麗な景色は見たことがないと思う」
     ――素敵、と。
     そして頬撫でる彼の指先に導かれて。
     ふわり、光の中感じるのは、全身を包む彼の温もり。
     星の海の航海は少しドキドキで。
     二人、目が合えば……また違う胸の高鳴りが。
     そして共に海の底を覗けば、昼間とは全く違った世界が。
     千秋は、楽し気な桂花の様子を何だか嬉しく思いつつ。
     恥ずかしいから、態度はいつも通り。
     でも。
    「いつかまた来たいですね。その時は、その……」
     ――二人だけで、と。
     続いた声に、一気にナイトクルーズどころではなくなるけれど。
    「……わかった、約束だからな」
     そう、重なる手を握り返す。
     夜の海が好きな姉はやはり、優しい光満ちる海を楽し気に見ている。
     でも、俺から見れば海よりし……、そう言いかけた緋蕗に詩穂は首を傾けるも、自分に合わせてくれた弟に申し訳なく思うが。
    「俺は詩穂と居られればそれで良い」
     そう言った弟に返す。
    「私もひー君と一緒なら何処でも楽しいよ。大好きだよ」
    「ばっ、バカか。俺は別に……」
     緋蕗は相変わらず素直なその言葉に、敵わないなと。
     姉が楽しそうだからいっかと――そう、思う。
     うわー綺麗ですねーまぐろさん! と、無邪気にはしゃぐ仲次郎に。
     まぐろは、ちょっとは落ち着きなさい、なんて言うけれど。
    「ほんと、きれいね」
     同じ様に、思わず星の海の煌きに見惚れる。
     そしてふと舟が揺れた――瞬間。
     あ……と声が漏れたのは、触れた彼の手の体温を感じたから。
     そして顔が真っ赤な彼女に、仲次郎はニッコリ笑む。
    「そんなまぐろさんも大好きですよ」
    「う、うるさいわよ!」
     返ってきた、照れ隠しの言葉にも。
    「わわ……すっごく、きれい」
     仄かに光る青の景色に恋は歓声を漏らして。
     ふと隣の日高と目が合えば、ちょっぴり恥ずかしくてつい俯いちゃうも。
    「ロマンチックで、素敵、だね」
    「二人一緒にここに来れてよかった」
     そっと繋いだ手と寄り添い混ざる温もりを感じながら語り合って。
     すぐ隣にいる恋を見つめ顔を綻ばせつつも、日高は皆へ土産話ができるよう、星の舟旅を楽しむも。
     この幸せなひとときの事だと……惚気話になっちゃいそう。

     幼馴染が選んだのは、星の舟の方で。
    「べ、別に! たまたまこっち気分だったんだ」
     意外だと言えば焦る姿を、不審気にじっと見る史明。
     そんな視線に、朔之助は彼の首をぐきっと、星空の方へ。
     都会じゃ見れない星空を見せてやりたかった――なんて、素直に言えないから。
     そして、喜んでくれてるかな?と隣の顔を盗み見れば。
    「反対にもやったらむしろ悪化するからやめて」
     朔之助の考えを察知し、そう治らぬ首を押える史明であった。
     ぺたり手を伸ばした先には、ガラスの箱の小さな星空が。
     きゃっきゃはしゃぐハナと、光移ろう様をじっと眺める樒深。
     そんな彼をふと見れば。
    「わ、オソツくん! 瞳のなかにも星空が映っているわ!」
     星を閉じ込めた、インカローズの宝石が。
     でも。
    「……俺の瞳より、アンタの色の方が良く映えてると思うんだけど」
     その声に頬が緩むハナに、樒深も知らぬ間に口端を緩ませて。
     最後の修学旅行の好い思い出になりそうだと、また笑む。
     煌く海から、空の南十字星を探して。
     だめ?――そう手を握った智優利に、敢えて反応は示さないけれど。
    「……あのね、私、蘭ちゃんのことが、昔から、ずっと好きだったの」
     蘭丸は思い出されたその想いに、静かに全て耳を傾けて。
     今は知っていて貰うだけでいいと言う彼女に、ゆっくりと紡ぐ。
    「ちゃんと、聞いたよ。覚えとく。なにも、焦って思い出さなくていい」
     その時がきたなら、その時にちゃんと……ちゃんと、答えを出すよ、と。

     沖縄で過ごす夜も今日で最後。【StarGazer】の皆も、各々感情を胸に抱きながら。
     沢山の星を眺めていた――その時。
    「ん、どーしたー……って、何々!?」
    「あ、なんでもない……ほら、夜桜も寒いって!」
    「三人とも、もうちょいこっち寄って、人間カイロになってちょーだい!」
     ふいに、暗い深淵に吸い込まれるような感覚をおぼえた銀河が凰呀の腕を掴んだ刹那。
     夜桜や結衣奈も巻き込んで、4人揉みくちゃに!?
     そして凰呀は白虎柄の長い腰巻きを皆にかけてあげて。
    「わわ、いきなりでちょっとびっくりしたけど、人肌って暖かいね……」
     巻き込まれた人間カイロの温もりに、そう笑む結衣奈。
     何となく気恥ずかし気に引っ付きあって。星でいっぱいの沖縄の夜を、皆で笑い合う。
     そして、いつまでもこうやって楽しく揺蕩っていたいけれど。
    「……あ、ゴメン、やっぱ無理」
    「ってぇ夜桜ちゃんが船酔いって意外だ!」
     船酔いには、勝てません。

     昼間は綺麗な、美ら海ブルー。
     でも夜の海は少し怖いけれど……グラスボートなら、大丈夫。
    「夜は夜でまた綺麗な景色が見れるってとても贅沢ですね♪」
     【そよ風クラブ】の皆に笑む椛に、有斗も頷いて。
     夜の海を泳ぐ人へと手を振り、振り返された手に瞳細めながら、思う。
     宇宙船から見る景色ってこんな感じなのかなーと。
     そしてクラブの皆や遥河と、瑠璃羽は夜の海底を覗いて。
    「わーお! 夜でも魚って泳いでるんだね~。わ、そっちの方にいるの海亀さん!?」
    「確かに海亀のようですね。こんな間近で見られるなんて……ウミホタル……此れが、そうなんですか?」
     瑠璃羽や亜梳名の会話を、くすくす微笑ましく聞いた悠基は。
    「夜光虫、かぁ。夜の海に輝く光。なんだか幻想的かな」
    「え……海ホタルって夜光虫なの?」
     その反応を楽しげに眺めつつ、ウミホタルと夜光虫の違いを教えてあげる。
     そして愛希姫も、海ほたる光る海底へと目を向けて。
    「そういえば……ウミヘビも夜行性でしたっけ……あ、あれ、ウミヘビじゃないです?」
     ヘビが泳ぐ姿、珍しいですね♪ と。
     流星のような沢山の青い光の間を優雅に泳ぐ、ウミヘビを見つける。
     それから瑠璃羽は、流れていく海の星々を見つめながら。
    「あ、ね……これだけ星が見えたら……流れ星も見えるかな?」
     流れ星に何を願う? と、そう皆に問いかけてみて。
     平和や皆の幸せ、楽しくて穏やかな時間――幻想的な海の流星に、それぞれが思いを馳せるのだった。

    ●光の海を揺蕩う
     一緒に選んだ水色のセパレートの水着は、茉莉花にぴったりで。
     優雅に泳ぐ人魚みたい――光はそう、見つめる彼女と手を繋いで。
     一緒に星の海を海中散歩しながら顔を見合わせ、二人だけの景色に笑み合う。
     そして海面に浮かんで、星の世界に身を任せ、お喋りを。
    「本当に海の中が星空みたいだったね」
    「海も空も星でいっぱいだったもんねー」
     こんな景色を一緒に見れて良かった、ありがとう――と。
     その肩に、そっと触れながら。
    「……新城さん、その、似合っているかしら……」
     胸元強調背中丸見えな、Vネックのホルターワンピース。
     賭けで負けたという麗華の水着姿に、似合っているぞと弦真は返した後。
     彼女と逸れぬよう、夜の海へ。
     そして興味深げに海底をライトで照らす弦真と共に、煌く海を人魚の如く泳ぐ麗華は。
     人がいない所で、シュノーケルを少し外して。
    「先日、大怪我をした私を介抱していただいたお礼です」
     不意打ちで試みるのは――頬へのキス。
     上も下も、光の世界。
     でも結理が夢中なのは……伸ばされた手の先の、南の星空。
     その姿は儚げだけど。
     なァ、星だけじゃなくて……俺も見ろよ、と。
     ふいに湧いた嫉妬心に、錠の手がその肩を掴もうとした刹那。
    「……ってうわぁ!?」
     二人一緒にひっくり返って、空と海の波間を揺蕩う。
     そして、捕まえててよ――と。
     吸い込まれそうな空の下、冗談交じりに笑う結理の手を取って。
     錠は真顔で返す。俺から逃げられると想う? と。
    「心桜、手」
     差し出された大きな手が、暗闇と海の怖さを和らげて。
     見失いそうで不安で、小さな手を確りと握る明莉。
    「何か、空の星が足元まで落っこちてきたみたいだな」
    「どっちが空か海かわからなくなりそうじゃ」
     海に潜った後、海の星に囲まれ浮かんで、空の星を見上げて。
     お、流れ星……そう思わず手を離した瞬間。
     願い事をする間に波に流される心桜を、慌てて明莉が引き寄せれば。
     いつもより近い距離に、お互い、どきりと。
     見たいけれど、少し怖い夜の海。
     でも、掛けられた頼もしい声に笑んだ依子は星の海へ。
     照るライトと、楽し気に泳ぐ篠介の姿に導かれて。
     きっと、迷ったりしない――沢山の命の彩り満ちた海に、すっかり夢中に。
     そんな依子に笑みつつ、篠介は珊瑚や魚影の宝探しをして。
     今度は、星空に逢いに。
    「見えるじゃろうか、天の川」
     空と海に境目はないから、泳いで渡れそう。
     でも、波に攫われそうな気がして――篠介は繋いだ指に僅か、力を込める。
     あまり見るなと、帽子を脱いだ姿をじろじろ見る鈴に言った後。
     緊張してない、ビビリじゃないわいと強がる彼女と、夜の海へ潜る徹太。
     そして消灯の合図すれば、予想通りの顔に笑うところだったが。
     刹那、海の星煌く世界に暈け広がった、空から降る星。
     そんな掴めそうな星間で合った、互いの視線。
     樹宮の青い瞳は光っていて綺麗だ――なんて言わないけど、と。
     目逸らした徹太に、解せぬと。後で問い詰めてやろうと思う鈴であった。

     水中カメラはないけれど、記憶に残しておけばいいと。
     そう柄にもない事を言ったシアンに祇弦は頷いて。
     一緒に、真暗な夜の海へダイブ!
     闇に照る海ほたるの幻想的な光景はまるで、宇宙にいるようで。
     間近で泳ぐウミガメや熱帯魚を眺めるシアンの腕を引いた祇弦は、ジェスチャーで凄いということをアピール。
     そして同意し頷くシアンの仕草に、嬉しく思う。
     それから二人、ぷかりと浮かんで。海中の星空と空の星空を、共に満喫する。
     最初はぎゅっと、繋いだ手を強く握るアスルだったけれど。
     ライトに照る魚やウミガメを指差し、合図する草灯へ目を輝かせ頷けば、大きな頷きが返ってきて。淡く照る海ほたるの群れの真ん中へ。
     そんな輝きに眩む草灯は、アスルの手を引き海面へ。
     そして、そび? と呼んだ刹那。
    「ルー、凄いよ」
     星の海に胸一杯、破顔する草灯にアスルも笑み返して。
    「お空、居るみたい。すごい、のー」
     手が届きそうな光溢れる景色に、また見惚れる。
     コツは、力を抜いてウミガメさんの気持ちになること。
    「うん、上手になってきた!」
     チセは朔日に笑んで、えいっと一緒に海の中へ。
     珊瑚やイソギンチャクのお布団で眠る熱帯魚。静かに息づく、海が育んだ命。
     そんな神秘に溢れた景色に感動して。ウミガメさん発見、二人指差し笑い合った後。
     海の散歩は一休み、ぷかり浮かんで、今にも降りそうな星空を一緒に仰ぐ。
     いっぱいの煌きに包まれた空と海の思い出は――二人だけの、宝物。
     朱音と共に海へ潜ったセレナは。
     熱帯魚には逃げられたけれど、ウミガメにタッチ。
     そして仲良く手を繋いで。
    「満天の星空、きれい……」
    「凄く、すごく綺麗な星空です」
     ぷかぷか水面に浮かび、海中とはまた違った眩く星空を眺めつつ。
    「ウミガメすごかったんだよ!」
     二人、とりとめのない会話を。
    「明日は最終日かぁ。楽しいと時がたつのは早いね」
    「良い思い出、残せました?」
     有難う、どういたしまして――そう笑い合いながら。
    「夢中になってはぐれたりすんなよ」
     楽しみな様子で臨む烏衣に、治胡は口端上げて笑った後。
     夜光虫の輝きを縫って、生物を求め海へと潜る。
     海ほたるの青い光と、薔薇の如く美しい珊瑚礁。
     そして大小のウミガメは親子のようで。夜の海も、とても賑やか。
     烏衣は治胡と共に、昼とはまた違う夜の海に見惚れつつ。
     今度は満天の空を眺め、休憩を。
     まるで時の流れまで緩やかになった様に……こうしてのんびり過ごす時間も悪くない、と。
     沢山の沖縄の自然をこれまでも巡ってきて。
     最後の夜は、武蔵野では見られない海ほたる輝く星の海。
    「マジすげーっすよ、海ン中。超神秘的」
     海面に顔を出した蓮司は、近くにいた遥河に声を掛けて。
     すごいよねー! と、遥河も興奮気味に頷いて笑み返せば。
    「夜の海の幻想的な世界を観れるなんて、運が良いな。こう、一人で夜の海を漂っていると、美しすぎて海の世界に引きこまれそうだ……」
     その近くにいたラシェリールも意気投合、一緒に泳いだり写真を撮って。
     良い思い出ができそうだと、朗らかに笑う。
     そして、修学旅行ももうすぐ終わりだけど最後まで楽しんでいこうか! と。
     そう臨むクロノは水の冷たさを感じながら。やべ、涙でそう、と――溢れる光の中をゆったりと泳いで。
     今度は恋人と一緒に楽しみたいかなと思う。
     夜の海ってどんな感じなのかな? と。
     ドキドキする若葉のお目当ては、おっきな生物。
     そして見つけたウミガメさんと。綺麗な夜空の下の煌く海で、今しかできない戯れを楽しんで。
     あまりに昼に見た海が綺麗だったから、沈んでみたい……そう思った小路は。
     海月の如く静かな海を浮遊して。深い場所から、入り混じる海と空の星や、飛ぶように泳ぐ皆を見上げる。
     お伽噺様な世界に、やっぱりすごく、どきどきしながら。

     【Salamander House】の皆と、早速海に潜る慧樹は、まだまだ元気!
     昼の海も面白かったけれど、全く違う表情をみせる夜の海。
     熱帯魚を起こさぬよう、静かな海を泳いで。
    「星空が海に映っているわけじゃないよね?」
    「これが生き物の光だなんて……」
     慧樹が海面を叩く度にキラキラ光っては浮かぶ青の光に目を奪われる、アナスタシアと百舌鳥。
     そして今日が最後の機会だと、百舌鳥がポラリスをなぞり探すのは。
    「あれ、あれが南十字星!」
     そんなはしゃぐ声に、慧樹とアナスタシアも続くも。
    「俺が知ってるのは……ええと、大三角!」
    「あれって春の大三角で良いんだよね」
     詳しいことは、星を語り始めたモズ先生に、お任せ。

    「これぞまさしく、星の海ですねぇ……」
     昼に潜った海と同じとは思えない、静かな光を纏う夜の海。
     嘉月は【あかいくま】の皆に、大丈夫ですかー? と、ときと月夜に声掛けして。
    「うん、大丈夫だよ~……すごーく綺麗だねぇ」
    「はいっ、最初はちょっと怖かったですが、もう大丈夫ですー」
     そして忍は、心配無用。
    「実は、訓練は受けておりましてね。ただ少々邪道と申しますか……」
     インストラクターもびっくり、魚の如き静かで見事な泳ぎを披露!
    「にゅ、海の中にピカピカするお星様がいるのですー! それに、こんな暗い中で泳いでいる亀さんとかは凄いのですー」
     夜の海って綺麗なのですねっと、月夜は笑顔を宿して。
     それからひとしきり泳いだ後。
    「この闇と星に包まれた空間に浮かんでいる感覚……いいですねぇ……」
    「力が湧いてくる感じがする……」
     海の星にぷかぷか浮かび、空の星を眺めながら。
     機会があったらまた来たいですねぇと呟いた嘉月の声に、皆も頷く。

     海と空の煌きがあるから、明かりはいらないと。
     星空を見上げた夏南美はふいに、きゃっ!? と声を上げて。
     大丈夫か? と匠に腕を掴まれ、間一髪。澪のらぶセンサーも急反応!?
     それから【心癒寮】女子達の水着をチェック!
     布地の少ない巫女らしい水着の澪に、美人さんなレイラの水着、夏南美は元気で可愛いイメージ。
     そしていよいよ皆で、夜の海へ!
     ふむ、夜の海も綺麗だな、と。聞こえないけれど、そんなTVやPCでしか見たことがなかった夜の海の光景を指さす広樹。
     はわー……とレイラが海中から空を見上げれば、満天の星がより幻想的に揺らめいて。
     夜の海が少し怖かった澪も、キラキラと星に包まれた世界に、思わずうっとり。
     大好きな子と見れたらもっと幸せやろうなあ……と、首元のチョーカーへとつい手を伸ばしながら。
     そして匠が海中で見かけたのは、ウミガメやサンゴ礁。
     夏南美は、海ほたる輝く海面に浮上し、流れ星を見つけながら。
    「広樹さんも来年は彼女、連れてきてあげなよ!」
    「かっ、彼女て」
     いたずら混じりに匠に浮輪を揺らされ、慌てて海ポチャした広樹にそう言いつつも、お星様にお願いを。
     来年はみんなにそれぞれ好きな人が出来ていますように♪ と。

     夜の海を潜る――まさに夜間水泳部と友好の皆にぴったりな、最後の夜の過ごし方。
     宗汰が波立てるたび舞い上がる光が、夜の海を青白い輝きで染めて。
     近くにいる如一へと送れば、仄かな色を纏うさざ波が彼に迫る。
     そして海の底を掬った籐花の掌から、光が零れ落ちて。水中に散る星たちが、ゆらり小さな波に揺れた。
    「空は星空、海も青く光ってて何だか不思議だね」
     生き物だと思うとちょっと怖いけれど。実際に見ることなんてそうそう無いだろうしと、同じく手で掬い上げてみる紫王。
     夜のプールに潜るのは慣れていても、海ほたる光る夜の海を潜るのはやはり緊張する。
     でも。
    「ふわああ、すごいねえ! 青い! と、と、とりあえずは潜ってみたいー!!」
    「海ホタルすっご! めっちゃ綺麗! なんでこんなに光ってるんだ!?」
    「ねーねー! すんごいよんっ、海がお空みたい! 空に潜ってるみたいだーっ」
     琉羽や衿夜はそう声を上げて。凄く静かで暗くて、まるでしたんしか居ないみたいだと、シタはそう思う。
    「……どこまでが海で、どこからがお空なのかわかんないや」
     夜を潜りながらも、すっと海でずっと空な、境界のない景色を見つめて。
     まるで流星群みたいだとか、璃音も、そんな柄にもない事を思ってみたりしつつも。海から顔を出し、ふと空を仰ぐ。
     空に海にと広がる闇と光の空間は、酷く暗い筈なのに……何故か落ち着く、と。
     少し仰向けに沈んだ籐花も、水中から夜光虫と星空を同時に見上げてみれば。
     ぐるり反転し水面を見上げる如一は、いつもとは違う遠く離れた南の海でも改めて強く思う。
     水の底から見る世界は、なんて美しいんだろうか――と。
     紫王はいつも賑やかなクラブの皆が珍しく静かに【星を潜る】その姿を、思い出にと眺めて行って。
     琉羽は思わず手を伸ばしたくなるような海の中で、近くにいる皆にハンドサイン。
    『こっち、クマノミいる!』――と。
     そんな中、クロ助を浜辺でお留守番させた実は、夜光虫光る海に背を預け浮かんで。
    「耳元で波の音が聞こえて、気持ちいい……」
     ふう、とリラックスするも。
    「何すんだー」
     こつんと衿夜にぶつかって、悪い、と手を合わせてから。
     皆で手を繋いで、綺麗な景色を綺麗なまま素直に楽しめるこんな時間を大事にしたいと――空と海、現実と非現実の狭間に煌く、星を潜って。
     共に沖縄の夜の余韻に浸り、楽しい思い出に揺蕩うのだった。

    作者:志稲愛海 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月20日
    難度:簡単
    参加:97人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 17/キャラが大事にされていた 3
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