救済者・二品恵美

    作者:相原あきと

     深夜、都内某所の一室で行われるのはカルト集団による集会だった。
     もちろん彼らは自分達をカルト集団とは呼ばない。
     その集団の名は――『二品会』と言った。

    「天は二物を与えない……それは嘘です。天は選ばれし者達にのみ二物も三物も与えるのです」
     壇上で信者達に語るのはゆったりとしたドレスに身を包んだ若い女性。
    「救済者様……」
     椅子に座った15人程の集団の誰もが、救済者と呼ばれた壇上の女性の声を崇拝するように拝聴している。
    「神の代理者であり、人々の救済を仰せつかった私に全てを委ねなさい。あなた達は選ばれたのですから……」
    「恵美様……」
     側近なのか黒いスーツの男が女性に耳打ちし、「連れて来なさい」と女性が指示を出す。
     すると後ろ手に縛られた男が部屋へと連れて来られた。
    「よくも、よくも俺の嫁を……返せ! この悪魔が!」
     縛られたまま床に転がされた男が女性へ暴言を吐く。
    「ふふふ、あなたは選ばれなかった欠陥品……ただ、それだけ」
    「返せ!」
    「さぁ、選ばれし者よ、この者に神に与えられた力を示すのです」
     すると1人の信者が転がる男の前へ来ると、その手を男に向け――
    「う……な、に、を……」
     ピキピキと男が石化していき、やがて完全な石像と化す。
    『おぉぉ……』
     信者達から感嘆とした溜息が洩れる。
    「さぁ、全てを私に捧げなさい。さすれば神に代わって私が二物を与えましょう」
    『救済者様! 救済者様! 救済者様!』

    「みんな、前に取り逃がしたソロモンの悪魔配下の強化一般人、二品・恵美(にしな・めぐみ)を覚えてる?」
     教室に集まった灼滅者達を見回しながら鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が皆に聞く。
     二品恵美、かつて一般人に儀式短剣を渡して近しい人を殺させるべく怪しげなセミナーを開いていたソロモンの悪魔の幹部、強化一般人であり当時は灼滅者の手を逃れて逃亡した経緯がある。
    「その二品恵美の足取りが解ったの。彼女はアモンの配下だったらしく、主のソロモンの悪魔がいなくなったと知り、好き勝手に動き始めていたみたい」
     二品恵美は都内のビルの一室で『二品会』と呼ばれるカルト集団を作り上げ、一般人をマインドコントロールで洗脳し、自らを救世者と呼ばせているとのことだ。
    「信者から吸い上げたお金と、なにより崇拝されるのが目的みたい。それに……」
     珠希が沈んだ声で続きを言うには、二品恵美は自分達を批判する者を見せしめで信者達に殺させているらしい。
    「みんなに行ってもらうタイミングも、彼女を批判した男の人を信者の1人が殺す瞬間よ。それ以外だとバベルの鎖に引っかかってどうなるかわからないわ……」
     珠希はそこまで言うと、敵の戦闘方法について説明を始める。
    「リーダーである二品恵美は1度灼滅者の強さを目のあたりにしているわ。油断どころか襲撃に来たのが灼滅者と解った時点で逃走を図るの……部屋から逃さない方法を考える必要があるわ」
     『二品会』の集会が行われている部屋はフロアの真ん中に位置する大き目の部屋らしい。
     窓は無く、部屋に入るには部屋の隅にある出入り口(つまり合計4か所)を使うしかない。
    「二品恵美は護符揃えと魔法使いに似たサイキックを使って、戦闘になれば回復を優先して逃亡するタイミングを待つみたい。ただ、どうしても逃げれないと悟ったらすぐに狙撃手のように構えを変え、配下と共に弱っている人を集中攻撃してくるわ」
     もちろん二品恵美以外にも敵はいる、彼女の護衛の黒スーツが3人、会場にはいるらしくそれぞれWOKシールドに似たサイキックを使うらしい。
    「それと……部屋にいる信者のうち5人ぐらいが、強くは無いけどサイキックを使うわ……威力は微々たるものだけどバッドステータスには注意して」
     信者5人は契約の指輪に似たサイッキックを使うという。
     ちなみに残りの信者10人は一般人だ。
    「信者は皆、二品恵美の為なら命を投げ出しても構わないと思うぐらい……マインドコントロールされているの。被害を出さないに越したことは無いけど、成功条件には含まないわ」
     悔しそうに珠希が声を絞り出す。
     1度逃がしている相手だ、今回失敗すれば次はもう無いだろう。 
    「みんなお願い、これ以上彼女の被害者を増やさないで。必ず倒してくれることを、信じてるわ」


    参加者
    アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)
    叢雲・宗嗣(贖罪の殺人鬼・d01779)
    月雲・悠一(紅焔・d02499)
    朝間・春翔(プルガトリオ・d02994)
    杜羽子・殊(花色映す似せの色・d03083)
    月雲・螢(暗黒物質おみまいするわよ・d06312)
    アレクサンダー・ガーシュウィン(カツヲライダータタキ・d07392)
    椎名・亮(イノセントフレイム・d08779)

    ■リプレイ


     都内某所、ビル背面側にある階段を4人の灼滅者達が滑るように登っていく。
    「二品恵美……だったかしら? さしずめ人間の怖さを覚えた野生動物。慎重に、時に大胆に動かないとまた逃げられてしまいそうね」
     アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)が走りながら呟く。
     その言葉に苦い顔をするのはアレクサンダー・ガーシュウィン(カツヲライダータタキ・d07392)と椎名・亮(イノセントフレイム・d08779)だ。2人ともかつて二品に逃げられた過去がある。その空気を察してアリスが言う。
    「ごめんなさい……でも、彼女の戦い方や癖を解る範囲で教えて欲しいの」
     倒したい気持ちは同じだから――と。
     アリスの言葉に当時の話を解る範囲でする2人だが、言葉の端々から悔しさと後悔の念が感じられた。
    「そろそろ奴らがいる階だ……」
     叢雲・宗嗣(贖罪の殺人鬼・d01779)の言葉は普段より苛立ちが混じる。二品がアモンの配下だったと知った時から、この高ぶりはどうしても押さえきれなかった。
     4人がそれぞれ時計を確認する。
     再会の刻まで……あと、少し。

     同ビル、正面エレベーター内。
    「ここで確実に灼滅して、禍根を断とう」
     そう呟くのは月雲・悠一(紅焔・d02499)だ。その言葉に一層身を堅くした少女に気がつき、ポンと軽く頭を叩く。
    「大丈夫、俺達ならやれるさ」
     頭を叩かれた少女、杜羽子・殊(花色映す似せの色・d03083)が我に返ったように悠一を、周りをみる。
    「緊張しているのは殊ちゃんだけじゃないわ? 私も、よ。お手伝いに来て失敗は話にならないものね」
     悠一の従姉である月雲・螢(暗黒物質おみまいするわよ・d06312)が微笑む。
    「ありがとうって……今は言わないよ」
     今度は絶対に逃がさない、感謝は灼滅してからで良い。
    「皆同じ気持ちだ……俺も、別班の2人も、あの時共に戦った4人も……」
     3人の視線がエレベーターの隅で腕を組んでいた朝間・春翔(プルガトリオ・d02994)に注がれる。
     彼も殊や亮、アレクサンダーと同じくかつて二品を逃がしたメンバーだった。その瞳に宿す焔は、いざという時の覚悟を物語っている。
     やがてエレベーターが到着し4人は気配を殺して配置につく。
     二品がいる部屋の正面右扉に殊達4人、背面左扉にアリス達4人が息を潜める。
     そして時計の秒針が……3、2、1――。
     画面が分割され灼滅者を写す。

    「Slayer Card,Awaken!」
    「忌わしき血よ、枯れ果てなさい」
    「イグニッション」
    「ボクが……ボクであるために」


    「何、あなた達?」
     武器を構えて飛びこんで来た集団に対し、即座に視線を巡らせ逆側の出口を確認する二品。
     だが、そちらからも武装した灼滅者達が突入して来るのを見ると、二品は側近3人に護られる位置に移動しつつ、部屋に突入してきた2班から均等に距離を取る。
    「螢」
    「確保したわ」
     従弟の言葉に螢が短く返事をする。二品が僅かに位置代えした隙に、螢は縛られて転がされた男を確保していたのだ。
     そしてそんな中、一歩前に出て二品に武器を突きつけたのは亮だ。
    「久しぶりだな。あれから俺も色々考えたんだ。いつまでも白紙の解答用紙ってわけにはいかないし、答え合わせをしてくれるかい、先生?」
     亮、いやそれ以外にも忘れられない顔が何人かいた。
    「私は先生ではなく救世主よ? でも……あなた達のような出来損ないの人間を、私は救えない」
     芝居がかった二品の言葉にかぶせて、少女の声が鋭く響く。
    「それなら……出来損ないなりの戦い方、見せてあげる」
     即座に戦闘へと移行する灼滅者達に、それまでのやりとりから信者達が一斉に8人を敵だと認識、二品を護る為に妨害行動にでる。
    「散々人の妹分を虚仮にしやがった女が、神様気取りでやりたい放題かよ。反吐が出るぜ」
    「知らない顔ね、私は神の使いの救世主よ? さぁ選ばれし者達よ、彼らを――」
     ――ドルルルーーンッ!
     跨がるライドキャリバーのエグゾースト音で、一時的に二品の台詞に割って入ったのはアレクサンダーだ。
    「己のしでかした事は己の手で始末をつける。これ以上の被害を出させるわけにはいかない。ヒーローを名乗る以上な」
    「前に会ったときに教えなかったかしら? ヒーローは自ら名乗るものじゃないわ」
     二品がアレクサンダーに返すタイミングで、螢のパニックテレパスが発動する。
    「逃げなさい!」
     一般人信者が一斉にパニックへ……しかし――。
    「落ちつきなさい!」
     一言。
     二品への絶大な信頼が、パニックに陥った信者達の喧噪を納める。
     螢は僅かに目を細めるが、すぐに頭を切り替えて縛られた男の縄を切る作業に移る。
     そして……一般信者達が灼滅者へと襲いかかり――。
    「俺の邪魔を……するな!」

    「ぎゃあああああ!」

     太股を貫かれた一般信者の悲鳴と共に、ボタボタと大量の血が流れる。
    「一凶、披露仕る……。疾く逝け、六銭は後でくれてやる……」
     宗嗣だった。
     それがあの時アモンを殺せなかった自分にできる唯一の贖罪であり、覚悟。
     それを見た春翔が王者の風を発動させる、その場で無気力状態となり座り込む一般人達。本当は避難させたかったが、これが今は精一杯だろう。
     もちろん、灼滅者達は同時に二品達へと攻撃を開始していた。
     悠一と春翔の蛇腹剣が左右から二品の足を狙い、さらに殊の指輪から石化の呪いが飛ぶ。
     一方、強化一般人達もアリスの白き十字架が光を放ち、宗嗣とアレクサンダーのウロボロスブレイドが蛇のように宙を舞って襲いかかる。
     そして、唯一側近へと攻撃を仕掛けた亮は何か前に戦った時との違和感を覚えていた……。
     だが、灼滅者の攻撃はあと少し足りなかった。強化一般人は誰も落ちず一斉に石化の光を解き放つ。それだけじゃない、二品が手を振れば前線に出ていた者達を氷が襲い、さらに側近達が不可視の盾を展開、そのまま灼滅者を殴りつけ怒りによって冷静な判断力を失わせる。
     螢が縛られた男の縄を切り、介抱して逃がすまでの間の回復は自己責任だった。故に――。
    「出口を……」
     二品が側近3人へ指示を出す。
     側近達が向かった先、包囲していた7人のうち石化を重複して受けていたアリス。
     アリスは冷静に詠唱へと入る、いや、入ろうとした。
    「くっ」
     石化の効果で動きが止まる。
     だが、誤算は灼滅者達だけではなかった。
    「チッ」
     舌打ちと共に二品が倒れる。見れば足首が徐々に石化し始めていた。側近達がアリスやそのフォローに動いた灼滅者達を牽制しつつ二品の元へと慌てて戻る。
    「そう……どうやら、出来損ないなりに考えて来ているようね……」
     二品が立ち上がりドレスの裾を払う。
    「出来損ないどもが! 調子に乗るんじゃないよ!」


     戦いは続く。
     強化一般人は倒しきったが、灼滅者側は苦戦を強いられていた。
     二品は逃げられないと悟ると灼滅者に致命的な一撃を与えようと狙って攻撃を仕掛けてきた。それだけではない、覚悟していたとはいえ回復役の螢が縛られている男を救出していた分、バッドステータス回復が間にあっていないのだ。
     白い魔法の矢が側近の1人の胸へジャストで命中し、矢を放ったアリスが仲間に指示を飛ばす。
    「攻撃は集中で、矢の刺さった相手をお願い」
    「あら、私の相手はしてくれないの?」
     二品が指揮者のように指をふると、床に五芒星が現れ悪意の魔力が灼滅者達を襲う。
    「う……あ……」
     防御より攻撃を優先させて戦い続けていたアリスと宗嗣が膝を付くも、2人は魂の力で立ち上がった。
    「あきらめが悪いわね」
    「貴様の命を、貰うまではな……!」
     二品の言葉に宗嗣が決意を返し、そのままバベルの鎖を重ね合わせて体力を回復させる。
    「ここまでか……いや、十分だ」
     自身を庇って動きを止めたライドキャリバーから降り、アレキサンダーが床に仁王立ちになる。
     そんな前衛の仲間達を癒しの霧が包む、螢の夜霧隠れだった。
     ギリギリの戦いが続いており螢の的確な回復がなければ、前線は瞬く間に崩壊していただろう。故に……。
    「邪魔ね」
     ゾクリと螢が二品を見れば、獲物を見る目で見つめられていた。
     その結果……――。
    「大丈夫か」
     二品の放つ魔法の矢を背に受けたアレクサンダーが、庇った螢の無事を確かめる。
     二品に目を付けられた螢が狙われ続け、すでに1度倒れ、今は魂の力だけで立ち続けていた。
    「だけど……」
     亮が螢をちらりと見つつ側近へと向かう。そう、二品が螢を狙っている間、逆に言えば二品のフォローが無い今こそ、側近達を倒すチャンスといえた。
     螺旋を描くように亮が槍を突き出す。側近が不可視の盾で軌道をそらそうと槍を受ける。だが、それこそ灼滅者達の狙い通りだった。
     亮の背後から春翔が飛び出し、亮の槍を押さえて身動きのとれない側近の首元へ必殺の蛇腹剣が打ち込まれる。
     二品がその様子を見て不愉快そうに眉間に皺を寄せる。
     春翔は二品に背を向け、鞭状に伸びた剣を引き戻しつつ。
    「金と力に溺れ、更に次を望むお前も、お前を灼滅しなければ気が済まない俺も、懲りないのはどちらなのだろうな」
     ガシャンと刃が一本の剣へと戻り、春翔が二品を睨む。
    「ふん、それが人間でしょう? 力を得た私も、ダークネスになりきれなかったあなた達も……同じよ」
     数人が弓から放たれた矢のように二品へと飛びかかる。

     戦いは側近を1人倒し、灼滅者側有利に進むかのように見えた。
    「殊も螢も、二人が見てるんだ……無様な姿は見せられねぇな」
     殊を庇いつつ、後ろの殊や螢に聞こえないよう呟いた悠一も、自分たちが有利になりつつあるのを実感し余裕が生まれ始めていた。
    「螢!?」
     だが、後ろから響いた殊の叫びに、その余裕が吹き飛ぶ。
     そこには二品の矢に貫かれ、ゆっくり倒れる従姉の姿があった。
    「私の役目はここまでね……あとは、因縁のある殊ちゃん達に……まかせる……わ……」
     殊が思わず手を伸ばし、けれどその手をすり抜け螢が倒れる。
     伸ばしたままの手をぐっと拳に。
     回復役のいなくなった灼滅者達、戦況は一気に二品達有利へと傾く。


    「いいかげん寝ていなさい、自称ヒーローくん」
     二品の放った魔法の矢を受け、アレクサンダーはぐらりと倒れそうになる……。
    「いや、まだだ」
     ズンッと踏ん張り倒れない。それは魂に支えられた力。そのまま脇をすり抜けようとしていた側近に、カウンター気味にチェーンソー剣をたたき込む。
     隙だらけだった胴をずたずたに切り裂かれ2人目の側近が倒した。
     ふと、アレクサンダーも違和感を感じていた。
     二品と側近へ仲間達が攻撃を続ける中、亮がアレクサンダーの側へとやって来る。
    「アレクサンダーもか?」
    「……そのようだ」
     何かを確認したアレクサンダーと亮は、にやりと笑って二品に向き直る。
    「最初は違和感だったけど……これって違うよな?」
     それはかつて戦った時に比べ、二品達を弱く感じる自分達への違和感だった。
    「ああ。強くなったんだ。私達がな」
     2人の言葉は殊や春翔も思っていたことだ。
     二品がカルト教団を組織し好き勝手動いている間、自分たちは幾多のダークネスと戦い、それだけ経験を積んでいたのだ。差が縮まって当然だ。
    「私より弱いくせに! 出来損ないのくせに!」
    「ずいぶん焦ってるわね、おばさん。逃げられないって理解したかしら?」
     キッと二品がアリスを睨む。
    「……ふん、誰が逃げられないですって?」
     二品の物言いに嫌な悪寒がして身構えるアリスだったが、瞬時に意識が混濁してぐらりと視界が歪み、そのまま倒れ動かなくなる。
    「さぁ、指揮官役もいなくなったわね」
     ふふん、と笑みを浮かべる二品のすぐ側で、重たい何かがぶつかる音が響く。振り向くより早く、二品の視界を側近が吹っ飛び壁にぶつかる。
     二品がアリスに気を向けた隙に、死角から悠一が襲いかかったのだが側近に庇われたのだ。
     パラパラと壁の欠片を落としながら側近が壁から這い出てくる。
    「まだ立つのかよ」
    「いや、これで終わりだ」
     春翔が一直線にしたウロボロスブレイドを構えたまま、側近へと低姿勢で飛び込み下段の死角から突貫、壁に串刺しにする。
     その一撃で最後の側近も動かなくなる。
    「仲間を傷つけられ、敵に逃げられた俺は確かに出来損ないだ」
     春翔が壁から剣を抜きながら二品に向かって言う。
    「それに俺達1人1人は、お前より弱いだろう……だがな、欠陥品も補い合えばいい。確かにお前の言うように俺達は人間だ。だからこそ、協力するんだ」
    「協力なんて上っ面だけの偽善じゃない。結局弱い者は裏切られ、蹴落とされ、負け組にされる……私はね、そんな負け組の子達を救ってあげてたのよ!? それの何がいけないの!」
    「別に……」
    「なっ!?」
     応えたのは宗嗣だった。
    「どっちでもいい……貴様はアモンの遺物……それだけだ」
     二品の間合いへ飛び込むと同時、左手の蛇腹剣が時間差で二品に迫る。その連なる刃を二品は右手で掴んで防ぐが、その時には腹にズブリと痛みが走る。蛇腹剣を囮に死角から宗嗣がナイフを突き刺したのだ。
    「わ、私は……こんなところで!」
     二品の手に魔法の矢が出現し、超至近距離で宗嗣の背中へ突き刺さる。
    「例え倒れても……俺は貴様らを……」
     二品の首を片手で掴む、だが意識を失った宗嗣にできるのはそこまでだった。そして二品が邪魔な宗嗣を振り払おうとし――気が付いた。
     真後ろへと回っていた亮の輝く拳の光に。
     回避体勢も取れず数百と打ち込まれる拳で二品の体がふっ飛ばされる。
    「ぐはっ……」
     口から血を垂らしながらも即座に起きあがる二品。
    「哀れな欠陥品ごときに!」
    「哀れかどうかは他人が決めることじゃない。誰かを恨んだって泣いたって何も変えられないし、変わらない」
     亮がまっすぐ二品を見つめて告げる。
    「俺は誰も恨まない。誰かを恨むくらいなら自分を変えていく。全てを受け入れ道を変えていけばいい」
    「ふん……そう思ってるなら思っているが良いわ。世界はそんなに甘いものじゃない……」
     二品が哀れな者を見るような目で亮を見る。
    「うん。世界は甘く無いよね……そこはボクも同意するよ」
     言葉を紡いだ殊へと二品が視線を向ける。
    「でも、欠陥品は哀れじゃないよ。完成品なんかなりたくない、欠陥品は欠陥品らしく、それでボクは良いと思う」
     菊の花が彫られたナイフを構え、二品へと走る。
     二品は動くことはできない、すでに立っているのがやっとの状態だ。
     目前に迫ったナイフが赤いオーラをまとって二品を袈裟懸けに切り裂いた。
    「あり……えない……誰だって……を……求……」
     赤い血だまりの中、息を引き取った二品恵美を見下ろし少女が呟く。
    「それでもボクとして生きていれば、いつかその意味を見つけられると思うから」
     そうして短くも長い因縁の戦いが、終わった。

    作者:相原あきと 重傷:アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814) 叢雲・宗嗣(黒い狼・d01779) 月雲・螢(線香花火の女王・d06312) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 16/感動した 5/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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