修学旅行~トロピカルビーチで海水浴を

    作者:天木一

     6月。梅雨が明ければ夏の日差しが照りつけ、新緑に覆われる季節。
     そして武蔵坂学園の修学旅行の季節だ。
     今年の修学旅行の日程は6月18日から6月21日までの4日間。
     目的地は南国沖縄。小学6年生・中学2年生・高校2年生が参加する学園の一大イベントだ。
     海に自然に郷土料理、楽しい事がたくさん待っている。
     それはきっと学生生活の大切な思い出に残る旅になるだろう。
     
     貴堂・イルマ(小学生殺人鬼・dn0093)が教室の机で旅のしおりと睨めっこをしている。そしておもむろにペンで何やら書き込むと、顔を上げた。
    「みなさんこんにちは。もうすぐ修学旅行ですね」
     薄っすらと白い肌を上気させ、イルマは今から楽しみで仕方ないといった様子だった。
    「自由行動はどうするか決めただろうか?」
     灼滅者達はまだだと首を振る。
    「わたしは3日目の自由行動で宜野湾にある、ぎのわんトロピカルビーチに海水浴に行くつもりだ」
     美しいトロピカルビーチでは泳いだり、砂浜でビーチバレーをしたりと、自由に海辺で遊ぶ事ができる。
    「お昼にはバーベキューをする予定だ。沖縄では海水浴とはバーベキューをしたりして海辺でパーティを開くことらしい。道具も食材も全て用意してもらえるので、わたしたちは焼いて食べるだけだ」
     牛、豚、鶏、ソーセージ、野菜、とうもろこし等を串に刺して焼く、締めには海らしく、鉄板で焼きそばを焼く事ができる。
    「暑くなってくれば売店もある。ジュースにかき氷やアイスクリーム、他にも簡単な軽食も売っているようだ」
     テントの張ったベンチも借りられるので、食後にのんびるするのも悪くない。
    「興味があるのなら、みなさんも一緒にどうだろうか」
     話を熱心に聞いていた灼滅者達をイルマが誘う。
    「わたしはバーベキューは始めてなのだが、海水浴もバーベキューも人が多いほうが楽しいと思う」
     そう言ってイルマははにかんだ。
    「参加してくれる方は共に海水浴を楽しもう」
     その時窓から風が吹き、イルマのしおりが床に落ちる。灼滅者が拾おうとした時、持ち物の欄に手書きで書き込まれている字が目に入った。
     そこには持ち物に、水着、ビーチボール、水鉄砲。そして小さく、ぬいぐるみと書かれてあった。
     イルマは素早くしおりを拾い上げ、何事も無かったように話を続ける。
    「皆も忘れ物がないように気をつけるといい、枕が替われば眠れない人もいるだろうし、ぬいぐるみを抱きしめないと眠れないような人もいるだろう」
     顔を隠すようにイルマは後ろを向くと、誤魔化すように早口で喋る。
    「早速足りない荷物を買いに行くとしよう。準備は早くしておくに越したことはないからな。では失礼する」
     そう言って去るイルマの顔は、赤く染まっていた。


    ■リプレイ

    ●海
     青い空が遠く彼方まで続く。地平線から青がグラデーションを始め、エメラルドの輝きが地を満たす。
     白い砂浜には太陽が照りつけ、宝石のように輝いていた。
     ここは沖縄、トロピカルビーチ。楽しい修学旅行の一日が始まる。
    「……カワイイ」
     オレンジの水着を着た今日子の姿に立夏は思わず呟く。
    「メッチャ似合ってるー、普段の一億二千倍くらい感動ッス」
    「あんまり見られると流石に恥ずかしいぞ?」
     立夏の顔を赤くしての賞賛に、今日子もまた同じく赤くして顔を逸らした。
    「じゃーん! 初めての沖縄だから気合い入れて来ちゃった♪ どうかしら?」
    「きゃ~っヒカヒカ似合う~! 超カワウィ~♪」
     ビキニにホットパンツ姿のひかるを三朗がべた褒めする。
    「オレもアロハ新調しちゃった! どぉどぉ?」
    「さぶさぶったらこのビーチで一等賞レベルの海の男っぷりよ!」
     アロハ姿でウクレレ鳴らす姿にひかるもまたべた褒めである。
     2人はまずはかき氷と浪打ち際を戯れるように走る。
    「茉莉花ちゃんおはよう」
    「光くん、おはよー。こちらが友達で、南の家に仕えてる小夜子ね」
     光と茉莉花が挨拶を交わし、小夜子の事を紹介する。
    「……は、はじめまして。あああ、秋月です。」
    「秋月さん、こんにちは。水杜・光です、今日はよろしく」
    「それでー、光くんとマリーは恋人でって、小夜子?」
     小夜子は光の事を観察し、マリーが選んだ人ならしょうが無いと気持ちが沈む。
    「浮き輪を借りてきて、3人で泳ぎに行こう?」
    「ほらっ、海行こっ、海ー!」
     光の提案に、茉莉花は小夜子を引っ張る。
    「マ、マリー!? 今ちょっとそんな気分では……痛い痛い腕もげる!!」
     3人は海へと駆け出す。
    「ねぇ、しずくちゃん。今日は一日、楽しく遊ぼうね!」
    「うん、一緒に、楽しもう、あさひ」
     あさひと深月紅が海に向かう。
    「夏だ! 海だ! 沖縄だ!」
     梢が海に足をつける。
    「みんな可愛くて眩しくて眼福だぜ……そうそう、土産代わりの写真もいっぱい撮らないとな!」
     飛鳥がデジカメを構え激写する。梢は投げキッスのサービスカットを提供した。
    「撮ってくれてもいいけど……お高いわよ?」
     海梨は黒い笑みを浮かべる。
    「ちょ、ちょっと、飛鳥くんってば、写真撮りすぎだよう!?」
     結衣は恥ずかしそうに腕で水着を隠す。
    「斬火、日焼け止めクリームを塗るわよ」
    「日焼け止めクリームですか? 別にわたしは構わないのですけど……」
     雲雀が斬火の体にクリームを塗る。悪戯心にくすぐってみると、びくんと体が反応する。
    「ではお返しにわたしからもしっかり塗ってあげますね。しっかりと……隅々まで」
     手をわきわきと動かす斬火のクリーム塗りに雲雀が悶えるのだった。

    「ちょっと荷物とパラソルはどうするんですかー!」
     アレクセイの叫びも虚しく皆は海に向かい背中は遠くにあった。
    「それじゃあ、いくよ!」
    「あい!」
     るりがビーチボールを打つと、瑠琉がボールを打ち返した。
    「ドッジボールみたいですね……」
    「なぎさちゃん、上手なのですー!」
     ボールをレシーブしてなぎさは楽しそうに笑うと、月夜もトスで繋げる。
    「何処までラリー続けられるかやってみるか?」
     健も続けてボールを打ち返す。
    「にぅ?」
     レシーブしようとした瑠琉の顔に水が掛かる。
    「ふふ、隙だらけでしたよ?」
     咲夜の持つ水鉄砲からの水だった。ボールは弾かれ宙に舞う。
     そこにアレクセイがスパイクを決め、ボールは咲夜を直撃した。
    「荷物押し付けられた恨みですよ、ええ」
     恐い笑みに皆が視線を逸らした。
    「前は塗れるけど、背中ってなかなか難しいな」
     鈴城が背にクリームを塗ろうと四苦八苦する。
    「くす、塗ってあげる♪」
     瑠璃羽が背に塗ってあげる。その時悪戯心が湧き☆マークに塗り残しを作るのだった。
    「イルマちゃん一緒に泳ご!」
    「あのあのイルマちゃん、ご一緒しませんかっ」
     ピンクのビキニの結衣奈と、チェック柄のワンピースのふわりがイルマを誘う。
    「一緒に遊びませんか?」
     白いリボンの付いたビキニの姫乃もやってきた。
    「そうだな、皆で一緒に遊ぼう」
     水色のタンキニを着たポニーテールのイルマが頷く。
    「後で写真も撮ろうね」
     結衣奈が楽しそう言った。
    (「……そう言えばイルマちゃん水鉄砲持ってきてました」)
     先手必勝とふわりが水をすくって飛ばす。
    「やったなっ」
    「にゃ!? や、やりましたね~」
     イルマと姫乃が水に濡れる。イルマは反撃とばかりに水鉄砲を撃ち、姫乃も水を掛ける。
    「こっちだよ!」
     結衣奈も水鉄砲を撃ち、4人は楽しそうに水を掛け合う。
    「ゆっきー、行こうっ!」
    「わ、わ、波すごいです」
     夏穂が雪花の手を引いて海に向かう。海が初めての雪花は波に足を取られそうになり手を強く繋いだ。
    「ビッキーオイル塗ってくんない? アタシも塗ってあげるからさ!」
    「わ、うんっ! 塗らせて塗らせてー♪」
     斬の提案に響とお互いに日焼け止めを塗り合う。
    「くらえ! いま、ひっさつの! 全力アターック!」
    「はわわわわっ!?」
     稜がアタックを決め、雪花はレシーブできずに転ぶ。
    「フェニックスアターック!!」
     夏穂がお返しにアタックするが、斬にレシーブで返される。
    「全力アタック? フェニックスアタック? 何それカッコいい。僕もやる」
     七緒も真似てカッコいい技を作り出す。
    「えっとえっと……イリオモテヤマネコアタック!」
     それはトスだった。がくりと七緒は膝を突く。
    「イナズマスパイク!」
     将平が見事にアタックを決める。
    「さ、飲み物お待ちっと。こまめな水分補給は大事だから、な」
    「こっちは食べ物買ってきたよ」
     疲れた皆に未来が何種類ものジュース、夏槻も焼きそばやお好みといった軽食を買っていた。
     皆が感謝の言葉と共に、手を付ける。
    「妙に美味しく感じるよね」
     夏槻が焼きそばを食べる。
    「……何か忘れていると思ったら……自分の分、か」
     未来は自分の分が無い事に気付き苦笑した。

    「海だ―! 沖縄だー! 暑い!!」
     舞が叫ぶ。
    「貝とかあったらええの~。とったどーとかしたいんよ~」
     ファスはシュノーケルを装備して、舞と2人で海に潜る。
    「これがオキナワの海……東京湾とは随分と違うものですね」
    「こんな空もあるんだ……来れて良かった」
     フランキスカと薫は海に目を奪われる。
    「飲物は用意してあるので、喉が乾いたら言ってくれ。水分補給は大事だぞ」
     制服姿の久遠は、パラソルの下で皆の様子を眺め、海風が頬を撫でるのを感じていた。
    「やっぱさあ、海に来たなら海の家の食べ物たべたいじゃん?」
     由宇の手元にはカレーや焼きそばがあった。
    「したっけ海にどーんといっくぞー!」
     準備運動を済ませ志歩乃が海に入る。
     それを見送り、泳いだ事のない緋女が困っていると、八雲が声をかける。
    「眺めてるだけか? せっかく来たんだ、とりあえず泳いでみたらどうだろう? 泳ぎが解らないなら教えてやる」
    「うむ、教えてもらうとするかの」
     八雲が手を引き、バタ足から教え始める。
    「……やっぱうちも遊びたか」
     お腹を満足させた由宇も加わろうと、ライフル型の水鉄砲を構えた。
    「がぼがっ!? ぷはっ! ……な、何?」
     浮き輪で浮いていた薫の顔に突然水が襲う。
    「ちょっと待て、こっちに向けるな!」
     緋女を支えている八雲は避ける事も出来ずに被弾した。
    「わたしも遊ぶー! 一人で撃たせるなんてさせないに決まってるしょやー!」
     志歩乃も水鉄砲を手に参戦する。
    「ゲェッハッハ、2倍のジャンプにフンドシ決めて男気5倍! 合わせて10倍アタック、喰らいやがれェだッしャげぶばァ!?」
     褌一丁で大ジャンプを決めた盾衛は、海に突っ込み大きな水柱を立てる。そして腹を打った衝撃にぷかりと浮かんだ。
    「ああもう、はしゃぎ過ぎです。気分は分からないでもありませんが……」
     フランキスカが救助に向かう。
    「海に来てはしゃぐのは構わんが、怪我の無いようにな」
     久遠は穏やかに仲間達を見守っていた。
    「ミスしちゃった方は後でジュースを奢るとかどうですか」
    「奢りね♪ いいよ、乗った!」
     レイラと赤花はトスリレーを始める。
    「ね、触ってもいい?」
     唐突な台詞にレイラは何の事か分からずきょとんと見返すと、赤花がむにっと触る。
    「あ、やわい。ボールとはやっぱ違うか」
    「だ、だめだめだめですよ!? えっち!」
     顔を真っ赤にして海に体を隠した。

    「青い海、白い砂浜、眩しい太陽、いやはや沖縄は本当に良い所ですね」
    「沖縄、晴れ渡った空、まぶしい日差し、水着の美女に揺れるメロン……まったくもって素晴らしいやね」
     文月と鷹次は南国のたわわに実った果実を観賞していた
    「しっかし、ふと我に返ると男二人で何してんだろうな……? ちょっぴり、目から塩辛い汗が出ねぇか?」
    「目から塩辛い汗って、ばっかお前、現実見つめても虚しくなるだけだろうが……」
     鷹次の我に返ったような呟きに、文月も思わず溜息が出る。
     それならばと2人はナンパを始め、当然のように玉砕して果てるのだった。
     スカートのついた白のビキニにパーカーを羽織ったなおが現われた。
    「あの…おかしくないでしょうか……?」
    「なおの水着を激写だ!」
     剣冶はスマホでその姿を保存する。
    「さ、撮影!? もう……後でちゃんと消してくださいね!」
     なおは怒りながらも、どこか嬉しそうに照れ笑いする。
    「ふふ、水着良く似合ってるじゃないか」
     満足した剣冶はなおと2人、沖縄の海を満喫する。
    「お待たせ、奏君。 小夏ちゃんと一緒に買いに行った水着なんだけど似合うかな?」
    「え……水着? えーっと……そうだな、二人らしい感じで似合ってると思う」
     瑞希と小夏の水着を見て、奏は照れながら感想を言った。そして照れ隠しのように海に向かう。
    「うんうん、やっぱり瑞希ちゃんすごく似合ってるよ♪」
    「えへへ、ありがとう。小夏ちゃんこそすごい可愛いんだよ!」
     2人もその後に続く。
    「あ、きれいな貝殻!」
     京音はお土産にしようと、砂浜で貝殻を拾う。
    「あー、女性陣の水着姿も中々可愛いですね、ええ。さて、そんなことより泳ぎますか」
     刑一は海に飛び込み、見知らぬカップルを見つけると、リア充爆発しろとばかりに突っ込む。
    「ボクは海に魚を獲りに行くよ!」
     ウェットスーツを着た修李は本気で潜りにいく。
    「あぁぁ刑一何してんねん! 魚なんか取れへんやろ!」
     フュルヒテゴットは水鉄砲を使ってそんな仲間にツッコミを入れる。
    「しっかし、女子の水着はこう、直視出来ねぇな……」
     大文字は視線を逸らして呟く。
     そんな様子を千里はパラソルの下で本を読みながら眺め、真琴は皆の様子を写真に収めていく。
     ハリーは赤褌で海に潜る。竹筒をシュノーケルのように使い、女子の水着を堪能していた。
    (「これぞニンポーでござる」)
     マキエは海をゆったりと泳ぐ。
    「ボクも乗せてくださっ……うわっぷ!」
     紫苑の乗るボートに黒々が乗り込む勢いで転覆する。
    「無茶なことするんだから!」
     紫苑は黒々を抱きとめて怒る。だがその顔はどこか楽しそうだった。

    「え? 手加減? 何それ美味しいの?」
    「手加減大切っ!」
     ユリアが全力でアタックしたボールを明莉がレシーブした。
    「え? 手加減? してくれるのかのう?」
     心桜の期待に満ちた目。
    「手加減かー、考えてみたら中学女子と高校男子だもんねー……あっ望月さんごめーん」
     ナディアのトスは心桜の頭上を越え海に落ちる。
    「わらわ、カナヅチじゃって言うておるのに……どうやってあれ取りにいくのじゃー!」
     波に足を捕らわれ、心桜は転んだ。
    「ブイから浜まで往復200mらしいから、競争しない?」
    「浜まで競争か。競争というからには一位を取る!」
     草灯の提案に、薙が気合を入れる。
    「バーベキューの前に、少し泳いでお腹を空かせておきましょう」
     遥香はバーベキューを楽しむ為にと参加する。
    「やる~♪ 園観ちゃんと薙ちゃんも? ふふふ、誰だろうと手は抜かないわよ♪」
     撫子も楽しそうと本気で勝負に挑む。4人の競争が始まった。
    「ほんま、みんな元気やねぇ」
    「頑張れー」
     そんな様子を瑞樹とあゆが砂浜からのんびり見ていた。
     浅瀬ではルール無用のビーチバレーが繰り広げられる。
    「任せろ!」
     褌一丁で尚竹がレシーブする。
    「ほうら冷たくて気持ちいいだろー」
    「隙あり♪ そ~れっ!」
     ミケが水をかきあげると、縫子が水中からゆずるの足を触り驚かす。
    「返すよ! わぷっ……ひゃっ! このビーチバレー難易度が高いよ」
     ゆずるは慌てながらもトスをする。
    「いっくぞー! あたぁぁっくっ!」
    「ぬぉぉ、やらせんぞぉぉ!」
     悠は跳躍してボールを思い切り打つと、瑠音が回転レシーブで返す。
    「い、いくよ」
     祢々が浮かんだボールをトスして仲間に繋ぐ。
    「これでもくらえーーー!」
     アロアは手にした水鉄砲で妨害する。
    「ヒャッハー! そうはさsぶべらっ!!」
     水中から顔を上げた三成の顔に直撃し、仰向けに倒れ水死体のように海に浮かんだ。
    「私に任せ……わぷっ」
     メリーベルがボールを追うと、倒れた三成を踏んでしまいこける。
    「む? すまん踏んでしまった……三成君か、そんな所で寝ていると邪魔だぞ」
     瑞樹も何かを踏み、見れば倒れたままの三成だった。
    「向こうに行くぞ」
     尚竹は三成の足を引っ張っていく。
    「わ、あっちからなんかいい香りがしてきた」
     ミケが振り向くと、バーベキューが始まっていた。
    「お腹減ったね」
     祢々は慣れない運動に疲れた顔を見せる。
    「お昼にしましょうか」
     復活した三成の言葉に皆で食事に向かう。

    「わあ、綺麗な海。やっぱり沖縄の海は素敵だね」
     大輔は目を細め、肩に乗るフェレットが同意するように鳴く。
    「あれあれぇ? 黒白君どうしちゃったのかなー?」
    「自分はみんなが楽しめるようバーベキューの準備をするッス。決して泳げない訳じゃ無いッスから」
     パラソルを用意している黒白を、祐一が海に引っ張っていくと、大きな水飛沫が飛んだ。
    「おーおー、やってるねぇー」
     千巻は大きな浮き輪に乗り、海に浮んで仲間を眺めていた。
    「ちょっと視線が気になる人がいるのですが……」
    「堂々としてればいいのよ、なんなら鉄拳制裁すればいいわ」
    「ふふ、大丈夫。ハレンチな方は首だけ出して埋めちゃいますから♪」
     スクール水着で恥ずかしそうな鞠藻に巫女が拳を見せ、紫が冗談では無さそうに笑う。
    「きょーり達はスクール水着ですから、心配ないですよ」
     同じスクール水着の馨麗が笑いかける。
     そこにツェツィーリアが大胆な白いスリングショットの水着で現われる。皆の視線が集まる。
    「ん? どうした」
    「ええ眺めや。ほんま来て良かったわ。さ、ほな皆の写真撮ろかな!」
     右九兵衛が写真を撮ろうとする。
    「紫さんの水着姿見るの禁止! そっち見てなよ! 皆外見だけは美人なんだから」
     カメラの前に殊亜が立ち塞がり女性陣を指差す。
    「ほほう、これまたジョークにしちゃストレートに失礼だなオイ……ぶっ飛ばされてぇかァ!」
     殊亜はツェツィーリアの飛び蹴りを受けて必死に謝る。
    「ビーチでなァ! 恋人だけしか見ーひん男っちゅーのはなァ! 人生の八割を損しとるんどすえェー!」
     右九兵衛の力説に思わず殊亜は納得しかける。その時後ろから肩を叩かれた。
    「殊亜くん?」
     振り向けば笑みを浮べた紫が居た。だがその目は笑っていない。
    「む、紫さん。これは違うんだ!」
     怒って1人海に向かう紫を殊亜は追いかける。その姿を右九兵衛は写真に収めた。
    「ビーチバレーをしようか」
    「いいですねぃ、やりましょう」
     巫女の言葉に馨麗が賛成し、皆も参加で負けた方が肉を焼く係りと決まる。
    「千巻さん、そんなに沖に出ますと危険ですよー!」
    「……い、いつの間にこんな沖に!」
     鞠藻の声に、千巻はいつの間にか沖の方へ流されていたのに気付いた。
    「あれ、朝山なにしてんの?」
     現われたのは祐一と、溺れてかけている黒白だった。
    「がぼがぼげはっ!」
     黒白は必死になって千巻の乗る浮き輪に掴ると、浮き輪は転覆した。
    「わわっ、綺麗ですみゃーッ!」
    「早速泳ぐぜ!」
     こすずと誠が海に飛び込む。
    「人は泳ぐイルカに乗ることができるんだよ。だから誠ちゃんはクミを乗せて泳ぐがよいよ」
     久美子は泳ぐ誠の背に乗る。
    「ば、馬鹿野郎そんなにくっつくんじゃねぇ!」
     誠は顔を赤くして照れる。
    「あっはっは~相棒! ファイトですみゃッ」
     その様子をこすずは笑う。
     泳ぎ疲れた仲間を黙々とバーベキューを食べていた鏡が迎える。
    「肉から野菜から並べるから、みんな好きな様に楽しめばいい」
     鏡の用意したバーベキューを皆が食べ始めた。
    「このアイス美味しいです」
     壱は日陰でマンゴーアイスを食べながら、騒がしい周囲の様子を眺めていた。
     日常の風景を眺める事で、自分がまだ普通の学生であることを実感していた。

    ●バーベキュー
    「あ、これなんかちょうどいい感じだよ?」
     舞とファスは存分に泳ぎ、今は食事を楽しんでいた。
    「焼きホタテに焼き貝に……醤油かけて~オヤジ臭い? ほっとき~」
     その様子を笑う舞、ファスは気にする事なくコーラをぐびぐびと飲んだ。
    「俺に任せろ! じゃんじゃん焼きまくるぜ!」
     食材を焼きながら、誠の視線は女性陣に釘付けだった。
    「こらっ、じろじろ見すぎっ」
     その頭を撫子が叩く。
    「肉も野菜もバランスよく、均等に分けよう」
     誠の手元から均等に分配する。
    「待ってましたー♪ ミミガーっていうんだっけ? これ一度食べてみたかったんだよねー!」
     昴が美味いと沖縄の味を堪能すると、他の仲間も食べだす。
    「砕牙君には負けねーよ?!」
     肉を食いまくる誠に、あゆも負けじと肉を食べる。
    「バーベキューの主役は野菜だよね?」
     育ての親にそう教えられた薙は、平和に野菜を食べていた。
     お腹一杯の遥香がパラソルの下で昼寝する。
    「あ、ゴーヤや。羽嶋くん、鯉幟くん、食べてみる?」
    「あっゴーヤ好き、たべるー♪」
     瑞樹が進めると草灯が喜んで食べる。
    「……えっ、何で野菜乗ってんの」
    「お野菜も食べなさいっ」
     あゆの呆然とした顔。撫子が皆の更に野菜を盛っていた。
    「あはははは!! なんか砂盛られてグラマラスにされてる人がいるー!」
     指差して笑う昴の先には、草灯に砂を盛られた遥香の姿があった。
    「さて、雀谷さん、焼くの宜しく。僕もできる限りで手伝うけどね」
    「任せてー。ほんとに魚獲れたんだ、すごいね! 焼くのもいいけど新鮮だしお刺身も作る?」
     京音が作るのを悠基が手伝う。
    「ほらほら焼けてきたでー、食わんと焦げるでー」
     フュルヒテゴットの呼びかけに一斉に仲間が群がる。
    「さすがけーね。料理上手ー!」
     千里が感心して食べる。
    「このお肉は、ボクがもらったぁ~~!」
    「ウワッ金井!? それおれの……」
     大文字が狙っていた肉を修李が掻っ攫う。
     刑一は黙々と食べる。食べられる前に食べるが基本である。
    「このお魚美味しいよ~」
     真琴は横からちゃっかりお目当てのものを手にしていた。
    「ちゃんとバランスよくね? 食べないなら口に直接叩き込むから」
     悠基は次々に野菜を配る。
     そんな様子をフュルヒテゴットが写真に収めた。

    「まさかトップスが外れるなんて……」
     雲雀は泳いでいた時のハプニングを思い出して恥ずかしがる。
    「素敵なプロポーションですからいいじゃないですか」
     肉を食べる斬火が笑みを浮かべた。
    「うわー、美味そう……! どれから食べよ、迷うなぁ……!」
    「あっこれ焼けてるよー」
    「ありがとう小夏ちゃん、どれも美味しいね!」
     奏、小夏、瑞希がバーベキューを楽しむ。
     龍也と嵐は海で泳ぐのを堪能し、次は腹ごしらえ。
    「お、いい感じに焼けたぜ。ほら。龍也」
    「たまには作る側から食べる側になるのも良いよな」
     嵐が焼けた肉や野菜を龍也に渡し、2人で分けて食べる。
    「ほら」
     龍也も焼けた串を嵐に差し出す。のんびりと時間が過ぎる。
    「肉だ! 肉持ってこい!」
     梢が肉を貪り食う。
    「……梢、そんなに食べて大丈夫なの?」
     隣で食べていた海梨が心配そうに声をかける。
    「泳げばカロリーくらいすぐに消費されるのじゃー!」
     肉を頬張りながら梢は言い放った。
    「本当にこう、うまそうな匂い、が……おーい、誰か俺にも一枚くらい肉をくれー」
     カメラを持った不審人物として飛鳥は砂に埋められていた。
    「えへへ。ごめんね、私には恋人がいるから、はい、あーん♪ ってできないの」
     結衣が自分の分を食べる。飛鳥は滂沱の涙を流すのだった。

    「焼いたフルーツっておいしいんだよ♪」
     瑠璃羽は果物を焼いて有斗に渡す。
     有斗は半信半疑で口に運ぶと、夢中で食べ始めた。
    「はい、あーん」
     有斗は焼いてばかりいる瑠璃羽の口に果物を運ぶ。瑠璃羽は一瞬驚いたように目を見開くと、顔を赤くして口を開けた。
    「バーベキュー日和な、いい天気で良かったです」
     優雨が網で焼きおにぎりを作る。
    「おう、蓮司! 肉ばっか喰ってねぇで魚喰え! クエを喰え!」
    「分かった分かったから、ちょっと待て」
     祭魚が焼いた魚を次々寄こすのを、蓮司が止める。
    「イルマもいっしょにどうかな」
    「ありがとう、いただきます」
     蓮司はイルマに声をかけ、山盛りの魚を分ける。イルマが美味しいと夢中で食べると、祭魚が喰え喰えと魚を盛り付ける。
    「そこが焦げてる、そっちは魚とタレの肉を一緒に焼くな」
     捨六は奉行のようにあっちこっちに口を出す。
    「……あ、ちょっと焦げちまったな、まあいいや、食える食える……やっぱ苦いぜ」
     レイシーは顔をしかめて焦げた肉を食べる。
    「こっちの肉はちょっと塩加減が足らなかったか……」
    「とりあえず、焼いて塩コショウ振っとけば何とかなる……」
     レイシーが塩を振ると、蓋が取れた。メルフェスの言葉が止まる。
    「毒見してもらいましょう、シャーロックに」
     メルフェスがちらりと傍に控える捨六を見た。
    「……え?」
     何か問題があるかとメルフェスの視線に押され、捨六は塩だらけの肉を恐る恐る口に運び、悶絶した。
    「イルマちゃんはこっちのを食べるといいわ」
     メルフェスは捨六が焼いていた分をイルマと分けて食べる。イルマは一生懸命にもぐもぐと口を動かしていた。
    「焼おにぎり食べる人いる?」
     優雨の問いに全員が手を挙げた。捨六は口直しにかぶりつく。
     和気藹々と楽しい食事が続く。

    ●夏
    「……元気だな」
     パーカーを着た千李の居るパラソルへ、空と蓮がやってくる。
    「千李くんも海で遊ぼぅ。蓮くんも、そう思うよね?」
    「そうだな、せっかくなんだし……千李も海辺に行こうぜー」
    「ん……分かった」
     2人に引っ張られるように千李は砂浜へ向かう。
    「貴堂さんもどうです?」
    「いいのか? なら参加させてもらおう」
     綾鷹に声をかけられ、イルマもビーチバレーに参加する
    「2on2ですね。審判は任せてください☆」
     一二三が審判役でゲームが始まる。
    「いっくよー! ……てへへ。今のはなしね! それじゃもう一回!」
     楓のサーブは明後日の方向へ飛んでいく。笑顔で誤魔化し仕切りなおす。
    「負けないよぅ」
    「いくぞ!」
     空がレシーブすると、イルマがスパイクを打つ。
    「それっ」
     それを眞沙希が受け、ラリーが続く。
    「さーて、それじゃぁー……真剣勝負と、行こうじゃないか」
    「ええ、手加減は無しといきましょう」
     蓮と綾鷹が競争を始めると、仲間達も手を休めて応援する。
    「2人とも頑張ってください!」
     一二三が泳ぐ2人に檄を飛ばす。
    「んー……応援? じゃぁ、蓮が勝ったら俺が何でも言うこと聞くと、か……」
    「綾鷹先輩が勝ったら、何でもひとつ言うこと聞いてあげますからがんばって下さいっ!」
     千李が応援すると、眞沙希も勢いで叫んでしまう。
     そして決着が着く。先に到着したのは。
    「ちっきしょー……負けちまったー」
    「今回は私の勝ちですね」
     綾鷹が僅かに速く到着していた。
    「勢いとはいえ……すごいことを言ってしまったような」
     眞沙希は顔を真っ赤に染めていた。

    「でぇーい! 稲妻落としー!」
     朱鳥がボールを踵落としで打つ。だがボールは自陣に叩きつけられた。
    「……って朱鳥足でやんの!? 自陣に落ちてるけどね!」
     笑って誤魔化す朱鳥に陽哉がツッコミを入れる。
    「というか正直いい眺げふっ!!」
    「俺様の必殺技くらえ」
     陽哉が足に見蕩れている間に、魁李が放ったボールが顔面に直撃し跳ねる。
    「この超回転のかかった必殺のサーブ、止められるならば止めてみよっ!」
     そこにナイアが跳躍してアタックを決めた。
     少し離れた場所ではスイカ割りが行なわれている。
    「右右、もうちょい右ー。青爾はもうちょっと右にいるヨ」
    「右、右……ここね? せーのっ……えっ、せーちゃん!? やだ、大丈夫?」
     目隠しした紫音を赤祢が誘導する。その先に居たのは青爾。白刃取りで木刀を受け止めていた。
    「左だ、紫音。もう少し左にいけば赤祢の頭にたんこぶだぞ」
    「左ね、左……って、ちょっと、せーちゃんまで! だめだってばー!」
     青爾もやりかえそうと嘘の誘導で赤祢に導く。
     三度目にしてようやくスイカを見つけ、叩き割った。
     食べる時は仲良く。家族団欒の時間が流れる。
    「ちょっとま……」
    「いくぜぇ! ウラァァ!!!」
     嵐が打つスパイクを龍也が追いかける。満腹の龍也は苦しそうに走る。
     立夏と今日子は2人で泳いでいた。
    「なんとゆうか無敵の未来が見えてきたみたいな!」
    「無敵の未来? なんだそれは」
     ご機嫌な立夏の言葉に、今日子は笑い返す。

    「新くん、浜まで競争する?」
    「いいよ~? 負けないけど!」
     奈穂と新は全力で泳ぎだす。
    「わぁ、乃亜、も奈穂、も泳げてすごい、ダヨー」
     チロルは、クラレットから浮き輪を借りてぷかぷかと浮かぶ。
    「み、みんな早いです……」
     泳ぐのが苦手な迷子も浮き輪を使い泳ぐ。耳と尻尾がよく動く。
    「はっはわっ、浮き輪なくても平気だもんっ」
     一美は足を懸命に動かすが一向に前に進まない。
    「その。浮き輪、貸してもらえないかしら」
     嗚呼は決して泳げないわけじゃないわよと言い訳しながら、風花に浮き輪を借りる。
     泳ぎの次はバレー。
    「ふふ……ボールを……御返し致しますわ………ハッ!」
     アリスティアがアタックすると、飛んでくるボールを楼沙は避けた。
    「ルールが違う? で、でも、痛そうだから無理なのだ!」
    「よーし、レシーブする、ダヨ……っうぶ!」
     チロルがレシーブに失敗し顔面で受ける。
    「あはは、それ~!」
     クラレットはテンションを上げてアタックを打つ。
    「この程度では不意打ちにもならないぞ?」
     それを乃亜が回転レシーブで弾き返す。
    「あ、そだそだ! せっかくだから皆で記念写真撮ろうよ!」
    「大賛成なのだ!」
    「ふふ……良いですね」
     クラレットの提案に楼沙にアリスティア、他の仲間も集まってくる。
     そして楽しいひと時の一枚が残る。
    「イルマさん!! 皆で鬼ごっこやりません!?」
    「楽しそうだな、参加させてもらう」
     彩香のお誘いにイルマは頷いた。
     京哉が鬼となり皆を追いかけ始める。最初に捕まったのはエルーシア。それを皮切りに続々と捕まっていく。
     捕まった人は鬼となってイルマを狙う。そう、これは当初からイルマを驚かす悪戯だった。
    「捕まって、動かなかったからって……鬼ではないとは、限りません……よ?」
     エルーシアが迫る。
    「あのね……捕まった子が……鬼にならなくても、鬼の味方……しちゃダメなルール……ないんだよ?」
    「鬼さんの味方をしちゃダメなルールはないのですっ!」
     フェオドラと彩香が道を塞ぎ、方向を変えるとその先にはイリスとフィオレンツィアが立ち塞がる。
    「じんせーは厳しいんだよっ」
    「勝負は始まる前から開始しているんだよ」
     そんなイルマの前にまだ残っていた菖蒲が現われる。
    「ここはボクに任せて逃げてっ!」
     菖蒲が壁になっている間にイルマは包囲を抜ける。
    「むふー……こっそり落とし穴……もどきを作りましたー……」
     その先には唯が用意した落とし穴があった。
    「チェックメイトだよ」
     京哉が飛びかかる。鬼となった菖蒲も加わっている。
    「まだ勝負は終わっていない」
     イルマは跳躍して手にしている水鉄砲を撃った。水に視界が遮られる。その先にあったのは落とし穴。
    「……あれ?」
     唯の呟きと共に罠に掛かったのは京哉。同時にゲーム終了の時間となった。
     捕まった人は罰ゲームとして京哉に抱きつく。だがその表情は楽しそうだった。菖蒲はその横で大きな葉っぱで扇ぐ。
    「そ、そうだ……あの、その、カメラ……皆さんで記念写真とか……どうでしょう……?」
     エルーシアの言葉に皆が楽しそうに写る記念の一枚が出来た。
    「ねぇ、これからも、一緒に遊ぼうね。しずくちゃんは、ボクの一番の友達、だよ。」
    「私も、あさひが、一番の、友達で、大好き、だよ」
     遊び疲れた2人静かに波を見ていた。

    ●夕焼け
    「ひぃっ、ひりひりするのじゃ! 日焼け恐いのじゃ!」
     日焼け止めを塗らなかった緋女は、肌を赤くしていた。
    「沖縄最高だね!」
     結衣奈が一緒に遊んだ皆と笑い合う。
    「みんな、バーベキュー忘れておるのう」
     疲れた心桜は生玉葱をかじり、渋みに顔を歪ませた。
    「あー楽しかっ……ん? もう夕方? バーベキューは?」
     ナディアが周囲を見渡すと既に帰り支度をしている人々の姿。
    「あれ? もう夕方?」
     明莉も熱中して全く気付いていなかった。
    「はっ!? 夢中になり過ぎてバーベキュー忘れてたっ!?」
     ユリアは食べ逃した事に愕然とする。誰ともなくお腹の鳴る音。
     夕飯も食べ逃しては堪らないと、皆は帰り支度を急ぐ。
     沖縄の海を疲れ切るほど遊び、満足そうに笑う。
     燃えるように赤く染まるビーチには無数の足跡。それは皆が楽しく遊んだ証拠だった。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月20日
    難度:簡単
    参加:147人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 24
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