修学旅行~ビーチに日が暮れるまで

    作者:聖山葵

     武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
     今年の修学旅行は、6月18日から6月21日までの4日間。
     この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。

     今年の修学旅行は、南国沖縄旅行です。
     沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
     さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
     
     宝石の様と言う表現は月並みかもしれない。
     エメラルド色をしたビーチを持つ雲のように白いリゾートホテルは、生徒達にとって二日目の宿泊先であり、客室は全てバルコニー付きのオーシャンビューとなっている。
     つまり、バルコニーに立てば充分絶景を楽しめる訳だが、それだけでは勿体ない。
     せっかくだからビーチでリゾート気分を満喫しよう、と誰かが言った。
     こんな機会はそうそう無いのだ、時に戦いへ身を置く灼滅者ならなおのこと。
    「と、まぁ、そう言う訳だ」
     観光用のガイドブックから顔を上げた座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)は、ガイドブックを持たない方の手をぐっと握りしめ笑みを浮かべる。
    「まさに、私はこれを求めていたっ! これならば私も全力で行事を楽し……あ」
     そこまで言って、周囲の視線に気づいたのだろう。
    「では、説明に戻ろうか。時間は有限だ」
     咳払いをして、はるひは皆に呼びかける。
    「このホテルのビーチでは海水浴を楽しむだけでなく、オプショナルツアーとして、ヨットやサンセットクルーズも楽しめるようだ」
     先程見ていたガイドブックからの情報なのか、はるひが開いたページにはクルーザーの写真が載っていて下には料金まで書かれている。
    「テラスでトロピカルドリンクを味わうのも良い。だが、費用は全て自己負担だ」
     ちなみにクルーザーは4人乗りで1時間4万円以上なり。
    「しおりによると夕食の時間までは自由行動となっている。日が暮れるまで景色を楽しむも良いし、泳いでくるのもいい。ちなみに私は……」
     聞かれてもいないのにわざわざ自分の予定を語り出したのは、参考になればと思ってのことなのか。
    「水着でビーチで景色を眺めよう、日焼け止め持参でな」
     ごく普通の過ごし方だった。
    「時々居合わせた小学生に目が行くかもしれないが、それは私の母性愛が――」
     いらないものまでついてこなければ。
    「参考になったかどうかは解らないが、君達も思い思いの楽しみ方を見つけてリゾート気分を満喫してくるといい」
     節度を守って、と付け加える当たりにツッコミ成分の不足を感じずにはいられないが、バベルの鎖があるとはいえ一般人も利用するリゾートホテルなのだ。
    「この自由行動、実りあるものにしようではないか」
     そう呼びかけるとはるひは、再びガイドブックに視線を戻す。
    「……リゾートビーチか」
     心はもう既に沖縄に出発しているのかもしれなかった。


    ■リプレイ

    ●着いたのならば
    「小中学校の修学旅行もそこまで遠くなく無難な所だってのに、いきなりこんな豪華な場所へ?!」
     あるとが驚愕に固まっていたのは、転入組だったからだろう。
    「海来るのは久しぶりだね」
     ポツリと呟いた悠彦の瞳に映るのは、エメラルド色をした海と白い砂浜だった。
    「ど、どうかなこの水着。変じゃない……?」
    「うん、可愛いよ。桜によく似合ってる」
     振り向いて、桜の問いかけに頷きを返し歩み寄った悠彦は、桜の頭を撫でながらその髪へさりげなくハイビスカスを飾って、もう一度頷く。
    「こうしたらもっと可愛い」
    「悠彦にかわいいって言われた♪ふふ、悠彦大好き♪」
     恋人や意中の相手が居るならば、水着への反応は気になるもの。
    「えへへーみてー」
    「……おまえ、意外と大胆な水着だな……」
     浜辺で待っていた円は、駆け寄って来るなり羽織っていたパーカを脱ぎ捨てた六を見て呆れた表情をつくる。それでも六の身体を頭から足の先まで見てしまうのは、布地面積が少な目なビキニのせいなのか、それとも。
    「にあってる?」
    「んーまぁ……似合ってるんでねーの?」
     照れくさそうに頭をかいた円が日焼け止めを塗ってと頼まれるのはもう少し後の話。
    「……使います?」
    「ああ、沖縄の日差しはかなり激しいと聞く」
     もっとも、準備ならば最初にする必要があるのは言うまでもない。業慧はランジュの差し出したサンオイルを受け取ると、二人の背に塗りこむのは俺の義務だと一人決意を固め。
    (「あの2人……変なことしないよなぁ?」)
     少しでも気になったなら、学子はパラソルの下でのんびりするより確認すべきだった、オイルを受け取った瞬間に。
    「……んっ……くすぐったい……」
     業慧のオイルにまみれた手は、学子が身を起こそうとした時、既にランジュの背中をなぞっていたのだから。
    「ひゃんっ」
    「ってお前、ヘンな声出すなよ!」
     あちらでオイルに悲鳴が上がればこちらは日焼け止めに声を上げる者があり。
    「せっかく目の前に綺麗な海があるんだから、泳がなきゃ損だよね」
     小さなハプニングがビーチのどこかで起きているとしても、一二三の言うことはもっともだった。
    「確かに。楽しまなきゃ損だよな」
     青空に投影した母に語りかけていたあるとも我に返ると海に向かって歩き出し。
    「……こういうのも良いよね」
    「やっぱ、際どいかな」
     既に泳ぎ始めていた憂奈の大胆な水着姿を見て自分の身体に視線を落とす。ビーチには人も多いのだ。
    「ん?」
     どこからか三線演奏を伴ったラブソングが聞こえてきたりするレベルで。
    「ここはツッコんでおくべきか……」
     柄にもないことをすべきか迷う座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)の視線の先には、三線を抱えた月彦が居て。迷いを解いたのは、一二三の言葉だった。
    「……はるひちゃん暇そうだから良かったら一緒に泳がない?」
    「その提案、熟考に値する」
     小学生、もとい景色を眺めることしかすることがなかったのだから。
    「ほら、海に入ってたら小学生くらいの小さい子が溺れてるのを助けるイベントが発生したり……」
    「行こう、時間は有限だ」
     なんちゃってと一二三が冗談めかすより早く、はるひは海に向けて駆け出していた。

    ●海を楽しむ
    「わぁ、綺麗ー!」
     歓声をあげながら海に向かうみとわに遅れないよう、頼人は走る。
    (「予想以上だぜ」)
     僅かに追いかける形になったのは、黒地に淡いピンクのバラが咲いたみとわの水着へ目を奪われたからかもしれない。飛び込めば水しぶきが上がり、陽光に輝く水の欠片に囲まれた恋人が笑顔で振り返る。
    「きゃっ」
     足が届かないほど深い場所まで来てしまったのか。沈みかけたみとわに抱きつかれた頼人は、唇を重ねたい衝動を堪え、恥ずかしさに俯く恋人へ笑顔で応じる。
    「気をつけようね、お転婆な人魚さん」
     おそらく二人には聞こえていないことだろう。
    「なんだろう、このフラグ。風音さんがボートに乗るとか、落ちる光景しか……」
     周囲であがる海水浴客達の歓声も、波打ち際に鎮座するバナナボ-トを見て漏らした悠基の呟きも。
    「……一応覚悟はしておこう」
     悠基へ同意して見せつつ、有斗の跨った後ろに二人分の視線を受けていた瑠璃羽をのせ、やがてそれは動き出す。
    「わわ……ちょ、意外にはや~い!」
     やがてそれは加速によって海面を滑るように進み始めるのだが、悠基達の予想は当たったらしい。
    「あれ……?」
     大きくはねた拍子に浮き上がった瑠璃羽の身体は宙に舞い。
    「って、やっぱり。 ぇ、ちょ、なんで僕を掴んで……」
    「あー、もー、お約束ー!!」
     出現した水柱は仲良く三つ。
    「ふにぃ……うふふ、でも楽しー! もう一度ちゃれーんじ!」
     水面に顔を出し楽しげに笑う瑠璃羽の様子から残る二人が悟ったのは、一度で終わりではないという事実。
    「元気だなぁ」
     浜辺を歩いていた泳は、賑やかな海を眺めてポツリと呟くと、海から上がってくるスク-ル水着姿の少女へ飲み物を差し出した。
    「よかったら飲みます?」
    「ありがたい」
     そう、救助イベントなど起こらず、陸へと戻ってきたはるひに。
    「あー、泳ぎ疲れたー。あ、はるひ。横ちょっと失礼するよ」
     断りを入れてあるとが腰を下ろしたのは、泳から飲み物を受け取ったはるひがパラソルの下へ帰還を果たした数十分後。
    「はるひちゃん! カメラはダメなんだよ、カメラは! それはどこかの法律にひっかかるかも知れないのです」
    「母性愛が告げているのだ、起こらなかったイベントの埋め――」
     事件はビーチで起こっていた。いや、未遂のところを一子が必死に宥めているのか。
    「この一瞬一瞬を、脳に心に網膜に焼き付けるんだよっ♪ 沖縄の太陽なら、きっと沖縄の太陽ならそれが可能だよ♪」
     思い直させようと独自の理論を展開しつつ天を仰いだ一子は、次の瞬間、目を押さえてのたうち回っていた。
    「ぐわっ!? 目が、目が焼ける~!?」
     黙っていたらを地で行く美人が二人、残念さを遺憾なく発揮すれば。
    「海といえば水着、そして溢れる筋肉美……いけませんあまりの嬉しさに、口元が緩んでしまいましたわ」
     じゅるりと溢れてきたものを拭いつつ、ビデオカメラを回す人物がもう一人。
    「気持ちは解るがTPOは弁えねばならんよ」
     とてもさっきカメラ撮影を止められた人間のものとは思えない言葉なのは、気のせいか。
    「何人かお持ち帰りできれば最高ですのに……」
     不穏な呟きと共に后漸は嘆息する。とりあえず、事件は未然に防げたのかもしれない。

    ●場所も変われば
    「……きれい」
     呟いた閏が歩き出したのは、人気のない場所へ向かう眼目の背中が見えたからだろう。何かを堪えるように拳を握って辿り着いた先で眼目が向き直ったのはエメラルド色の海。
    (「海には水着、だもん」)
     ただ、沈黙に耐えきれず閏は上着を脱ぎ捨てて走り出し、水音と走ってきた姿へ眼目が一瞬浮かべた驚きの表情はすぐさま笑みに変わる。
    「普段は大人しいのに」
     唇をそう動かしつつも、はねる飛沫の中輝く海面と閏を直視出来ずに俯いて。
    「……嗚呼、そろそろ素直に感動くらい覚えてみようか」
    「見て、眼目様。とってもきれいな世界、よ。 見られて、しあわせ、ね」
     繰り言めいた言葉へ反応して声をかけてくる閏へ、眼目は頷きを返した。
    「ほら閏、魚も居る」
     波の音や水のはねる音を除けば、静かだった。
    「海なんて何時振りだろうな」
     人の絶えないビ-チ中央とは対照的に。
    「しかし凄いな……海は初めて来た。実際に見ると全然別物だと感じるよ」
     圭良へ倣うように恭哉の見つめる先には、陽光に輝く海があり。
    「おい鷹井、ここに仰向けで寝ろ。そしてじっとしてろ」
    「え?」
     何をするかという段になって圭良がそんなことを言い出さなければ恭哉も砂浜に横たわることはなかったと思われる。
    「え、あ、いや……構わないけどそれはどういう……?」
    「こうやって砂浜に埋まるのって体にいいらしいよー? なんか健康法であるらしいし」
     定番の遊びと言うキーワードに首を傾げた恭哉へ大輔は名目上の理由を説明し、砂で動けなくなったところであるモノを型作り始める、所謂女性の乳房を。
    「お、胸盛るのか?じゃあアタシはセクシィな下半身でも作るわ」
    「って待てお前等何を作ってる!! やめろ!! 公序良俗的にも俺の評判的にもやめてくれ!!」
     それを見た圭良も砂遊びを始め、ようやく自体を理解し恭哉が騒ぎ出すも色々遅かった。
    「あっはっは! きょーちゃん巨乳ー!」
    「随分と巨乳になったな鷹井。アタシと同じかそれ以上あるんじゃね?」
    「そういうケーラちゃんこそ! ナイスセクシーな足!」
     楽しげな笑い声にシャッターの音が混じり始め。
    「写真を撮るなあああああなんで出れないんだあああああ!!」
     ビ-チには誰かの慟哭が響き渡った。そして、時は流れ……。

    ●鮮やかな色の中で
    「夕陽に照らされるビーチもすっごく素敵だねー!」
    「夕暮れ……私、この時間が大好きなのです」
    「海も橙に光っててすごくキレー……」
     歓声を上げる燈に頷きつつもアリスが目を離せなかったのは、オレンジ色に染まっているものが見慣れた森ではなく海だったからかもしれない。
    「ちょっとのんびりお散歩しよっか?」
     そう燈が提案したのは、たまたま近くを散歩する先輩達を目に留めたからか。
    「……見れて楽しかったね」
    「……なんて初めて行ったわ」
     部分的にもれる会話の内容からすると、午前中の事でも話しているのかもしれない。
    「色々見れて楽しかった」
     と付け足し、ゆいはしずくと共に人気のない方へと歩み去る。
    「きれいな貝がらはあるかしら……? 一緒に探しませんか?」
    「あ……よく見たらキレーな貝殻いっぱい落ちてるね!」
     二人連れの後輩が交わす言葉が後ろから聞こえたが、もう辺りはオレンジ一色だ。泳ぐ方が少数派なのだろう。
    「阿呆。も、夕方やん。海入る時間や……」
     ふいに聞こえた声の主も同意見だったようで。
    「あ、ほら、水気持ちええ」
    「ぶっ」
     ちらりと声の方を見たしずくが目撃したのは、あやかの蹴り飛ばした海水を顔面に被る宗一の姿。
    「その挑戦受けたわ。全身濡れ濡れに、したる!」
     そこから始まる戦いは、楽しそうであったけれども。
    「あほ、そないにしたらコケるやん」
     いや、実際楽しんでいるのだ。水を掛け替えされてブーイングするあやかも、本当に怒っているようには見えない。
    「残り僅か入らず終いも何だ1度ぐらい海に入ってみようぜ」
    「え、ちょっと雨松さん!?」
     海がそこにあれば、人は夕暮れでも構わないのか。娘子に手を引かれ腕の中に抱え込まれたメルキューレは驚きの声を上げたまま、海に投げ込まれて。
    「……塩辛いです」
    「あはは、水も滴るイイ男ってな!」
     水面へ顔を出すと、ポツリと呟きながらも娘子の言へくすりと笑みを零す。人気の多い場所は、まだ賑やかだった。
    「沙雪、なんですか? これ」
    「あ、起きたですか? お城作ってるので動いちゃダメです」
     オレンジの景色中で昼寝から目覚めたアレクセイは、視界の大部分を隠すそれの説明を沙雪から受けて顔を引きつらせ。 
    「いえ、何かは見ればわかるんですけど、どうして僕の上にこんなも」
     言葉が不自然に途切れる。
    「と言うか、砂の城が崩れ……うわぁぁ」
    「あ……ふみゅーっ」
     何が起きたかはわからない。ただ、賑やかな場所があれば静かな場所もあった。
    「ん、楽しかったねー」
     イリスの呼びかけに京哉は頷き。
    「みんなよりも先に今日誘ってよかった」
     指を絡めたの囁きに混じるのは、波の音。
    「お陰でこんなに可愛くてドキドキするイリスの水着姿を独占できたんだもの」
    「……変なこと言うの無し、だよっ!?」
     続けた言葉にわたわたしだしたイリスへ身を寄せ、京哉はぎゅっと抱きしめる。
    「嘘じゃないよ。……ほら、ドキドキしてるでしょ?」
     それはいくつもあった二人だけの世界の一つ。
    「いつも、ありがとうね。これからも『ずっと』宜しくね?」
    「当然でしょ私は死ぬまで貴方を守るって決めてるんだから……でも、ありがとう……」
     しずくに後ろから抱きしめられたゆいが人気のない場所で言葉を交わしていたように。
    「ホテルの方にお聞きしたのですが」
     とディルフィニーが宗志を誘ったのは、海の中であったように。
    「一面オレンジ色ですね~」
     鮮やかな夕焼けを見て思った疑問の答えの欠片が、ビキニのラメに反射し。
    (「きれいだな」)
     泳ぐディルフィニーを眺めて、宗志は微かに吐息を漏らす。
    「宗志さんお誘いありがとうございます♪」
     水の中でメッセージボードに素敵な場所をありがとうと書いていたことを知っているから、水面に顔を出したディルフィニーは微笑みかけた。オレンジ色に染まる海を船から伸びる白い軌跡が分断して行く。後方には徐々に遠ざかる陸。
    「もう少し沖まで出ましょうか」
     そう捨六が切り出したのは、別のクルーザーが前後して出発したからに他ならない。
    「ええ」
     人気のない海の上。先に捨六が語ったからだろうか、メルフェスが口を開き己の過去を口にしたのは。
    「どうして、話す気になったのかしらね」
     夜に浸食され行く空のように暗くなりかけた雰囲気の中でメルフェスが自嘲気味に呟いた言葉は、風にかき消される。
    「今何か言いました?」
    「なんでもないわ」
     短い言葉のやりとりが、やがて別の話へと切り替わった頃。
    「ありがとう、刹那さん。お誘い戴けたおかげで、忘れえぬ光景が見られたわ」
     萌子と刹那も船上で波に揺られていた。
    「こちらこそ、ですよ。私もとてもいい思い出と新しい友人ができて嬉しいです♪」
     笑顔を染める光のもとはゆっくりと海へ沈みつつあり、刹那の青いパーカーも白かった筈の萌子が着るサマードレスも全てが等しくオレンジを帯びる世界で、二人は笑いあう。
    「ここは、静かですね」
     船上は海に出た者達だけの時間、ゆっくりとビーチの外れまで歩いてきたれうは一人の時を人の居ない浅瀬に求め。
    「おかあさん、いま私、修学旅行で沖縄にいるんだよ。私と同じような力を持った子ばかりの学園でね……」
     取り出した一枚の写真に語りかけながら夕日を眺める。
    「……いつか、直接聞かせてあげたいな」
     報告を済ませ、写真を水に浮かべれば、祈りを捧げて。
    「綺麗ですねぇ……」
     船の上でも半身を海につけていても浜辺を歩いていても、西の空は同じ色。染められた世界の一部になりながら、流希は波の音を楽しむ。
    「ふふ、なかなか上手に出来ました」
    「携帯電話で写真撮ろう?」
     ふいに聞こえた声の方を見れば、そこには砂のお城を挟んで座り込む燈とがアリスいて。
    「あ、はるひ先輩」
     釣られて振り返れば、パラソルの下で人影がしきりに手を振り返していた。
    「また、来たいですね」
    「うん。また、来ようね!」
     ゆっくりと暮れゆく中で交わされた約束を海と波の音が聞いていた。

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月19日
    難度:簡単
    参加:45人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 12
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