武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
今年の修学旅行は、6月18日から6月21日までの4日間。
この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
今年の修学旅行は、南国沖縄旅行です。
沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
沖縄の赤瓦屋根に鎮座している伝説の獣の像、『シーサー』。
シルクロードを経由して大陸から伝わったとも言われているシーサーは、家や人、村に災いをもたらす悪霊を追い払う魔除けの意味を持つ。
古くは権威の象徴とされてきたシーサーだったが、今は街のどこでもその姿を見ることができ、家の守り神や魔除けの神として沖縄の人々に愛されている。
――そんなシーサーを自分で作ってみてはどうだろうか。
修学旅行の一日目のプログラムに組み込まれている『シーサー作り体験』では、素焼きのシーサーを作ることが出来る。
シーサーの作り方はとっても簡単。
1.粘土を良くこねます。
2.粘土を分けて胴体、足、顔のパーツ等を作ります。
3.土台に接着し、形を整えて仕上げます。
上手く作れるか自信のない人でも先生がちゃんと丁寧に教えてくれるので大丈夫。
シーサーの表情や仕草のアレンジしたり装飾品をつけたり等、どんなシーサーを作るかは全てあなたのアイディア次第。
なお、作ったシーサーは窯で素焼きにした後に郵送される。
個性溢れる自分だけのオリジナルシーサー作りにあなたもチャレンジしてみませんか?
「シーサー、作りに行くけど、あなた、来る?」
沖縄のガイドブックを眺めていた久椚・來未(中学生エクスブレイン・dn0054)が顔をあげるなり唐突に切り出した。
どのプログラムのことかと慌てて日程表を確認するあなたに向かって、これ、と來未は初日に記されたプログラムの一つを指し示す。
ざっと概要を確認すると作り方も難しくないようだし、ナチュラルな素材感を生かした素焼きシーサーはこの修学旅行の良い記念品になりそうだ。
「どんな、シーサーがいい、かな」
魔除けの神らしく迫力ある感じがいいか。可愛いらしい雰囲気も捨てがたい。手乗りサイズのシーサーなんかもいいかもしれない。
迷う來未の声も心なしか普段よりもはずんでいるように聞こえた。
――皆で楽しむ修学旅行の思い出に。あなただけの守り神を作ってみませんか?
●めんそーれー! 体験教室
体験教室の扉を開けると棚いっぱいに並んだ手作りシーサー達が出迎えてくれた。
大きさは大小様々、ちょっと怖い顔をした子もいればつぶらな瞳の愛らしい子もいて個性豊かなシーサー達は見ているだけでほっこりする。
そして先生の説明が終われば皆の手が粘土に向かって伸びた。
――さぁ、どんなシーサーに会えるだろう?
シーサー作りは、まずは作りたいシーサーのイメージを固めるところから。
「シーサーって、口からどばーっと水が出てるやつよね?」
「響、それはマーライオンじゃい!」
間髪入れずに那波のツッコミが入り早々に響の中のシーサーは修正が入れられた。
双子の姉妹の千花と恵未も二人並んでお喋りしながら粘土をこねこね。
「お花が似合う、強そうなシーサーさんがいいなぁ」
リボンも作って結び目にお花つけたい。
想いを巡らせ千花が「恵未ちゃんは?」と尋ねれば。
「ふわふわ羊さんみたいにしようかな」
ぐるぐるって角もね、と笑顔で答える。
どんな子が出来るかな? 二人顔を見合わせにっこり微笑んだ。
「ひとつ捏ねては父の為……ふたつ捏ねては……」
神妙な面持ちで粘土を捏ねる菊乃に恋は怪訝そうな顔で尋ねる。
「菊乃ちゃん、どんなの、作るの?」
「え、えっと……恋ちゃんは?」
「ふっふふ、内緒、ですよ!」
「むむ、私も内緒なのですっ」
二人顔を見合わせ同時にくすくす笑いあった。たいやき銜えて。帽子被って。二人考えていることは同じ。だってどぅし(友達)だから。
「キコ、将平さんに似た子作るんだー」
「じゃぁ、俺もキコに似せて作ろうっと」
どうやったらシーサーは似るだろう? 粘土を捏ねながら希子と将平は思いついた互いの特徴をあげる。
「額の傷、つけてー」
「前髪あげて髪留め付けるか」
「焼きあがったら前足に包帯巻いてあげなきゃ、ね」
完成したら並べて写真を撮ろう。贅沢な思い出を想像し二人の心はさらに弾むのだった。
「土の手触りというのはなかなか良いものだな」
クラスの仲間と並んで丁寧に土を捏ねる龍夜の隣で見本を眺めていた裕士は意外そうな声をあげる。
「シーサーって案外顔、かわええやんなぁ」
「でも、シーサーは魔除けなんですよね……」
「そうだね、シーサーと言えば狛犬みたいなものだよね」
シーサーと狛犬の共通点について語るミリアといろは。
「で~きたっ」
そんな中、茉莉花は早速ちびシーサーの量産を開始していた。
小さいシーサーいっぱい作ってどうするの? 答えは完成するまで待っててね!
「我が股旅館を守る最高の守護神を作るのだ!」
大きくて強そうなのを作るぞ、と張り切るのはくるり。
龍治と虎次郎も一緒に粘土を捏ねる。
「これって小さいの2個作っても良いんかね」
捏ねた粘土を二つに分けた龍治はまず片方の山を手に取りパーツ作りを始めた。
一方の虎次郎が見本を見ながらじっと分析中。どんなシーサーにしようか、一通りイメージを固めたところでふと手元を見ると何やら違和感が。
「くー! 俺の粘土持ってってるすよね?!」
「お前、俺のも取っただろ。こら、シカトそんな」
二人の抗議もくるりはどこ吹く風。盛大な溜息を付く虎次郎と龍治だった。
「俺、掌サイズのシーサーを作ってみようかな。鐡哉は?」
「僕は、かっこいいのが良いかなぁ……」
力強く粘土を捏ねる【TYY】男子コンビの隣で桜子が不安そうに奏恵に試作品を見せる。
「……これ、猫さんに見える?」
「うん、足とか猫さんっぽいよ!」
上から横からと眺めていた桜子だが奏恵が頷くとほっと安堵の表情を浮かべた。
「怖いものはしっかり見つけてくれるように大きな目にしようっと」
「背中に勾玉つけたらぴー助ぽくなるかな?」
表情は? 色は? 話し出すと止まらない。
「こういうの、鐡哉は得意そうだよな」
ちらりとエアン達が視線を向けた先で繊細なパーツを1つずつ丁寧に作っていた鐡哉が顔をあげる。並べられたパーツは熟練の職人が作ったといっても過言ではない出来。
「鐡ちゃん先輩、慣れた匠って感じ……!」
凄い! と声をあげる奏恵たちだった。
【雨宿り】の面々もそれぞれ作りたいシーサーのイメージを固め粘土を捏ねる。
「俺、かっこいいシーサー作るんだー!」
意気揚揚とシーサーのパーツを作り始める刻マイペース。
「私はずっとうちにいる夢路さんをモデルにするよ」
携帯を開いて愛猫の写真を確認する言葉の手元を菫と小鳥が覗き込んだ。
「ネコ神さま、ですね」
「しーさ、伝説の、猫?」
うきうき楽しそうに粘土を捏ねていた小鳥の手が止まる。
首を傾げる小鳥に菫が優しく言った。
「シーサーって獅子を沖縄方言で言ったものらしいですよ」
シーサー。シーシー。成程、と小鳥は頷き作業再開。
一方、相棒の風雪をモチーフにしたシーサーを作ろうとする久遠は少々苦戦気味。
「やはり細かい造形は難しいな」
全体を見ながら斬魔刀の角度を右に左に調整を繰り返す。
――個性溢れるシーサー達に出会えるのが今から楽しみ。
眉間に皺を寄せながら首里城で見たシーサーを思い出そうとしている小鳥の頭を刻はそっと撫でた。
●碧い風に包まれて
ゆったりとした沖縄の空気に包まれた教室は和やかな時間が流れている。
頭に描いたイメージに従い凜はパーツに分けた粘土丸めドキドキしながら重ねてみた。
「わわ、頭ちょっと大きいかもっ」
ころんと落ちた頭を見て慌てて調整。にっこり目のお座りポーズのシーサーさんは出来上がったら部室に飾らせてもらうつもり。
「シーサーシーサー可愛いシーサー♪」
即興で作った歌を口ずさみながら紫苑はぺたぺた粘土を土台に張り付けていく。
作るのは音符の模様がついた鬣にベースを持たせたベーシストシーサー!
「あれ? 結構むずかしいなコレ……」
凛々しく、かっこよく! とすずめが念じながら作ったシーサーは丸っこく愛嬌のある見覚えのある顔。その瞬間、お兄ちゃんへのお土産に決定。
粘土を丸めて潰して形を整えて、雲龍は楽しそうに手を動かしていた。
「手足や目は見栄えがするように慎重に……」
一つずつ、丁寧に。シーサー達は少しずつ形になる。
各人が思い描いたシーサーを作るのも楽しいが、友人と一緒に作るのもまた楽しい。
「那波、こっち向いて?」
「何じゃ? ……わっ!?」
鼻の頭に粘土を付けられ驚く那波を見る響はとても楽しそうに微笑んだ。
口を開けたシーサー(雄)と口を閉じたシーサー(雌)。
雌雄一対で置かれることが多いと聞きフランも結斗に対のシーサーを作ろうと提案する。
「僕が雌でフランさんが雄だね」
了解、と頷いた結斗は早速シーサーらしいシーサーを作り始め。
一方、フランの作るシーサーには所々に薔薇の装飾が施されていた。
「クラブの守り神にしようと思うんだけど、どうだい?」
「洋館にシーサーねぇ……」
場違いな気もするが、きっとクラブの皆を守ってくれるに違いない。
どんなのを作ろうかと未だ思案に暮れる楼沙にクラレットから耳寄りな提案。
「シーサーって口を開けてるのと閉じてるのといるから、二人でセットにしない?」
「それってとっても素敵なのだ!」
クラレットが閉じている方、楼沙が開けている方のシーサーを作ることにする。
「この子の名前はクーラーなのだ!」
「私の子の名前はローサー!」
二人にこりと顔を見合わせシーサーと同じく可愛らしい表情を浮かべて微笑んだ。
出来上がったら互いに作ったものと交換しようと約束していた晴汰と円理。
「胴体はこれ位の量でいいかな……?」
晴汰が粘土をくるくる丸めるとぽってりとした身体が出来上がる。
一方、円理は意気揚揚と頭部作りに着手。
「魔除けというからには悪を追い払える強さが必要だよな」
惜しみなく粘土を使って作った顔は悪霊を退治しそうな厳つい顔になっていた。
オリジナルシーサーを作ろうと空は気合十分! ……でも。
「やーちゃ、どやったらシーサーさんになるのっ?」
ぐちゃぐちゃになった粘土を放り出して器用な夜兎に助けを求める。
「空って意外と不器用?」
クスっと笑い、夜兎は空の粘土へと手を伸ばす。
「見て、やーちゃ! 花冠作ったの」
「可愛いな、似合うと思うぞ」
かわいいシーサーを想像し二人にゅふふと笑顔が零れた。
手元の粘土と格闘している心桜を見守る明莉の口元に笑みが浮かぶ。
「あぁぁぁぁ……!」
ちょっと話に夢中になっていたばっかりに。
土台の上でべちゃりと潰れたシーサーを茫然と見つめる心桜の隣でこらえきれず明莉は噴き出した。
「手伝おっか?」
明莉の申し出にじと目を向けつつ頷く心桜。
「なんで、明莉先輩がやるとこんなに簡単そうなんじゃろう……」
口を尖らせ心桜はまんまる目のシーサーをじっと見つめるのだった。
「うちのクラブの門番にするシーサーを作りたいんですよね」
嬉しそうにぺたぺたパーツを張り付ける司だが、見本に比べてずんぐりむっくりしているような気がする。
「それ、犬じゃないんですか?」
首を傾げる遥斗に司が抗議する。曰く尻尾が丸いらしい。
「あ。志藤君。この方が格好いいですよ」
「い・じ・ら・な・い・で・く・だ・さ・い」
鼻を潰そうとする司の魔の手からシーサーを死守する遥斗も完成までもう少しだ。
小さなシーサーで練習中の【紡縁】の仲間達。
自分らしいシーサーを作ろうとするフェリスだが……。
「何か、違うようにゃ……?」
気を取り直して皆のシーサーを見せてもらう。
「にへへ、かわいいシーサー作るっすよ!」
ぺたぺた粘土を張り付ける綺子のシーサーはハート型の目がチャームポイント。
「ニケのシーサーはね、ちゃんとお手紙銜えてるんだよ」
ニケの願いを託されたコを見て「可愛い」と羨ましそうにゆずるは呟いた。
「わたしも、かわいいシーサーに、したいなぁ」
パーツは丸っこく、口はにっこり。
愛らしいシーサーに聖もほっこり。
「わたしのは……お花で飾ってみようかな」
「レン先輩作るの上手」
かっこいいな、と見つめるアストルの手元には黒い毛並に白い髭のシーサー。お腹が空かないようにおにぎりも一緒だ。
「我ながらいい出来!」
満足そうな蓮二の前には橙のタテガミがクルっとしてシャキッとした青いシーサーがきりりと立っている。
「イコ姉ちゃん、見て!」
チセの双子シーサーを見てイコの顔に笑顔が浮かんだ。
「わあっ、花飾りつけたオシャレさんがわたし?」
「うんっ、それで首にどんぐり飾りつけてるのがチーなんよ」
きゃっきゃと姉妹のように喜ぶ二人。
――さぁ、本番はこれからだ。
●個性豊かな守り神
シーサー作りもいよいよ大詰め。
目指すシーサーは静かな威圧感のある感じ。雰囲気は猫っぽいが気にせず龍夜は仕上げにかかる。
「じゃぁ~ん! 完成ー!!」
見て! と茉莉花が教室中に響き渡る声で【井の頭中2-D】の友人達に披露したのはちびシーサー達を積み上げたピラミッドシーサー!
裕士のシーサーは完成までもう少し。暑さが苦手な小夜子は溶けそうになりつつもなんとか仕上げていた。
「あれれ? 此れは……」
何処からどうみても狛犬にしか見えずいろは本人も動揺を隠しきれない様子。
「いろはやミリアのもいい感じだな」
魔除けの狛犬に威嚇する猫。龍夜がクラスメイトの作品を褒める、が。
「此れはシーサーだよ、シーサーなんだよ?」
「ち、違うの、猫じゃなくて……」
これはシーサーなんです。
涙目で必死に訂正するミリアの背後から突如ふふふ、と怪しげな笑い声が。
――この声は芳江!?
「ふっ、我が創りし忠実なる僕! 門ヲ守リシ異形ノ獣!」
翼を持つシーサーを誇らしげに掲げる少女はとても満足そうだった。
重厚感にあふれどっしりと構えたシーサーの出来はいい感じ。八雲は嬉しそうに傍らの少女達に視線を向ける。
「美賛歌ちゃん、玖羽ちゃん、どう……」
玖羽のシーサーを見た八雲がかっと目を見開いた。つられて顔を向けた美賛歌は戸惑いの表情を浮かべる。
「か、可愛くて個性的、です……ね」
二人が見つめる視線の先には芸術性溢れるシーサーが鎮座していた。
「前衛的ですばらしい面白いことを考えるな!」
感心する八雲に女の子なんですよ、と嬉しそうに玖羽は告げる。
「私の天才的なセンスを発揮する時が来たか……」
張り切るシュッテは親友のアロアと並んで最後の仕上げ。
「やっぱラメ埋めとかはダメだよねー」
可愛くデコりたいのに、と口を尖らせるアロアはウィンクで我慢。
「こ、これは……」
シュッテのシーサーは凶悪な顔に獰猛な牙。そして全身に鋭いトゲを持つその姿は……ウニにしか見えない気がする、が。
「スゴイ! 唯一無二のシーサーじゃん」
アロア、大絶賛!!
――なお、ミニシーサーを愛でる美賛歌の姿を八雲がちゃっかり写真に収めていたという事実をここに残しておく。
●みんな上手にできました!
楽しかった体験教室もそろそろ終わりの時間。教室のあちこちから「出来た!」という嬉しそうな声が聞こえてくる。
それは【悠々楽々】のメンバーも同じだった。
「手乗りシーサー出来ました!」
「かわいい……っ!」
じゃーん、と里緒が掲げた愛らしいシーサーに詠乃はメロメロ。
「秋五んは作者に似て地味ブサやな」
きひひ、と笑う宵に「ちょっと耳がでかいだけだろ」とすかさず秋五が反論する。
「詠乃のはスゴイな。模様も細かいし土産物屋にも出せそうだ」
完璧なシーサーにマイアは感心するのみ。それに引き替え自分のは……。ちらりと視線を向けたところ、突然里緒が笑い出した。
「な、何か大きなのと変なのが、並んでる……っ!」
宵が作ったシーサーは豪快で、マイアが作ったのは……。
「が、頑張れば猪にも見えなくないぞ!」
秋五のフォローに落ち込んでいたマイアも少し救われる。
でも、二つ揃うと可愛くて。指をさして笑う里緒の髪を宵がぐちゃぐちゃと掻き回す。
「人の作ったもん笑うような子ォはこうや!」
「やーん、詠乃先輩、助けてくださーい!」
手乗りシーサーに夢中な詠乃が気付く気配もなく。里緒の声が教室中に響き渡った。
「桃香のは女の子っぽいから、オレはカッコイイ感じにしてみたぜ」
遊が作ったシーサーは大きく口を開けており、きりっとした眉が格好良い。
「え、七瀬さん、もう終わったんですか!?」
丁寧に作業を進める桃香はまだ終わりが見えていない。
「気にすんなって、のんびり作れば良いんじゃね?」
つぶらな瞳が愛らしいシーサーが出来上がるのを楽しみに。遊は桃香が作り終えるまでずっと待とうと決める。
「よしっ、出来ましたっ!」
満足気に出来上がったシーサーを眺める遥香。スマートなフォルムに迫力ある表情。そして鹿のように立派な角。……角?
「つけるつもりなんて、ないのに……」
角付きシーサーに戸惑う遥香とは別の理由で困惑している者もいた。
「……イメージ通りなんですが」
鬼の様な形相のシーサーを見つめる流希。流石にこれはお土産には出来ない。急遽お土産用に眼鏡をかけた小さなシーサーを作ることにする。
出来上がったシーサーを見せ合う賑やかな声で教室は盛り上がっていた。
「鈴城くんのは、えーと……」
シーサー本体と同じくらいの大きさになったぐるぐる模様の何かがついている。
首を傾げる瑠璃羽に有斗は平然と正解を告げた。
「尻尾だよ、尻尾」
「そっか、しっぽか~。愛嬌あるね、しっぽ丸!」
「風音さんもクマ……じゃなくてシーサー可愛くできたね♪」
「やっぱり、クマっぽい……?」
でも褒めてもらえたし、と気を取り直した瑠璃羽はそっとシーサーを撫でる。
沖縄らしくシーサー作りで対決する貫と柚羽。
「思ったよりも丸いフォルムの生き物になったな……」
でも、きりりとした凛々しい顔立ちは貫も満足の出来。
「で、狸森。これは何だ……?」
禍々しくと念じて創った結果の産物に柚羽本人も首を傾げた。
「だが魔除けの効果はありそうだね!?」
「魔除けっつーか、これは……」
ちなみに勝負方法を決めておかなかったため、決着は完成品到着まで持ち越されることになる。
「わぁ、みんなスゴイね」
みんながどんなシーサーを作ったのか。興味津々といった様子でドロシーもいろんなシーサーを見て回っていた。
「なんてこったい!」
プラモのマコちゃんことマコトが作ったのはシーサー耳の美少女フィギュア。いつもの癖とは恐ろしい。
「基本は板と箱と棒。これを組み合わせれば……」
秀春作・メカニカルシーサーの完成だ。
「邪気を追い払うイメージで作ったんだけど……」
粘土を捏ねるまではうまくいったはずなのだが、詠朧の前に鎮座するシーサーはどうみても邪気を呼び込む気しかしない。
「なかなか上手くできたんじゃないか」
直人本人は至って満足そうだが、傍目に見るとなんともシュールなシーサーだった。
出来上がったシーサーはどこかイフリートに似ている気がする。でも。
「……良い出来です」
満足そうに刹那はシーサーを眺めて微笑んだ。
正流が作ったシーサーはそれぞれリボンとメガネをつけた寄り添う2体のシーサー。
「我ながら良い出来栄えです」
相棒への思いも込めて。正流は余った粘土で揃いのストラップも作る。
眉間に皺を寄せて静寂は出来上がったシーサーを睨……いや、じっと見つめる。
「何で、ドヤ顔の猫になった……?」
誰かに意見を聞こうと視界に入った來未の前にずずっとシーサーを差し出した。
「ちょっといいか。久椚、この生き物は何にみえる?」
「……」
じっとシーサーを見つめていた來未は小さな声を漏らす。
「猫」
やっぱり、猫だった。
「來未さんはどんな子作ったの?」
夕月に声をかけられ來未は首に古銭を付けたシーサーを見せる。静寂とは反対に犬の様。
「あなたの、シーサーは?」
夕月が見せたシーサーは作った本人に似たのかほんわかした和み系シーサーだった。
作るなら、大きなシーサーがいい――。
麗羽もそう願った一人。彼の作ったシーサーは望み通りの大きさだが……置き場所があるかどうか。迫力溢れるシーサーにふさわしい場所を探そう。
大まかな形作りは枷織、細かい装飾はユーリーと手分けして大きなシーサーを作っていた二人。
「すっごいシーサー作ってお土産にしようねっ!」
「そうだな、格好良いの作ってやろうぜ」
額に流れる汗も気にせず作業に打ち込むユーリーを手伝っていた枷織。クラブの皆の驚く顔が早く見たいと笑いあう。
【紡縁】一同が作るシーサーもいよいよ最後の仕上げを残すのみ。
「あ! ネクタイね、私選んでみたっすよ!」
じゃーん、と綺子がハート柄のネクタイを見せればアストル達はさらに盛り上がった。
「九紡も忘れちゃダメだよ」
「もちろん、腹巻もつけてやろうぜ」
「ね、つんつんって小さな穴で髭っぽくしてみたら?」
「そうだ、土台に糸車作って敷いたらどうやろ?」
「ふふ、みんなで作ると楽しいですね」
溢れるアイディアに耳を傾けていたフェリスと聖も楽しそうにパーツをつけていき――。
そうして完成したシーサーを前に思い思いの感想を口にする。
「ハートのネクタイ、眉毛、うん、そっくり」
ゆずるがたてがみにつけた寝癖を見て、イコがクスっと声をあげた。
「その寝癖、本当に誰かさんにそっくりだわ」
そう、そこにいるのは皆の愛する誰よりも強い護り神。
「焼きあがったら、皆で一緒に届けに行こうね!」
ぐるりと皆の顔を見回すニケの言葉に8人が元気よく頷いた。
今日作ったシーサー達とは焼きあがるまでしばしお別れ。
再び会った時には沖縄の旅の思い出を聞かせてあげて。
楽しい思い出に包まれて、きっと、みんな笑顔になるはず。
――そう。
これは笑顔を運ぶ、あなただけの守り神。
作者:春風わかな |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年6月18日
難度:簡単
参加:83人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 14/キャラが大事にされていた 9
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