修学旅行~輝く海をマンタと泳ごう!

    作者:月形士狼

     武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
     今年の修学旅行は、6月18日から6月21日までの4日間。
     この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。

     今年の修学旅行は、南国の太陽が照りつける沖縄。
     沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
     さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
     修学旅行の3日目の自由時間では、石垣島でダイビングを楽しむ事ができます。
     この時期の海は温かく、降り注ぐ太陽はマリンブルーを一層際立たせる季節です。
     色鮮やかな小魚たちが群れをなし、光のシャワーの中を悠々と泳いでいる姿が見れるでしょう。
     そして何より、この海ではマンタとの遭遇率が高く、全国のダイバーの間でも高い人気を誇っています。
     マンタの大きさは3mから5mと非常に大きい反面、好奇心旺盛で人懐っこい性格です。
     運よく出会えたら、ゆったりと泳ぐこの愛らしい生き物と海中遊泳を楽しみましょう。
     自然溢れる沖縄の空の下。
     息を呑むほど美しい穏やかな海で、大切な思い出を作りませんか?
     いつまでも笑顔で語り合える。
     そんな修学旅行を、みんなで楽しみましょう!


    ■リプレイ

    ●輝く海の贈り物
    「まさか、こんなに早く機会が来るなんて!」
     目の前に広がる美しい海に、慧樹のテンションは最高潮だ。
    「まあ、スミケイの気持ちもよく分かるけどね」
     そんな彼を見て笑うアナスタシアに、百舌鳥が頷く。
    「そうだね。また沖縄に来られるなんて思いもしてなかったよ」
     胸を高鳴らせて見た世界は――辺り一面の青と、花畑のような色とりどりの魚達。
    (「沖縄の海ってこんなにキレイんだんだね。……スミケイ?」)
    (「アナ、モズ! あっち! マンタっ!」)
     空を飛ぶように雄大に泳ぐマンタが、歓迎するように間近を通り過ぎていく。
    (「――今度会う時は、一緒に」)
     その姿に心奪われていた百舌鳥が我に返り、その後ろ姿に誓って。

    (「……マンタとか楽しみだな……」)
    (「あーあー、無邪気にはしゃいじゃってまぁ。 何だかんだ、澪架もこういうの好きだからな」)
     誘われたからと自分を装う心情は、隣の暁に筒抜けだったりする。
     海の中の光景に、澪架がはしゃぐように写真を撮りまくり、
    (「さっちゃんあっち! ほらほら!」)
    (「はいはい、そんなに叩かなくても分かってるって」)
     肩を叩く少女に笑いながら、マンタへ近づく為に手を差し伸べた。
     
    「澄みきった海に真っ青な空。都会とは全然違いますね」
     驚く藤恵に、智恵美が地元の海とは全然違うと頷く。
    「マンタと触れ合えるなんて、修学旅行って凄いんですね!」
     水中呼吸のESPを使い、色鮮やかな光景の中を泳いでいると、のんびり泳ぐマンタを見つけ、一緒に泳ぎながら少し撫で。
    「ふーちゃんこっちこっち。せーの!」
     スリーショットの写真を撮りながら思う。
    「また、二人で来てみたいですね」
     なんて。

    「楽しみでゴザルな! ……ウイ、泳げ……いや、潜れマスカ?」
    「うぅ、ほんと平気かなぁ……こわいぃぃ」
     ウルスラが泳げない羽衣を気遣う横で、紫姫はと言うと、
    「泳ぐのは嫌いじゃないですし、マンタと泳いでみたいですが……」
     どうも水着が恥ずかしいようで、それならと玉がウェットスーツを借りて来た。
    (「……不評なのかな。割と好きなんだけど」)
     恐怖と羞恥心と乙女心の葛藤の後、意を決して海へ。
    「なんてきれい! すごいすごい!」
     感激する羽衣を3人でフォローし、ウルスラがその手を引いて透き通った海を泳いでいく。
    「ふふ、まるで宝石の中を泳いでいるようでゴザルなぁ」
     その感想に頷いた紫姫が、不意に飛び込んできた優雅で幻想的な風景にぽつりと零した。
    「大きい……」
     玉が、まるで王様のようにやったりと泳ぐマンタに目を奪われながらも、慌ててシャッターを押す。
    (「寮の皆にも上手く伝わるかな、この感動」)
     皆で感じたこの思いが、届くようにと願いながら。

    「折角同じクラブ、同じ学年な訳だし」
     その誘いに、彩花は二つ返事で了承したのだが、
    (「少し恥ずかしいですね……」)
     紺地で白いラインのビキニが、浮いている気がする。
    「大丈夫、とっても可愛いわよ♪」
     薄いグリーンのビキニ姿の黎花に撮られ、覚悟が決まった。
    「いきましょう桜庭さん」
     輝く海中の光景を、2人はデジカメに、瞳へと焼き付ける。
    (「あ、マンタっ。一緒にどう?」)
     ゆったりと泳ぐ姿に感激し、共に写ろうと誘ってみながら。

    「わ、那波かっこいいねー!」
     相手の姿に胸を高鳴らせていたら、不意に写真を撮られ。
    「ひ、響 妾を撮ってもいかんのじゃよ……」
     少し照れつつも、満更でもない様で子笑うと、2人で海へ。
     海の中の風景や那波を撮っていた響が、ゆったりと泳ぐマンタの姿を見てふらふらと近づく。
    (「の、乗りたい……」)
    (「響ーっ?」)
     圧倒されていた那波が引き戻し、一緒に写真を撮って笑みを零す。
     これはデートだと、言い合いながら。

    (「日本にはこれほど綺麗な海があったんだな」)
     鮮やかな光景に、冬崖が驚きながらカメラを向ける。
    (「それに、マンタと一緒に泳ぐなんて滅多に出来ない」)
     驚く冬崖と同じ感想を抱きながら、葵が遊泳を楽しんでいると、
    (「おいで可愛い子たちー!」)
     白いビキニに赤いパレオを纏った七がマンタを見つけ、皆に合図を送ると両手を広げていた。
    (「マンタってすっげぇ……」)
     その想像以上な雄大な姿に、朔之助が放心したように見つめる。
    (「おっと皆の写真撮るんだった。クラブ専用のアルバムでも作りたいしな」)
     冬崖もまた、写真に忙しそうだ。
    (「皆の姿も、マンタも是非収めさせてもらおうか」)
     カメラを向けられた七が、マンタに触れながら満面の笑みでピースする。
    (「でも、撮影組も一緒に遊ばないとね。小鳥遊!」)
     手招きされ、マンタと一緒に撮影組へと泳ぎながら葵は笑う。
    (「写真を見せてもらうのが楽しみだな」)
     そんな事を、思いながら。

    「ビーチに、ですか?」
     意外そうな声に、マーテルーニェが囁く。
    「ええ、天上。まあ、趣味ではないのですが、輪を乱すつもりもありませんわ」
     なるほどと花之介は納得して微笑み、
    「(それに、マンタを見てみたいとは思っていたのですわ)」
     続く小さな声に聞き返す声を置き去りにして、青のワンピースに着替えビーチへ。
    「お嬢様。水着、似合ってますよ」
     その感想にくすっと笑って、
    「当然ですわ」
     そう答え、心地よい海へと2人で潜っていった。

    「せっかくの海水浴で足がつるなんて、話にならんからな。自分らも準備運動しときぃや!」
     カピ研のリーダーであるほのかの注意に、
    「ダイビング、タイピングと似ていまするね?」
     アンジェレネが唐突に意味不明な事を口にした。
    「ボクはダイビング初めてですが、大丈夫でしょうかっ?」
    「まあ経験は無いが泳ぐことは得意だぜ?」
     月夜の発言に、司がメンバーに気を使って様子をみようと誓いつつ、一同は海へ。
    「そういや、あおねぇが『マンタ見つけたる!!』と言うてたな。探すのに夢中になって、溺れなければえぇけどな……」
     ほのかの発言。それはフラグ。
    「(修学旅行で死ぬなんて……私の人生終わるの早すぎ)」
    「 ……にゅ!? セレス先輩の様子が何やらおかしいのです!?」
    「本気で溺れてるし! こんなとこで重傷とかマジ勘弁!」
     月夜の報告に、司が慌てて抱えて海面へと上がる。
    「カピバラが泳いで助けに来た夢をみました、マンタ見に来たのにカピバラ」
     なんとか事無きを得ていると、
    「まんたーまんたー、あなたはいったい何まんたー♪」
     とか歌っていたアンジェレネがマンタを発見し、マンタを含めて皆で写真を撮る。
     それは慌ただしくも、大切な思い出。
     修学旅行を彩る、1ページ。

    「やべー! マンタってどんなんだろうな!?」
     憂鬱な織羽とは裏腹に誠のテンションは上がる一方で、そんな2人は透き通るような海に心を奪われていた。
    (「こんなに綺麗に見渡せる海って、初めて……」)
     そこへ、大きな影が差す。
    (「うおおおでけー!」)
     大興奮な誠の横で、織羽は圧倒されていた。実際に間近で見ると大違いだ。
    (「それに……とっても大人しくて、優しい感じ」)
     楽しげにマンタの周りで泳ぐ誠に、浮き立つ心で手を振り返した。

    (「すご……海の中に差し込む光が超神秘的……もう神々しすぎて神様来そう」)
     色鮮やかな海の光景に心を奪われているのは、由宇だけでは無い。
    (「さすが沖縄。何だろう、月並みだけど幻想的と言うのか」)
     まるで別世界だと、玲は思う。それは、ここにいる全員が感じているだろう。
    (「すごい。綺麗……! ずっとずっと海の中にいたくなっちゃうなぁ……」)
     和菜がそんな感想を抱けば、
    (「メディアで見る色鮮やかな魚達も、綺麗なサンゴ礁も……実物には敵わないな」)
     遊が初めて見る南国の海にただただ感動する。
    (「綺麗ですねー……いいですねぇ、皆と一緒に過ごすこの時間」)
     そんなクラスメイトや魚との姿を、嘉月が写真をカメラに収め。
    (「いたぞ。皆、こっちだ」)
     青いラッシュガーに、紺のサーファーパンツの実が先導し、雄大で愛らしい生き物に近づく。
    (「人馴れしてるんだな……小さい魚も一生懸命ついてきてる……」)
    (「でっかいけど結構可愛い顔してんのな」)
    (「うお、近付くと大きさがよく分かる……ちと怖いが、温厚なんだっけか」)
    (「なんか大きいとちょっと怖いんだけど……ほんとに人懐っこいんだ……」)
    (「一緒に泳ぐとか滅多に出来んし、この感動を忘れん様にせんと!」)
    (「「大きいですねー。それが僕達のこんな近くにいるなんて……」)
     そんなマンタと皆にカメラが向けられ、
    (「ふむ、記念写真か。 見せてやろう、伝説の馬の踊りを!!」)
     皆で笑顔を浮かべ、写真に写る。
     色鮮やかな海と、思い出を焼き付けて。

    「良いお天気ですわね……」
     空を見上げた深雪が好天に感謝しつつ、カメラを手に海へと入る。
    「えへへ、マンタ、マンター♪」
     わくわくしながら海に潜る朱美に、りんごが笑みを零す。
    「そんなに慌てなくても」
     そう口にしながらも、この綺麗な海には自分も心が浮き立つようだ。
    (「一面エメラルドブルー……綺麗……心が洗われる思いです」)
     同行する人達に手を振りながら、璃耶が命の源たる海に目が奪われる。
    (「ふわー……おねーさん達!」)
     他の皆も同じように息を呑む中、朱美がマンタを見つけて伝える。
    (「すごいなぁ、優雅だなぁ」)
     ゆったりと泳ぐ姿に璃耶がため息を漏らす。
    (「なんと雄大なのでしょう……まるで、この海を司る神であるかのよう……」)
    (「勿体ない位の、素晴らしい時間です……♪」)
     海の蒼と雄大な生き物に、深雪が微笑み。
    (「……出遭えて本当に良かった」)
     その後ろ姿を見送り、りんごが感謝を告げる。
     とても素敵な、ひと時に。

    「こんなにも透き通っている海があるなんて……」
    「……こんなに透明度の高い海は初めてです」
     白と青の上下のビキニに、雪柄パレオをつけたセレナに、矢絣柄の着物をビキニにした様な水着に、袴の色パレオをつけたゆのかが頷く。
     2人はマンタの背に捕まって海中の光景を楽しみ、やがて離れると水中で戯れるように泳ぐ。
     その姿はまるで人魚のようで。
     水着の紐が緩み、水中呼吸が切れそうになって慌てたりしていた。

    「マンタも見れたし、満足かな」
     ダイビング用品を返却しながら遥が微笑む。
     雄大なマンタも、鮮やかなサンゴも、きっといい思い出になるだろうと思いながら。

    「水中カメラさんを借りてシャッターチャンスを狙うカメラマンさーやなのよ☆」
    (「やっぱり狙うはマンタだろうか……群れで泳いでいる事もあるそうだし、楽しみだ」)
     水中カメラマン風の桜子にエアンは様になってると褒め、悠々と泳ぐマンタの姿を発見して合図を送る。
    (「本当に飛んでいるように見えるね」)
    (「ふふ、初めまして、お顔こっちねー!」)
     そうして2人は満足するまで撮り、お互いのツーショットを無事に写真に収めた。

    「この綺麗な海の想い出を写真に収めまくるぞー!」
    「そういや藤堂、泳げるんじゃな? てっきりカナヅチかと思っとった」
     互いに写真を撮りまくる気な優奈と篠介が、軽口を叩きながら海へと入る。
     まるで宝石の中に閉じ込められたみたいな透明感に包まれ、青い水面から注ぐ光の列に、 きらきら瞬く銀の鱗の群の中、泳ぐマンタの姿に、息も忘れて見惚れ。
     そしてマンタと泳ぎ、写真を撮って笑みを浮かべる。
     大切で良い思い出を、確かに手にした実感と共に。

    (「やっぱ沖縄いいなー……海が綺麗で、空も呼応するように青くて……」)
     海を前に、悠埜が気心知れたクラスメイト達を見渡す。
    「こんな真っ青な海でマンタも見れるなんて最高じゃねえか」
    「この面子なら、皆遠慮なんてしなくていいだろうしな」
     嘉市に頷きながら、零冶が泳ぎが苦手な者がいないか気を配る。幸い、この中にはいないようだ。
    「にゃはーっ!! 海うみっ……!! 空マンタさんもはっじめてでわっくわくしちゃうなっ」
     そして空の高いテンションに引っ張られるように、全員で海に。
    「空ちゃん、魚が綺麗だよー、写真撮りましょっ」
     手招きして呼ぶと、水中カメラでパシャリ。
    (「おぉ……おぉぉ。マジ綺麗」)
     泳ぎが超得意と自称する供助が滑る様に潜り、振り返ると慌てて背後を指さす。
    (「……本当だ、マンタ君いたー!」)
     そのジェスチャーに振り向いた都が、驚いて海中で叫ぶ。
    (「実物すっげえな。想像してたよりも迫力あんなあ」)
    (「鵺白ちゃん一緒に撮ろうだっよよー!! 悠埜、郁ちゃ、零ちゃ、供ちゃもこっちむーいて」)
    (「男の子達は泳ぐの上手ね……あ、皆の為にも、もっと写真撮らないとね」)
    (「部の先輩への土産と、皆に後で渡す分を撮っておくか」)
     そして陸へと上がり、こんな提案が。
    「なぁ、折角だし、海をバックに皆で集合写真撮らないか?」
    「ああ。思い出作りには必要なことだな」
     そして、タイミングよく海面に上がったマンタと共に、皆の笑顔の写真が撮れ、
    「みんな、今日は素敵な思い出をありがとう!」
     そんな言葉が、沖縄の海に響いた。

    「海だー!! でけー!!」
     テンション高く叫ぶ風貴は、ダチの雷歌に振り向き。
    「知ってる……? マンタって毒あるらしいぜ…」
    「げ、まじかよ!? なかなかデンジャラスな奴だなマンタ……」
     等と軽口を叩き合い、海へ。
    (「TVで見る南国の海みたいだ……。 おー、魚カラフル……」)
    (「見て見て雷歌たん」)
     腕を引っ張られて振り向けば、マンタの姿。
     風貴が雷歌にカメラを構え、荒ぶる謎のポーズを返されてちげーよと突っ込んだ。

    「わ、綺麗な海デスネ……! 水が透き通ってて海底まで良く見えマス……!」
     初めて見る沖縄の海にシャルロッテが歓声を上げ、期待の視線を受けながら、アンディが海に近づき、
    「HAHAHA! 超忍法水遁の術!」
     説明しよう! 超忍法水遁の術とは、水中で動作に慣らしておき、鍛えた肺活量で長時間の潜水に耐える技である! 欠点はただ飛び込んだだけに見える事だ!
    「……ここで豆知識を少々」
     水飛沫を背に桐人は皆に、マンタのリラックスしている目安を教え、
    「それと、マンタは、ごくまれにウインクするそうです。見たら幸せになれるんですよ」
    「へえ、桐人くんすごい! よく知ってるね!」
     その知識に、架乃が感心の声を上げ、いよいよ皆で海の中へ。
     傍目からは分かりにくいが、今回のダイビングを結構楽しみにしていた馨の眼は、見るものが見れば輝いているように見える、かも知れない。
    (「あ、皆見て!」)
     飛鳥が指さす方向を見れば、ゆったりと泳ぐ雄大な姿。
    (「うわ~、ゆったり泳いでる姿が気持ち良さそう。そして、やっぱりつぶらな瞳がとってもキュート!」)
     皆を呼びつつも、その視線はマンタに釘づけだ。
    (「凄い、綺麗です」)
     水緒がマンタに捕まって一緒に泳いでカメラにピースで返し、水中カメラでお互いを映していく。次々と写真を撮る中、
    「……あれ? もしかして今、マンタ……ウインクした……?」
     一瞬何か見えたような気がして、慌てて陸に上がって確認する。
     その幸運の証は、確かな思い出と共に、しっかりとカメラに写されていた。

     海中の勇真が海面を見上げていると、その頭上をマンタが泳いでいく。
    (「折角だし、一緒に泳ぐか」)
     楽しげで嬉しそうな笑みを浮かべ、その後を泳いでいくのだった。

    (「沖縄の海って、こんなに綺麗なのか……凄く気持ちがいいな」)
     海へと入った翔琉がそんな事を思っていると、那月が確認の声を上げる。
    「桜庭、桜堤。海中でのサインは覚えたか? それと、撮影に気を取られて海水を飲むなよ」
     リアンがその声に頷き、、翔琉もそれに続く。そしていよいよ、潜水を開始した。
     那月が目当てのものを見つけ、全員に指を差し知らせると、ゆっくりと遊泳を楽しみ。
     リアンがのんびりと、 絵本で良く見てた、幻想的だけど現実の光景を泳いでいく。
    (「お前、自由に泳いでいるのか。こんな風に」)
     心の中で声をかけ、翔琉が2人を写真に撮り、自分も写してもらうと、その姿を目にも焼き付ける。
     しっかりと。

    「いつもバカンスを取るサルデーニャとは、また違って良いものね」
    「太平洋と地中海、南欧と極東だからか……、同じ海でも色々趣が異なるものだな」
     きわどいビキニ姿で優雅に日光浴していたエリカとリリアナは、マンタの出るポイントに着くと海中に飛び込む。
    (「凄い……、こんなのイタリアでも早々お目に掛かれないわよ……」)
    (「まるで絵画の中に居る様だ……」)
     近づく雄大な姿に、2人は忘れられない思い出の予感を感じていた。

    「凄いなぁ……」 
     美しい海をカメラで気の向くままに撮影していた焔迅が、遠くに見つけた影に目を丸くする。
    「あれがマンタ……大きいですね」
     楽しそうに笑うと、影に向かって泳ぎ始めた。

     サンゴ礁近くにいる鮮やかな魚に眞沙希が魚肉ソーセージを取り出すと、あっという間に魚が集まり、その場面を綾鷹がカメラに収めていると、水中用ボードが差し出され。
    『かなり猫変身してるとサカナが綺麗よりもおいしそうに見えちゃうのが困る』
     そんな文面に、笑い合った。
     その後2人はマンタと出会って思わず抱き着いて赤くなったりしつつ、ダイビングを楽しみ。
    『また、一緒に泳ぎに行こうな』
     綾鷹がそんなボードを見せ、少し抱きしめた。

    「ゆーし、マンタ。会える、かな。かな!」
     嬉しそうにそわそわするアスルに、攸糸は笑って頷く。
    「 うん! 見られると思うよー! 楽しみだねルーくんっ!」
     色鮮やかな海の光景に2人は息を呑み、ひたすら感動し。
     マンタに出会えたアスルが、ぽかんとしつつ目を輝かせる。
    (「こんにちは、初めまして」)
     攸糸が大丈夫というように触れるが、アスルは緊張しつつまじまじと観察し、離れるとほっとしたように笑いかけた。
     石箱みたいな沖縄の海で、最高の思い出を手にして。

    「よし、楽しみましょうか! まずは競泳でマンタに勝つ!」
     マンタを見つけた彦姫は、そう宣言すると、マンタへと勝負を挑む。
    (「今日はとことんマンタと遊ぶんです!」)
     そんな気合を自分に入れると、力強く泳ぎ始めるのだった。

    「おきなわ、海だー!」
     叫ぶ葉月の隣で、玲那が碧い空、雲一つ無い青空を感じながら海を眺めて呟く。
    「沖縄の海、凄く綺麗……」
    「マンタさんと綺麗なお魚。どっちもいっぱい一緒に楽しもうね!」
    「クマノミとか色々お魚が見れるといいな!」
     そうして海に入った2人は色とりどりの魚を眺め、悠々と泳ぐマンタを見つけて、共に鮮やかな海を泳ぐ。
     どこまでも深い碧い海と太陽、優雅なマンタさんと夢のような時間を過ごしたのだった。

    (「綺麗な海と可愛い魚たち……来てよかったなぁ」)
     悠仁は内心でそう呟くと、改めてマンタに出会う為に海中へと戻る。
     それを幾度となく繰り返してやっと見つけたマンタを写真に撮るが、警戒されるのが怖くて、触れたいのに近づけない。
    (「……あっ!」)
     そんな思いが伝わったのか、マンタはつぶらな瞳を向けると、ゆっくりと悠仁に近づいて行った。

    作者:月形士狼 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月20日
    難度:簡単
    参加:79人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 15/キャラが大事にされていた 0
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