修学旅行~国際通りを探検しよう!

    作者:旅望かなた

     武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われる。
     今年の修学旅行は、6月18日から6月21日までの4日間。
     小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達は、この4日間の楽しい旅程を共に楽しむ事になる。
     
     今年の修学旅行の行先は――沖縄!
     沖縄そばを楽しみ、美ら海水族館を見て回り、マリンスポーツに沖縄離島めぐりなどなど、沖縄ならではの修学旅行を思いっきり楽しもうではないか!
     
     修学旅行1日目、首里城観光が終わったらゆいレールに乗って、国際通りに着いたら昼食時間を兼ねた自由行動の時間。
     国際通りは約1.6kmに渡ってカフェにお土産に雑貨にお菓子、アクセサリーやがっつりご飯まで『沖縄らしさ』を扱ったお店がぎゅーっと凝縮された大通り。
     沖縄の海をモチーフにしたアクセサリーや、紅型や沖縄ガラスといった技術を生かした雑貨を買うのも楽しいし。
     後の旅程に備えてかりゆしウェアなどのお洒落着や、カラフルな水着に手を出すのも素敵。
     テイクアウトフードもたくさんあるから名物のご飯入りかまぼこやサーターアンダーギーを手に食べ歩きとしゃれ込んでもいい。
     特産品のマンゴーや紅芋を使ったお菓子に、沖縄そばのカップラーメンやレトルトのタコライスなんかはお土産にもぴったり。
     少しだけ足を延ばせば牧志公設市場があって、沖縄独特の野菜やフルーツ、魚介類や豚足などなど、生鮮食品から生ジェラートまで手に入る。旅程は1日目だから、ちょっと生鮮食品はお土産には向かないけれど……。
     
    「でも伊智子ってばチョーいいもの見っけちゃったし!」
     嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)が旅行雑誌のページをめくって胸を張る。市場の説明に書かれているのは、『持ち上げ』という単語。
    「あんねあんね、これってば1階の市場で買った魚介類を、2階の食堂に持ってくと料理してもらえるんだって! 刺身に煮付けに味噌汁とか、天ぷらとかにしてもらえるし、魚もすっごくカラフルだしカニとか海老だってあるし、何より新鮮ぴちぴちだし!」
     牧志公設市場に行くなら、昼食をここで済ませるのも楽しそう。
    「あとはねー、沖縄ガラスのアクセと、紅型のバッグにワンピースとか、暑いから髪の毛まとめるのにシュシュとか買ったりね! あとサトウキビと沖縄フルーツのジュースとか、マンゴーのぜんざいなんてのもあるんだって! お土産はやっぱりサーターアンダギーかな、でもちんすこうとか他にもいろいろ……迷っちゃう!」
     瞳をキラキラさせた伊智子は、修学旅行を控えた生徒達に向き直る。
    「んふふー、お昼ご飯にショッピングにスイーツに、全部楽しんじゃおーZE☆」
     びし、と伊智子は親指を立ててウィンク。
     沖縄の幸をぎゅっと詰め込んだ国際通り、あなたも一緒に歩きませんか?


    ■リプレイ

    「沖縄かぁ……ここが沖縄かぁ……!」
     袋で買ったサーターアンダギーを食べ歩き、一緒に歩くドナが硝子細工の亀に目を留めれば、八千華は既にイルカのブレスレットを買い求めていて。
    「Wow、このシーサーのお面かっこいいですね!」
     目移りしながら歩くドナに、八千華がゲームセンターを見つけ「大丈夫1クレだけ、ね!?」と頼み込んだり。
    「さーって沖縄さん、アナタを食べ尽くします! 覚悟しなさいっ!」
     びしっと指さし決めポーズ、国際通りの真ん中で!
     揚げたてサーターアンダギーを3つ買って、「あふあふ、はむ、ふぐ、うん、美味しいっ!」と満面の笑み。
     いろんなお店、見慣れないもの、凄くワクワクするそんな活気あふれるストリート――国際通り!

     少し離れた牧志公設市場にて。
    「あぁ、来て良か……辛っ!」
     アパサーの唐揚げにうっとりからの、突然の明莉の島唐辛子攻撃に涙目になる脇差と朱。その隣ではのんきに「これ、ちょっと辛いけど美味いな~」と平気で唐揚げを摘まむ夜斗。
    「え、犬神食うの?」
    「うん? あれ、くらにかがりん大丈夫か~?」
     かけた張本人の明莉が驚く。「無理そうだったらオレがもらうぜ?」と声をかけた夜斗に、朱と脇差がぶんぶん首を振る。
    「自分の分食え、自分の! ぐ……木元め、覚えてろよ!」
     脇差に頷き頑張って完食した朱が、「あ、あれ美味しそう!」と駆けて行く。「かがりん、一人で行くなー!」と夜斗が追いかける。
     ほれ、と面白そうに明莉が見せた豚の足に、「なにこれ?」と朱は興味津々。
     なお、その間に明莉の飲み物は、復讐に燃える脇差によって激甘キビ砂糖ジュースと化していた。

     お土産の手配を手際よく終えて、紗里亜は食事に伊智子を誘う。
    「伊智子さん、持ち上げするんですよね。何にします?」
    「迷うねー!あ、でもカラフルなの食べてみたいし!」
     わくわく巡っているうちに、魚汁がお薦めの赤マチにセミ海老のお刺身、それにグルクンの唐揚げとメニューが決まって。
    「ふふ、食べきれなくなりそうですね」
    「え、デザートはなし?」
     悪戯っぽく聞いた伊智子に、「もちろん別腹ですよ♪」とウィンクする紗里亜。
    「あの……もし宜しければ」
     大量の生鮮食品を『持ち上げ』て、さらに調理場を見学させて頂けないか、と頼んだ忍を、店主は気さくに厨房の良く見える席に案内してくれた。
    「美味しい……これは、身を締める温度が要なのかしらね……」
     礼儀正しく静かに、忍は目の前で出来上がっていく沢山の沖縄料理を目と舌に焼き付けた。

    「おお、ドラゴンフルーツ生で見たの初めてだ」
    「うわ、何それグロイ……そんなの食えんのかよ」
     思わず眉を寄せても試食を摘まめばどこか異国めいた甘さが広がって、「目でも舌でも新しいを感じられてなんか面白い」と樂はくすくす笑う。地元とは違う味に、樒深もまた目を細めて。
     昼時になれば市場で美味しそうな魚を見繕い、カラフルな魚の新鮮な刺身に舌鼓を打ち、食休みしながら「どーデシタ、樒深さんのエスコート?」とくすり笑えば、「存分に楽しませて頂きましたよ、誘ってくれてありがとな」と樂の心に修学旅行の思い出が一つ刻まれる。

    「わぁ、お魚、すごく色とりどりです! これ、食べられるんですか?」
    「グルクンにアバサーね、美味いよ」
    「ぐるくん、あばさー?」
     色鮮やかな魚、聞きなれない発音に、静火は思わず繰り返す。
     さらに市場を行けば、噂通りサングラスをかけた豚の顔とピースするように置かれた前脚に歓声。お土産にチラガーを買って、店の夫婦と豚さんと一緒に収まった写真は大事な思い出。
    「お刺身にしたらおいしいお魚どれですか?」
     そう市場で結月が尋ねれば、青く鮮やかなイラブチャーやシャコ貝に海ぶどうをつけてもらって。竜生はアカジンミーバイともずくをオススメされて、二人で二階の食堂へ。
    「竜生ちゃん、これとーってもおいしいの。あーんして?」
    「そうなんだ。それじゃ、僕も貰おうかな」
     少し照れちゃうけど、差し出された刺身をありがたく頂いて。「今度は結月の番ね。天ぷらも美味しいよ」と差し出せば、「市場ですぐ食べられるなんて贅沢な気分なの♪」と頬を押さえて結月がにっこり。

    「おぉー……! ずばぁ店があんなぁ!」
     初めての沖縄観光、そして久しい仲間と遊ぶ機会に、緒璃子は思わずどきどき。
     美味しそうなおやつを皆で買い込んで、「ね、皆で半分こしようよ」と言いだしたシンに、「あらあら半分こですか。ふふっ、先輩方に囲まれているというのにいえどうして……」と詠子がくすと笑う。「誰が照れてるですって?」とそっぽを向いた赤音に「あ、アイスならボクのパイナップルソフトとも交換しよー」と無邪気にリーンハルトがコーンを差し出して、代わりにもらったサーターアンダギーに「揚げたてはやっぱり違うよねぇ」と目を細める。
     ふとシンが仲間達を呼び止めたのは、綺麗な琉球硝子ストラップを見つけたから。一つとして同じ色のない海の星、自分達みたいだと思ったらお揃いで欲しくて。
     留守番の仲間達の分もどれが良いかと皆で一緒に首を捻る。早速取り付けて覗きこめば、きらきら光を反射して。
    「なぁ。……なんか良かね、こういうの」
     そう緒璃子が微笑めば、「ッたく、ゴキゲンですね」といつもの口癖に赤音がほんの僅かな微笑を添えて。
     市場の人のおすすめで見事な海鮮丼を美味しく頂いた桐香は、クラブへのお土産にと紅芋のタルトや自分も食べたいサーターアンダギーを吟味して。
    「あら? このご当地ストラップ……シーサーが黒猫の着ぐるみを着て……このネコの目つきどこかで……!」
     探偵倶楽部の部長の着ぐるみにそっくりな黒猫シーサーはもちろんお土産に加わった。
    「このかまぼこ、ご飯入ってるの? おもしろそー!」
     お握りかまぼこを頬張ったり、紅芋のタルトに「一つ下さいっ!」と元気に挙手したり。
    「あ、このTシャツ面白い! こっちのアクセもかわいーなぁ。迷うよ~」
     海人シャツとシーサーペンダントの間で迷いつつ、勇介が通りかかった伊智子に「ねーちゃんは何買ったの?」と尋ねれば、戦利品の自慢大会が始まって。
    「なぁなぁ、このTシャツ3人で着ようぜ!」
     文字を入れられるTシャツを手に目を輝かせた朔之助に、史明と葵の冷たい視線。
    「お揃いのシャツ? 冗談でしょ?」
    「冗談? いいやマジですけど?」
    「断固拒否する! 君一人で着たらいい」
     残念そうに自分の分だけ……と見せかけてこっそり二人の分もレジへ。その間に史明が、鮮やかな琉球グラスを手にする葵に「割らないようにね」と声を掛ける。
    「そんなヘマしてたまるか」
    「分からないよ? 偶然っていうのは定量化できない変数だからね」
     ガシャーン、と呟く史明に葵がびくりとし、グラスを元の棚へと戻す。
    「僕、この貯金箱が一杯になったら旅行に行くんだ……」
    「今旅行中だろうが」
     ヤシの実貯金箱を手に遠い目をする史明に今度は葵がツッコミ。
    「あ、レンレンこれ持ってー☆ がっちゃんはこっち。ほら! 次行くよ!」
     その横を山ほどの荷物を蘭丸と学子に持たせて智優利が突き進む。
    「右を見ても、左を見ても新鮮な風景っていいねぇ」
    「あー……珍しいもの売っているな、何かお土産でも……ただこいつはいつまで買うつもりなんだか……」
     そう言いながら蘭丸はお土産に迷いながら店の中をうろうろして、学子は反対に目的のものを素早く見つけて。そんな中でも増える(智優利)の荷物には、「ありがとーねっ☆ 二人とも!」ととびっきりのスマイルで有無を言わせず。
    「あ、見て見て蘭ちゃん、これこれ♪」
     琉球ガラスが嵌められたペアリングを見つけ、「これ、買って欲しいなー。蘭ちゃんとおそろいの!」と目を輝かせれば、幼馴染の蘭丸の財布の紐も思わず緩む。
    「買い物は楽しいけどじめじめして……暑い、なぁ……ひゃあ!」
     呟く駒子の首筋に、突然の冷たさが走る。振り返れば先ほど「大丈夫?」とぶっきらぼうに言った彩が、冷たい水のボトルを首に押し付けていた。
    「せんぱい、ありがとう、です」
     思わず笑みを浮かべた駒子に振り向かないのは照れたのか。「シーサー欲しいとかあれ本気なの?」と彩は呆れたように首を傾げて。
     はぐれないようにと毅に手を繋いでもらってご機嫌の花梨。そんな二人が微笑ましくて、夜月は思わずシャッターを切る。
    「クラブの皆に何買って行きましょっか」
    「部長、1mくらいのシーサー希望だっけ」
    「1mのは見つからないなぁ……」
    「……ってか、夜月はでかすぎね?」
     店で一番大きいシーサーを買おうとする夜月に彩が「邪魔でしょ」と言い放つ「土産物って邪魔でいらんものを送るんが醍醐味やろ?」と答える夜月の耳がしたたかに引っ張られた。
     その間に朱音は家族へのお土産選びに余念がない。沖縄コスメのメーカーを女の子達にも教えれば、華やかな歓声が上がる。
     家族へのお土産を選んでいたら駒子に「だれにお土産、買っていくの? 王子様?」と尋ねられ、きょとんとした花梨の瞳がぱちりと瞬く。
    「一緒に来ているから、買うという発想がなかったわ。……でもそうね、折角だから選んでみるわ」
     そう言って、真剣に土産物を眺め出す。その頃には「これなんか楽しげでよくないかね」と毅が差し出したシーサーに、「この子達、楽器持ってたり踊ってたりしてて可愛い♪」と優梨が目を輝かせて。
     食事処を決める途中で見つけた生フルーツジュースの看板に惹かれて、食事が終われば今度はわいわいとジュースを分け合う遊部一同である。
    「甘いモノは活力、人の生きる希望なのですよ」
     そう言って榮太郎は迷わずマンゴーぜんざいの店へ。美味しく完食したら今度はご当地アイスを選び、満足したらサーターアンダギーをお土産に、倶楽部の仲間へは何を送ろうか迷い、琉球硝子の店にも足を運んで。
     いろんなお店に目移りしながら、最初に日有の目に入ったのはアイス屋、「色々と種類があるのね?」と興味深げに珍しい紅芋をセレクト。土産屋で魅入られた紅型の紅い浴衣は、クラブへのお土産のちんすこうと一緒に日有の荷物に加わった。
     ミンサー織やかりゆしが気になる真一は散策しながら「僕、これが良いなぁ」と思ったものを、食べ歩きをしながらのんびりと手に入れていく。部員のみんなへのお土産も、忘れずに。
     お土産を買おうと思いつつも、つい自分のお土産が増えていく。そんな美乃里の隣で、遠慮がちに店の扉をくぐった莉久が「わあ、きれい……。きらきらしてる」と綺麗なガラスに見入る。
     その中でも目を引かれたのは、涙型で薄水色のストラップ。
    「この値段なら、買える、よね?」
     小さな紙袋に入れてもらったストラップを、壊さないよう大事にしなきゃ、と莉久はそっと握る。「ここ、来てよかったな」と武蔵坂学園にいられる事が嬉しく笑って。
    「修学旅行が沖縄と決まってから買いたいと思っていたんですよ! というよりも旅行初めてなんですよ! ワタシ!」
     はしゃいだ様子で癸錐が珊瑚と白い麻紐のブレスレットを買い求める。ホタル石のアクセサリーは散々迷い、すぐにでも付けたいけれど、帰ってからの楽しみに。
    「お小遣いいっぱいあればいっぱいお土産買えるのに!」
    「ん? これ和柄みたいだけど、ちょっと違う感じ?」
     葛藤する奏恵の手元を覗き込み、桜子が「これが紅型さんなのね」とぽんと手を叩く。
    「あ、でも沖縄ガラスキレーだね、ストラップならいけるよ!」
    「海っぽい感じで、綺麗だね……割れ物だけど……このストラップとかなら……」
     さらに横から鐡哉がそっと覗き込む。「なかなか難しいのね、お土産」と桜子は首をひねって。
    「さーや、ちんすこうとかお土産の味見出来るみたい! はい、どーぞ!」
     奏恵から色んな種類の試食品が、桜子と鐡哉の手に渡される。
    「いろんな味が、あるんだね……」
    「皆で全部違う種類買って帰るとかどーでしょ?」
    「そうだね、お土産として……皆でいろんな味、買ってみようか……」
     奏恵と鐡哉の会話に、桜子は何か思いついた様子で。
    「それじゃ、ステキなもの探して一旦解散!」
     慌てて鐡哉の提案で集合時間と場所を決めて、三人それぞれの冒険が始まった。

     みんなで元気いっぱい駆け回った吉祥寺6年蘭組の仲間達も、皆で買ったお土産の見せ合いに。
    「大牙大牙! コレなーんだァ?」
     そう言ってヘキサが大牙の肩にウミヘビの干物をかければ、山育ちの大牙は楽しげに目を見張る。
    「俺からはほら! すっげーだろ! 幸運を招くお面だぜ!」
     そう言って大牙が取り出した怪しげな民芸風のお面に名月が目を丸くする。差し出されたそれを無表情のままに被ってみた彩喜に、今度はヘキサが差し出したのはゴーヤキャンディ。
    「おいしい、ですね。ありがとうございます」
     苦いけど、甘くもあって……いつも通り変わらない表情に、ヘキサは驚いて。
     そんな彩喜が差し出したのは、宮古島の塩を混ぜたという塩アイス。「甘くて、おいしいですね」という言葉に、名月は大きく頷いて。
    「私はこのTシャツに……」
    『海人』などなど大きく書かれたTシャツにシーサーのストラップ、それに『ハブの卵』と書かれた怪しげな封筒を受け取って、皆が覗こうとするとがさがさ動き出してびっくり!
     楽しい仕掛けおもちゃに、「ふふっ、びっくりしたか? ……私はすごくびっくりした」と悪戯っぽく名月が笑う。
    「人多……あっ待って皆!」
     はぐれそうになった結理に、錠が「ほら、ユウリ。迷子になるなよ?」と手を伸ばす。
    「『ソーキそば』とか文字がプリントされたTシャツなんかトール好きそうじゃね」
    「なんでわかったんだ」
     葉の言葉にちょっと悔しそうに貫が応えてから、「ああ今着てるからか」と用意してきたTシャツに――『泡盛』と大きく書かれたプリントに目を落とす。
    「トールはこの『ちんすこう』の文字入りTシャツとかどーよ?」
     ケラケラ笑って錠は貫にTシャツを押し付ける。お馴染みの四人組を見つけて嬉しそうな伊智子に勧めたハイビスカスのアクセサリーは、早速買い物籠の仲間入り。
    「そうだ、『一番大事な』お土産どうしよ……」
     そう結理が伊智子に相談すれば、海色の硝子アクセを手に伊智子がウィンクし、「全部一点ものだって」とお店の場所を耳打ち。
     その頃錠は葉に背中を押され、大切な後輩への土産に「あいつに幸せが訪れますように」と鉢植えを選んで。素敵だと思う、と結理が笑う。
     真剣にお土産で悩みに悩み、ようやく店を出れば日差しが眩しい。貫の言葉で買って齧ったパイナップルは乾いた喉によく染みた。

    「太陽が眩しくてパワーが吸い取られ……牢也牢也なんか変な置物あんぞ! 何これカメ? 乗れんの? 牢也乗る?」
     冷めた態度を取っていた龍哉の仮面がいきなり剥がれていた。
    「カメ? 俺はいっスけど龍さん乗るなら写真撮りましょっか。はい笑ってー」
     満面の笑みのカメに乗る龍哉を写真に収め、二人はお土産選びへ。
    「……何だよ。俺は闇の帝王だから人心掌握に余念がないんだよ」
    「民草の土産選ぶ闇の帝王様すか」
     龍さんは可愛いなー、と思わず呟く牢也である。

     どん、とぶつかる衝撃と共に、眼鏡がからんと地面に落ちた。
    「ご、ごめんなさい……大丈夫……?」
     近眼で不鮮明な奏の視界の中には少しだけ見知った女の子の顔、可愛らしい声。思わず近づきすぎたのか、女の子――彩華が思わず赤面する。
    「有難う、君も大丈夫?」
     眼鏡を受け取り差し伸べた手を、彩華は(紳士だ……)と思いつつ握り返し、立ち上がって。
     互いに名乗り合い、彩華が肩に乗せたくまのぬいぐるみのディザベアさんも紹介されて、宜しくな、と奏は彼にも声をかけて。
     彩華がはぐれた知人を一緒に探しがてら、姉さんへのお土産のついでだから、と奏が差し出したストラップは彼女に似合いそうと選んだもの。びっくりしながらも小さく笑顔で「ありがとう……」と彩華は受け取った。

    「……単刀直入に聞くけど、いちごくんって、どういう物なら喜ぶかな?」
    「あら、沖縄に来てすぐ兄へのお土産探しですか?」
     からかうように笑ったりんごに、由希奈は照れつつじっくり選びたいからと答えを返す。それにりんごは丁寧に応えて。
    「それにしても真っ先に兄の事なんですねぇ」
     顔を覗き込むりんごに、由希奈の頬が真っ赤に。
    「実の所兄の事はどうお思いです?」
    「そ、それは……うん、好きかな」
     恋する乙女の顔、ストレートな返事にあらとりんごが瞬いて。
     本気なのですね、応援しませんと、と微笑むりんごに、由希奈は嬉しそうにはにかんで。
    「喜んでくれるかな……?」
    「兄も喜びますよ」
     由希奈が選んでりんごがお墨付きを与えたのは、綺麗な貝殻のネックレス。

    「ねぇ、木葉。やっぱりお土産はお菓んむ!」
     突然シーサーのパペットに唇を奪われて、唖然とする大輔に「奪っちゃったー」と木葉が笑う。
    「な、何するの!? 大体それ売り物……」
    「大丈夫だよ、これライズへのお土産にするから」
    「う、えっ? ちょ、え?」
     意味を理解して慌てる大輔に「え、好きなんでしょ?」と確認を兼ねて追い打ち。絶句する大輔。
    「……好きだけど。もう、なんでバレてるのさ。確かに俺はライズが好きだよ」
     でも、付き合うとかはまだ考えてなくて……ただ一緒に居たいなって。
    「聞いてる、木葉?」
    「ちゃんと聞いてるよ?」
     お土産選びから正面に向き直って、木葉は「俺は、応援してる」と告げる。その言葉にはっとして、大輔は微笑んで。
    「ありがとう」
     その後また一波乱あったが、とにかく珊瑚のブレスレットは大輔からのお土産に加わるのだった。

    「えへへ、良いでしょ♪」
    「わー可愛いー!」
     水色の硝子玉が鮮やかに舞の胸元を飾る。
    「夜になると光るらしいよ♪」
     なんだかロマンチックだよね、との言葉に、伊智子はうんうん頷いて。
    「変な土産物GETだぜ!」
     ご当地麺料理も旅行の醍醐味と沖縄そばの店を梯子し、「土産と言ったらやっぱりその土地にしか無い変な物だろう」とシーサーキットにマングースの被り物やら見つけ出して満足げなのは邦彦。ちゃんと仲間にキワモノすぎないお土産を買うのも忘れない。
     風貴と共に騒いでいた雷歌は、ふと視線をストラップへと向ける。
     綺麗だと思って手に取った瞬間「それ華月ちゃんにあげんの?」と後ろから声を掛けられ、「うおぉ!? ちょ、風貴いつの間に!?」と慌てる雷歌。
    「わはは! お見通しだこのリア充め! 可愛いストラップだねーお揃いにしたら? お揃いいいじゃん! ねっ!」
    「あーあーきーこーえーねーえー! つうか自分だってちゃっかり買ってんじゃねえかよ!」
    「えっ、俺は秘密!」
    「隠すな見せろ!」
    「うおっ、やめろエッチ! 暴力はんたーい!」
     そんな二人の後ろを「少し買い過ぎたかな……」とラグビー部の仲間と共に通り過ぎていく櫂の手には、既に沢山のお土産。
    「いいお土産ないかなー」
    「やっぱりウミガメグッズかなぁ」
     そう言って智景が選んだのはシークァーサーを使ったお菓子、鋼は貝殻で出来たウミガメの置物を見つけて嬉しそう。
    「流石に持って帰れないし、邪魔よね……?」
     目が合った大きなシーサーの置物を名残惜しげに見つめ、櫂はぬいぐるみで我慢しようと後ろ髪引かれつつレジへと向かう。
    「あ、そういえば自分用と、お兄用に買っていこうかな……」
     智景がさらに籠の中にかりゆしを追加し、留守番組へのお土産には鋼がチョコのちんすこうを、櫂がお菓子とキーホルダーを選んで。
     わいわい水着を選び、フローズンヨーグルトの量り売りで盛り上がり――「あ、そだそだ。可愛い髪飾り見つけたんだ」と鋼が差し出した、貝殻とイルカのチャームつき髪飾りをみんなでお揃いで付けて――旅はまだ、始まったばかり!

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月18日
    難度:簡単
    参加:69人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 12/キャラが大事にされていた 9
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