●憧れと
「氷雪(ひゆき)ちゃんだって、大きくなればきっとなれるわ」
口では優しくそう言って、けれども勝ち誇ったように笑いながらあの女は従兄の裕哉お兄ちゃんの横に立っていた。
「……酷い酷い酷い……私が裕哉お兄ちゃんのこと好きだって知っていたくせに」
ベッドの上で掛け布団を被って、氷雪は怨嗟の言葉を紡ぐ。
「憎い憎い憎い……あの女も、二人だけの秘密を皆の前でばらした裕哉お兄ちゃんも憎い……」
でもやっぱり、あの女が憎い。あの女に好きな人の話なんてするんじゃなかった。信じてたのに……。
今度の日曜、あの女がジューン・ブライドになるのかと思うと、身体の中からふつふつと黒いものが沸き上がってくる。純白のドレスに身を包んだあの女をドレスごと斬り裂いたらどうなるだろう……想像するだけでぞくぞくする。
氷雪も招待されている結婚式。ああ、バックの中によく切れるナイフかハサミを入れておかないと……氷雪は掛け布団をのけてよろよろと立ち上がった。
●
「やあ、来てくれたね」
教室に入るとふわっと白檀の良い香りがした。神童・瀞真(高校生エクスブレイン・dn0069)の持つ和綴じのノートからだろうか。灼滅者達は椅子に腰を掛けて瀞真の言葉を待つ。
「一般人が闇堕ちして六六六人衆になってしまう事件があるよ」
通常ならば闇堕ちしたダークネスからはすぐさま人間の意識は掻き消える。しかし今回のケースは元の人間としての意識を残したままで、ダークネスの力を持ちながらダークネスには成りきっていないのだ。
「彼女が灼滅者の素質を持つようであれば、闇堕ちから救い出して欲しいんだ。ただ、完全なダークネスになってしまうようならば、その前に灼滅をお願いしたい」
彼女が灼滅者の素質を持っているならば、手遅れになる前にKOすることで闇堕ちから救い出すことができる。また、心に響く説得をすれば、その力を減じることもできるかもしれない。
「彼女の名前は吉森・氷雪(よしもり・ひゆき)。17歳、高校2年生の女の子だね。ジューン・ブライドに憧れる、普通の女の子だったよ」
氷雪には思いを寄せる裕哉(ゆうや)という大学院生の従兄がいた。長年育んできたその思いを、家庭教師をしてくれていた未帆(みほ)という大学生に話した。未帆と裕哉が同じ大学だったということもあって、氷雪はなんとなく親近感を抱いたのだ。未帆は氷雪の話をちゃんと聞いてくれて、アドバイスもしてくれたという。
「けれども、未帆さんは氷雪君に隠すようにして裕哉さんに接近し、彼と付き合うようになって……そして急ぐように結婚式を挙げようとしているんだ。氷雪君の怒りは勿論未帆さんに向いているのだけれど」
氷雪がジューン・ブライドに憧れているというのは裕哉にだけ話した、二人だけの秘密だったらしい。氷雪としてはいつか彼と、と思ったのだろう。だがそれを裕哉が結婚の報告に来た場で皆に話してしまった。二人だけの秘密だったのに、と当然氷雪はショックを受けた。
憎しみが渦巻いて、氷雪は身体の中の黒いものに身を任せてしまった。
「接触できるのは結婚式当日。結婚式場の控え室にいる未帆さんを氷雪君は9時半頃訪れる。その控え室で待ち伏せするのが一番いいよ」
幸い、氷雪が控え室に向かう前に控え室へと訪れる時間の余裕はある。花嫁の支度はだいたい9時頃には終わるようなので、それ以降に控え室へ向かい、何らかの理由をつけて花嫁と付き添いの係の者を控え室から移動させるのがいいだろう。が、移動させずに庇いながら戦うという手もある。また、親族や友達が挨拶がてら様子を見に来る場合もあるので注意が必要そうだ。
「式場へ侵入するのも不自然でないように、自然に移動してもらえるように、なにか手を考えたほうがいいかもしれないね」
瀞真はそう言って、ノートをめくる。
「氷雪君は殺人鬼の皆と同じサイキックの他、『ジグザグスラッシュ』『光刃放出』相当のサイキックを使うよ。注意してほしい」
切っ掛けがなんであれ、新郎新婦二人が選んだ道だ。近親者として祝福してやるのが一番いいだろう。
「……納得出来ないかもしれないけれどね。だからといって式をぶち壊したり、ましてや新婦の命を奪ってしまうのは違うと思うんだ。氷雪君のためにも……君達に何とかしてほしい」
頼むよ、そう言って瀞真は微笑んだ。
参加者 | |
---|---|
古室・智以子(中学生殺人鬼・d01029) |
村上・光琉(白金の光・d01678) |
ルーパス・ヒラリエス(アスピリンショット・d02159) |
望月・心桜(桜舞・d02434) |
春日・詩亜(中学生殺人鬼・d03006) |
月岡・朗(虚空の紅炎・d03972) |
北斎院・既濁(彷徨い人・d04036) |
上柳・零(火種振り撒く観察者・d14333) |
●六月の花嫁
格子窓からさらさらと陽の光が降り注ぐ。まるで天にも祝福されたように、純白のドレスは輝いていた。キラキラ輝くヴェール、花嫁の伏せた瞳は美しくて、ほぅ……と見惚れるように付き添いの女性は溜息をついた。
コンコンッ。
「はい?」
紅を引いた唇が言葉を紡ぐ。女性が扉を開けると、そこには正装した二人の男女が立っていた。
「本日はおめでとうございます」
初めに口を開いたのはルーパス・ヒラリエス(アスピリンショット・d02159)だ。いつもはアンニュイな口調を穏やかなものにして、にこやかな笑顔で続ける。
「式の段取りが変わったので新婦ならびにご関係者はご確認をお願いできますか」
「え、こんな直前に?」
「私もいかなきゃダメ? この格好なのよ?」
おろおろし始めたのは女性だ。未帆は不満気に述べる。先程までの神聖にも思える雰囲気がその態度で台無しになっていることに彼女は気がついているだろうか。
「確認のため、新婦各位は同席をお願い致します。ご移動はゆっくりで構いませんから」
こちらへ、と落ち着いた様子で部屋の外を示す望月・心桜(桜舞・d02434)。未帆はこれみよがしにため息を付いて渋々と立ち上がった。
「裾、持ってよね!」
「あ、はいっ」
心桜はぱたぱたと未帆の後ろにまわり、ドレスの裾を集めて持ち上げる。新婦が部屋を出るまで扉を抑えていたルーパスが先導し、二人を空き部屋へと連れて行く。正装してプラチナチケットを使っている二人を、未帆達は式場関係者と思ってくれたようだった。
その様子をそっと廊下の曲がり角から見ていた上柳・零(火種振り撒く観察者・d14333)は旅人の外套を発動させたまま、振り返って頷いてみせる。それを見た闇纏い中の村上・光琉(白金の光・d01678)と月岡・朗(虚空の紅炎・d03972)は、そっと残りの仲間達を招き入れた。そのまま控え室だった場所に行き、辺りを伺いながら室内へと入る。一般人の目から身を隠すすべを持たぬ三人も下手にあたりを気にしたりせずに自然に振舞ったのが良かったのか、見咎められることはなかった。
「急いで片づけをするの」
「手伝うよ!」
殺界形成を発動させた古室・智以子(中学生殺人鬼・d01029)がドレスのかかっていただろうマネキンを移動させようとするのを見て、春日・詩亜(中学生殺人鬼・d03006)が声を上げた。ふたりでマネキンを抱き上げ、部屋の隅へと移動させる。北斎院・既濁(彷徨い人・d04036)はドレッサーを隅へと押しやった。面倒だから纏めてぶっ飛ばすことも考えたが、さすがにやめておいた。
光琉が念の為にすべての窓にカーテンを引いて外から戦闘が見えぬように配慮する。朗は新婦達の荷物をそっと部屋の隅へと運んだ。
「待たせたのじゃ」
急に扉が開いて少し驚いた室内メンバーだったが、人払いを行なっていたためにここに近づく者は限られていると思い直す。その声は心桜のものだった。未帆達を誘導して「担当の者が参りますまでお待ちください」と告げてその場を辞してきた心桜とルーパスが、控え室へと戻ってきたのだ。時計を見ると九時半まで後数分。間に合った。
室内を見渡すと、荷物は綺麗に部屋の隅に寄せられていて、これならば戦闘に支障はないような空間が作られていた。
「お疲れ様よ」
ルーパスは荷物を移動したメンバーにねぎらいの言葉を述べ、皆とともに配置につく。出入り口は一箇所。この一箇所から入ってくる氷雪を迎え撃つ作戦だ。
コンコンコンッ。扉を叩く音か聴こえて灼滅者達は身構える。
「氷雪です。入っていい?」
「どうぞ」
詩亜が代表して口を開くと、ゆっくりと扉が開いた。
●ジューン・ブライドに憧れて
視線を下げたまま室内に入り、扉を閉めた氷雪。二人を祝福する式の為のドレスアップがなんだか悲しく見えた。
「未帆さ……え?」
顔を上げた氷雪は戸惑ったようにして凍りついた。当然のことだろう、いると思った花嫁はおらず、そこには八人の見知らぬ男女がいたのだから。
「あなた達、誰? 未帆さん……花嫁は?」
「残念ながら、花嫁はここにいないぜ」
「復讐したい気持ちは解らんでもないがもうちょっと穏やかにやったらどうだい?」
既濁と零の言葉にびくり、氷雪の肩が揺れた。手に持ったバッグをぎゅっと握り締める彼女。
「な、なん……」
何で、問いの言葉も満足に紡げないほど彼女は驚いている。当然だろう、突然自分の思惑を他人につきつけられたのだから。
「好きな人を取られるのは相当辛いと思うのじゃよ。わらわも想像しただけで苦しいし、嫉妬もするのじゃ」
そっと、告げるのは心桜。優しく、彼女の苦しい思いへ理解を示すようにして。
「年齢差もそんなの言い訳にならぬよのう。だけどあの新婦を殺したら、お主はもう二度と恋などできなくなるぞえ」
「でも、あの女は酷いことを……」
「うん、そうだね。誰かが欲しがっているものほど欲しくなるって話はありがちだよね。誰かが欲しがっている人だから自分のものにしたい。欲しがられてるからこそはやく自分のものにしてしまいたい。それが善か悪かを考えれば恋愛自体が悪になってしまうよ」
人を好きになるというのは人を求めて独占したいという気持ち。光琉は諭すようにゆっくりと告げる。
「だって、私が彼の事好きだって知っててあの女は……」
「そうだね、酷いよね。でも殺してしまうというのはいけないけれど、好きな人に振り向いて貰えなかったら振り向かなかった事を後悔するくらい素敵な人になるって復讐の方がいいと思うよ」
光琉の説得に唇を噛み締めるようにして氷雪は、何かを我慢するように黙りこんでしまう。そんな彼女に一歩近寄ったのは朗。
「俺はダークネスの力に呑まれ愛しい人を殺めてしまった過去がある。氷雪、お前にはそんな風になって欲しくない」
「私……のため?」
「……それにな、どんなに今が辛くてもまた人を愛することが出来るようになるのだ。その時に、人を殺めたことはお前にも愛しい人にも重荷になる」
朗は花嫁のためではなく氷雪の為を思っていることを言葉に乗せて送り出す。氷雪は驚いたように目を見開いた。
「わたしは、人を好きになったことが無いから、貴方の気持ちは、正直、ちゃんと理解できてないの」
ぽつりぽつり、智以子が言葉を紡いだ。結婚する二人には興味なく、氷雪に対しても二割程度の同情と後は素直に負けを認めるべきだと思う心しか持ち合わせていないが、凶行は阻止せねばと思っている。
「それでも、貴方が間違っていることだけは判るの」
「私、間違ってる……?」
「貴方が好きになった人が、選んだ人なの。それを受け入れなきゃ駄目なの」
「受け入れ……受け入れる……う……あ、ああっ……!!」
氷雪は自身の身体を抱きしめるようにして震えている。抑えていたダークネス部分があらわになろうとしているのだろう。灼滅者達はそれぞれ解除コードを口にし、身構えた。
「私だって、お兄ちゃんのお嫁さんになりたかった! ジューン・ブライドになりたかったの!!」
バッグから取り出されたナイフを手に、氷雪は既濁の死角へと入り、ナイフを振り上げる。智以子は前衛の仲間とシールドを広げる。光琉は治癒の力を宿した暖かな光で既濁を照らし、傷を癒す。
(「始めッから思いっ切りいくしかねぇな。こーいうのは勢いがダイジなんだよ勢いが」)
既濁は『鬼の金剛棒』を振りかぶり、振り下ろす。強烈な一撃が氷雪の身体を襲った。
「わらわ、神社育ちでのう。神前結婚は多くみてきたが、すべての新婦が祝福されているというのは嘘じゃ。祝いは呪いに通ずる 逆も然り。お主はどちらの眼で新婦に会いに来たのかえ?」
「私は……私はあの女を……」
鬼畜の強烈な一撃で崩れた体勢を立て直しながら、氷雪は心桜の問いに答えようとしていた。心桜は清らかに風を呼び寄せて既濁を包む。追うようにして、ナノナノのここあも癒しを紡いだ。
「殺しに!!」
カッと目を見開いて結論を導き出した氷雪を、朗は少し悲しげな瞳で見つめていた。語るのは、彼の過去。
「俺はな、好きな人を殺してしまった」
幼い頃に結婚を誓い合った相手がいた。けれどもそれは姉弟ゆえに叶わぬものだった。
「姉の結婚が決まった時、もちろん弟として素直に祝福した。だがその時に胸の中に生じた黒い炎が全てを焼き尽くした」
挙式の前日、花嫁衣裳を試着する姉の姿。それが記憶に残る最後の姿で。
「次に気がついた時には姉も、父も、母も、全て灰になった後だった。ダークネスの力に呑まれ愛しい人を殺めてしまったのだ」
朗の話を聞いて、一瞬氷雪の動きが止まった。なにか通ずるものを感じ取ったのだろうか。その隙に朗は『宵闇丸』に炎を纏わせ、斬りかかる。ビハインドの耀子も彼に合わせて攻撃を繰り出す。
「まあ自分の手で夢への扉を閉ざすことも、ないでしょう。『結婚できない男』としてはそう思うわ」
それまで氷雪の言葉を相槌をうって聞いていたルーパスが口を開いた。きっと結婚なんて自分には一生縁がないと思っているから心中複雑だ。
(「本当は他人の痛みに鈍感なゲスって大嫌いだからぶち壊したい部分もあるんだけど」)
それでも未来ある女の子が夢を諦めてしまうには惜しい。その点で彼女を救えたらいい、そう思い、指輪から弾丸を放つ。
「でも、私は、許せない……許せないから、どうなってもいいと、なにもかも思って……」
わからない、そう示すように氷雪はぶんぶんと頭を振る。本物の氷雪が迷いを見せているのだろうか。
「でも、それで? それを実行しちゃったら、氷雪ちゃんは絶対に絶望して後悔して闇に堕ちちゃうよ。私はそんなの絶対嫌だ!」
氷雪よりも先に泣きそうになりながら、心から叫んだのは詩亜。影を放って氷雪を縛り、その瞳をじっと見つめて。
「私は氷雪ちゃんが幸せになって二人に……未帆さんに『負けた』って思わせなきゃ気が治まらないよ!」
「私が、幸せになんて……私は復讐を……フクシュウ……」
「お前の復讐心はその程度か? お前が裏切られた痛みはこれくらいじゃないだろ! だったらその痛みをぶつけて見せろ!」
壊れたように復讐と呟いた氷雪を挑発して吹っ切れさせるべく、零は叫びながら『Heat haze Liar』を振り下ろす。ビハインドのハルが霊撃を放つ。氷雪の表情が泣きそうに歪んだ。
「憎い、憎い憎い憎い! あの女も、お兄ちゃんも憎い!」
挑発された氷雪はジグザグの刃で零の腹部へと斬りこむ。その一撃は鋭く、深く、零を蝕んだ。しかし彼は近づいてきた氷雪をまっすぐ見て。
「少しは落ち着いたか? 裏切られりゃ嫌だろうが殺すのじゃ駄目だぜ?」
「っ……」
氷雪が飛び退いた。その位置を予測していたかのように智以子が黙したまま、機械的にオーラを宿した拳を振るう。光琉が裁きの光条で零を癒し、既濁が再び『鬼の金剛棒』を振るった。
「新郎が好きじゃったのなら新郎だけでも祝福してやろうぞ。わらわ、お主の笑顔が見たいのじゃ。お主があの新婦より幸せになるのが見たいのじゃ」
心桜が癒しの力を込めた矢を零に放つ。ここあも心桜に倣って回復を試みる。
「誇り高くあれ。その女も、男もお前の心を穢すのに相応しくないぞ」
中段の構えから放たれる朗の一撃に氷雪の身体が揺れる。耀子は朗に寄り添うようにして攻撃を放つ。
「もっといい男見つかるわよ。世界は広いんだし。人生先はまだまだあるし」
ルーパスは影を操り、氷雪を縛り上げて。
「ねぇ、私達と一緒に行こう!」
素早く死角へ入った詩亜は、氷雪の中のダークネスを斬りつけると共に氷雪に声をかけて。零の連打とハルの一撃が氷雪の身体を大きく揺らした。
智以子が盾で思い切り殴りつけると、氷雪はそのまま床に倒れ伏した。
●いつか、きっと
「よかった、目が覚めた!」
氷雪の目覚めに一番最初に気がついたのは、倒れた彼女に膝を貸していた詩亜だった。その声に他の仲間達も氷雪に視線を向ける。
「私……」
戸惑った様子で上体を起こす彼女に、光琉が優しく説明をして聞かせた。
「こんな事があってすぐだから全て理解できないだろうけど、失恋の痛みとか裏切られた苦しみとか、全部忘れろなんて言えないけどいつまでもこの現状ばかり見ている訳にもいかないし、前を向いていたら裕哉さんより素敵な人が見つかるかもしれないよ」
「もしかしたら、新しい出会いがあるかも、なの」
智以子も頷いて、転入を勧める。
「前を向かなきゃ、見つかるはずの良い人も見つからないし、そのために環境を変えるっていうのも手だよ」
「環境を変える……」
光琉の言葉に氷雪は少し考えるようにして。すぐには決められないだろうが、考えてはくれるようだ。
「その力に振り回されないようになりたくないか?」
「……なりたいわ」
差し出した手を氷雪が取ったのを確認して、零は引っ張って彼女を立ち上がらせる。
「氷雪ちゃん。バレない程度に二人に悪戯しちゃおうか♪」
「悪戯?」
立ち上がった詩亜はひょこっと氷雪の隣に立って提案する。
「乙女心を踏みにじった二人には、ケーキ入刀の時に二人でケーキに突っ込んでくれたら……とか思っちゃうけど、式が台無しになっちゃうからそれは無しだね。思うだけならタダだけど」
想像したのか、ふふっと笑った氷雪を見て、詩亜は嬉しくなる。
「そうだな、飲み物を苦手な飲み物と交換しちゃうのはどうだろう♪ それ位なら可愛い悪戯だと思わない?」
「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとやら、だ。喧嘩両成敗っつーのもある、ちょっとくらいスッキリ、とな」
ちょっと会場の空気が温まる程度の悪戯だったら、別にいーんじゃねーのという既濁の言葉を受けて、すり替え作戦は実行されることになった。同時に、智以子の提案した「参列者全員にサプライズのクラッカーを渡す」というのも実行することにし、詩亜と智以子と氷雪は急いでその準備にかかる。
(「慣れないことを言ったせいで鳥肌がやばいぜまったく」)
完全にではないが吐き出したおかげである程度吹っ切れたのだろう、氷雪の表情は多少穏やかになっていた。それを見て零は足早に会場を去る。悪戯に参加しない他の灼滅者達も、氷雪の笑顔を見れて良かったと思いつつ、そっと会場を後にした。
次に彼女と出会うのは、学園かもしれない。
いつかきっと、彼女がジューン・ブライドになれますように――灼滅者達は願った。
作者:篁みゆ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年6月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 2
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