爆発! 伝説の七夕

    作者:カンナミユ

     雲ひとつない空には満天の星が輝き、満月が一本の竹と一組のカップルを照らしている。
    「ケイちゃん、俺達これからもずーっと一緒だよっ」
    「うん、これからもずーっと一緒だねっ」
     幸せそうに手を組む二人は竹をじっと見つめた。
     二人が見つめているのは七夕の日に恋人達が短冊を飾ると永遠に結ばれるという『伝説の竹』。
     あらかじめ書いていた短冊を二人は取り出し笹に飾りつけると、さらさらと優しい風がそよぎ、笹の葉と短冊や七夕飾りを揺らした。
    「愛してるよっ!」
    「私も愛してるっ!」
     見つめる二人の愛は最高潮に燃え上がる。伝説の竹を前に二人はぎゅっと強く抱きしめ合った。
    「……許せない」
     ふと、声が聞こえた。低く、うめくような、女性の声。
    「何か言った? ケイちゃん」
    「ううん、私なにも言ってないよ?」
     首を振り、ケイは抱きしめられたまま愛しい彼を見上げた。気のせいだよ。二人の顔はぐっと近付き――
    「許せない……私達以外のカップルなんて!」
    「お前達の愛……ボク達は認めないぞ!」
    「「爆発しろっ!!」」
     ちゅどおおおおおぉぉぉん!!
     恋人達は爆発した。
      
    「恋人達が短冊に願いを込める……ロマンチックだと思わねえか?」
     灼滅者達を前に神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は唐突に語りだした。
    「分かったから説明を頼む」
     が、サックリと切り捨てられ説明をはじめる。
    「ある村に伝説の山がある。その山頂には『伝説の竹』があり、七夕の夜にラブラブなカップルが短冊を飾ると織姫と彦星に爆発されるそうだ」
    「爆発?!」
    「自分達以外の愛は認めないって嫉妬の炎を燃やすんだと」
     なのでカップルを爆発するのだという。
    「嫉妬で爆発かよ」
    「一年に一度しか会う事ができないからな。年中いちゃつくカップルが許せないんだろ」
     と、説明を聞いていた一人がヤマトへ疑問を口にした。
    「カップルって男女のカップルだよな? 変装した偽装カップルでもいいのか? 男装した女性と女装した男性とか、男性と男性とか――」
    「この伝説は『ラブラブなカップルが短冊を飾る』と現れるそうだ」
     あとは分かるな? ヤマトは目でそう訴えた。つまり自分達で考えろと。
     山はしっかりと山道が整備されており、山頂は見晴らしがよく開けている。伝説の竹はその場所の真ん中にあるが、戦うには邪魔にならない位置に生えているという。
     ヤマトは説明を続けた。
    「説明不要な気もするが、襲ってくる都市伝説は織姫と彦星の二体。互いを『ひーちゃん』『おりりん』と呼び合うラブラブカップルだ」
     彦星は体術、織姫は七夕飾りや星を使った攻撃をしてくるようで、強さは灼滅者達と同じくらいだ。若い二人は愛の絆で連携攻撃をしてくるという。
     『おりりん』こと織姫は桃色の着物に薄絹の羽衣をまとう美女、『ひーちゃん』こと彦星は青の着物を着た爽やかな青年で、まるで絵本から出てきたような姿をしている。
    「ま、相手は都市伝説だからって油断するなよ? 愛が深ければ深いほどカップルは手強いからな」
     そう言いながらヤマトは資料とは別に持っていた封筒から短冊取り出すと灼滅者達に手渡した。
    「せっかくの七夕だ。倒すついでに飾ってこいよ……願いが叶うかもしれないぜ?」


    参加者
    鏡・剣(喧嘩上等・d00006)
    藥島・至葉(蓮・d00704)
    錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)
    御藤・タバサ(高校生魔女・d02529)
    ロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640)
    土岐野・有人(ブルームライダー・d05821)
    禪杜・フュルヒテゴット(ハウンドアッシュ・d08961)
    シーゼル・レイフレア(月穿つ鮫の牙・d09717)

    ■リプレイ

     満天の星空に満月が輝く七夕の夜、禪杜・フュルヒテゴット(ハウンドアッシュ・d08961)は隠し切れない嬉しさでにやにやと表情が緩みっぱなしだった。
     何故なら御藤・タバサ(高校生魔女・d02529)と腕を組み、山道を歩いているからだ。
    「もうフーたん、せっかくのデートなのにそんな顔しないでよ~」
     彼女のスタイルの良さを引き出す可愛らしい服装のタバサにフュルヒテゴットはつい見とれてしまう。
    「タバサが可愛すぎて仕方ないんや。許したって」
    「仕方ないなあ、今日だけだからねっ」
     可愛らしい言葉と共に、ふにっと柔らかいタバサの胸が腕に当たる。
    「(もータバサは可愛えなぁ!)」
     内心でフュルヒテゴットは舞い上がった。恋人がいない彼に囮役とはいえ可愛い彼女とのデートに彼のテンションは上がりっぱなしだ。
    「(もうすぐ山頂だよ、気をつけて)」
    「(お、おう、まかしとき)」
     耳元でタバサに囁かれフュルヒテゴットは表情を引き締め、視線を山道の先へと向けると頂上が見えていた。
     二人はべったりとくっつきながら他の仲間達が隠れている場所を確認する。茂みや木々などの物陰から小さく懐中電灯の灯りが見え隠れしていた。
    「あー……とりあえずどっちもうぜえな、まったく」
    「都市伝説を呼び出す為ですからね、仕方ありませんよ」
     遠くから聞こえる声にイラッとしてこめかみをひくつかせ、苛立つ口調で吐き捨てる鏡・剣(喧嘩上等・d00006)を土岐野・有人(ブルームライダー・d05821)はなだめた。
     彼らがこれから戦うのは、相思相愛だというのに年に一度しか会えず、年中逢瀬を繰り返すカップルを妬み爆発させるという織姫と彦星の都市伝説だ。
    「俺だってやるんだったらリア充爆発させる側やりてーっつの」
    「ぼくからしてみればお前たちが爆発しろといいたい」
     フュルヒテゴット同様に恋人のいないシーゼル・レイフレア(月穿つ鮫の牙・d09717)は言うが、藥島・至葉(蓮・d00704)の言葉にまあなと頷く。
     確かにいちゃつくカップルを爆発させたい気持ちは分かる。だが、爆発させる当の織姫と彦星も十分いちゃついているのだ。
    「いやあ。満点の星空、燃える恋! 浪漫ちっくですねえ」
     出歯亀気分で物陰から二人がこちらへと向かってくるのを確認しながら、ロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640)が言うと錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)が足元でにゃーんと鳴く。今日が誕生日の彼女は姿を猫へと代え、尻尾を揺らしていた。
     囮役の二人と物陰に隠れる灼滅者達を見つめるかのように、山頂では一本の竹がさらさらと揺れていた。
     
     その竹は満月の光を受けてきらきらと輝き、シンプルな飾りと短冊がそよ風に揺れている。
     ラブラブなカップルが短冊を飾ると永遠に結ばれるという『伝説の竹』。
     物陰に隠れる仲間達に目配せをし、二人は竹に近付くと打ち合わせ通り『これからも二人はずっと一緒(はーと)』と書いた短冊を竹へと飾りつける。
    「これからもずーっと一緒におろな?」
    「うんっ! ずーっと一緒だよっ」
     二人はべったりとくっついたまま緊張を隠しつつ、短冊をじっと見つめる。が、1分経ち3分経っても都市伝説は現れない。
    「(もしかしてラブラブっぷりが足りなかった?)」
    「(マジか? これかて十分ラブラブやで?)」
     さすがに5分経っても現れないとなると焦りを隠せない。二人はひそひそと耳元で言葉を交わす。
     更にラブラブさをアピールせねばならないのか?! これはもう、アレをやるしかないのか?!
    「たっ、タバサ!!」
     タバサの両肩にフュルヒテゴットは手を置き、二人は向かい合う。
    「もう耐えられへん!! あ、愛してるで!!」
    「(演技って割にすげーそれっぽいな……。まさか本気で? いやいやいやいや)」
     緊張した二人の顔がぐっと近付く。まさかこのままキスをするのか? いやさすがにないだろ? シーゼルはこの展開に内心で突っ込みを入れた。
    「あなた達、お互いのどんな所が好きなの?」
     突然、背後から声をかけられ二人はぱっと離れる。せっかくのチャンスだったのにフュルヒテゴットの内心は複雑だ。
    「そうね、優しくてカッコいいところかなっ!」
    「可愛えとこや! タバサを世界一愛してるで!」
    「そうか爆発しろ!!」
     ちゅどおおおおぉぉぉおん!!
     声の主に疑問を抱くより早く、何の前触れもなくフュルヒテゴットとタバサは爆発に巻き込まれた。二人は避ける事ができず、爆風で仲間達が隠れている物陰の手前まで吹っ飛ばされてしまう。
    「二人とも大丈夫ですか?」
     ロロットが声をかけるがバベルの鎖の影響か二人に怪我はなかった。
    「び、びっくりした……!」
    「せっかくの良い雰囲気が台無しじゃない!!」
     飛ばされた影響で足や服が汚れてしまい、タバサは声を上げ竹の方へ振り向く。彼女の視線の先には満月を背に、上空からゆっくりと竹の前に舞い降りる二つの影。
    「私のひーちゃんの方がずーっと優しくてカッコいいわ!」
    「おりりんだってずーっと可愛いよ!」
     一人は桃色の着物に薄絹の羽衣をまとう美女、もう一人は青の着物を着た青年。二人はぴったりと寄り添い手をつないでいる。
     『ラブラブカップルの織姫と彦星』だ。
    「「爆発しろ!」」
     二人は叫ぶが怒りが頂点に達していたのか、既に爆発済みである。
    「何なの?! 七夕だからってイチャイチャしてっ!」
    「七夕にイチャイチャいていいのはボク達だけだぞっ!」
     隠れていた仲間達と合流し、灼滅者達は織姫と彦星の前に駆け寄ると武器を構える。琴弓も姿を猫から元に戻した。
    「想い人と結ばれておいてわがままだぞ」
     バキバキと指を鳴らす剣を横に至葉はぽつりと呟く。相思相愛なのに相手に嫉妬するなんてわがままだ。絶対に許してはいけない。
    「空の織姫と彦星は綺麗なんですけどね……」
     『夜明けのシューティングスター』と銘打つ箒に跨り宙を舞う有人は解除(リリース)、という一言と共に指で挟むスレイヤーカードから現れた武器を手にする。
    「人の恋路を邪魔する都市伝説は、箒で掃かれて星になってもらいましょう」
    「お前達にボク達の恋路は邪魔させないぞっ!」
     織姫を後ろへ下がらせ、彦星はぐっと拳を構えると灼滅者達へと駆け出した。
     
    「さって、いらいらさせてもらった分その鬱憤晴らさせてもらうぜ!!」
     飛び出したのは剣だ。織姫めがけて拳を振り上げるが彼女の前に彦星が立ちふさがる。
    「へっ、やるじゃねえか」
    「おりりんには指一本触れさせないぞっ!」
     ばしんと弾かれ手応えのある相手に剣はにやりと笑う。だが、彦星の表情は真剣そのものだ。
    「ひーちゃん! 大丈夫っ?」
    「大丈夫だよ、おりりんっ」
     きらきらと星が織姫の手のひらで瞬き、彦星を守るべく彼の元へ飛ぶと彦星はにっこりと微笑み
    「くらえっ! ボク達の愛の炎っ!」
     声を上げ、灼滅者達へと炎を薙ぐ。
    「なァにが『愛の炎』だ!!」
     炎で服や髪を少し焦がすが気にせずシーゼルと至葉は織姫に向かい飛びかかるが彦星に防がれてしまい、至葉はむっとする。
     上空から有人がシールドリングの守りを展開させるとフュルヒテゴットとタバサが同時に織姫へと飛びかかった。
    「リア充の敵、覚悟せぇよー!」
    「そうよ、覚悟しなさい!」
     二人の攻撃もやはり彦星が防いだ。愛の力で守っているのだろうか。
    「ありがと、ひーちゃん!」
    「これくらい痛くも痒くもないよ、おりりんっ」
     戦闘中でもラブラブっぷりを見せ付ける中、ロロットは情熱的な音楽を奏で、琴弓は惑わす歌を歌い上げた。さすがに歌声は防ぐ事ができず、乙姫はよろめく。
    「おりりんっ、守れなくてごめんね!」
    「ううん、大丈夫だよっ、ひーちゃん」
    「うぜえー」
     こっちまでラブラブハートが飛んできそうないちゃつきっぷりにシーゼルはげっそりするが、剣は気にも留めなかった。
    「俺は戦えりゃ十分だぜ!!」
     威勢よく声を上げ、再び織姫めがけ地を蹴ると他の灼滅者達も彼に続いた。
     厄介な能力を持つ織姫めがけ、灼滅者達は二手、三手と攻撃を続ける。だが、愛の力が成せる技か、すべて彦星がその猛攻を防ぎ弾いた。しかも厄介な事に二人の愛の連携攻撃に手を焼き、徐々にではあるが押されはじめる。
    「守ってくれてありがと、ひーちゃん!」
    「おりりんの為ならどんな攻撃だって防いでみせるよっ」
    「キャー! ひーちゃんステキ! 抱いて!」
    「……なんだか無性にイラつくんだよ」
    「同意」
     彦星が恋人を守り攻撃する姿に幼馴染を彷彿とさせるのだが、この二人は何故かいらつく。琴弓の言葉に至葉は呟き頷いた。
    「あの彦星をどうにかできればいいんですが……」
     彦星の鉄壁とも言える守りを崩さねばこの状況は打開できない。困惑した表情を浮かべてロロットは言い、雨の歌を歌うと続けて琴弓の突き出した腕を影業がトレースした異形の腕が織姫めがけて飛んだ。
     都市伝説との戦いは続く。
    「他所様の恋愛くらい、応援してやれねーのか」
    「お前達にボク達の気持ちが分かってたまるか!」
    「そうよ! あなた達には私達の気持ちは分からないわっ!」
     武器を構えなおしながらシーゼルは言う。だが二人はその言葉を拒絶した。
    「年がら年中ラブラブでいられるあなた達にっ!」
    「ボク達の気持ちが分かるかっ!」
     怒りが込められた織姫と彦星の一撃が囮カップルのタバサへと向かうが、それをフュルヒテゴットは受け止める。
    「ありがと、フュルちゃん」
    「これくらい大丈夫や」
     だがさすがに二人の攻撃を受けるのはきつい。痛みに顔をしかめて仲間達と共に織姫へと妖の槍を振るう中、タバサの癒しにフュルヒテゴットはにかっと笑ってみせた。
     厄介な彦星の防御に灼滅者達は手を焼いたが、意外な所で打開される。
    「きゃっ!」
     彦星の攻撃によろめいたタバサのスカートがひらりとめくれ、それを彦星が凝視していたのを織姫は見過ごさなかったのだ。
    「何見てるのひーちゃん!」
    「あ、いや、その……」
    「ひどいわひーちゃん! 他の女を見るなんてっ!」
    「ち、違うんだよおりりん! これは……」
    「私よりあの女の方がいいのねっ!!」
    「違うって、その……」
    「隙ありっ!」
    「きゃあっ!」
     二人が口論をしている隙を突き、チェーンソー剣を織姫に振り下ろした。これを好機とばかりに他の灼滅者達も織姫へと攻撃をするが、うろたえていた彦星はそれを防ぐ事ができなかった。
    「油断は禁物ですよ」
     有人のミサイルが織姫に向けて放たれ、全弾命中するとその姿はゆらりと揺れ、地面に倒れる。
    「おりりん!」
    「ひー……ちゃん……」
     駆け寄り抱きかかえるが間に合わない。弱い声を発し、体からきらきらと星を散らしながら織姫の姿は彦星の腕の中で消えた。
    「後はお前だけだな!」
     言葉と共に繰り出される拳を彦星は正面から受けた。
     織姫を失った彦星は涙を流し、灼滅者達と戦う。だが目に見えてその力は弱まっていた。恐らくは織姫を失ったからだろう。
     灼滅者達の攻撃を受け、限界が近いのか彦星の体はふらつき今にも倒れそうだ。
    「末永く爆発しろッ!!」
     シーゼルと至葉の攻撃が致命傷となった。がくりと膝を突き彦星はうなだれる。
     ――ひーちゃん……ひーちゃん
     顔を上げると空からはきらきらと星が降り、聞き覚えのある声が響き渡った。
    「この声は……おりりん?」
     ――もういいわ。
    「うん、おりりんが言うなら……そうだね」
     ――また来年、会いましょう?
    「そうだね……また来年」
     彦星の体も織姫同様に星を散らし、空へと舞い上がる。灼滅者達は夜空へ吸い込まれていくの見上げた。
    「末永く爆発しろ」
     ぽつりと至葉が呟くと、それが聞こえていたのか上空から二人の声が響き渡る。
     ――お前達も爆発しろ!
    「お前……『達』?」
     フュルヒテゴットがその言葉を口にした瞬間、
     ちゅどおおおおおぉぉぉぉおおん!!!
     灼滅者達は爆発した。
     
     織姫と彦星は倒れ、伝説の山に平穏が訪れた。伝説の竹はさらさらと揺れ、満月の光に輝いている。
     全員の無事を確認した有人は伝説の竹へと近付き、書いてきた短冊をそっと飾りつけた。
    「来年の七夕も、皆で願いがかけられますように……」
    「いい願い事ですね」
     願い事を口にする有人はロロットに話しかけられ、そうですねと微笑むと彼女が手にする短冊へと目を向ける。
     短冊には綺麗な字で『素敵なお菓子と巡り合えます様に』と書かれていた。
    「それもご縁、ということで」
    「そうですね」
     恋愛成就だったら良かったんですけど、と言いながら飾り付けた夜風に揺れる短冊をじっと見つめた。
     二人が飾り付け言葉を交わしているのをシーゼルは少し離れた所から眺め、手にした短冊をじっと見つめる。
    「やっぱ、こういうのはどーも俺の性には合わねーな……」
     苦笑しながら言い、短冊をポケットにしまうと視線の先にいた至葉と目が合う。短冊を手にしていない彼女に飾らないのかと尋ねると、ぼくじゃ効果を確かめられないから、とそっけない言葉が返ってきた。
     想い人はいる。だがそれは心に秘めた想いだ。恋人同士が短冊を飾ることに意味があるのなら、今のぼくには意味はない。
     そんな事を思いながら至葉は想い人の顔を思い浮かべる。
     『広い心が持てます様に』、『彦星が優しくしてくれますように』と二つの短冊をこっそりと琴弓は飾りつけ
    「(何となく、爆発しろって言っている人達の気持ちが理解できちゃったんだよ)」
     と、内心で軽く落ち込む。自分も最近素っ気無い彼と爆発されないように気をつけなければ。
     剣は短冊を飾る人、飾らない人、各々の行動を眺める。彼には誰かに頼むような願いなどない。
     フュルヒテゴットは取り出した短冊に視線を落とし、いそいそと飾りつけた。
     『タバサと本当の恋人になれますように』。それが彼の願いだ。
     囮役という短い時間ではあったけれど、タバサとの会話はとても楽しかったし、何より彼女は素敵だ。囮のカップルではなく、本当のカップルになれたらいいのに……
    「あ、流れ星!」
    「え? どこどこ?」
     ふと、隣にいたタバサが突然、空を指差した。細い彼女の指が示す先を探し――頬に柔らかい感触。ほんの一瞬のそれがタバサの唇だと気付くのに数秒かかった。
    「ご利益あるわね? もう叶ってるじゃない」
     うっすらと頬を朱に染めタバサは恥ずかしそうに笑うと、つられてフュルヒテゴットも笑う。
     タバサの言葉の通り満月の夜空にひとつ、またひとつと流れ星が落ち、七夕の夜は更けていった。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月7日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 12/キャラが大事にされていた 0
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