鬼の棲む処

    作者:聖山葵

    「つーかさ、ホントに何も出ないンだよな?」
     満天の星空の下、青年が顔を引きつらせたのは近くにぽっかりと口を開けた洞窟があったからだった。
    「あー、まぁ大丈夫だろ? 昔は鬼が住んでたとか亡霊が住み着いてるとかそんな昔話あるらしいけどさ」
    「ちょ、待て、聞いてないぞ?」
     連れが飛んでもないことを暴露してあわてふためいた所を見るに、怖い話が苦手なのかもしれない。
    「ほら、向こうに平たい岩場があるだろ、あそこで捕まえた人間を」
     青年の態度が面白かったのか、にやにやと笑みを浮かべつつ解説をするもう一人の青年は――。
    「え」
     指さした場所を見たまま固まった。先程まで会話していた青年が角の生えた半裸のモノ、どう見ても物語の鬼としか思えないようなものに岩の上へ投げられたところだったのだから。
    「冗談、だろ?」
     呆然としながら漏らした声に、鬼が振り返る。星をを眺める絶景スポットはこの日、凄惨な殺戮の場へと姿を変えたのだった。
     
    「鬼が出ました」
     エクスブレインの少女は、集まった灼滅者達の前で、開口一番にそう告げた。
    「正確には鬼のような姿の眷属、だと思うのですが」
     その眷属らしきモノに二人の青年が襲われることが解ったのだという。
    「出現場所は海沿いの断崖絶壁なのです」
     足下が危険ではあるが、穴場の絶景スポットで少し離れたところまでは車も進入可能なのだとか。
    「デートスポットとしても知る人ぞ知るところですので、問題の人達の他にも訪れる人が出てくるかもしれないのですよ」
     そもそも、このまま放置すればまず件の青年達が犠牲になってしまう。
    「つまり、オイラ達はその鬼を退治して凝れば良いんだよね?」
    「ザッツライ、ですよ。デートスポットだから、鬼を倒したら和馬さんも意中の殿方と星を見てくるのも良いと思うのですよ」
    「や、認識おかしいから。認識おかしいからね?」
     確認するはずの鳥井・和馬(小学生ファイアブラッド・dn0046)がぎゃーぎゃー騒ぐ羽目になったのは、いつも通りか。
    「脱線しましたが説明にもどるのですよ」
    「そもそも、その脱線の原因作ったのそっちだよね?」
     キリッとでも擬音のつきそうな顔で、説明に戻ろうとしたエクスブレインを和馬が半眼で見たのは、和馬からすれば仕方ないことなのだが。
    「えぅ、和馬君私に気が? 駄目ですよ、女の子同士は非生産的なのですよ」
    「ちょ、なんでそんな話にーっ?!」
     脱線はもう少し続いたらしい。
    「……失礼しましたなのです。それで、その鬼っぽいのがどうして事件を起こしているかは解らないのですが、問題の場所に皆さんがおいでになれば出てくることは解っているのです」
     戦闘になれば、この鬼らしきモノはロケットハンマーのサイキックに似た攻撃で灼滅者達に襲いかかってくるとのこと。
    「ロケットスマッシュっぽい攻撃だけはしてこないですが、イメージに合わないからかも」
     ともあれ、敵は単体。
    「あなどって良い相手では無いと思うですが、問題はあと二つあるですよ」
    「あ、時間帯夜っぽいし、ひょっとして明かりとか?」
    「ご明察です。あと、鬼に襲われる筈だった人達にもお引き取り頂いて欲しいですよ。演算で問題の人達より先に現場近くまで行くタイミングを導き出しておいたので」
     この日、訪れる一般人は青年二人のみらしく、この二人にさえ引き返して貰えれば一般人が巻き込まれる可能性はないのですとエクスブレインの少女は補足した。
    「戦場は断崖絶壁だから足下注意ですよ?」
     もちろんバベルの鎖があるからこそ落ちたとしてもダメージは無いと考えて良いだろうが、戦線復帰までに時間をとられるのは間違いない。
    「私からは以上です。では、よろしくお願いするのですよ」
     ひょこんと頭を下げ、少女は灼滅者を送り出す。
    「和馬さんなのに相手が変態じゃないなんて珍しいのです」
    「や、珍しくなくて良いからーっ!」
     最後によけいなことを付け足しながら。
     


    参加者
    茅薙・優衣(宵闇の鬼姫・d01930)
    比良坂・八津葉(死魂の炉心・d02642)
    海保・眞白(真白色の猟犬・d03845)
    天神・ウルル(ヒュポクリシス・d08820)
    ラックス・ノウン(不動のフーリダム・d11624)
    楓・十六夜(闇夜虚ろう蒼銀の刃・d11790)
    月村・アヅマ(蒼炎旋風・d13869)
    宮代・庵(小学生神薙使い・d15709)

    ■リプレイ

    ●はじまり
    「鬼ですかぁ」
     目を奪われそうになるほど美しい星空の下、物陰に佇む天神・ウルル(ヒュポクリシス・d08820)はポツリと呟いた。
    (「鬼って本当にいたんですねぇ」)
     羅刹とはまた違うんですかねぇ、と首を傾げつつも瞳を輝かせているのは、戦いが待っていると知っているからだろう。
    (「イヌサルキジは連れてきてないんだけどな。あときびだんご」)
     ウルルの声に童話を連想するラックス・ノウン(不動のフーリダム・d11624)の耳がとらえたのは、風の音と波の音。
    「こんなものか」
     二つの音に混じって聞こえた音は、楓・十六夜(闇夜虚ろう蒼銀の刃・d11790)が手にした木の枝を置く音で。
    「設置した看板を見て、引き返して行く人影を確認しました」
    「こちらへ入って来るなり看板が見えるようにした効果です。さすが、わたしですね」
     戻って来るなりそう告げた月村・アヅマ(蒼炎旋風・d13869)の言を宮代・庵(小学生神薙使い・d15709)は補足しつつ眼鏡を押し上げ自画自賛する。
    「って訳だが……」
     言葉を継いだ海保・眞白(真白色の猟犬・d03845)が省略したのは、もう一つの準備への確認。
    「あの手の輩には看板の効果は薄いと思ったのだけど」
     既に問題の青年達は引き返しており、戻ってきたとしてもアヅマの殺界形成や比良坂・八津葉(死魂の炉心・d02642)達の魂鎮めの風と人除け対策は充分にしてあった。故に、問うたのだろうが。
    「もちろんです。鬼が実は変態さんで和馬くんを狙うようなら、守ってあげますからね~」
    「え゛っ?」
     返ってきたのは、鳥井・和馬(小学生ファイアブラッド・dn0046)の顔を引きつらせた茅薙・優衣(宵闇の鬼姫・d01930)の心構えだった。冗談なのは言うまでもないとして。
    「それはそれとして、こちらは火をつけるだけですよ」
     何故なら篝火の準備は既に終わっていたのだから。そも、明かりは篝火だけでなく、既に周囲を照らしているランプやライトのものもある。
    「そっか、じゃあそっちは――」
     むしろ気になったのは、いつの間にか俯いてここではない何処かを見ているアヅマのことだった。
    「あ、すみません」
     声をかけられたからか、見られていることに気づいたからか、帽子を被り直したアヅマの身体から返事と共にようやくぎこちなさが抜けて。
    (「中々景色の良いところですね。しかし、せっかくの絶景も穢らわしい鬼もどきがいては台無しです……」)
     景色を眺めていた庵が、視線を一点に止めた理由。
    「あら和馬君、お久しぶりね。」
     と和馬へ挨拶した時とは違う表情をもって、八津葉は『それ』へ向き直る。
    (「人の家系を滅茶苦茶にしてくれた鬼共……今回の件は確実に私の八つ当たりだけど」)
    「Sunctus」
     眞白の口ずさんだ鎮魂歌が聞こえ。
    「……闇を喰らえ、蒼き湖光の刃」
     スレイヤーカードの封印を解いた十六夜が一振りの刃を手にしたのが見えた。
    「鬼面拵えの縛霊手で鬼退治ってのは何かの皮肉かしら」
     戦いの始まり、優衣が呟いた直後。
    「……正に地獄から湧いて出た鬼ってか? 正体は何だかしらねぇが、早々と居るべき世界に帰って貰おうかねぇッ!」
     鬼へと向けられた眞白の殲術道具から光が迸った。

    ●崖の上
    「ギャア」
    「おーにさんこーちら!」
     複数方向から放たれた光線、うち幾つかに貫かれた『鬼』をからかうようにウルルは呼びかける。もっとも、挑発にのって飛び出して来たところで待ち受けているのは、灼滅者達の攻撃なのだが。
    「戯れにつけた鬼姫の称号ですけど、鬼姫の鬼退治、洒落がきついかしらね?」
     縛霊手へ内蔵した祭壇を展開しながら、優衣は鬼を見据え。
    「さて、宵闇の鬼姫、いざ、参る」
     言葉と共に構築された結界の中でそれは悲鳴を上げた。
    「とりあえずそこ動くなよ」
     カツっと蹴り飛ばされた小石が崖下の闇に呑まれて消え、ラックスが指輪から放った魔法弾はまるで相手を縫いつけようとするかのように襲いかかる。
    「ギッ」
     動きを制約せんと飛来したものに、鬼の気が一瞬逸れるが、十六夜にとってはその一瞬だけで事足りた。
    (「……俺も殺人『鬼』だ。同じ鬼と呼ばれる者同士、存分に殺し合おう」)
     蒼みがかった黒い刃が上段へ構えられる姿を知覚することすら出来ず、気づけば斬られていた異形の耳障りな悲鳴が波の音を打ち消す。
    「まだ終わりではありませんよ」
     ただ、庵の向けたガトリングガンは一度も火を噴いておらず。
    「そう言うことだ」
     アヅマの両手に集中したオーラも放出される時を待っていた。
    「合わせます」
    「ああ」
     そのどちらもが風の刃の出現へ有機連携する形で鬼へと向けられ、オーラは銃弾の雨ごと標的を飲み込む。だが、それで終わりの筈もない。
    「……こんな化け物みたいな身体にされた恨みは忘れない」
     だから、静かに呟いた八津葉の片腕は膨れ上がりながら異形化する。
    「そしてお前等と戦える力を得た幸運も同じく忘れない」
     巨大な質量をもって押し潰さんとする腕は、八津葉が心の内にあるモノを何処にぶつけるべきかわきまえていた。
    「ガァァァッ」
     それが戸惑っていたこともあっただろう。発見され、忍び寄って奇襲することが出来なかったのはおろか遭遇した者達は反撃、いや先制攻撃を仕掛けてきたのだから。
    「ウオォォォォ!」
     機先を制され、一撃をしのごうにも避けることも防ぐことも許さないと言うかのように繰り出される次の攻撃が邪魔で、結果としていくつもの傷を作りながら、鬼は怒りの咆吼を上げ、金棒を振り回した。
    「っ」
     弧を描く金棒の先端がウルルを狙い、殴り飛ばされた身体は宙を舞う。
    「……さすがですね、危ないところだったのですよ」
     何もない虚空を蹴って着地したウルルの耳に聞こえるのは、岩場に叩き付ける波の音。
    「ですが」
     ただ狙われた灼滅者にとっては危機一髪でも、他の面々にとっては攻撃の好機だった。
    「よっ、と」
     優衣の傷口から着火した炎の明かりに影を揺らしながら、殴打のはずみでよろめいた鬼へビハインドが霊撃を撃ち込み、ビハインドの影から飛び出したラックスは片手を地につき側転しつつ側面へと回り込む。
    「ガァッ」
     明かりに伸ばされた影の先端で敵を切り裂きながら。
    「やはり最初に狙われたのは、ウルルさんでしたね」
     戦況を見据えながら、庵が口ずさみ始めた歌声は天使を思わせるもので。
    (「お前の存在は悲劇を産む。故に俺は―――鬼を喰らう鬼となろう」)
     響きわたる歌声に味方の傷が癒される中、十六夜は殲術道具を再び上段へ構えた。

    ●頭上
    「こんな事もあろうかと待機しておいた甲斐がありましたっ! 助けに来ましたよ、弟君っ!」
     眞白が声を知覚したのは、自分の身体が落ちて行く感覚を感じたと思った直後だった。
    「私の弟君は……まさかやられっぱなしで済ますような弟君ではありませんよね?」
     ダメもとでテレパスを使い、僅かに気が逸れたというのもある。気がつけば金棒が避けきれない位置にあり、殴り飛ばされたところを受け止められ、箒で飛ぶ姉につり下げられるという現状に至ったのだ。だが、眞白の姉の問いかけへ対する答えは既に決まっていて。
    「ったりめーだろ姉貴ッ」
     鬼の上空で解き放たれた眞白はCherubimを真下に向けたまま落下を始める。
    「やられたら……熨斗付けて倍返しってなぁッ!」
     撃ち出された魔法の光線は落下の衝撃を和らげるものにあらず。繰り出される灼滅者達の攻撃を牽制すべく金棒を振り回す鬼にとって、頭上はこの時唯一の死角。
    「ギッ?!」
     ただの狩られる獲物ではなく脅威と認識したのか、集中攻撃を許したのは最初だけだったが、想定外の場所から一撃を受けた異形の身体は、痛みと驚きに一瞬硬直した。
    「油断しちゃ駄目ですよぉ?」
     一瞬の隙、それだけでウルルには充分だった。撃ち出された光の刃は鬼が腰に巻いた粗末な布を切り裂いて。
    「ウグッ」
     怯んだ異形の手足に触手と化した影が絡み付く。
    「ゴオオオオッ」
    「くっ」
     だが、四肢の半分を戒められても構わず鬼は金棒を振り回し、生み出した風の刃を打ち砕かれたアヅマは微かに歯噛みする。
    (「こいつを何とかできないと、羅刹を相手にするなんて言えないな……!」)
    「グオアッ」
    「っ」
     視界の中では、鬼の死角から斬りかかった十六夜が遮るように突き出された金棒を避けるように進路を変え。
    「こっちも行くわよ」
     マテリアルロッドを振りかぶった八津葉が別方向から鬼に飛びかかる。
    「ガァァァッ」
    「こんな羅刹のなりそこないに素晴らしい神薙の力を使われるなんて不愉快ですね……。わたしが正しい神薙の使い方を見せるのでさっさと灼滅されちゃって下さいな」
     流石に一本の金棒では両方は防げず、悲鳴を上げた敵を見ながら庵はガトリングガンの銃身を持ち上げる。
    「えっと、あの鬼金棒振り回してるだけだし、それ神薙の力じゃないよな?」
     誰かがツッコミを入れたような気もするが、庵は気にしない。
    「命中しました。さすが、わたしですね」
     爆炎の魔力を込めた弾丸が直撃と共に炎を吹き出す姿を見つめながら、自賛する。
    「ギャァァァッ」
     もっとも、鬼にとっては渦巻く風の刃だろうが弾丸だろうが痛いのに変わりないのだが。
    「どちらにしても倒」
     倒すだけ、とラックスが言いかけた時だった、身を焼かれつつある異形が次の標的を定めたのは。
    「ガアアッ」
    「ちょ、ちょ、ちょなんでくんの?」
     地を蹴った鬼が進む先にいたは思わず声を上げ、進路を塞ぐ様にビハインドが立ち塞がるも。
    「鳥井君、狙いは君だ!」
     狙いは、ラックスではなく。
    「へ?」
     呆然とした顔のまま佇む和馬の前に飛び込んだのは、優衣。
    「っ、普通っぽく見えてショタコンだったりするのは、和馬くんの宿命というものかしら」
    「や、今のごく普通……に?」
     庇ってくれた恩人ではあるものの、宿命には異議を唱えようとした少年は、次の瞬間足を踏み外し。
    「うわっ」
    「らら……? 空から可愛い女の子が……はっ、これが俗に言うフラグというやつですかっ!?」
     落ちると思った瞬間、誰かに受け止められていた。
    「や、オイラ女の子じゃないからね?」
    「え、女の子よね?」
     さりげなく指摘した声に戦闘中なのも忘れて八津葉が確認してきたのは、たぶん和馬を女性だと勘違いしていたのだろう。
    「では、間を取って『性別:和馬』と言うことにしておきましょう」
    「ちょ、それどこの間ーっ?!」
     一部で戦闘の緊張感が吹っ飛んでいる気もするが、仕方ない。
    「……の相手はこっちなのですよ、ルミナスブレイザー!」
     そもそも張りつめた空気と無縁なのは、一部の面々のみで戦闘自体は続行中だったのだから。植え付けられた怒りが消えたのか、仲間へ金棒を向けた鬼へウルルがビームを撃ち出し。
    「ギャァァァッ」
     縛霊手に内蔵された祭壇を展開しつつ、アヅマは影の触手に足を引っ張られた標的が直撃を受けたのを見届ける。そして、霊的因子を強制停止させる結界は構築され。
    「鳥井君、回復頼む!」
    「あ、うん」
     呼びかけた直後、優しい風に仲間達の髪がなびいたことで、自分の要請が通ったのを確認する。
    「さて、そろそろ終わりにしましょうか」
    「そうね」
     優衣と相づちを打った八津葉が戦線に復帰したのは、この直後。鬼神斬艦刀を振りかぶり地を蹴った優衣が斬りかかるのとは別方向から八津葉は巨大化した腕を叩き付け。
    「よっ」
     苦痛に叫びつつもがむしゃらに金棒を振り回す鬼へ横に飛びながらラックスは制約の弾丸を撃ち込む。
    「グゥゥッ」
     当たり所が悪かったのか、動きを『制約』され呻き声を漏らした異形へ。
    「……此処が貴様の終わりだ。蒼に呑まれて消えろ――」
     十六夜が死角から刃の切っ先を急所へ向け。
    「ガァッ!」
    「紫明の光芒に虚無と消えよ……ッ!」
     十六夜へ向き直ろうとした鬼の懐に飛び込んだ眞白はCherubimの先を突き込むように標的に向け、トリガーを引いた。
    「発射ェーッ!!」
     魔法の光線が胸を貫いて風穴を穿ち、黒い刃が首を落とす。首を失った胴体は前方へ倒れ込みながら消え始め、地面に転がった鬼の首は身体より一足早く夜の闇へ呑まれるように消えた。戦いは終わったのだ。

    ●のこったもの
    「ふぅ」
     アヅマが安堵の息をついたすぐ後、十六夜は踵を返し歩き始めていた。戦いが終わった以上、もはや留まる理由もないと判断したのかもしれない。
    「終わりましたが……まさか和馬くんと鬼の間に運命の糸でもつながってたわけじゃないでしょうし、なんで出てきたんでしょうね?」
    「や、オイラに妙な縁があるって仮定が既におかしいよね?」
     首を傾げた優衣へ和馬は異議を唱えてみるが、鬼の出現理由について納得の行く答えを持っておらず。
    「……ごめんな。せめて、安らかに……」
     鬼の消えた場所に祈りを捧げていた眞白も顔を上げてみるが、疑問を解決してくれそうなモノはない。
    「出来れば調査とかしてみたいところですが」
    「変わったところは特になさそうですよ」
     既に周辺の地面へ目を落としていたアヅマが優衣の呟きに応じはしたものの、収穫0を告げただけで。
    「結局あいつなんだったんだ?」
     ラックスの疑問に答えられそうな者は皆無だった。もっとも、疑問は残ったものの、エクスブレインから依頼されたのは調査ではなく鬼の討伐。
    「まぁ、やるべき事は成し遂げたんだし」
    「後はこの辺とか始末して帰るだけか。帰り掛けに立て看板は撤去しとかないとなー」
     いつの間にか火も消えた篝火から眞白は元来た方をちらりと振り返る。遠ざかる人影は、先程踵を返した十六夜のものか、それとも応援に来た姉のものか。
    「改めてみると綺麗な星空ですね、デートスポットっていうのも解る気がします」
     誰かの声に釣られて見上げた夜空は思わず息を呑むほどに美しく、まさに星の海だった。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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