シュテラ・クリューガー(星の淵源・d09156)は、こんな噂を耳にした。
『学校で下駄箱に恋文を入れるが、告白に来ない都市伝説がいる』と……。
都市伝説が確認されたのは、とある高校。
待ち合わせの場所に指定されているのは、体育館裏や使われていない教室、倉庫など。
ただし、都市伝説は、とっても恥ずかしがり屋さん。
その性格が災いして、いざ待ち合わせの場所に行く事になると、緊張して身動きが取れなくなってしまうらしい。
そのため、約束の場所に都市伝説が現れず、『だ、騙されたァー!』と絶望する生徒も多く、『もう恋なんてしない、するものかァー!』と断言し、愛を捨てた者も数知れず。
中には『俺の純粋な気持ちを! よくも、よくも、よくも!』と叫び、都市伝説に復讐を考えている生徒までいるようだ。
都市伝説自身はとっても可憐で、儚げな雰囲気がするおっとり系の美人のため、本人を見れば決して悪意がなかったと納得するかも知れないが、頭に血が上っている状態であれば話は別。
即デストロイモードへと移行し、都市伝説の命を奪うべく行動を開始する事だろう。
都市伝説自身は逃げ惑う事しか出来ないため、それほど倒す事は難しくないが、怒りに狂った生徒達の気を鎮める事は困難だろう。
参加者 | |
---|---|
若生・めぐみ(癒し系っぽい神薙使い・d01426) |
黒咬・昴(叢雲・d02294) |
シュテラ・クリューガー(星の淵源・d09156) |
祟部・彦麻呂(災厄を継ぎしもの・d14003) |
九葉・紫廉(ナインエッジ・d16186) |
空本・朔羅(中学生ご当地ヒーロー・d17395) |
富山・良太(柔道着の放浪者・d18057) |
ミツキ・ブランシュフォード(サンクチュアリ・d18296) |
●恥じらい
「内気な都市伝説と、都市伝説に復讐を考えている生徒っすか……。なんか生徒の方が悪者っぽく見えるっすね。まあ、面倒っすから、とりあえず両方しばき倒せばいいっすかね?」
空本・朔羅(中学生ご当地ヒーロー・d17395)は、仲間達と共に都市伝説が確認された高校にやってきた。
だが、そこで待っていたのは、被害を受けたチェリーボーイ達。
この様子では、毎日告白していたのでは、と思ってしまうほどの人数。
みんな、告白された事でかなり浮かれていたらしく、裏切られた時のショックも半端ではなかったらしい。
そのため、授業にも出ず血眼になって、都市伝説を捜しているようだった。
「これが人間の悪戯だったら良かったけど、都市伝説となると頑張らないとね、中君」
深い溜息をつきながら、富山・良太(柔道着の放浪者・d18057)がビハインドの中君に声をかける。
おそらく、これが都市伝説ではなく人間であれば、ここまで被害者を増やす事もなかっただろう。
「都市伝説そのものは、なーんか可愛い気もするし、大して害もないし、ほっといて良い気もするんだけどー……。まぁ、仕方ないよね」
自分なりに納得しながら、ミツキ・ブランシュフォード(サンクチュアリ・d18296)が口を開く。
事前に渡された資料を見る限り、都市伝説がわざとではなく、無意識。
悪気がない分、やりにくいというのが、本音であった。
「傍迷惑だとは思うが……、生徒達はキレ過ぎだろ。平和な都市伝説だし出来るだけ穏便に終わるといいなー」
祈るような表情を浮かべ、九葉・紫廉(ナインエッジ・d16186)が生徒達に視線を送る。
しかし、生徒達の怒りは頂点に達しており、都市伝説を襲ってあんな事やこんな事的な如何わしい妄想を膨らませていた。
「逆恨みから暴徒と化す……、これはまさかRB団の仕業!! とにかく、彼らには粛清もとい更生が必要なようね! そも手紙を下駄箱に入れる女史の方が絶滅危惧種なんだから、RB団滅ぶべし」
激しい怒りをあらわにしながら、黒咬・昴(叢雲・d02294)が生徒達を睨む。
その途端、生徒たちが一斉に視線を逸らした。
やはり、怖いのだ。自分に対して敵意を向ける者達が……。
「な、なんだ、お前達。ここの生徒じゃねえな!」
昴に睨まれ、生徒達が涙目になった。
よほど怖かったのか、両足がカタカタと震えている。
「出会っちゃうと、頭に血が上って話も出来なくなりそうですし、その前に見つけたいですね」
心配した様子で生徒達を眺め、若生・めぐみ(癒し系っぽい神薙使い・d01426)が気合を入れる。
いまのところ、生徒達が都市伝説を見つけていないようなので、もしかすると何らかの特殊な力が働いているのかも知れない。
そうでなければ、これだけの人数が捜しているにも関わらず、見つからないというのは考えにくい。
「とにかく、都市伝説を見つけた方が良さそうだね」
そう言ってシュテラ・クリューガー(星の淵源・d09156)が、学園の見取り図を確認した。
都市伝説が待ち合わせ場所に指定したポイントは、体育館裏、旧校舎、空き教室など様々。生徒達もそこを重点的に張り込んでいたようだが、都市伝説を見つけられなかったようである。
そう言った事から、告白した相手と決して出会う事がないように特別な力が働いているようにも思えたが、現時点ではそれも憶測でしかない。
「それじゃ、ここは任せて。どちらにしても、生徒達を足止めしておかないと、都市伝説と戦うのに邪魔が入ると思うから」
シュテラ達に声を掛けながら、祟部・彦麻呂(災厄を継ぎしもの・d14003)がその場に陣取った。
その間にシュテラ達は都市伝説を捜して、学校内を走り回るのであった。
●生徒達
「くぉらぁ! あんたら、女の子に寄ってたかって、何しようとしよるか! たいがいにせえや! そんなんじゃから女にモテんのじゃ、バカたれが! こまいことグダグダ言う前に、男を磨いて出直してこい!」
仲間達の姿が見えなくなった後、朔羅が生徒達を叱りつけて殺界形成を使う。
その途端、野次馬根性で集まっていた生徒達は散り散りになったが、都市伝説に対して恨みがある生徒達はまったく退かない、退こうとしない。
「たかだか、この程度の事で見境なく人を襲ってんじゃないわよ、獣か! こういう事をする輩に、そんな絶滅危惧種がやってくる訳がないでしょうが! 猛省しなさい!」
昴も容赦なく、生徒達を叱りつけていく。
それでも、退かない。半ばヤケ。
「そんなにいきり立ってないで、ちょっとお話しませんか? あ、お菓子でもの食べますか?」
紅茶入りのポットと手作りクッキー入りのバスケットを見せつつ、めぐみがラブフェロモンを発動させた。
「一回だけデートしてくれるならいいぜ」
それが生徒達の条件であった。
そのため、困ったのは、めぐみの方だった。
まさか、そんな条件を出されるとは思わなかったため、必要以上にあたふた。
だが、ここで断る訳にもいかないので、曖昧な返事をしてその場を切り抜けた。
「ねー、そこの男の子達。このスチール缶が見えるかな?」
そこで昴が一言。そして、スチール缶をグシャリ。
「……30秒後の貴様らの姿だ。こうなりたくなければ、暴れるのをやめな」
昴からの最終警告。
だが、生徒達は退かない。
「ちょっと待て。スチール缶がそんな簡単に潰れる訳がないだろ。間違いない。あれはアルミ缶だァ!」
生徒の一人が断言をする。
『おおー!』と歓声を上げる生徒達。
それはまるでレミングスの大行進にも似ていたが、誰一人として彼の言葉を疑っている者はいない。
「気持ちは分かりますけど、相手の事は考えました? 手紙を出す勇気は出せたけど、いざ会うとなると尻込みしちゃったとか。手紙を出した後、事情が出来て会えなくなってしまったとか。そういう事も考えてあげないと、いい関係って続かないと思いますよ」
今にもデストロイモードに突入しそうな昴をなだめつつ、めぐみがぎこちない笑みを浮かべて生徒達の説得を試みた。
その間も背後から漂う昴の殺気。しかも、生徒達も興奮して頭に血が上っているせいで、殺気の板挟み状態。あまりのプレッシャーにめぐみが、ばたんきゅー。
「実は、こんな手紙を受け取っていたんですが……」
そこで良太が『あの手紙を出した後、急に引っ越す事になり、行かれなくなりました。ごめんなさい』と言う内容の手紙を生徒達に渡したが、すぐに筆跡の違いを見破られ、生徒達がブチギレ状態。
「み、皆さん。落ち着いてください」
すぐに改心の光を使って事態を収拾しようとしたが、生徒達の心から邪な気持ちが消えただけで、都市伝説を捕まえて真意を知ろうという気持ちに変わりはなかった。
「だったら、その根性叩き直しちゃるけえ、かかってこい!」
それと同時に朔羅が生徒達に突っ込んでいき、手加減攻撃で気絶させていく。
昴も残った生徒達に当て身を放っていき、あっという間に片づけた。
「こんな事はしたくなかったんですけど、ごめんなさい」
申し訳なさそうにしながら、めぐみが魂鎮めの風を使う。
本当ならば、もう少し平和的に解決したかったが、頭に血が上った相手に何を言っても納得する可能性は低かった。
「……とは言え、すっかり時間が経ってしまったようっすね」
疲れた様子で溜息をつきながら、朔羅が時計を確認した。
おそらく、今から仲間達と合流したとしても、間に合わないだろう。
だが、生徒達の足止めは、これで完璧。
誰一人として、都市伝説に近づく事は出来ない。そして、二度と会う事も。
「……そういえば、RB団がいなかったわね。実際、関係なかったのかしら」
そう言って昴が首を傾げるのであった。
●都市伝説
「おそらく、あの娘ですね」
都市伝説と思しき女生徒を見つけ、彦麻呂が仲間達を連れて物陰に隠れた。
学校中を捜しまわって、最後に辿り着いたのは、学校の屋上だった。
普段は立ち入り禁止になっているようだが、なぜか鍵が開いていたため、『まさか!?』と思ったが、その予想が見事に的中したようである。
「特に害のない地縛霊みたいなモノだし、説得に応じて消滅してくれるといいんだけど……」
そんな淡い期待を込めて、ミツキが都市伝説に視線を送る。
だが、都市伝説と地縛霊は完全に別物。故に成仏して、消滅する事などあり得ない。
「そ、そこにいるのは、誰ですか?」
その気配に気づいた女生徒が、怯えた様子で声をかけてきた。
しかし、生徒達を騒いでいる事を知っているためか、恐怖で体が震えており、とても弱々しい印象を受けた。
「その、いきなりこんな事を言っても驚くだけだとは思うんだけどさ……。俺、君に一目惚れしちまったみたいなんだ。好きだ。……俺と、付き合ってくれないか?」
なるべく女生徒を警戒させないようにしつつ、紫廉が覚悟を決めた様子で告白する。
「彼女……いますよね。あっ、勘違いなら、ごめんなさい。私って昔から勘が鋭いというか、何というか、フリーと言うか……、チェリーさんに恋しちゃうタイプなんです。それがどうしてなのか、自分でもよく分からないんですが……。えっと、あの……勘違いだったら、ごめんなさい」
そう言って女生徒こと都市伝説が、深々と頭を下げた。
これには、紫廉も絶句。
よくよく考えてみれば、そう言った能力がなければ、二股をかけられた女生徒達が、都市伝説を捜しているはずである。
だが、都市伝説を捜していたのは、フリーか、チェリー。
「あ、あの……何だか変ですね。ご、ごめんなさい。私……、その……」
都市伝説が泣いた。わんわんと……。
「い、いや、俺も何だか、ごめん」
こうなると謝るしかない。
何とか泣き止ませようと、都市伝説を慰め始めたが、そこで気づく。
……何か違う。間違っている、と。
(「結局、わたし達が手を下す事になったか」)
険しい表情を浮かべながら、シュテラがスレイヤーカードを解除した。
これ以上、情けは無用。
下手にここで都市伝説に対して情けをかければ、余計に倒しづらくなってしまう。
そんな事は最初から分かっていた事だった。
都市伝説が思いを成就させる事など、あり得ない事を……。
それは自分で自分の首を絞めるようなもの。
自らの存在を否定する事など、現実ではあり得ない事を……。
「これも運命。恨みっこナシだよ」
一気に間合いを詰めながら、ミツキが都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
「わ、わ、いきなり何ですか!?」
そのため、都市伝説は訳が分からなかった。
何が起こったのか、理解する事が出来なかった。
ただ、ひとつ分かった事は、いま命を狙われている事。
絶体絶命のピンチであるという事だ。
「せめて一思いに……」
そして、シュテラが放ったフォースブレイクが都市伝説の息の根を止める。
実に呆気ない最後であった。
悲鳴すら上げられず、悲しげな表情を浮かべたまま、都市伝説は……消えた。
「これで……良かったんだよな」
都市伝説が消滅した後、紫廉がボソリと呟いた。
どちらにしても、倒さなければいけない存在。
存在してはならないモノ。
それがどんな形で現れ、どんな態度を取ろうとも、すべて偽り、作り物。
故に考えてはいけない、考えるべきではない。
「それにしても、よく知りもしない相手からのお手紙で浮かれちゃう男の人って……。まぁ、華のない青春に時間を費やすよりは、少しくらい有意義な時間が過ごせたかも知れませんが……」
そう言って彦麻呂が何気なく空を眺める。
空は青く、驚くほど澄み渡っていた。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年6月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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