ステージの上で、何を着ようかしら?

     少女はクローゼットを開いたまま、首をひねっていた。
    「うーん、来週のライブ何を着ようかなあ……」
     正統派ステージ衣装のドレス類。セーラー服や巫女装束など、あまり正統派ではない衣装。アイドルの嗜み、アンダースコート。
     などなど、クローゼットの中には様々な衣装が詰まっている。
     また近くのテーブルには、コスチュームカタログが何冊か広げられていた。今持っていない衣装を後で発注するつもりもあるのかもしれない。
    「後で誰かに、相談した方がいいのかしら……」
     ぼんやりとした少女の考え、及び彼女の平穏な日常は、その時不意に終わりを告げた。
     ばきっ、という激しい音とともに、部屋のドアが破壊されたからだ。
    「だ、誰!?」
     部屋に入ってきたのは黄色いローブ、フードをまとった合計5人の男達。先頭の男が巨大なハンマーを持っていることからすると、これでドアを破壊したのだろうか。
     そして最後尾の男の額には、ソロモンの悪魔の力の源とおぼしき六芒星が、おぼろに光っている。
    「裏切り者の淫魔め! アモン様の仇、不死王戦争の戦犯、貴様の血をもってあがなってもらう!」
    「え、え……!? どういうこと、知らないわよ!」
     少女の『上司』であるラブリンスターが武蔵坂学園と交流を深めた、という話は彼女も聞いていた。
     だがそれは単に仲良しの人々を増やしたというだけで、断じて裏切りの意図を持っていた訳ではない。まして敗戦やアモンの死の責任など、あずかり知らぬことである。
     ともあれ逃げ道もなく、むざむざ殺される訳にもいかず、少女は戦闘態勢に入る。
     しかし……多勢に無勢なのは、傍目にも明らかだった。
     
    「私達が思っている以上に、ダークネス相互の関係は複雑怪奇であるのかもしれません」
     五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)によると、『アモン様の仇』を呼号するソロモンの悪魔及びその配下が、ラブリンスターの一派に属する淫魔を襲撃する事件が起きるという。
     ソロモンの悪魔の立場としては淫魔内部の事情は知り得ない。
     しかし、不死王戦争に敗れアモンが灼滅された事実、及び戦争前には自分達と共闘していたはずのラブリンスターが、戦争後には何事もなかったかのように灼滅者達と友好を深めている事実はわかる。
     とすれば……ラブリンスターが裏切ったせいで戦争に負けた、と短絡的に考えるソロモンの悪魔がいても不思議ではない、ということだろうか。
    「淫魔はともかく、少なくともソロモンの悪魔の方は明確な現在の敵です。しかも普段は自ら前線に出ることの少ないソロモンの悪魔が、姿を見せているのです。
     これを討つ機会を逃す手はない、と私は考えます」
     姫子の口調は淡々としていながら、千載一遇の好機に対する内心の高揚をもうかがわせるものと言えた。
    「ソロモンの悪魔はハンマーを持った強化一般人とナイフを持った強化一般人を2人ずつ従えており、一味は合計5人です。
     場所はとある高層マンションの13階です。従って、淫魔の部屋に到達するまでには、ある程度時間がかかることが予測されます」
     灼滅者が何もしなければ、淫魔はソロモンの悪魔及び強化一般人に倒されてしまうだろう。もっともソロモンの悪魔達も相応に消耗するので、連中を倒す目的だけならこの状態が1番楽ではある。
     普通にエレベーターないし階段を利用して上がれば、淫魔が倒される前に部屋に到着することはできる。ただし1人で戦っていた淫魔に、そのタイミングでまだ戦闘力が残されているかは微妙だ。
     それよりも先に部屋に到着したければ――何らかの裏技が必要だ。
    「いつまで、かはさておき、現在のラブリンスター一派は学園とも一定の友好関係を保っています。
     あなた方の選択がこの関係にどのような影響を与えるか……今はまだわかりません。
     ただ、あなた方がよかれと思う手段を採ってくだされば幸いです」
     そう締めくくると、姫子は灼滅者達に頭を下げた。


    参加者
    睦月・恵理(北の魔女・d00531)
    砂原・鋭二郎(中学生魔法使い・d01884)
    星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)
    神座・澪(和気愛々の癒し巫女・d05738)
    リステア・セリファ(デルフィニウム・d11201)
    鴇・千慶(ガラスの瞳に映る炎と海・d15001)
    マイア・トーグ(マジカルストライカー・d16515)
    若葉・杏子(あんこのだらだらシンデレラ・d16586)

    ■リプレイ

    ●空を飛びたいな
    「それでは先に行ってきますね」
     仲間に先行してマンションの建物内に入ったのは星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)。ビハインド『お父さん・星野永一』とともに、エレベーターが1階に降りてくるのを待つ。
    「ああ、気ぃ付けりや。さて……」
     夜のマンションにおいても、いくつかの窓は開いている。1階の窓の1つが開き、夜空を眺めている住民がいるのを認めると、神座・澪(和気愛々の癒し巫女・d05738)はそちらへと歩み寄った。
    「よその人にウチらのこと、見られる訳にはいかへんのや。堪忍やで」
    「な、何ですか……zzz」
     魂鎮めの風の効果で、住民は眠りに落ちた。
     澪はそのまま壁に足をかけると、すたすた垂直に登り始めた。窓の開いた部屋の住民を1つ1つ眠らせ、潰していく。
     この目的を果たすために澪は、彼女の『いつもの』巫女装束ではなく忍装束をまとっていた。とは言え巫女装束も忍装束も、ざっくりと開いたたわわな胸元、スリットが深すぎてひらひらめくれる腰布、という点でほとんど差はなかったり。
     そして残る6人の灼滅者は、と言うと。
    「恵理、お願いするわ」
    「任せてください」
     睦月・恵理(北の魔女・d00531)の箒の後ろに、リステア・セリファ(デルフィニウム・d11201)がまたがっていた。マンションの外側を、空飛ぶ箒でショートカットする計画である。
     同じくマイア・トーグ(マジカルストライカー・d16515)の箒には、若葉・杏子(あんこのだらだらシンデレラ・d16586)が乗り込む。
    「マイマイサンクスっ!」
    「ふにゃ!?」
     落ちないための用心と、乗せてくれるマイアへの感謝に、後ろからぎゅっと抱きつく杏子。
     むにゅっ、と柔らかな感触が背中に伝わって、マイアは間抜けな悲鳴を上げた。
    「り、立派なものが……いえ何でもないです!」
    「……?」
     マイアのミニ丈チャイナドレスの胸は、ほんの少しだけ盛り上がりを見せている。実はこれ、パッドである。だってまったくないのも寂しいから。
     なのに、そのパッドの倍近いボリュームが、マイアの背中に押しつけられていた。
     人に知られぬささやかな努力を、ナチュラルな天賦が圧殺してしまう。これを理不尽と呼ぶべきか、不平等と呼ぶべきか。
    「うわうわううわわわすごいね!」
     そして、鴇・千慶(ガラスの瞳に映る炎と海・d15001)は砂原・鋭二郎(中学生魔法使い・d01884)の箒に同乗して、初めての飛行体験に圧倒されていた。
    「裏切り、か……勘違いも甚だしいが、周囲から見ればそうなるか。
     元はと言えばこちらの厄介事だ。自分達で処理せねばな」
     鋭二郎は静かに、不死王戦争の敗戦の理由をラブリンスターの裏切りに求めようとしているというソロモンの悪魔に思いを馳せていた。箒の後ろで千慶もうなずく。
    「普段ね、ずっと普通の人たち操るだけ操って壊して殺して、そんなソロモンの悪魔が自分から出てくるなんてね。
     絶対に逃さないから。絶対に倒す!」
     2人乗り状態の箒はスピードもいつもより遅く、またすぐに高度限界点に達してしまう。
     13階はまだ遠い。ここからは別の方法で上らなければならない。
     千慶とリステアは澪を見習ってか、壁登りを開始した。落ちないギリギリの早足を調整しつつ、13階を目指す。
     一方、杏子は廊下側の窓からマンションの建物内に入ると、素早く階段へと駆け込む。
    「ノーカラテ、ノーアイドル! なんつってー♪」
     それから一気に、階段脇の壁を蹴り、跳んだ。ダブルジャンプも併用して、普通に階段を駆け登るよりも少し早く13階を目指す。
    「急ぐぞ」
     そして、お荷物がなくなった魔法使い達の箒も、13階へ向けて一気に加速していった。

    ●信じて欲しいから
     もっとも早く13階に到着したのは魔法使いの3人、そして杏子だった。
     夜空の箒から照明に照らされた室内を覗き込むと、1対5で苦戦を強いられている黒髪の少女が映る。静かにつぶやき、そして突進する鋭二郎。
    「――灼滅開始」
     窓が突き破られ、窓ガラスが砕け散る……が、音はしない。サウンドシャッターの効果だ。同時に杏子も玄関口に陣取り、敵の逃げ道を封じる。
    「あ、あなた達は……?」
    「武蔵坂学園、参上です!」
     自分達の立場の宣言とともに、マイアはブラックルビーとソロモンの悪魔一味との間に走る。
    「助けに来ました! 後から仲間も来ます、今はとにかく一緒に悪魔を倒しましょう!」
     だが、口先だけで信じてもらえるとは思っていない。マイアはリングスラッシャーを飛ばし、ブラックルビーと彼女に向けて振り下ろされているハンマーとの間へと割り込ませた。
    「私が守ります!」
     きんっ、という高音とともにハンマーの軌道がわずかに逸れ、空を切った。
    「いぇー! 武蔵坂の戦乙女ですよー♪ 皆ノってこー♪」
     さらにブラックルビーの肩口に血がにじんでいるのを見た杏子が、エンジェリックボイスで傷を癒す。
    「武蔵坂学園、か……助かる」
     どうやら味方と理解してもらえたらしい。ブラックルビーの真紅の瞳は再び、ソロモンの悪魔へと向けられた。
     回復はマイアと杏子に任せて十分と見て、鋭二郎は影業で狙撃用の長銃を形作らせる。
    「喰らえ」
     影の弾丸のターゲットは敵陣の守備を任務としているナイフ持ち強化一般人。まずはここが崩し所、と灼滅者達は踏んでいた。
    「武蔵坂だと!? おのれ、やはり裏切りおったか淫魔め、灼滅者などを援軍に呼んだというのか!」
    「大外れ。あなた達の情報管理が杜撰なだけです」
     わめくソロモンの悪魔を、恵理の舌鋒が容赦なく切って捨てる。
    「今あなた達を叩く理由はもっと単純。己の敗因を認めも出来ない単細胞が、己を磨く女性を集団で襲って言い訳する図が、見苦し過ぎたからです。
     我らが宿敵も落ちぶれたもの……悪魔の狡知だの爵位だのが聞いて呆れます」
     知謀を武器とするはずのソロモンの悪魔にしては、ラブリンスターの裏切りをあっさりと信じ込む単純さ、そしてこの逆上ぶり。ソロモンの悪魔の中でも相当な小物、と恵理は見てとった。
    「お、おのれぇ!」
    「……っ!」
     鳩尾に受ける衝撃、そしてお腹の内側に広がる熱さ。ソロモンの悪魔から放たれた魔法の矢だ。
     恵理の膝はそれでも、折れはしない。彼女の目的はまさしく、ブラックルビーから攻撃を逸らさせる点にあるのだから。
     次いでリステアと千慶も、壁を登り切りベランダから室内へと姿を現した。
    「淫魔に喧嘩を売る悪魔……なんとも滑稽な姿よね。さて、淫魔にケンカ売ってるマヌケはどこかしら?」
     味方の人数が増えて、灼滅者側にも少しずつ攻撃の余裕ができてきた。リステアは咎人の大鎌『Arioch Scythe』を、ナイフ持ち強化一般人の1人に鋭く振り下ろす。
    「ブラックルビーはいい淫魔(ひと)なのかな、わるい淫魔なのかな? 俺達も君やラブリンスターにとっていい灼滅者だったらいいなあ。
     でもブラックルビーとっても可愛いから、どっちでもいいや! 一緒に戦おうよ」
     千慶の拳が雷撃を帯びて、もう1人のナイフ持ちの腹をえぐる。
    「ぐふ!? か、閣下ぁ……!」
     ソロモンの悪魔から力を借りているにすぎない強化一般人にとっては、それらは十分な致命傷であった。

    ●押し潰す
    「お父さん、お願い!」
    「Yahhoi!」
     そして最後にえりなが玄関から、澪が窓から部屋に突入し、全員が揃った。
     えりなの『星野永一』、そして澪のナノナノ『らぴらぶ』が傷ついた仲間の前に立ちはだかり、ハンマーの一撃を食い止める。
    「友達の友達は友達! ラブりん直伝のらぶオーラで助けに来たえ♪」
     澪のバトルオーラはラブリンスターの影響を受けた、胸元にハートマークを浮かばせるオーラである。その名も『愛輪覆気(ラブりんオーラ)』。ブラックルビーも少なくとも、ラブリンスターと澪の関係が悪くないことは気づいているようだった。
     そのオーラの力で、ハンマー持ち強化一般人を麻痺させ動きを封じ込める澪。
     勢い余って自分の忍装束の腰巻まで、ふわっと翻らせてしまったり。お尻のふくらみの肌色が、ちらりと一瞬。
    「私と同じ芸能活動をする仲間は、絶対に助けてみせます」
     室内の様子を素早く見てとると、えりなは恵理に向けて明るくポップな回復の歌を飛ばした。
    「その通りです。ブラックルビーさん……貴女も自分の芸術を、全力で守って下さい」
     力を取り戻した恵理は影の刃を作り出すと、ハンマー持ちの1人を深々と切り裂く。
    「……」
     こくん、とブラックルビーはうなずくと、もう1人のハンマー持ちの脳内へと向けて『歌声』を撃ち出した。相手はぴくんと動きを止め……そのまま、動かなくなった。
     残るはソロモンの悪魔1人。
    「はっ! えーい!」
     ここは押し切る時、と見たマイアは、拳法家としての力を振るって攻勢に出た。鋭い拳を次々に繰り出し、部下のいなくなったソロモンの悪魔を防戦に追い込む。
    「ぐっ、おのれ……!」
    「穿て」
     鋭二郎の影銃から放たれたのは、純粋魔力の弾丸。
     相手にとっさに対処されたらしくダメージは大きくはなかったが、それでも鋭二郎に落胆の色はない。彼の任務は果たされていた。
    「……これは目眩まし」
     その言葉通り、二の矢としてリステアが、ソロモンの悪魔の懐まで飛び込んでいたから。
    「アモンは傲慢さ故に私達に敗れた。アナタはどうかしら?
     淫魔に因縁をつけるくらいだから、答えなんて目に見えてるわね」
     リステアは『Arioch Scythe』に帯びさせていた炎を消すと、からんと床に落とした。
     もちろん戦意を失った訳ではない。リステアの腕が、何倍にもふくれ上がる。潜在能力である神薙使いの力を一気に開放したのだ。
    「ひっ……!?」
    「押し潰す……!」
     宣言通りの結末は、小物ソロモンの悪魔の末路には似合いであったかもしれない。

    ●ちょっとだけよ
    「どうもありがと。でもあなた達は一体……?」
    「仲間達は知らないけど、私個人は貴女のことなんてどうでも良いのよ。今回はたまたま悪魔狩りに来ただけだから」
     リステアはそう言い残し、早々に部屋から退散した。
    「ソロモンの悪魔の怪しい動きを見つけて、調べていたんです。そうしたらあなたが襲われていたんで、駆けつけました」
     ブラックルビーは仮にもダークネスである。エクスブレインや未来予測について、彼女に今知られる訳にはいかない。マイアの説明はその点を巧みにぼかし、かつリステアのフォローもしたものである。
     襲撃に思い当たる節がないか、杏子が逆に聞きだそうとするが、ブラックルビーは首を振るだけだった。
     残された7人の灼滅者達が、破壊されたドアや窓などの始末に取りかかった。偶然を装ってマイアがクローゼットを覗き込む。
    「わぁ! 衣装が沢山です!」
     さらにカタログを見つけた澪も畳みかける。
    「ルビりん、衣装で悩んどったん? ほな、ウチらのさっきの姿を参考にしたらエエんやないかな♪」
    「ま、まあね……じゃあ、お願いしてみようかしら」
     という流れから――急遽、ファッションショーが開かれることとなった。

     まず鋭二郎の提案。
    「かなりの変化球ではあるが、アラビア系踊り子風というのは如何だろうか。染めた胸当てや薄布ズボンを金の装飾で留めるような」
    「今の手持ちにはないけど……こんな感じでどうかしら」
     ブラックルビーが身につけたのは真紅のビキニ水着。その上からピンクや水色のレースや薄絹を、髪、口元、腕、太腿といった部位に巻き付けたり垂らしたりしている。
    「ふむ、なかなかよさそうだな」
    「ありがと。どうせなら本格的にやってもいいかな」
     後で発注書に使うのか、ブラックルビーはしきりにメモを取っているようだ。
     次にブラックルビーが披露したのは巫女装束。と言っても、装束のあちこちをくつろげた形に安全ピンで固定した、露出度200%の巫女装束だ。もちろん澪の『いつもの』装束の模倣である。
    「今はいいけど、ステージの上でこれは……ちょっと恥ずかしいかしら」
    「無理はせんでええで。ただラブりんのためにも、いっぱいらぶを皆に伝えたって、な!」
     澪の手が前垂れ部分にかかる。深スリット緋袴が、一気にまくり上げられた。
    「きゃあ!? も、もう……」
     慌てて緋袴を押さえつけるブラックルビー。ちなみに下は肌色スパッツ。なので安心。
     3番目はマイアと同じ、ミニ丈チャイナドレス。
    「……」
    「どうしたの、似合ってない?」
    「……す、すっごく似合ってます! 最高です!」
     似合う似合わないの問題ではない。ただ自分と同じ服を、おっきな柔らかカーブが押し上げていると……見比べてしまって、羨望の念を禁じ得ないだけであった。
     4番目はチェックスカートのブレザー。それをステージドレス風にアレンジし、さらに杏子の衣装に合わせて星形のバッジやスパンコールを多数取り付けたものだ。
    「うん、ライブでは体力もいるし、動きやすいのがいいよね」
    「ルビりんが夢を目指すこと、応援するよっ♪」
     何度も言うが、ブラックルビーはダークネスである。誰かが傷つくような夢を彼女がいだくのであれば、灼滅者としては阻止せざるを得ない。
     ただそれでも、『淫魔が夢を持つな』とは言えなかった。元淫魔として、また1人のアイドルとして、それは杏子自身に跳ね返る言葉だったから。
     最後は正統派ドレス。色はえりなの衣装を念頭に、青と黄色を基調としたドレスを選択した。そして星形バッジ・スパンコールもこちらに移し替えている。
    「私は歌手で、モデルです。
     だから、真面目に芸能活動を頑張ってるなら、どんな方でも応援したいんですよね。
     ラブリンスターさんも、もちろんブラックルビーさんも。私でその活動をお助け出来るなら……」
    「あはは、ボスも私も結構幸せ者みたいね。どうもありがと」
     皆が喜んでくれる衣装と演出が大事、とえりなは考えている。
     その『皆』には、アイドル自身も含まれているのだろうか。ブラックルビーも、ラブリンスターも、杏子も……そしてえりなも。

    「貴女達と私の立場は違いますが、他人の誇りに敬意を表せる所は表したいと思います。私自身、魔法を究めることに誇りを持ってますから」
     ファッションショーを終えて普段着に戻ったブラックルビーに、恵理が静かに語った。
    「ですから、ステージのことは応援しますよ。頑張って下さいね」
    「ええ!」
     ブラックルビーは力強くうなずくと、恵理に合計8枚のライブチケットを手渡した。

     チケットはその後、リステアの手にも渡ったのか。
     灼滅者達のうち誰がブラックルビーのライブを楽しんだのか。
     そして、ブラックルビーはステージでどんなコスチュームを披露したのか。衣装は1種類か、それとも途中でお色直しして複数の衣装を着用したのか。
     ――これらは、今回語るには紙面が足りない、また後日の物語。

    作者:まほりはじめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 14/キャラが大事にされていた 4
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