
「変身ッ!」
世の中何が起こるかわからない。
肩口まで伸びた髪をなびかせ、今年中学1年生になった少女、アキラが叫んだのは、まず日常生活では聞くことのないであろう言葉。
「うーん、やっぱりこれだとオリジナリティに欠けるかな」
人気のない学校の屋上でただひとり、アキラは様々なポーズを取ったり少々変わった掛け声を上げたりしていた。
「これじゃ『いざ』という時に困るなぁ」
アキラはある仮定を常に胸に抱いていた。
もしかしたら自分は突如変身ヒーローになってしまうかもしれない。
そんな空想か妄想に似た仮定を。
無論、アキラは紛うことなき一般市民であり、何も特別な力を有してはいない。
「だけど、だからこそ非日常に巻き込まれる可能性だってあるんだ!」
どこまでもポジティブなのは評価に値する気もする。
その願いがどこかに届いたのか否か。それは突然訪れた。
「んん~……フォォォゥムゥ、チェェェンジィィィ!!」
今日一番の気合を入れ、手を掲げたアキラ。
その手の平に、ふわりと何かが覆い被さってきた。
「うわわっ!?」
手を引っ込めると、まるでまとわり付いてくるように何かがアキラの視界に入った。
フリルがあしらわれ、白と黒のシックな色合いが清純にして可憐な印象を与える――。
「……メイド服?」
学校の近くにメイド喫茶などないし、学園祭もまだ遠い。
演劇部か何かの衣装だろうか。あれこれ考えながらじーっとそれを見つめていると。
「……戦うメイドっていうのもアリ、かな」
今、屋上に自分以外の目はない。
「ちょっとくらいなら、借りてもいいかな?」
アキラはちょっと魔が差してメイド服に袖を通すのだった。
「ジャキィィィン! チェンジコスチューム、コンプリートォ! 超級使用人戦士、ヘッドドレスメイダーV! 見参ッツ!!」
名前はともかくとして、見事な着こなしであった。
彼女がどこからどう見ても不審なメイド服がただのメイド服ではないと気付くのは、まだ先の事。
「メイド服を着たようだな!」
神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)の発言から間違いを見つけよう。
正解しても何もないが。
「どうやら最近、出処がよく分からない服を着てしまった一般人が強化一般人になるという事件が発生しているようだ」
今回の話もその事件のひとつのようで、アキラという変身ヒーローに憧れる少女がどこからともなく現れたメイド服を手にしたのが事の発端となったのだった。
「見た目は随分アレだが、服の魅力を否定した者を殺害してしまうという凶悪な面も持っているから放置はできない。逆に魅了された者を配下にする事もあるようだな」
とはいえ強化一般人には違いないため、灼滅者からすればそれほど苦戦する相手でもないだろう。
しかし既に放課後教室に残っていた同じ学校に通う生徒3人がアキラのメイド服姿に魅了され、配下になってしまっている様子。
「本人が心の底でどう思っていようと今はこのメイド服が意識を乗っ取っているようなものだ。つまり、言葉ひとつで油断を誘えるという事だな」
褒めたり話を合わせたり、あるいは……。
「さて、アキラは配下の3人を引き連れ、手に竹刀のようなものを持って戦うようだな」
木刀のようなものの名前はメイダーセイバーというらしい。
微妙に韻を踏んでいる所が気になる。
接近戦が得意なようで、妙に素早いので相手を見失わないように気を付けたい。
「配下の女子生徒たちも身近なものを手に、アキラを守るために襲い掛かってくるだろう」
戦力としては取るに足りない相手だが、どこかヒーロー的な立ち回りのメイドアキラに魅了された面々である。
似たような立場の仲間としてその身を呈してでもアキラを援護する事が予想される。
まあ、熱狂的なファンみたいなものじゃないカナ。
「今回の相手はメイド服だ。メイド服が本体という事は……当然、倒すと、メイド服がボロボロになる……」
ヤマトは言い難そうにしつつ、咳払いをひとつ。
「幸いにも、と言うべきかメイド服を着て戦っていたという記憶は残らない。まあ、その後のフォローはしっかりとするようにしてくれよ」
灼滅者としては大義名分があるとはいえ、そんな話は向こうとしては知った事ではないだろうし、何より絵的に非常にマズい。
くれぐれも紳士、淑女的に行動していきたい。
「しかしメイド服か。待てよ」
ヤマトははたと何かに気付き、ルービックキューブを取り出した。
「そうだ、ルービックキューブに萌えキャラをプリントしたものを売りだせば……!?」
どこまでルービックマニアなのか。
| 参加者 | |
|---|---|
![]() 花藤・焔(魔斬刃姫・d01510) |
![]() 天鳥・ティナーシャ(夜啼鶯番長・d01553) |
![]() ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954) |
![]() 水葉・椛(秋の調・d05051) |
![]() 五十嵐・匠(中学生シャドウハンター・d10959) |
![]() 九十九坂・枢(迷宮喜劇・d12597) |
![]() 龍記・アサト(ヒーローになりたい・d13182) |
千堂・一夏(先導者・d15410) |
●メイドエンカウンター
下校時刻はとうに過ぎ、一般教室が並ぶフロアは閑散としていた。
「渡す生徒さんがいないのも少しさびしいですね」
武蔵坂学園の学園祭の詳細その他が記されたパンフレットを抱える水葉・椛(秋の調・d05051)がやや残念そうに呟く。
目標となる中学校に不審に思われないように入る方法として灼滅者が考えたのが、学園祭の宣伝だった。
「そもそも人に会わないなら言い訳のように宣伝しなくてもすみますね」
花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)をはじめとして、灼滅者たちは全員学園の指定制服を着ている。
「せっかくですしポスターは貼ってもいいでしょうか」
「アポも許可も取っていないから、自重しておいた方がいいかもね」
椛の提案に五十嵐・匠(中学生シャドウハンター・d10959)は首を振る。
後で許可を得てもいいが、現状では面倒事は避けるべきだろう。
「たしかそろそろだったよな……っと」
黒髪のウィッグで緑色の自毛を隠すファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)はぴたりと足を止めた。
視線の先には。
「だ、だからメイド服を否定する悪人を倒しにいかないといけないんだって!」
「やぁ~ん♪ 困った顔もかわいいんだからぁ~♪」
「くっつかないでってばぁー!」
メイド服の少女とこの中学校の制服を着た少女がべたべたとくっつきあっていた。
疑いようもなくアキラとその配下たちだろうが、
「ま、まあ他人に慕われるってのもヒーローの資質ではあるっすよね……」
対抗心を抱いていた龍記・アサト(ヒーローになりたい・d13182)は、ヒーローものとは掛け離れたユリの花が咲き乱れるような光景に虚を突かれた。
向こうも灼滅者たちに気付いたらしく、後ろに控えていた男子生徒2人が要人を守るSPのようにアキラの前に体をねじ込みこちらに睨みをきかせる。
「アキラさんで間違いないのです?」
交戦の意志はないと両手を胸の高さまで挙げて問う天鳥・ティナーシャ(夜啼鶯番長・d01553)。
「確かにこちらはアキラちゃんで――」
「違う! 今はヘッドドレスメイダーV! だ!」
男子生徒の言葉を遮り主張するアキラ。
「変身時はヒーロー名で呼ぶのがお約束ですからね」
うんうんと頷く千堂・一夏(先導者・d15410)は顔を上げると、アキラに向けて意思のこもった瞳を向ける。
「ボクたちはキミに強い魂の輝きを感じてやってきました」
「強い、魂の……?」
ぴくりと頬が動くのを九十九坂・枢(迷宮喜劇・d12597)は見逃していなかった。
「そう。素敵なメイド服やね、格好ええ感じ」
枢の追撃にアキラは凛々しい表情を維持するのが限界になってきたようだ。
「な、なかなか分かっているようだね。もう少しメイド服について話をしない?」
「そんな! アキラちゃんの虜はこの私、メイだけで十分なのにっ!?」
「だからヘッドドレスメイダーだって!」
男子生徒を下がらせ、メイという名の少女を引き離そうとしているアキラは灼滅者たちに対する警戒心を軟化させたように思えた。
「そうだね。戦うメイドさん、というのもロマンに溢れていていいと思う。だから――」
匠が徐に伸ばした腕の、指の先には、
「ここで悪さをする悪いメイド服さんは排除しないとね」
スレイヤーカードが挟まれていた。
「メイド服は常に正義、常に最強だと思うけど?」
それがどういう意味を指すのか、というよりはメイド服の悪口に聞こえた様子のアキラは頬を膨らませる。
「メイド服を着たくらいで強くなったつもりでいては困るな」
「何ッ!?」
「教えてやるよ、真のメイド服の強さってやつを――」
大きな動作で上着を脱ぎ捨てたファルケ。
その下には……!
「こ、これは!」
「幻の拳『メイド神拳』、とくと受けてみよ」
ファルケ・リフライヤ、13歳。少年が纏うその衣こそ、メイド服に他ならなかった。
●メイドファイティング
「メイド服が宇宙一似合うのはアキラちゃんなんだから! しかも男? 認めない、そんなものは!」
「認められなくても構わない。認められるまで俺は戦う。強さの意味を教えてやろう、俺の歌声でっ」
ある意味最強の歌声の持ち主であるファルケが詰め寄ったのはメイ。
「メイド百裂拳っ」
「歌声どこいった!?」
ラッシュをされては返しの激しい打ち合いの一方、
「くっ、不意打ちとは卑劣なッ!」
「卑劣? 無関係の一般人を巻き込んでおいて何言ってんだよ! お前こそその子を解放したらどうだ!」
言葉を区切る度に腕を大きく振り、あるいは拳を握りしめて熱く反論するアサト。
「解放? メイドヒーローになる事を望んだのは自分自身。そしてあの人たちは慕って仲間になってくれただけだッ!」
メイドになる事は望んでいたワケではないだろうが、それはメイド服が干渉している影響に他ならない。
「ヒーローに憧れるって気持ち、分かる気がするなあ……」
ふと、一夏は自分の護符揃えの中の1枚に視線を落とし、独りごちる。
その『カード』には凛々しく佇む光の騎士が描かれていた。
騎士を胸に抱き、一夏は願う。この騎士のように強くなる事を。
「だからボクはキミになったつもりで戦う。気高き魂の輝きで闇を打ち払え! ライド!」
護符揃えを天空から振り下ろし、目の前に叩きつけるように構え、突き付ける一夏。
「ヘッドドレスメイダー! その魂の輝きが本物かどうか試させてもらいますっ」
手札の中の一枚を選び抜き、導眠符として投射する。
一夏の導眠符はアキラに真っ直ぐ飛んでいくが背中に背負っていた竹刀で阻まれ、直撃とはいかなかったようだ。
しかし、仲間が進軍する猶予は十分に稼いだ。
「メイド服より私の服の方がかっこいいのですよ」
堂々と敵対宣言をしながらビシリとポーズをとるティナーシャ。
いつもの武蔵坂学園の制服の上に学ランというスタイリッシュな格好にアキラは一瞬目を奪われるが。
「学ランって……キミのような色白で銀髪の子こそメイド服を着るべきなのにッ」
「アキラちゃんが私以外の女の子に釘付けに!? キィー!」
「気になるのはそこなのか」
ファルケと交戦しながらもメイは嫉妬の涙を浮べている。
「学ランは機能美というものがあるのです。メイド服は見た目だけなのですよ」
「メイド服には1ミリも無駄な部分なんてないんだッ!」
言い争う2人だか、少なくともティナーシャは本心からメイド服を卑しめているわけではない。
どちらも着る者次第で格好良くなれるのだと思いながらもあえて挑発しているのだ。
「かっこよさでは学ランの圧勝なのです」
「そこまで言うなら、体でメイド服の良さを味わってもらうッ!」
ぶかぶかな学ランをひらひらさせているティナーシャが言うと、格好良さよりもかわいさに溢れているように見えるが……。
片手で構えた竹刀、いや、メイダーセイバーを振り上げると、そのままの姿勢でティナーシャへと突進。
「メイダースラァァッシュッ!!」
あえての挑発、つまり自分への攻撃を誘導する事こそ目的としていたティナーシャはシールドを構え、涼やかな顔かつ全力でそれを受け止める。
「むうっ、みえ……」
「どこを見ているんですか、いきますよ!!」
「ぐはー!」
スカートをふわふわさせていたアキラに釘付けになっていたメイを、容赦なく焔が斬り伏せる。
「放っておくと危険な相手でしたね。早めに倒しておいて正解でした」
「意外な強敵だったぜ」
日本刀・黒紅を鞘に収める焔に、ズレたウィッグを直すファルケ。
「殺界形成にサウンドシャッターも使っていますし、もうそれ外してもいいのでは?」
「黒髪メイドってのも悪くないだろ」
それはともかくメイド神拳とは一体。
「1人にそんなに集中していてはいけないな」
ティナーシャに対して攻撃を続けるアキラに斬影刃を飛ばす匠。
「しま……っ!」
一夏の初撃、そしてティナーシャの引き付けが作った隙が大きなチャンスとなったのだ。
刃がメイド服を斬り裂き、肩口とスカートが大きく破損する。
「なかなか刺激的な光景だね。男子諸君には刺激的すぎかな?」
投射した姿勢の影業を元に戻しながら匠は流し目で配下の男子生徒の様子を窺った。
「お、おいアレ……」
「マジか」
「ウヒョー、コイツぁたまらねぇぜおい!」
「マジで」
案の定ガン見していた。
「これは一刻も早くアキラさんを保護せねばならないな」
「無論よ。今ならドコ触っても不可抗力っつーアレがアレで」
「あら、ちょっと手元が滑りましたわ♪」
「「ホギャー!!」」
一策を講じていた男子生徒2名は椛の神薙刃によって吹き飛ばされた。
まだ名前すら出ていない両名は折り重なるようにしてダウン。
「うっかりサイキックを誤使用してしまいました♪ これからは気を付けないといけません……ね?」
「あ、ああ」
「ヒッ!?」
この場に残っている男子2人にやんわりと微笑む椛。
「使用人戦士ゆうんなら、雇用者に恥かかさんよう、粗忽に走り回るんはやめとき」
「雇用者はこの世界の意思。悪を倒すためなら多少の大立ち回りなら許されるんだッ!」
「言ってる意味はようわからんけど、使用人なら重火器のひとつも嗜んでおくとええよ」
枢もメイド服だが、アキラが着ているような一般的に認知されたふりふりふわふわなそれとは違い、ヴィクトリアンスタイルと呼ばれるものを着用している。
清楚さと可憐さを併せ持ち、かつ動作に支障がない程度に施された装飾類が主人を引き立てる高貴さをも演出している。
古き良きメイドの枢が取り出したるは、
「例えばガトリングガン、とか?」
「いやそっちも言ってる意味わからな……うわわ!?」
鈍く光る砲身から発せられる連続した轟音の連鎖。そして無数に射出される弾丸。
清楚なメイドと重厚なガトリングガン。このギャップが何とも言えぬ侘び寂びを感じる。
次々と着弾し、都度破れていくメイド服。
「くっ、このお!」
弾幕を掻い潜り……もとい、被弾にも怯まずに突撃するアキラ。
「そんな重い銃なら近付いてしまえばッ」
「立ち上がれ、ボクの分身!」
「むうッ!?」
枢に振り下ろされるはずだった剣は一夏のビハインドによって阻止された。
「いいタイミングやったね」
「間に合ってよかったです! ボクに勝てないようでは、次のグレードに進むのはまだ早いかもしれないね」
「くッ」
一般人はおろか雑兵すぎるぞと一夏は意気込む。
一夏と彼女のビハインドによる総攻撃に怯んだアキラは数度跳ね、灼滅者との距離を取った。
「それなら、最高の一撃でもってお前たちを倒してくれるッ」
メイド服はかなりボロボロになっており、色々と危うい状態になっているが、それでも余力が残っているというのか。
天井目掛けて超訳するメイダー。
「ヒーローっつうのはなガワで決まるモンじゃねえんだよ、魂なんだよ!」
両の拳を握り込み、アサトは吼える。
「確かに見た目は大事だけど取り繕ってハイそうですかってモンじゃねえんだ!」
アキラには共感できる所がある。だから絶対に護らなくてはならない。だからこそ全力で挑まなくてはいけないのだ!
「メイド服じゃない、あんた自身の魂を見せてみろ! リフライヤ!」
「合わせていくぜっ」
アサト、そしてファルケもまた地を蹴り、天を目指す。
跳躍時間長くねとか、天井の高さどれだけだよとか、そういった概念はヒーローの前には瑣末な事象に過ぎない。
「「「うおおおおお!!」」」
交差の瞬間、光の爆発が校舎を包み込んだ。
「一体……」
「あっ、あれを!」
灼滅者たちが見たのは、真紅のマフラーをなびかせながら着地するアサトと。
レーティングの上昇を覚悟せねばならぬレベルにメイド服を破壊された少女の姿だった。
●メイドエンド
女子は教室、男子は廊下へと迅速に移動し、まず最悪の自体だけは避ける。
同時に椛が魂鎮めの風で関わった一般人全員を眠らせ、混乱を防いだ。
やがて。
「……ん、あれ……?」
目が覚めたアキラは焔が用意したジャージ姿になり、介抱されていた。
「気が付きましたか?」
「……だれ? それと、えーっと、あれ……何してたんだっけ」
視線の先にいた焔を、そして周囲を見回し首を傾げるアキラ。
「わたしたちは他校の生徒で、今日はたまたま学園祭の宣伝をしに訪れたのですが、急に大きな音が聞こえたので駆けつけて来たところ、あなたが倒れていて……」
詳しい事情は知らないという体で説明する椛。
「はぁ。一体何が……」
「あれは何やったんやろね」
ふと、枢が思わせぶりに呟く。
「気のせいかなんかなあ? 遠目からやけど、君が一瞬光ったように見えたし……なんかその前、変身ヒーローみたいな格好してたみたいやけど」
「思い出したのですよ。かっこいい変身ヒーローが悪者を追い払ったところだったように見えたのです」
ティナーシャもこくこくと同意する。
「すぐにいなくなっちゃったですけど……実はお姉さんが正体だったりするのです?」
「ええ!?」
突然の展開に目を白黒させるアキラ。
「実は」
匠は袋に入った何かを手渡した。
「ヒーローが君にと言って置いていったんだ」
「はひ?」
「それが何かは俺たちには分からん。でも、君にならもしかしたら……」
匠から受け取った物を見て、アキラは更に目を丸くした。
それはどう見ても『変身ベルト』にしか見えなかったのだから当然だ。
「こんなコトが本当に……?」
「キミにとってヒーローは遠い憧れ? それとも、もう手が届きそうなくらいかな?」
「それは……」
一夏に優しく問われ、ベルトに視線を落とすアキラ。
「追いかけていれば、いつかきっと届くよ」
その一言に、アキラはベルトをきつく握りしめ、頷いた。
「さて、もう1人の子ももうすぐ起きそうだし、そしたら皆で甘いものでもどうかにゃ……あ」
甘い香りを漂わせる枢は、以前罰ゲームでやらざるを得なかった猫語尾がぽろりと出て、赤面する。
出てきたお菓子とそんな様子の枢に、一同は和やかな雰囲気で笑いあった。
一方の廊下では。
「――と、こんな事があったわけだ」
アサトが身振り手振りを加え、事の経緯を説明していた。
「にわかに信じられないけど、そうなのか」
「そんな学園祭があるのか」
ついでに所々で学園祭の見どころも話していた。
「ところでキミは一体」
「いや、名乗る程のモンじゃねぇ」
アサトは踵を返し、
(「あれ、ちょっとオレ今カッコよくねえ……?」)
立ち去ろうとしたその時。
「もう少ししたら女子の着替えも終わるだろう。それまで一曲どうだ」
ギターに手を掛けたファルケが口を開き……。
「何で突然歌い出……ッツ!?」
「ゲェ!」
「こ、これはガァァ!?」
ファルケの地獄の歌声に新たな敵かと女子が飛び出してきたり何だりでドタバタしていたが、事件は解決した。
新たなヒーローが生まれたかどうかは、また別の話である。
| 作者:黒柴好人 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2013年7月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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