悪魔の復讐劇、或いはただのとばっちり

    作者:緋月シン

    ●裏切りの代償
     海藤恭子はラブリンスター配下の淫魔である。そんな恭子がカラオケボックスにいるのは、自分の力が足りていないのを自覚しているからだった。
     即ち特訓である。勿論一朝一夕にどうにかなると思っているわけではないが、何もしなければどうにもならない。
     隠れるようにしているのは、勿論その方が格好いいからだ。いつの間にか力をつけていたとか、何それ素敵。
    「まあそれでもラブリンスター様には全然届かないんですけどねー」
     もっともそれは当たり前の話だ。敬愛するあの人に、そう簡単に届くわけがないのである。
     そしてだからこそ、やりがいがある。
     そんな時であった。突然部屋の扉が、勢いよく開かれる。
     あれこれはもしかしたら私の歌声を聴いちゃった誰かが魅力に参って来ちゃいました? などと悠長なことを考えていられたのは、その瞬間までだ。
    「アモン様の仇だ、薄汚い裏切り者め!」
     まったく身に覚えのない言葉と共に、見知らぬ人影が四つ。
    「え、ちょっと、一体何の話なんですか? 私裏切りとか知らないんですけど?」
    「問答無用!」
     突然襲い掛かられるが、それを黙って受け入れる謂れはない。訳が分からないままに応戦するが、多勢に無勢。
     結局理由すらもよく分からぬままに、恭子は地面へと崩れ落ちていくのだった。

    ●ただし思い込み
    「皆さん、本日は集まってくださり、ありがとうございます」
     その場に集まった灼滅者達の顔を見回すと、五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は頭を下げた。それから、今回の依頼に関しての説明をしていく。
    「不死王戦争で灼滅した、ソロモンの悪魔・アモンのことは覚えていますよね? どうやらその勢力の残党が、また事件を起こすようなのです」
     しかし今回は、一般人に対してのそれではない。彼らは、ラブリンスター配下の淫魔に対して攻撃をしかけようとしているようなのだ。
    「不死王戦争では共闘していたラブリンスターが私達と接触した事を裏切りと取ったのかもしれませんし、或いは、不死王戦争の前からラブリンスターと私達が繋がっており、不死王戦争の敗北はラブリンスターの策略であった、とでも思ったのかもしれません」
     詳しい理由は分からずとも、彼らがラブリンスター達を裏切り者だと捉えている事に違いはない。
    「ダークネス同士の戦いではありますが、アモン残党のソロモンの悪魔を倒す好機でもあります」
     よろしくお願いしますと、姫子は頭を下げた。
    「今回戦場となりますのは、カラオケボックスの中になります」
     しかしどうやら大人数用の個室らしく、戦闘をする際に問題とならない程度の広さはある。何故淫魔がそんな場所で一人でカラオケをしていたかというと、何でもある程度の人前で歌うことを想定して練習していたらしいのだが、まあ蛇足だ。
     つまりは、戦闘に関して障害となるようなものはないということである。
    「敵の戦力は、ソロモンの悪魔一体とその配下の強化一般人が三人となります」
     おそらく戦力差としては、こちらが八人でかかった場合とほぼ互角程度だと思われる。
    「それと淫魔――海藤・恭子(かいどう・きょうこ)さんと言うのですが、そちらの戦力も一応説明しておきますと、こちらは一人であり、普通のダークネスと同等の力を持っています」
     ソロモンの悪魔と一対一で戦った場合は、互角といったところだろう。
    「そしてわざわざ恭子さんの説明もしたのには当然理由があります。皆さんには、選択をして頂きたいのです」
     即ち、『恭子を守ってソロモンの悪魔と戦う』か、『恭子と協力してソロモンの悪魔と戦う』か、『恭子が敗北してから、消耗したソロモンの悪魔と戦う』か。そのどれかを選ぶことが出来る。
     或いは、恭子とソロモンの悪魔の両方と戦うということすらも、選択することだけならば可能だ。
     もっともその場合、さすがに勝ち目はないだろうが。
    「今回の目的は、あくまでもソロモンの悪魔です。ですから……」
     言い方は悪いが、恭子に関してはどうでもいいのだ。
    「どうするかは、皆さんにお任せします」
     よろしくお願いしますと、姫子は再度頭を下げたのだった。


    参加者
    各務・樹(レセヴィブレ・d02313)
    キース・アシュクロフト(氷華繚乱・d03557)
    言鈴・綺子(赤頭の魔・d07420)
    高倉・奏(拳で語る元シスター・d10164)
    神前・蒼慰(中学生デモノイドヒューマン・d16904)
    宮澄・柊(迷い蛾・d18565)
    泉名・水琴(天地の理を探す者・d18770)
    プリュイ・プリエール(まほろばの葉・d18955)

    ■リプレイ


     今の所友好的なラブリンスターを確実に敵に回すのは避けたいものの、かと言って灼滅者と淫魔が手を組んでいると思われるのも微妙である。
     なので。
    「『ソロモンの悪魔を灼滅しに来たら、偶然恭子さんがいた』、そんな方向で行きましょう」
     一先ず今回の作戦はそういうことになった。
     確認するような神前・蒼慰(中学生デモノイドヒューマン・d16904)の言葉に、皆も頷く。
    「正直、詳しいことは知らんけど、アモン残党ってのは特別らしい。なら全力で灼滅。がんばる」
     学園に来たばかりでそこら辺の事情には詳しくない宮澄・柊(迷い蛾・d18565)ではあるが、淫魔とは友好な関係を築けている、ということは知っている。
     ならばここで敵対する必要は無いだろう、というのが柊の考えであった。
    「それにしても、アモンの残党もすごい勘違いをするものですね。勘違いというよりも、人間に負けたという悔しさからの思い込みでしょうか」
     当時のことを直接は知らないという意味では、泉名・水琴(天地の理を探す者・d18770)も同じである。
     だが学園の報告書には目を通してあるため、事情は把握済みだ。
     故に水琴も方針に関しては異論ない。ただ淫魔へ特に思い入れは無いが、そこにはここで助けておく方が後々学園のためになるという打算的な一面もあった。
    「アモンへの仇討ち……ねぇ。自分には、仇討ちを口実にした侵略にしか見えないっすがね」
     高倉・奏(拳で語る元シスター・d10164)はそう思うものの、どちらにしろやることに違いはない。
    「まあともかく、淫魔こと恭子っちとは争わず、共戦または守る方向でいくっす!」
     言鈴・綺子(赤頭の魔・d07420)は恭子への対応を確認しつつ……ふと、奏と顔を見合わせた。
     この二人、微妙に口調が被ってる。何となく、互いに苦笑を浮かべた。
    「何がどうなってこうなった。ええいややこしい。淫魔だけでもややこしいというのに」
     そう言ってぼやくのはキース・アシュクロフト(氷華繚乱・d03557)である。
     元より口数が少なく、無愛想で素っ気無いキースではあるが、今日はいつにも増してその口調がきつめだ。
     まあこんな状況ともなれば仕方のないことだろう。
     ともあれ。
    「まぁいい、元よりこちらに降りかかる火の粉だ。払わせてもらおう」
     そうして目の前の扉を眺めた。
     そこが件のカラオケルームへの入り口である。確認やら何やらをしているうちに、辿り着いていたのだ。
    「みんな、準備はいい?」
     問いかける各務・樹(レセヴィブレ・d02313)の手には、スレイヤーカード。頷く皆の手にも、同様のものがある。
     それを確認し、掲げた。
    「Bienvenu au parti d'un magicien!」
     そして。
    「頼もーう!」
     そんな言葉と共に、綺子が扉を開け放った。
    「悪い悪魔はいねーっすか! なんちゃって」


     どうやら、今まさに襲いかかろうかというタイミングであったらしい。
     そんな状況での先ほどの言葉だ。ダークネスであれど驚かないわけがない。
    「ソロモンの悪魔……やっと見つけました」
     そんな思わせぶりな言葉を言われたら、尚更だ。
     水琴のその言葉によって生じた隙に乗じ、八人と一匹は恭子とソロモンの悪魔達との間に割って入る。配下の一人に関しては、綺子のフォースブレイクのオマケ付きだ。
    「ちょっと気になることを耳にしたから来てみたんだけど……やっぱりね。ここはわたしたちにまかせて」
     背後に庇う形となった恭子へと、樹は笑みを浮かべながら言葉を投げた。
     言葉は足りていないが、この場で敵対しない意思が伝われば、それでいい。
     目的はあくまでソロモンの悪魔一派の灼滅である。
     その上で、恭子を守るのは最低限のライン。一緒に戦ってもらえるかは、そうなればラッキー、程度でしかない。
     とはいえ、その内心は複雑だ。
     自身直接の宿敵ではなく、宿敵を倒すためではあるものの、これでいいのかという思いは確かにある。
     だが全部を敵に回して勝てるほど甘くはない。大人しく私情を挟むのはやめておいた。
    「寄ってたかって女の子を苛めるとかとことん外道っすねアンタ達」
     言いながら奏は殺界形成を使用していた。さらに柊がサウンドシャッターを使用しているため、これで余計な心配をする必要はない。
     そして。
    「っと、そこの女の子は巻き込まれないうちに逃げるなりなんなりして下さいね!」
    「私達の標的はソロモンの悪魔。この場を離れるかしてくれるとありがたいわ」
    「え、ええと……?」
     奏と蒼慰の言葉に恭子は戸惑い気味の様子であったが、蒼慰はそれ以上反応するつもりはなかった。
     ここから先の行動は恭子任せだ。自分は自分の仕事に専念するだけである。
    「俺達はお前に敵意はない。ソロモンの悪魔を倒しに来ただけだ。あとは逃げるも戦うも、好きにすれば良い」
     相変わらずのキースの言葉に、やはり他意はない。けれどもそれで相手がどう思うかは、別問題だ。
     どうしたものか悩んでいる様子の恭子を、未だ言葉を喋るのが苦手なプリュイ・プリエール(まほろばの葉・d18955)はただ真剣な目で見つめていた。
     それに気付いた様子が視線を向けると、その通りだと言わんばかりにコクコク頷いて同意を示す。
     しかし残念ながら、それで恭子の疑問が晴れることはない。
     だが。
    「貴様ら……」
     それ以上の言葉を交わしている余裕はなさそうであった。
     四対の視線が、射殺さんばかりに灼滅者達へと向けられている。
    「何故我らの邪魔をする!? ソイツは淫魔だぞ!?」
    「は? 彼女淫魔なんすか? へー。まあ別に悪さしてるようには見えないし、自分らの目的はアモン残党率いるソロモンの悪魔狩りなんで!」
     言葉を返したのは、奏だ。なるべく学園の情報が流れないように、言葉を選びながら……の、つもりであったが。
    「……アモン様と我らを知り、淫魔を助ける成り損ない……やはりそういうことか……!」
    「……あっ」
     そういう意味では、それは失言に近かったと言えるだろう。
     もっとも、灼滅者が淫魔を庇っているという時点で、正直隠そうとする意味はほとんどなかった。その状況であれば、遅かれ早かれ察する。
     事実目の前のソロモンの悪魔も、予想はしていたようだ。
     さらに反応があったのはもう一つ。
    「あなた達は……やっぱりそうなんですね……!」
     何処か嬉しそうに、恭子が灼滅者達のことを見ていた。やはりと言っているあたり、こちらも何となく察していたのだろう。
     そして言ってしまった以上、否定することは出来ない。しても余計ややこしくなるだけだ。
     ならば。
    「ほらほら、大人しくしてて! してないなら一緒に戦ってー!」
     勢いで流してしまえ、とばかりに綺子が声を掛けた。
     しかし目の前に居る者達の正体を確信したためか、恭子の反応は早かった。
    「分かりました、私も戦います!」
     灼滅者側に、それを拒む理由はない。
     これで残る懸念は、一つのみ。
    「我が身は絶対零度の氷華なり……恨みはないが、凍てついてもらう」
     宣言の言葉は、キース。ガンナイフの切っ先を向けながらのそれが、戦闘開始の合図となった。


     戦闘方針としては、まずは配下達を倒し、それからソロモンの悪魔を狙うというものである。
     だがその際に邪魔になるのが、ソロモンの悪魔だ。
    「貴様の配下を倒す間は大人しくしていてもらおうか」
     故にキースはその牽制へと動く。
     魔術によって引き起こされた雷が、ソロモンの悪魔の身体を一瞬だけその場に足を縫い止めた。
     それは効果というほどのものではない。ただの攻撃を食らったことによる硬直だ。だからこそ一瞬に過ぎず……しかしそれで十分だった。
     後は、仲間に任せればいい。
     その想いを受け取ったかのように、樹が前に出た。そうしながら、三人の配下の姿を素早く見回す。
     戦闘は始まったばかりであるため、どれから攻撃しても同じ――否。一人だけ、傷ついている者が居る。
     それは、先ほど部屋に入った直後に綺子によって攻撃をされた者だった。
     自分が狙われたことに気付いたのか、その敵より光弾が放たれるが、樹はそれを僅かに上体を逸らすことでかわす。
     それによって、微かに速度が緩んだ。そこを狙って、配下の一人の攻撃がさらに繰り出される。
     しかし樹は敢えてそれを無視した。構わずに踏み込み、身体を前へと押し出す。
     だが攻撃をかわすには足りない。
     その横から、攻撃が迫り――直後、奏によって遮られた。
     それを当たり前のこととして、視線すら向けずに樹はさらに一歩を踏み込む。当たり前のこととして、奏はその攻撃を放ってきた敵へと向き直る。
     樹が異形巨大化した片腕を振り上げた直後、奏は聖戦への誘いという名のバトルオーラに覆われ雷を纏った拳を構える。
     二つの異なる拳が、二つの異なる敵へと、ほぼ同時に叩き込まれた。
    「ノマ、いいコいいコ。みんなの背中、守るヨ、イイ?」
     傍らに居るナノナノのノマへと指示を出しながら、プリュイは後ろを振り返った。
     そこに居るのは、やる気満々といった様子の恭子である。
    「キョウコ、イッショ、アイツラ倒そ!」
    「はい、頑張ります!」
     言うな否や放たれたのは、歌だった。正確に言うならば、歌という名の衝撃波だ。
     たかが歌と侮ることなかれ。それはダークネスによる攻撃である。
     直後、ソロモンの悪魔含め、全員が吹き飛んだ。轟音と共に、壁に激突する。
     さすがに少し驚いたプリュイであるものの、チャンスと見て素早く飛び込む。ノマのしゃぼん玉に合わせ、雷を纏った拳を撃ち込んだ。
     瀕死の身体にそれは止めとなり、それで起き上がってくる配下はいなくなった。
     残り一人となったソロモンの悪魔が、怒り心頭といった様子で立ち上がる。
    「成り損ない共に、裏切り者が……!」
    「人間だろうとダークネスだろうと変わらず、逆恨みダサい」
     挑発するような事を言いながら、柊は自身へとソーサルダガーを使用していく。
     いつ攻撃が来ても防げるように、庇えるように、構える。
    「ええ、逆恨みとかアポなしとか、ダメっすよねー。せめてアポくらいは取らないと! ねー?」
     柊の言葉に乗りながら、綺子は好き放題言っていた。
    「……あっ、今の私達も十分アポなし突撃って感じっすな! 向こうからしたら。にへへっ」
     その様子はかなり楽しげである。
     その手に持つのは愛羅武丸。先がバキバキに折れ曲がったそれはどこからどう見ても鉄パイプであるが、綺子にとっては杖であるらしい。
     それを楽しげに振り回している様子はちょっと別の意味で危ない気もするが、今は戦闘中だし大丈夫だろう。多分。
     ともあれそのまま近寄ると、振りかぶり。
    「ホームラン級かっ飛ばすっす!」
     全力で振り抜いた。言葉通りに吹き飛ばされながら、その身体の内側で流された魔力が爆ぜる。
    「……部屋の中なのがちょっと狭く感じるっすなー」
     残念そうに呟いた。
     不意にその場に音が生じたのは、蒼慰がその武器を奏でたからだ。
    「ジャム開始よ」
     その形状は、いつもと異なりエレキギターである。どうやら今回はロック系でいくことにしたらしい。
     最近芽生え始めた遊び心を表すように、ロックな曲調の音色が周囲に響き渡る。
     そして勿論それは無意味に弾いているわけではない。伝わった音が、衝撃となって襲い掛かった。
    「皆さんを癒す力が、私の力にもなるんです」
     水琴より放たれるのは、善なるものを救う光条だ。味方の傷が癒えるのを確認すると、すぐさま周囲を見渡す。
     その顔には笑みが浮かんでいた。何かが面白かったり楽しかったりするわけではない。
     誰かを癒し、守るための笑みだ。
     回復役は仲間を支える要でもある。そのために水琴は後方から全体を見渡し、常に的確な判断が下せるようにしている。
     誰一人、失わせないために。
     再度、癒しの光条が飛んだ。
    「くっ、裏切り者達、なぞに……!」
     幾らソロモンの悪魔といえども、さすがに灼滅者と淫魔同時に戦っては、一溜まりもない。
    「せめて、貴様だけでも……!」
     最後の抵抗とばかりに恭子へと光弾を放ったが、それは直前で弾かれる。柊が庇ったのだ。
     さすがに無傷で、とはいかなかったが。
    「ヒカリの恵ミ、受け取っテ」
     それもプリュイによって即座に癒された。
     それでも諦めまいとする身体を、蒼慰の除霊結界が阻む。ノマのしゃぼん玉と水琴の導眠符が飛び、同時に綺子の拳が打ち抜いた。
     崩れ落ち欠けたその身体を受けたのは金属バット。勝利への渇望という名のそれが奏の手によって振り上げられ、浮いた肉体を樹のマテリアルロッドが捉える。
    「キースさん!」
    「――任せろ」
     振り抜かれ、飛んだ先に居たのはキース。構えたガンナイフの銃口をその顔へと向け。
    「チェックメイトだ」
     撃ち放たれた一撃が、その身を貫いたのだった。


    「今日は助けていただきありがとうございました!」
    「あー、女の子を寄ってたかって虐めているって事実が許せなかっただけなんでお気になさらず……」
     礼を述べる恭子に、奏は言葉を選びながら返した。そんな心配は無用かもしれないが、念のためというやつである。
    「ところで、裏切ったって言われるようなことで心当たりはない?」
    「いえ、それがまったく……」
     一応聞いてみた樹であるが、やはり心当たりはないらしい。
    「というよりも、こっちが聞きたいぐらいですが」
    「何でなんっすかねぇ……私たちも知らないっす」
    「アクマ達、何考えてるかワカラないデスネ」
     逆に聞かれてしまったものの、綺子とプリュイが適当に誤魔化した。
     それを疑っている様子はない。素直なのか、或いは信頼されているのか。
     ともあれ。
    「それじゃあ、私は帰ろうと思います。今日は本当にありがとうございました!」
    「協力、アリガト、キョウコ」
    「おつかれっすー! あ、そういえばラブリンスターにもヨロシクね!」
    「はい、ちゃんと伝えておきます!」
     そう言って恭子が部屋から出て行った後、誰からともなく溜息が吐き出された。
     どうやら、何とか無事に終わったらしい。
     だがあと一つだけ、まだ残っていることがあった。
    「……さすがにすごいことになってるわね」
     部屋を見回した樹の視線に映ったのは、荒れ果てたカラオケルームである。
     戦闘を行ったのだから、当たり前の惨状とも言えるのだろうが……さすがに放っておくわけにもいくまい。
    「申し訳程度だけど、片付けしましょうか」
    「そうっすね。まあ荒れてるなりに綺麗にしておくっす」
     その提案に、綺子が頷く。他の皆も、異論はない。
     そうして片付けながら、樹はふと思った。
     今回の介入。交わした言葉。それはどんな影響を及ぼし、果たしてどんな結末を迎えるのか。
     そこまで考えたところで、頭を振って止めた。
     それは、今考えたところで意味はない。
     いずれ、結論は出るはずだから。

    作者:緋月シン 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月3日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 14
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