裏切りに死を授け

    作者:幾夜緋琉

    ●裏切りに死を授け
    『な、何よっ、突然襲いかかってくるなんて、フェアじゃないわよっ!!』
     神奈川県の街角……電車の高架下で、女性の叫び声が響き渡る。
     ストリートライブに精を出していた少女……そんな彼女に、突然。
    『裏切り者が……裏切り者のラブリンスター一派には死の制裁を!!』
    『そうだそうだ。アモン様の固き、ここで取ってやる!!』
    『っ……何よ貴方達、ラブリンスター様に恨みでもあるの!?』
    『当たり前だ!! お前達が寝返ったせいで、アモン様は死んだんだ!!』
    『そうだとしても、私には何も関係無いわ!』
    『五月蠅い!! 裏切り者には死を!!』
     ののしり合いは平行線。
     そして、ラブリンスター一派と言われた彼女は、淫魔の本性を表に出して反撃しようとするのだが……流石に多勢に無勢に、彼女は倒されてしまったのである。
     
    「みんな、あつまったみたいだね? それじゃ、説明を始めるよ!」
     須藤・まりんは、集まった灼滅者をぐるりと眺めると、早速説明を始める。
    「みんな、少し前だけど、不死王戦争で灼滅したソロモンの悪魔、アモンは覚えているよね? 今回相手にするのは、そのアモンの勢力の残党達なんだ。どうやら彼らが、また事件を起こしてしまっているみたいなんだ」
    「彼らが今回事件に巻き込んでいるのは、ラブリンスター配下の淫魔達。ほら、皆覚えてるかな? 不死王戦争、共闘していたラブリンスター。どうやらこのアモンの配下達は、武蔵坂と接触した事についてを裏切りと認識しているみたい」
    「そしてそれを発展させて、残党達は不死王戦争の前からラブリンスターと、武蔵坂が繋がっていて、不死王戦争の敗北はラブリンスターの策略だ、と思い込んでいて、その結果淫魔を集団で襲撃しているみたい」
    「これはダークネス同士の戦いだけど……これこそアモンの残党のソロモンの悪魔を倒す好機だと思うんだ。なのでみんな、宜しく頼みたいんだ!!」
     そこまで言うと、続けてまりんは詳細の説明を続ける。
    「言った通り、今回みんなが相手する事になるのはソロモンの悪魔と、その配下の一般人達になる。ソロモンの悪魔の男は、フリージングデスに近い遠隔列攻撃を猛連打して後方から攻撃をしてくるみたい。一方強化一般人の人達は、数が5人。特殊能力は無いけれど、ソロモンの悪魔の男の指示に合わせて統率の取れた行動をしかけてくるみたい」
    「ちなみに彼が襲撃してくる場所は、駅から少し離れた所の高架下。暗くて、狭いからそこまで人気があるという場所ではないけれど、一般人が通りがかる可能性があるのは注意が必要だね」
    「後は……淫魔だけど、もしかしたら一緒に戦う事になるかも知れないよね? 淫魔自身、ストリートライブで小銭を稼いだりしてる淫魔みたいで、主たる攻撃方法は歌による催眠が得意みたい」
    「どうやって戦うかは皆にお任せすることになるかな? ……淫魔を護りソロモンの悪魔と戦う、淫魔と協力してソロモンの悪魔と戦う、そして淫魔敗北後に消耗したソロモンの悪魔と戦う……の三つがあると思う」
    「とは言えダークネス二種が相手になりかねない状況だよ。下手に油断しないように注意してね!?」
     とまりんはニコリと笑い掛けて、皆を送り出すのであった。


    参加者
    ナイト・リッター(ナイトナイトナイト・d00899)
    ラムゥフェル・ノスフェラトゥ(欠落せし生存者・d01484)
    本堂・龍暁(不動金剛・d01802)
    裏方・クロエ(ピタゴラマジック・d02109)
    江田島・龍一郎(修羅を目指し者・d02437)
    叢雲・秋沙(ブレイブハート・d03580)
    悪野・英一(悪の戦闘員・d13660)
    屍萩・理成(無色の音色・d13897)

    ■リプレイ

    ●淫魔とソロモン
     まりんの話を聞いた灼滅者達。
     神奈川県のとある街角に現れた灼滅者らの頭に浮かぶのは……ソロモンの悪魔に対する溜息。
    「まったく……ソロモンの悪魔ってこういう奴らだったっけ? もうちょっと頭が回るイメージがあったんだけど、意外と直情的なんだね」
    「ええ。まぁ……この今回相手にするソロモンの悪魔達だけがそういった感じなのかもしれませんがね。しかし……死んでも仕えるという忠誠心は認めますが、それで一緒に戦った淫魔を恨むとは見当違いも甚だしいですね」
    「そうだね。その理屈でいけば、私達にもソロモンの悪魔の犠牲になった人達、デモノイドになった人達、そして巻き込まれた人達の恨みを晴らす権利はある、って事になるものね」
    「そうですね。まぁ……それでまた潜まれても厄介ですし、この場で打ち倒さなければなりませんね」
    「うん。今ここで精算して貰うとしようか」
     叢雲・秋沙(ブレイブハート・d03580)、悪野・英一(悪の戦闘員・d13660)が交す会話。
     ソロモンの悪魔……人を闇へと誘う悪魔達。
     大量の人間を巻き込んだサバトで、大量の人を闇墜ちに叩き込む事を企てたりしている彼らだが……どうも今回の話を聞いていると、短絡的で余り頭がよさそうな動きはしていない。
     まぁ……これらが全て、ソロモンの悪魔を標榜している、という訳ではないだろうけれど、でも……出て来るのは溜息。
     ……でも、そんなソロモンの悪魔に倒されようとしている淫魔も淫魔……灼滅すべき相手。
     こうして、相反するダークネスと、自分達灼滅者を合わせれば三派の戦い……その一派に、こうして加勢するなどと、誰が思っただろうか。
    「……ラブリンスター勢、最後まで戦ってたのにね。そもそも序盤で殲滅したのは、戦力分析を怠った自分達のミスだろ。逆恨みもいいところだ」
    「ああ、そうだな。自分達の実力を過信していた結果だろう。それを棚に上げて、恨みの矛先を淫魔に向けるのは、敵を外部に作る作り方としては自然だがな」
     江田島・龍一郎(修羅を目指し者・d02437)にラムゥフェル・ノスフェラトゥ(欠落せし生存者・d01484)が吐き捨てると、ナイト・リッター(ナイトナイトナイト・d00899)は、ぐぐっと拳を握りしめて。
    「……許さないぜソロモンの悪魔よ。女性は存在するだけで宝、それがダークネスでも、だ! 俺の心の女神ラブリンに敵対するっていうならば、貴様等に明日は無い! 待っていろよ!!」
     と、強い口調で叫ぶ。
     そんな彼の言葉を聞いた本堂・龍暁(不動金剛・d01802)。
    (「……まぁ、そういう考えの奴もいるか……本質は似たもの同士なのかもしれんな」)
     と、肩を竦める。それに屍萩・理成(無色の音色・d13897)が気付いて。
    「ん……龍暁君、どうしたの?」
    「いや……なんでもないさ」
    「そう……しかしラブリンスター一派とはいえ、淫魔を助ける日が来るとは思わなかったね。まぁ……彼女は誰かを誘惑したりしている訳でもないし、集団で少女に襲いかかる事なんて事を見逃せるわけ無いのだが。しかし、複雑な気持ちだ」
    「同じだ。俺も……基本的には女は殴りたくはない。よほど外道で無い限りな。確かにダークネスだが、女である事に変わりは無い……ま、実際に逢ってみて、判断するしかないだろうがな」
    「そうだね」
     苦笑する理成に龍暁もふっ、と笑う。
     そうしていると。
    『きゃぁぁ!!』
     そんな叫び声が、近くの方から聞こえてくる。
    「……あっちか」
     ラムゥフェルが指を指すと共に、灼滅者達は。
    「そうですね。さー-、以前のリベンジマッチですよ。相手が全然違うのはアレですけど、ソロモンの悪魔なら同じなのです。あのときより数段強くなったボクをお見せしましょう!!」
     裏方・クロエ(ピタゴラマジック・d02109)が気合いのはいった言葉を紡ぐと共に、灼滅者らはその声のした方へ急行するのであった。

    ●裏切る前に
    『何よ貴方達! 突然襲いかかってくるなんて、フェアじゃないわよっ!!』
    『知るか。裏切り者……裏切り者のラブリンスター一派には、死の制裁を!!』
    『そうだそうだ。アモン様の仇、ここで取る!』
     女の悲鳴、威勢の良い声に対し、数人の男の声が逆に響く。
     淫魔を包囲する様に、ソロモンの悪魔らは、周りを包囲している。逃げ道は一応……背中だけだが、多勢に無勢、背後を見せれば、その隙に一撃、二撃は喰らってしまうだろう。
    『何よ、貴方達。ラブリンスター様に恨みでもあるの!?』
    『当たり前だろう!! お前達が寝返ったせいで、アモン様は死んだんだ!!』
    『そうだとしても、私には何の関係もないじゃない!!』
    『五月蠅い!! 淫魔は全て裏切り者、裏切りものには死あるのみだ!!』
     そんなのの知り合いの中に、灼滅者らは到着……。
    「……発見」
    「っ、もう罵り逢ってる。急ぐぞ、皆!」
     ラムゥフェルに、ナイトが皆に声をかけ、そして。
    「イーーーー!!」
     英一がすぱっと、悪の戦闘員服ですぱっと間に立ち塞がる。
    『っ……なんだてめぇら! 邪魔すんじゃねえよ!!』
     苛立った男の言葉……そんな彼の言葉を、まるで気にしないが如く。
    「はいはい、そこまで……と」
    「全く……女をよってたかって男でリンチしようって魂胆か? 例えダークネスだと言えども、許せねぇな」
     龍一郎とナイトが、彼らに向けて言い放つ一方……無いとは淫魔にばさっ、とマントを掛けて。
    「大丈夫だったかい? 俺のプリンセス」
     と、にっ、と微笑む。
     そんなナイトの言葉に、淫魔は……斬りつけられた裸身の部分を隠す様マントを羽織りながら。
    「……な、何なのよ……貴方達は!」
    「ん、俺達は灼滅者。まぁ今回は敵じゃないから大丈夫だよ。俺が来たからにはもう大丈夫。絶対に守って見せるさ!!」
     ナイトの微笑み、其れに理成、クロエが。
    「まぁ……何だ。確かに何時もは倒す相手だが……殺されそうになっていたら、助けない訳にはいかないだろうしな」
    「そうだね。ま、別にボク達はキミを傷つけようとしてるわけじゃない筈だよ? ま、信じるかどうかはキミ次第だけどさ」
     そんな二人の言葉に、淫魔は信じられないと言った感じの表情。
     その一方で、灼滅者達に対し。
    『てめぇら、邪魔すんじゃねぇよ!! この野郎!!』
    『そうだそうだ!! おめぇらには関係無いだろうが! 俺達はこの女を殺すんだよ! アモン様の為に!!』
     勢いづく彼らに、健一郎、秋沙が。
    「……まったく、ああなったのはお前達の責任だろう? 人のせいにするなよ」
    「そうだよね。何、それともソロモンの悪魔は人のせいにする事を指示されてるの? まぁそんな考えじゃ、淫魔が居ても居なくても、結論は結局同じだったと思うよ」
    『っ……このくそがっ!! てめぇら、こいつをぶっころせ!!』
     言い返せず、ソロモンの悪魔の男は配下一般人らに指示。
     その指示に従い、ナイフを抜いて構える配下一般人。
    「よし、いくぜソロモンの外道共! このナイトナイトナイトが相手だ!!」
    「イーー! イイーー!!」
    「そうですね。仕事は仕事としてしっかりするのですよ。ボクとしても聞きたい事はありますしー。以前ソロモンにボコられたお礼参りもしたいですからね」
     ナイトと英一、クロエらが言葉を続けると、まず先陣を切って配下一般人らに接敵。
     そしてすぐさまブレイドサイクロンで切り裂くと、ナイトはワイドガードで味方前衛陣を強化する。
     合わせて龍一郎、理成の二人のダークネスは、ティアーズリッパー、封縛糸で立て続けに一人を攻撃。
     ラムゥフェルが抗雷撃、龍暁が鋼鉄拳による攻撃で続き、強化一般人に着々とダメージを与えていく。
     また、秋沙は、その周りの相手に向けて斬影刃。クロエもオーラキャノンを放つ。
     そんな灼滅者らの一刃は、確実に強化一般人の体力を削り行く。
     ……そして、それを見た淫魔は……少し考えつつも。
    『……信頼した訳じゃない。信頼なんて、してない……』
     自分に言い聞かせる様に呟き、そして……歌声を奏でる。
     その対象は灼滅者へ……ではなく、強化一般人と、ソロモンの悪魔に向けて。
    「信頼してくれたの? 淫魔ちゃん!」
    『決して違うわ!!』
     バッサリ否定しつつも、灼滅者らの後方に立っての攻撃。
    『やっぱり寝返ったか。やはり裏切り者めが!!』
     そんなソロモンの悪魔の言葉に答えない。そしてソロモンの悪魔が攻撃。
     その攻撃を受けるのは龍一郎。
    「……この程度か。さすが序盤で殲滅しただけのことはあるな」
    「イー!!」
     英一が、まさしくその通りと言わんばかりの言葉を投げかけると、ソロモンの悪魔らは。
    『うるせーうるせーうるせー!!』
     と、最早子供の如く、むかついた言葉を叫ぶばかり。
     そして駄々をこねる子供の如く、無差別、無鉄砲な攻撃で以て灼滅者達にも少しずつ、ダメージを与えていく。
     でも……所詮は強化一般人。
     その後数ターン掛けて、一匹、また一匹とソロモンの悪魔配下の強化一般人達を倒していく
     そして……残るはソロモンの悪魔、ただ一人。
    「さぁ……後お前一人だぞ? 大人しく諦めたらどうだ?」
     と龍一郎の最後通告。
     しかし、決して降参する事は無い。
    「イーイイー!! イーイーイーーー!!」
     そして英一がフォースブレイクに切り替えると、ラムゥフェルは抗雷撃、龍暁が地獄投げ、と高ダメージの攻撃を立て続けにぶっ放す。
     その攻撃に合わせ、淫魔の彼女も攻撃。
     ……そして、龍一郎が。
    「これで終わりだ。あばよ」
     と吐き捨ての言葉と共に龍一郎の雲櫂剣が、その頭上から叩き落とされると共に、ソロモンの悪魔らは、全滅するのである。

    ●表裏一体
    「……終わったな」
    「ええ……お疲れ様でした」
     ふぅ、と息を吐く龍暁に、倒れたソロモンの悪魔らに向かって優雅な一礼をする理成。
     どうにかラブリンスターと共に、ソロモンの悪魔を倒した。
     とはいえ……灼滅者らも、淫魔の彼女自身も……傷だらけ。
    「……さて、大丈夫だったか、淫魔ちゃん?」
     ニッ、と笑みを浮かべながらナイトが淫魔へ向き直る。そして手を差し出すが……きっと睨み付け、決して手は握らない。
    『……助けてくれてありがとう。でも……信頼した訳じゃない。何なの、貴方達は』
    「……ま、成り行きだ成り行き。さすがに逆恨みで殺されるのを見逃すのは気分悪いしな」
    「ええ……それにこれは、純粋に心配しているだけなのですよ? お嬢様」
     龍一郎に、いつのまにか悪の戦闘員の服装を解いていた英一も、優しく声を掛ける。
     その間にも、他のダークネスにこの事をみられていないか、理成が周りを確認するが……特にそういった気配は無い。
     そして……英一は、更に。
    「どうやら……怪我は無い様ですね、幸いです。ですがまた、こういう事態が起こるかも知れません。余り積極的にダークネスを助けるわけにはいきませんが……一般のファンの方が被害に逢う事態が起きそうな場合には、ご一報下されば」
    「そうだ。俺達と接触した事で、アンタ達も目を付けられてるというのが解っただろう? しばらくは気をつけるんだな」
     そんな二人の言葉に、淫魔は言葉は返さないまま……そして。
    「……今日の所は、何もしないでおいとくわ。借りも……出来たしね。それじゃ」
     さっ、と身を翻す彼女。そんな彼女に向けて。
    「そうだな。じゃあな。次に遭う時は『敵』では無い事、祈っとくよ」
    「そうだよ。ストリートライブぐらいならいいけど、一般人に被害が出るような事をすれば、次は……戦うから」
     龍一郎と秋沙の言葉……そしてナイトが。
    「淫魔ちゃん。ラブリンに俺の活躍、是非伝えてくれよなー♪」
     と言葉を掛け放つ。
     ……そして、淫魔が居なくなり、静けさを取り戻したその場で。
    「俺の女神ラブリン。いつか、必ず……」
     ぐっと拳を握りしめるナイトに……クロエは。
    「……んー……まぁ、いっか……」
     と、苦笑するしかないのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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