ようこそ、百合の世界へ!

     望月・楓(図南鵬翼・d17274)は、こんな噂を耳にした。
     『女性ばかりを狙う妖艶な都市伝説が存在する』と……。
     都市伝説が確認されたのは、都内某所にある裏通り。
     この裏通りは車の通りも少なく、信号もないため、裏道としてよく利用されていたようである。
     だが、都市伝説が現れた事で、事態は一変。
     都市伝説の全身から漂うフェロモンを嗅ぐと、女性はエッチな気分になってしまうらしく、理性が吹っ飛んでしまうようである。
     そのため、現場では百合百合な空気が漂っており、良い子は見ちゃ駄目状態!
     都市伝説自体はナイスバディの美女なので、倒す事はそれほど難しい事ではないが、エッチな気分になるので十分に注意してほしい。


    参加者
    ティセ・パルミエ(猫のリグレット・d01014)
    月歌・魅呼(アイドル候補生・d01195)
    皇樹・桜夜(家族を守る死神・d06155)
    猪坂・仁恵(雨女だよ・d10512)
    野和泉・不律(サイコスピーカー・d12235)
    岬・理沙(もさもさ大僧正・d13479)
    不渡平・あると(父への恨み節・d16338)
    幸宮・新(弱く強く・d17469)

    ■リプレイ

    ●百合ランド
    「女限定でエロエロになる、ってか? これまた、とんでもなく迷惑なやつが現れたなぁ。あたしは別にそのケは無いが、都市伝説の能力なら、どうなるかわかんないからな。……無事に帰れるかな? 色々な意味で」
     不渡平・あると(父への恨み節・d16338)は青ざめた表情を浮かべながら、仲間達と共に都市伝説が確認された場所に向かっていた。
     この時点で嫌な予感しかしない。むしろ、百合展開に突入しなければ、空気が読めない奴的な扱いを都市伝説から受けてしまうような気がする。
     そんな空気が漂う中、冷静でいられる事など、困難。
     それならば、いっそ敵の術中にハマッたフリをして、百合百合の展開に突入するのも悪くない。
     実際に被害者の中には、そんな空気に耐えられず、百合百合な展開に突入した女性もいるはずだ。
     そして、百合百合な世界で『意外に悪くないかも。ひょっとして、今まで百合の世界に嫌悪感を抱いていたのは、単なる食べず嫌いだったから』的な気持ちになり、後戻りする事が出来なくなってしまうようである。
    (「下品なフェロモンなんかに絶対負けたりはしない!」)
     そう自分に言い聞かせつつ、あるとが拳をギュッと握りしめる。
     それが百合フラグのひとつである事に気づかぬまま……。
    「同性愛はいけないと思うのです。だって非生産的だもの」
     そう言ってティセ・パルミエ(猫のリグレット・d01014)が、小さく首を横に振る。
     そうは言っても、撫でてもらったり、触られるのは好きなので、一歩道を誤ると危険な雰囲気。それこそ、後戻りが出来なくなってしまう。そんな危険を孕んでいるのだが、ティセ自身その事に気づいていないようである。
    「よく分からないけど、恐ろしい都市伝説みたいね……。残念ながらあたしはそういうのに興味ないから、極力変な気持ちにならないように頑張るわ!」
     自分自身に気合を入れ、岬・理沙(もさもさ大僧正・d13479)が宣言する。
     都市伝説の催眠がどれほどの力を持っているのか分からないが、抵抗する事が出来なければ百合百合な展開になるだけである。
     万が一、そうなってしまった場合……、ズルズルとそちらの世界に引きずり込まれてしまう可能性が高かった。
     例えるなら、スルメイカのようなもの。
     おそらく、心でいくら拒絶したところで、身体は……という展開になるだろう。
    「なるほど、話は理解しました。理解できませんがしましたよ」
     何となく状況を理解し、猪坂・仁恵(雨女だよ・d10512)が口を開く。
     その途端、随分とアレな都市伝説に巻き込まれてしまったと思ったが、いまさら帰る訳にもいかない。
     ここは覚悟を決めて、百合の世界にレッツゴー……と思ったが、それこそ泥沼、底なし沼。
     自ら進んで百合の世界にどっぷり浸かる前振りにしかならなかった。
    「まあ、妹以外の女性には興味はないですね。さっさと駆除しましょう」
     いくら考えても時間の無駄だと判断したため、皇樹・桜夜(家族を守る死神・d06155)が都市伝説を捜して歩き出す。
     しばらくして、どこからか女性達の甘く切ない声が響いてきた。
    「……帰りたい……」
     その途端、幸宮・新(弱く強く・d17469)が、回れ右をした。
     この先に行ったらダメ。人が近づいてはいけない場所。穢れた空間。爛れた世界。脳内で霊能力者っぽいオバちゃんが何やら警告している。『ああ、怖い。何かいるわ。とても禍々しいものが』と囁いている。
     そもそも、男一人でこの場所にいる事自体が耐えられない。
    「まあ、これも運命だと思って」
     そう言って野和泉・不律(サイコスピーカー・d12235)が、新の肩をぽふりと叩く。
     その間も新の背後で『まあ、怖い。いるわよ、そこに。そこ、そこ』と霊能力者っぽいオバちゃんが囁いている。
    「……って、誰!」
     新のツッコミに、オバちゃんがそそくさと物陰に消える。
     どうやら、冷やかしだったらしい。
     不安を煽るだけ煽って、何がしたかったのか分からないが、とにかくアレなヒトだったようである。
     どちらにしても、ここで立ち止まっている訳にはいかない。
     新は覚悟を決めた様子で、力強い足取りで歩き出す。
    「アイドル灼滅者、月歌・魅呼ちゃん!! けんざん!!」
     そして、月歌・魅呼(アイドル候補生・d01195)は女性達の前で、キラッとポーズを決めた。
     そこに、どんな光景が広がっているのか、まったく確認しないまま……。

    ●禁断の宴
    「うわ、ちょ、えぇ~……。か、勘弁してよ~……」
     シャレにならない光景を目の当たりにした新は、視線のやり場に困りながら、片目で目を覆いつつ女性達に叫ぶ。
     沢山の女性が乱れていた。まわりの視線も気にせず、全裸で激しく、乱れていた。ある者は互いの唇を重ね合わせ、ある者は肌と肌を擦り合せて、甘い声を響かせていた。
    「どうして、こんなになるまで放っておいたんだろう」
     ティセもそれ以外の言葉が浮かばない。
    「ちょっと辟易するな……」
     あるとも呆れた様子で、女性達に視線を送る。
     その間も女性達は愛を語らい、己の欲望を解放全開、フルスロットルであった。
    「うふふふ、もうすぐ良くなるわ、あなた達も、ね」
     そう言って女性達の中から都市伝説が姿を現し、全身からむせ返るほどのフェロモンを漂わせた。
    「か、体が熱い……。服なんていらない……。ほら、アイドルの下着姿だよ。……興奮して……いいよ」
     その途端、魅呼が興奮した様子でダンスを踊り、艶めかしく服を脱いでいく。
     女性達もそんな魅呼の思いを受け入れるようにして、彼女の体に指や舌を這わせていった。
    「変なフェロモン出しやがって、あたしはこんなのにやられねえぞ! ……って、こら! 何、しやがる、離れろ! そ、そこは! あっ、やめ……アッー!!」
     続いて、あるとも撃沈。
     為す術もなく女性達の餌食になり、ビクンビクンと体を震わせた。
    「仁恵ちゃん、ぎゅーっ、なのよ!」
     理沙もウットリとした表情を浮かべて、仁恵にギュッと飛びついた。
     そっちの趣味はない。無かったはずだが、そんな理性の留め金を外して、百合百合してみると、実に心地良い。むしろ、もっと早く百合属性に目覚めなかったのか、後悔してしまうほどであった。
    「ダ、ダメですよ、にえたち女の子同士ですよ。いや、えっ、ふゃっ、す、すみませんでした。ち、ちょっと待って下さい!!」
     襲い掛かってきた理沙の顔を掴み、仁恵が頬をぺちぺちと叩いていく。
     だが、仁恵も次第に妙な感覚に支配され、そのまま感情に身を任せて、傍らにいた不律を押し倒した。
    「もぐもぐもぐ」
     しかし、不律もすっかり都市伝説のフェロモンに毒されていたため、仁恵の耳を甘噛みし始めた。
    「こういうのも、悪くないかも……」
     そして、ティセも都市伝説のフェロモンに屈し、女性達の思いを受け入れ始めた。
    「え、ななな何してんの!? うわ、ちょ、やめっ……! ……全員、目ェ覚ませぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!」
     そのため、新が色々な意味で限界を突破し、全力で清めの風を発動させた。
     途端にティセ達が我に返り、あちこちから悲鳴が響く。
     ある者は自分の姿に驚き、またある者は自分の行為に驚いた。
    「こ、これは一体どういう事!? ア、アタシの術が解けるなんて!」
     都市伝説が悲鳴を上げる。
     楽園の崩壊。一言で言えば、それだった。
     だが、都市伝説には受け入れられなかった。
     今まで出会った事のない存在。忌むべき敵。
     込み上げてくるのは、怒り、憎しみ、殺意!
    「随分と怒っているようですが、いいですよ、その怒り……。すべて私達にぶつけて来てください」
     そう言って桜夜がスレイヤーカードを解除した。

    ●都市伝説
    「これでみんな正気に戻ったわね。さあ、早く。この場所から離れて」
     冷静になった理沙は顔を真っ赤にしつつ、理沙がまわりにいた女性達に避難を促した。
     女性達も辺りに散らばっていた服を拾い、そそくさと逃げるようにしてその場を後にした。
     みんな忘れたいのだろう。自分が今までしてきた事を。心の中に眠っていたケモノの存在を。
     だが、それは理沙達も同じであった。思い出すだけでも……、恥ずかしい。
    「……まったく。なんて事をしちゃってくれたのかしらねえ。アタシはいわばボランティア。この人達の中に眠る本性を引きずり出しただけ。それのどこが悪いの? 例えるなら、クラスでちょっと目立たない恥ずかしがり屋さんの背中を押しただけじゃない」
     都市伝説は納得がいかない様子であった。
    「……と言うか、誰も望んでいないから、こんな展開」
     すかさず不律がツッコミを入れる。
     これでは、世間知らずの箱入り娘を、良かれと思ってエロスの伝道師に育て上げたウッカリ屋さんの調教師のようなものである。
    「あらん、そうかしらん。あなただって楽しんでいたじゃないの。めくるめく禁断の世界を、ね」
     そう言って都市伝説がこれみよがしに胸を揺らす。
    「あ、あたしだって大人になったら、きっと身長が伸びて魅力的になるし! べ、別にナイスバディなんて羨ましくないもん」
     悔しそうな表情を浮かべ、ティセが薄っすらと涙を浮かべる。
     その間も都市伝説はたゆんたゆんと胸を揺らし、誇らしげに不敵な笑みを浮かべている。
    「さあ、狩りの時間だ!」
     マトモに相手をする事すらばからしく感じ、桜夜が話を切り上げるようにして、都市伝説にギルティクロスを放つ。
     そのたび、都市伝説の体から濃厚なフェロモンが漂ってきたが、戦いで気分が高揚しているせいかほとんど効果がなかった。
    「な、なんで効かないの!? どうしてよっ! いまこそサービスタイムでしょうか!」
     都市伝説が大人の事情込みのツッコミを入れる。
     だが、誰一人として都市伝説に耳を傾ける者などいない。
    「消えちまえぇ!」
     すぐさま、あるとが都市伝説めがけて紅蓮撃を放ち、ジリジリと追い詰めていく。
     それでも、都市伝説は何やら叫んでいたが、事態を一変させるほどの言葉は出ない。
    「だから、百合女はNGだって言ってるじゃねーですか!!」
     一気に間合いを詰めながら、仁恵が都市伝説に戦艦斬りを叩き込む。
     思い出しただけでも恥ずかしい。すべて忘れたい。何もかも消し去りたい。
     そんな思いを込めた一撃は、都市伝説を跡形もなく消滅させた。
    「なんだったの?? あの都市伝説……」
     都市伝説が消滅した事を確認した後、魅呼が顔を真っ赤にして泣き始めた。
     このまま快楽に身を任せていたら、闇墜ちして淫魔になっていたかもしれない。
     万が一そうなった場合、自分の中に眠るケモノを抑え込む事など出来ないだろう。
    「……忘れよう、全部。お互いに。マジで」
     そう言って新がキリリッとした表情を浮かべるのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 9
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