六一六番の殺人ゲーム・リバイバル

    作者:空白革命

    ●殺人ゲーム616
     ルール。
     人間を殺すこと。
     三人以上殺した人間は3分間ターゲットとされない。
     五人以上殺した人間は解放される。
     ただしターゲットとなった全員は一分につき一人ずつ『ノコギリ屋』が殺す。
     尚、邪魔になった人間、逃げようとした人間は、例外として虐殺する。

     ※ゲームクリア者が発生したため、ルールが追加されました。
     追加ルール。
     制限時間は60分。
     ただし外部から誰かが混入した場合、経過時間に関わらずターゲットを全員殺す。

    「なんだ、これ……ゲーム?」
     ある中学校の3年2組教室。校舎の三階中央付近にあり、ベランダ側からは校庭を見渡せる位置にある。
     そんな教室の中心で彼は目を覚ます。
     起き上がってすぐ、少年の視線は黒板に固定されていた。
     赤い文字で書いてある。チョークにしては鮮やかすぎると目を細めれば、それが赤黒く乾いた血液であることが分かった。
     これだけなら悪趣味なイタズラだと吐き捨てることもできたろう。
     だが黒板のすぐ手前。教卓の上にまるで解体ショーのごとく腹を開かれた担任教師が横たわっているとなれば、もう現実を疑うことはできなかった。
     死亡確認の意味は無い。腹から三角形の片手式のこぎりが四本ほど生え、腹の皮を固定するように開き、眼球からは細いのこぎりが二本、垂直に立っていた。頭蓋骨の形状からして固定は難しいはずなので、机にピン留めしたような形なのだろう。
     少年は呼吸を荒くしながらも辺りを見回す。
     少年少女、合計20名。
     全クラスメイトが揃っていた。
     同じ班でよく話す女子が、顎を震えさせながらも口を開いた。
    「だ、誰か呼ぼ? まさかみんな、こ、こんなことしようなんて――」
    「ゲーム開始。一人目だ」
     『ばつん』と『ぶしゅん』の間にあるような音が鳴った。
     それはゲーム開始のベルであり、天井に鮮やかな血を吹き上げる合図であり、さきほどの女子が首を切断された音であった。
     血肉のかけらを浴び、二本のノコギリを翼のように大きく広げる男。
     黒いフードの下からは仮面が覗いてた。
    「今度はどう出る、灼滅者」
     吹き上がる悲鳴。
     降り下りる血液。
     彼女の体液がそうであるように、緊迫した空気が一斉にはじけ、クラスメイトたちは一斉に教室から飛び出していった。
     少年は中に混じって教室を飛び出した。
     そして、ポケットの中の違和感に気づく。
     ポケットにはナイフが一本、いつのまにか入れられていた。
     
    ●死ぬまで続く殺人ゲーム
    「半年ほど前の話になるでしょうか。六六六人衆序列六一六番目、通称『ノコギリ屋』の活動をとらえ、それを阻止すべく八名の武蔵坂学園灼滅者が戦いを挑みました。結果として当初以上の死傷者を出すこと無く事件を収束。『ノコギリ屋』を撤退させることに成功しました」
     武蔵坂学園、夜の空き教室。
     眼鏡をかけた男性エクスブレインは、分厚いカバーのファイルを叩いた。
    「あの『ノコギリ屋』が、かなり派手な勝負を仕掛けてきたようです」

     当然の前提事項として、もし事件現場に灼滅者が駆けつけなければ巻き込まれた中学生20名は全員虐殺されることになる。
     既に1名は死亡が確定しており、ギリギリまで早く駆けつけ、灼滅者八名がそれなりに努力したとしても追加で10名前後の死亡が予測されている。
    「死亡者が出てしまうなんて……でも、私たちが頑張れば……」
     気丈そうにする灼滅者の一人に対して、資料に視線を落としながらエクスブレインは言った。
    「そう気を負うことはありません。今回の達成条件は『ノコギリ屋を撃破もしくは撤退させること』です。これに関わるあらゆる破壊、被害、灼滅者の損失は認められています」
    「認められているって……」
    「いや、なに。簡単なやり方はあるんですよ」
     微笑むでもなく、毒気づくでもなく、無表情のまま言う。
    「中学生20名をすべてエサにすれば、『ノコギリ屋』の撃破も可能ですからね」
     
     前の資料にもある通り、ノコギリ屋はノコギリを武器とし、好んで殺人ゲームを行なう残虐な六六六人衆である。
     仕組みはこうだ。
     駆けつけた時点で生存している中学生19名を『全て生かしておきたい』ならば、ノコギリ屋を全力で牽制・足止めして時間を稼ぎ、ゲームを終了させるという方法がある。
     強力なダークネスであるノコギリ屋を相手に、様々なハンデを抱えた上で勝利することはきわめて困難だ。まず相手は撤退するとみていいだろう。そしてまた次のゲームを始めるのだ。次回もまたエクスブレインの網に引っかかるほど都合良くはいかないだろう。今の世の中、『引っかからないこと』の方が圧倒的に多いのだ。一応この場の依頼は成功ということになる。
     では別のケースとして『ノコギリ屋を殲滅したい』のならば、抱えるべきハンデを放棄し、彼が逃げ惑う一般人を虐殺しているのをよそに徹底的な殲滅攻撃を仕掛ける方法がある。この場合一般人は全員死亡することになるが、次なる被害は出ない。依頼は成功となる。
     そして、第三のケース。
    「何人かが闇堕ちし、この事件を超人的なパワーで圧し消す方法です。見たところ、ダークネスの狙いはそこにこそあるようですがね。やり方は皆さんにお任せします。」


    参加者
    金井・修李(無差別改造魔・d03041)
    土方・士騎(隠斬り・d03473)
    九条・泰河(陰陽の求道者・d03676)
    七生・有貞(アキリ・d06554)
    華槻・灯倭(紡ぎ・d06983)
    九重・木葉(矛盾享受・d10342)
    葛木・しいな(斬魔の掌・d13695)

    ■リプレイ

    ●必要犠牲と必要悪
     今より起こる事件について、とやもかくもと思い出話をする必要は無い。
     なにも、『アレ』が特別だということはないのだ。
    「あの事件が半年前。あれだけの手際をもったダークネスが今に至るまで何もしていなかったとは思えない」
     どれだけの死が。
     どれだけの絶望が。
     どれだけの恐怖と狂気があったことだろうか。
    「ここで奴をしとめる。でなければ、散る命は無為となる」
     目を伏せる土方・士騎(隠斬り・d03473)。
     金井・修李(無差別改造魔・d03041)はごてごてとしたガトリングガンを担いで首を慣らした。
    「これ以上の被害を出させちゃあね。ふざけたゲームは今回で終わらせるよ!」
     小さく頷く華槻・灯倭(紡ぎ・d06983)。
    「これ以上……うん、これ以上は……」
     同じ思いはさせたくない。
     灯倭は誰に聞こえるでもない声でそう言った。
    「…………」
     七生・有貞(アキリ・d06554)は耳ざとくそれを聞き取ったが、何も言わずに無視をした。
     目をそらし、舌打ちをする。
     肩が、ほんの僅かに震えた。
     そんな姿が窓ガラスに映って、有貞は奥歯を強く噛んだ。

     場面は定まり、例の学校へ続く電車内。
     向かい合わせのボック型スシートに四人の灼滅者が座っていた。
     丁度窓際の九条・泰河(陰陽の求道者・d03676)は、頭を窓ガラスにつけて言った。
    「ゲームの参加者たちは僕らのせいで巻き込まれた……ようなものだ。絶対にダークネス倒さなきゃいけないのもわかる。でも、僕はあの人たちを……」
    「『撒き餌』がかわいそう?」
     フローレンツィア・アステローペ(紅月の魔・d07153)は溶けかかった冷凍ミカンを半分に割って言った。
    「っ!」
    「レンたちの目的は灼滅。そのために来たのよ?」
    「だからって……!」
    「まーまー、憤らないでさ」
     それまで外を見ていた九重・木葉(矛盾享受・d10342)が視線だけを向けてきた。
    「ダークネスを確実に灼滅するには犠牲が出る。犠牲を減らそうと必死になれば灼滅が遠のいて、下手をしたら逃げられて『今度』のようになる。そういう理屈なんだよね?」
    「わかってる。わかってるけど」
     唇を噛む泰河。
     一方でフローレンツィアは指についた果汁を優雅に舐め取っていた。
     小さく咳払いする葛木・しいな(斬魔の掌・d13695)。
     握った両手を膝において、俯き気味に言った。
    「出来ることをやるだけです。集中して、やるだけです」
     みんなを助けられないけれど。
     しいなは言って、より一層に俯いた。

    ●一千人が生き残るために二十人の犠牲が必要だとしたら誰を捧げますか?
    「ロジスティック式という言葉を知っているか? 知らないか。まあそうだろう――」
     黒いフードと仮面の男。ノコギリ屋。
     彼は陰鬱に語りながら、少年のあばら骨を開いていた。ややあって振り向く。
    「一分だ。次はお前にすると言ったな。逃げないのか?」
    「……あは」
     少女である。恐怖で頭がおかしくなったのだろう。乾いた笑いばかりをあげている。
     片足を掴んで逆さ吊りにした、その時。
     ポーンという、校内放送のスイッチ音が響いた。
    『皆逃げて、とにかく遠くへ! それで隠れて! き、きっとその間に助けが来るから! 逃げて! すぐに! 遠くへ逃げて、隠れて!』
     半狂乱に裏返った少女の声が、放送に乗って流れてきたのだ。
     ノコギリ屋はつり下げた少女を見た。
    「これはお前のクラスメイトか? 首を振れ」
     少女は小さく首を横に振って。
     振ってから、その意味を理解した。
     目に知性の光が戻り。
     恐怖の震えが戻った。
    「いややめてころさな――!」
     少女の腿から肩にかけてをノコギリが通過した。
    「外部から誰かが混入した。経過時間に関わらずターゲットを全員殺す」
     内容物をばらまいて床へ落ちる少女の『片側』。
     もう片側を放り投げ、ノコギリ屋は廊下へと飛び出した。
    「例の灼滅者団か、または奇特な一般人か」
     仮面の下で、何かが笑ったように見えた。

     ゲームが始まって僅かの間に流された校内放送。
     当然のことというべきか、それは一般人などでは決して無く、窓ガラスを破壊して放送室に侵入した修李によるものだった。それも壁をてくてくと歩き、なんとなくの当てずっぽうで探り当てたのだ。まあ、校庭側で見晴らしのよさそうなどこかというのは察しが付くので、さほどのものではない。日射対策かどこもカーテンが閉まっていていちいち窓を割って確かめるしかないのは面倒だが、手っ取り早さは一番だ。
     そんな彼女の放送が校内のゲーム参加者たちにどのような影響をもたらしたのか……?
    「殺さなくていい」
     とある踊り場にて。
     ナイフをめぐってもみ合いになっていた二人の少年を引きはがし、士騎はできるだけ優しく言った。
    「悪意に呑まれるな。ここはなんとかする、だから」
    「おまえ――おまえのせいだろ!」
     少年に足を蹴られ、士騎は歯を食いしばった。
     痛みゆえではない。
    「おまえらが入ってきたから、全員殺されるじゃないか! なんで来たんだよ!」
     プラチナチケットで『関係者化』したことが、この場合は逆効果だった。『学校の誰か』が入り込み、ゲームルールに抵触してしまった。そう取られたのだ。
     だが今回は彼らを保護している余裕はない。
     士騎は苦々しく唸り、『とにかく殺すな』と言い聞かせて上階へと走った。

     然様に、校内放送が悪く働くケースもままあったが、全てがそうではなかった。というより、善し悪し半々。少なくとも場をかき混ぜることには成功していた。
     その一例がこれだ。
    「助けに来てくれたのよね? 本当よね!?」
    「本当だよ。だから大丈夫」
     自分と同じくらいの背丈がある少女を抱きかかえ、灯倭はよしよしと背中を叩いてやった。足下にはナイフが転がり、隣では別の少女がへたり込んでいる。
    「やった、助かるんだ、わたしたち……もうこんなこと」
    「そうだよ。誰かの命を背負うのは、とても重いんだ。だから……」
     何度も頷く少女に、灯倭は優しく微笑みかける。
    「できるだけ散って、隠れていてね。絶対助けるから」
    「絶対よ!? 約束だからね!」
    「うん、絶対」
     小指を突き出してくる少女。
     灯倭は『ゆびきりげんまん』をしようとして。
     その指がないことに気がついた。
    「あ……れ……?」
     からめようとした指が転げ落ちる。
     落ちる。
     まるで重ねた皿を傾けるように、数センチ間隔でスライスされた少女の腕がぼろぼろと落ち始めた。
    「な、えっ、これ……なに……ねえ!?」
     自分の手を既に無くなった手で受け止めようと暴れる少女。
     彼女を灯倭は――無視した。
     そうせざるをえなかった。
     うなりをあげる一惺(霊犬)。
     灯倭は剣を抜き、気配のした方向へと身構える。
    「ノコギリ屋――!」
     身構えた時には、既に眼前にまで迫っていた。
     一般的な木工用ノコギリを十字に構え、距離にして50センチの位置にいる。
     咄嗟にガードする灯倭。
     しかしノコギリ屋は彼女を無視して、隣でへたりこんでいた少女の首を切り取った。
     顎部分にブレードをくいこませるように少女の頭部を固定し、それごと『ついで』のように灯倭へと叩き付けてきた。
     それだけの余裕を見せたとしても、灼滅者と六六六人衆の戦力差は埋まらない。
     想像を絶する感触と共に薙ぎ払われ、廊下の壁へと叩き付けられる。
    「死に慣れたか? 灼滅者」
    「………………ッ!」
     再び振りかざされるノコギリ。今度は金属切断用のブレードだ。
     灯倭の首を背後の壁ごと分断できる。
     これまでかと歯噛みし――。
    「しゃがんで、華槻」
     外から突き破られる窓。
     飛び散る窓ガラス。
     輝く刀を抜き放った木葉が、タックルの姿勢で突っ込んできたのだ。ダブルジャンプならではのショートカットである。
     空中で身をひねり、横一文字に走る刀。
     反射的にしゃがんだ灯倭の背後に深々とした刀傷が刻まれる。
     そして肝心のノコギリ屋はと言えば。
    「ようやく嗅ぎ付けたか」
     天井にノコギリをくいこませ、ぴったりとはりついていた。
     自由落下してくると思いきや、天井を這うかのように横っ飛びに離脱。木葉たちから逃げ始めた。
     いや、逃走ではない。進行方向上に別の少年が見えていた。
     反対側の階段から様子を見に来たのだろうか。
    「チッ、逃げろ!」
     彼を押しのけ、『立ち塞がらない』ように有貞が飛び出してきた。
     なぜか? ここで立ち塞がれば一方的に攻撃されるからだ。
     理屈ではそうだ。
    「……死ね!」
     絞り出すように叫び、ガトリング連射。ノコギリ屋はそのうち数発をわざと食らいつつ突撃してくる。そして有貞の頭上を飛び越え、逃げようとした少年へノコギリを投擲。頭蓋骨へ垂直に刺さったノコギリが、びぃんと振動音を鳴らした。
     中身をぶちまけて崩れ落ちる少年。
     だがノコギリ屋の手数を消費させるには充分だった。
     すぐちかくの引き戸が開き、フローレンツィアが滑り込んできた。
    「ようこそノコギリ屋さん。歓迎するわ――来なさい、黒き風のクロウクルワッハ」
     爪形のエッジを閃かせ、相手の背中を切り裂く。
     かと思えば高速でスピン・アンド・ブレーキ。さらなる斬撃を繰り出す。
     ノコギリ屋はそれもまた避けず、肩口を切り裂かれながらジャンプ。窓を突き破って野外へ飛び出した。
    「ふうん……追うわよ」
     それを追いかけるように飛び出すフローレンツィアたち。
     あとには、物言わぬ死体だけが残った。

     文脈を崩すうえ、まるで苦言のようになってしまって申し訳ないが、恐らく記しておかねばならないだろうことを述べる。
     フローレンツィアは今回の作戦で『巣作り』の転用を考えていたが、そもそも非戦当時における技術であり、戦闘の余波程度で簡単に崩れてしまい融通もききづらい巣の特性を考えてとりやめた。また作戦の最必要因子ではなかったため、作戦遂行に影響は出なかったことも追記しておく。余談になってしまい申し訳ない。
     さて、場面を戻そう。
     ノコギリ屋は窓の外。つまり校舎の外を自由落下していた。
     このまま撤退するつもりなのか? 否、そうではない。
     両足から地面へ強引に着地すると、超硬度ノコギリでスチール扉をまるごと切り裂き校舎内へ侵入したのだ。
     なぜそんな回りくどいことをと思うやもしれなが、理由は二つある。
     ひとつめは、邪魔な灼滅者から手っ取り早く遠ざかれること。
     そしてふたつめは……これだ。
    「イ、イヤァァァァァァ!」
     木工技術室の大机に隠れていた少年少女たちが悲鳴をあげた。
     あげた瞬間、毒の竜巻が発生。風に紛れた小さい丸ノコギリが少女たちの体表だけを数ミリ間隔で切り裂いた。人間とは思えない声で絶叫する。
     彼らは校内放送を聞いて、大人しく隠れた生徒たちだった。
     つまり。最初の教室から『できるだけ遠く』で、『隠れる』ことが容易な部屋として、ここに集まってきたのだ。通常教室などは隠れる場所に限りがある。誰かと被ったら最悪だ。となれば板ばかり転がっているこの部屋が最適なのだが……。
     追う側であるノコギリ屋はそうした場所にアタリをつければいいだけだった。
     ギリギリ範囲外で生き残っていた少女が這いつくばって準備室へと入っていく。
     それを目視したノコギリ屋は早足で追いかけ、閉じられたドアのノブに手をかけた。
     途端、反対側からドアが吹き飛んだ。
    「……!」
     ここからはノコギリ屋が予想していなかった展開だった。
    「隙あり、だよ」
    「目的達成で帰れると思った? これからは、ボーナスゲーム」
     縛霊手を装着した泰河としいなが
     そう、『いかにも集まるであろう場所にノコギリ屋が来ること』までをひっくるめて先回りをかけたのだ。
     ドアと共に吹き飛ばされたノコギリ屋はブレードを地面に食い込ませてブレーキ。
     そのまま野外に逃げだそうにも、駆けつけた修李たちが出口側を埋めていた。
     今度ばかりはノコギリ屋も撤退できない。
     覚悟を決めたのか、二本のノコギリを翼のように構える。
    「一般人を餌にするか。やはり、その力はそうやって使うべきだ」
    「――殺す!」
     身構えた直後のノコギリ屋へと拳を叩き込む有貞。
     あまりの勢いに押し倒されるノコギリ屋。マウントをとったまま、有貞は拳を連打した。
    「殺す、殺す、殺す殺す殺す死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえええええええええええええええええええええええええええ!!!!」
     拳の合間、首へと走るノコギリ。
     有貞の首根っこを引くフローレンツィア。
    「あら危ない」
     クスクス笑いながら、有貞を後方へ投げ。空いた手からクローを射出した。
     起き上がったばかりのノコギリ屋に突き刺さる。
     更に灯倭の放ったウロボロスブレイドが巻き付き、両腕をしめつける。
    「よくも……よくもっ」
     地面に手を突く灯倭。
     連鎖的にはえいずる茎状の影業が相手を覆った。
     すかさず飛びかかる木葉と士騎。
     飛び退こうとしたノコギリ屋の両足を、修李の影業ががしりと掴んだ。
    「久しいな、ノコギリ屋」
    「主催が死んだらこのゲーム、終わりでいいんだよね」
     同時に繰り出される刀が、締め付けられた彼から盛大な血を噴き出させた。
     木蓮は笑って、士騎は笑わない。
     そして、修李のガトリングガンが相手の腹に密着した。
    「まだ倒れないの? いい加減にしてよ!」
     ブレイジングバースト乱射。
     大机を粉砕し、きりもみして吹き飛ぶノコギリ屋。
     行き先は、大きく踏み込んだ泰河としいなだった。
     二人の手刀が、ノコギリ屋の身体を貫く。
     炎が上がり、びくびくとのたうち、そしてやがて……ノコギリ屋は、跡形も残さず消滅した。
     またねと泰河は呟き、しいなは何も言わず、ただただ目を閉じた。

     後に、校舎の各所から三名の生徒が生きたまま発見された。
     彼らの精神状態が如何様であったかは、語るべくもない。
     だが生きてはいた。
     それがすべてだ。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 44/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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