うばわれたもの

    作者:聖山葵

    「そうだよね……こんなアスファルトの上じゃ、とても」
     少女はただじっとショッピングセンターの駐車場を眺めていた。休業日なのかくるまは殆どとまって居らず数少ない自動車も何らかの理由で休日出勤した従業員のものなのだろう。
    「昔はヨモギでいっぱいだったのにな……」
     ポツリともらした少女の鞄からぶら下がるのはやや暗い緑色をした草餅のストラップ。わざわざヨモギに言及したのも、その和菓子が好きだからか。
    「あ」
     それからどれほど経った頃だろう、オレンジ色に染まる駐車場の端に少女は目をとめる。遠目でヨモギか他の植物かは判別がつかないが、アスファルトの割れ目でもあるのか、オレンジ色をした何かが生えていて。
    「ん、雑草か」
     通りかかったショッピングセンターの従業員にしてみればよかれと思ってのことかもしれない。
    「変な虫でも湧いたら問題だしな」
    「あっ、ちょっと待」
     ただ、雑草を引き抜いただけの事だというのに。
    「うあああああっ」
     一人の少女を闇に堕とすには充分だった。
    「許さない、まずはこの駐車場からヨモギ覆い茂る場所に変えてやるもっちぃ!」
     肌に草の汁を塗りたくり、ヨモギで出来た腰簑だけつけたような姿のご当地怪人はアスファルトをギンっと睨むと。
    「だがその前に」
     少女の変貌に気づかず去っていこうとする従業員めがけ走り出したのだった。
     
    「一般人が闇堕ちしてダークネスになる事件が発生しようとしている」
     腕を組んでいた座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)は、灼滅者達を集めた理由を明かすと、そのまま言葉を続けた。
    「本来ならば、闇堕ちした時点でダークネスの意識に取って代わられ、人間の意識は消えてしまうのだが」
     今回のケースでは、問題の人物の中に人間の意識が残って居るという。
    「ダークネスの力を持ちながらもダークネスになりきっていない。つまり、これは問題の少女を助けられる可能性があると言うことでもある」
     もちろん、そのまま放っておけば完全なダークネスとなってしまうのだろうが。
    「故に君達には少女が灼滅者の素質を持つのであれば闇堕ちから救い出して欲しい」
     もしかなわぬ時は、完全なダークネスになってしまう前に灼滅を。

    「問題の少女の名は、日下部・もくじ(くさかべ・もくじ)、中学三年の女子生徒だ」
     好物の草餅の材料を採りに行っていた場所がショッピングセンターの駐車場になってしまい、喪失感にうちひしがれていたもくじにとって、アスファルトの割れ目から生えた雑草も無くなってしまった大事な物の名残に見えたのかもしれない。
    「雑草を引き抜くところを目撃したもくじは、ご当地怪人『草モッチア』へと変貌する」
     ほぼヨモギの腰簑のみの姿で全身に草の汁を塗りたくったかのような姿は、男性にとって目のやり場に困るものだろうが。
    「見えて不味いような場所はヨモギで隠しているし、少年は女の子だから問題はないな」
    「や、おかしいよね? 毎回毎回だけど、おかしいよね?」
     いつもの様に性別をねじ曲げようとするはるひに鳥井・和馬(小学生ファイアブラッド・dn0046)は指摘する。
    「君達がバベルの鎖に捕まらず、接触出来るタイミングはもくじがご当地怪人に変じた直後を置いて他ない」
    「え、オイラの指摘またスルー?!」
     いつもの様に和馬の言葉は流され、はるひは説明を続けた。
    「休日だけあってショッピングセンターの周囲にいるのは従業員が数名ほど、うち一名は放っておけば草モッチアに襲われてしまう状況にある」
     放置すれば襲われてしまう従業員以外は建物の中らしく、接触から一時間までならよほどのことがなければ外に出てくることは無いとのこと。
    「襲われそうになっている従業員さえ救えたなら後は戦うのみだな」
     闇堕ち一般人を闇堕ちから救うには戦ってKOする必要があるのだ。
    「むろん、戦いと言っても物理的なものだけではない。闇堕ちした一般人と接触し、人間の心に呼びかけることで戦闘力を下げることが出来るのは君達も知っての通りだ」
     戦いが避けられないなら、戦いを有利に進める為に工夫を凝らすのは間違いではない。
    「説得の鍵は、少女がなじみの深い場所を奪われて傷心していると言うところだな」
     言いつつはるひが取り出したのは、大きな植木鉢。それでヨモギを栽培しろと言うことなのか。
    「私に思いつくのは、この程度でしかないがね」
     はるひが差し出してくると言うことは、そう言うことなのだろう。
    「戦いになればもくじはご当地ヒーローのものに似たサイキックで応戦してくると思われる」
     むろん、威力の方は比べものにならないだろうが。
    「人によって大切なものというのは違うのだろうな、少年」
    「えーと、なぜそこでオイラに話を振るの? と言うかなんで上目遣い?」
    「良い質問だな、少年。今の私に足りないものがこれではないかと思ったのだよ」
     どこをどうしてそうなったかは解らない。ただ、上目遣いの為にしゃがみ込んだエクスブレインに見送られ、灼滅者達は教室を後にすることとなるのだった。
     


    参加者
    龍海・光理(きんいろこねこ・d00500)
    カマル・アッシュフォード(モテルンルンなカマルンルン・d00506)
    古室・智以子(中学生殺人鬼・d01029)
    サリィ・ラッシュ(ロケットクィーン・d04053)
    黒澤・蓮(スイーツ系草食男子・d05980)
    盾神・織緒(悪鬼と獅子とダークヒーロー・d09222)
    譽・唯(後悔しか残らない暗殺者・d13114)
    千疋・來地(暴走アジアンフルーツ・d18096)

    ■リプレイ

    ●どうすればいいもっちぃ
    「このヨモ質がどうなっても良いのか?」
    「なっ」
    「さあ、とっとと逃げた逃げた。そうは見えないかもしれんが割と命の危機なので」
     のっけから嵐のようにカオスな状況だった。盾神・織緒(悪鬼と獅子とダークヒーロー・d09222)は、ヨモギをモチーフにした女物の衣装を着た鳥井・和馬(小学生ファイアブラッド・dn0046)を後ろから捕まえてご当地怪人を脅迫し、加害者が超展開へ驚き固まったのを好機と捉え、カマル・アッシュフォード(モテルンルンなカマルンルン・d00506)が狙われていた一般人へ避難を促す。
    「は、はぁ……」
    「……早く店内へ……私達が連れていきます……」
     状況へ理解が追いついていない模様だったが、ご当地怪人と化してしまった少女の格好を見て関わらない方が賢明だと思ったのか、譽・唯(後悔しか残らない暗殺者・d13114)達の剣幕にただならぬものを感じたのか。
    「うぐぐ……卑怯もっちぃ」
     仇が去って行くにもかかわらず、ご当地怪人草モッチアは動けない。ヨモ質ことヨモギとヨモギの妖精さんを人質に取られた形だからだと思うのだが。
    「なんだろうこのヨモギ愛、謎」
     ギャラリー、じゃなかった応援に駆けつけた灼滅者の口から呟きがもれる。少なくとも、ヨモ質作戦は上手くいったようだった。
    「微妙に、気が抜けそうなの」
     身を挺してでも従業員を庇い、安全な場所まで連れて行こうと思い居ていた古室・智以子(中学生殺人鬼・d01029)からすれば、脱力してもおかしくない光景が目の前にはあり。
    (「……大事な場所か……、そうなる気持ちはわかるんだけどなぁー」)
     ちらり、と動くに動けないご当地怪人を見て、黒澤・蓮(スイーツ系草食男子・d05980)はそのまま視線を怪人の足下に向ける。
    「ま、大切な場所が無くなるってのは重大な問題だわな……」
    「うん、大切な場所がなくなっちゃうっていうのは悲しいよね」
     カマルの言へ頷いて見せた千疋・來地(暴走アジアンフルーツ・d18096)も目を落とすオレンジを帯びたアスファルトからは、かってのこの場所の様子をうかがい知ることは出来ず。
    「っ、恐怖のあまり放心してるもっちか?」
     草モッチアの瞳に映るヨモギの妖精さんの目が、ダークネスし支配されたの世の業深さを思い知らせるかのように遠くを見ていた。
    「えーと」
     失敗した場合を考えて次の手を用意していた龍海・光理(きんいろこねこ・d00500)は、思った以上に上手くいった作戦に苦笑しながら言葉を探して。
    「まぁ、草餅でも食べて、落ち着いて」
    「も、もちぃっ?!」
    「そうですね、とりあえずこれでも食べて落ち着きませんか」
     事の正否に関係なく沢山の草餅を差し出したサリィ・ラッシュ(ロケットクィーン・d04053)へ、結局は便乗することにし。
    「うくっ、か、懐柔など……あぅ、そんな懐柔に屈したりしないんだからもっ……う」
     口ではそんなことを言いつつも、目が草餅を追っていた草モッチアこと日下部・もくじが屈したのは、この38秒後のことだった。

    ●まずは一息
    「ここから出ないでくださいね……? ……出てこられると……危ないので……」
    「あ、あぁ」
     助け出した従業員が首を縦に振るのを見届けると、唯は踵を返す。混沌とした光景の展開されていた駐車場方面が静かでないのは、戦闘が始まらず來地のサウンドシャッターが機能していないからだろう。だが、ご当地怪人となってしまった少女を救うにも戦いは避けられない。
    (「急が……ないと……」)
     扉に手をかけ、外へと飛び出し。
    「あ、お疲れさまです」
    「はむはむ……」
     飛び込んできた光景に、見開く。水筒を手にこちらへ向き直った光理と、ビニールシートの上に腰を下ろして草餅を頬ばるご当地怪人。
    「昔……ヨモギ饅頭……食べたことがあるけれども……美味しかったですね……和馬君は……ヨモギ餅等……食べた事ありますか?」
     気がつけば、一瞬あっけにとられた唯もティータイムの輪に加わっていた。
    「あ、うん。スーパーとかで良く買ってきてくれたし」
     オレンジ色に染まった景色の中、ヨモギの妖精さんは相変わらずの格好で唯へ頷いて見せ。
    「そりゃな、自分にとって大切な場所を奪われたら怒りもするだろう。けど、だからって人を殺したところでこの問題は解決しない。つーか人を殺して食う草餅が美味いのかって話だよ!」
    「この場所がなくなっちゃったのは残念だけど、ほら、ヨモギ買ってきたよ! 時期がアレだから冷凍だけど、これでお料理一緒に作ろうよ」
    「うっ」
     カマルや來地の声に、ご当地怪人と化した少女は、小豆の皮を口元に付けたまま呻く。人の意識か残っているからこそ、言葉は届くのだ。
    「いっしょに、新しいヨモギ採れる場所を探しに行こう。土手とか、公園とか、きっとうちの寮の裏の野原にも……なければ、いっしょにヨモギを植えよう? 大事なものをなくすのはつらいけど、もう一度探そうよ」
     手伝うから、と続けてサリィは少女に、草モッチアへ手を差し伸べる。
    (「自分の中の大切な景色か。元より記憶から消えている私は幸せか、はたまた不幸か……」)
     人質を取った悪役を演じたからこそ遠巻きに見ていた織緒は、ゆっくりと歩き出した。
    「むっ」
    「さっきは卑怯な真似をしてすまなかった、君のヨモギへの愛を確かめたかったんだ」
     敵の接近に少女が身構えるも、構わず謝罪して。
    「その想いを間違った方向に使っちゃいけない。正しく使えば消えてしまった光景も蘇させる事だって出来る」
     少女を見つめ返しながら、言葉を紡ぐ。
    「気持ちはわからなくもないよ。でもね、そんな一時の激情に駆られても、残るのは後悔だけなの!」
    「っ」
     外野からの声も含めて、かけられる声は少女の身体を我がものにしようとする闇にとって耳障りなものであったのは間違いない。
    「だめですよ……無理矢理は良くない……ですよ……」
    「きっと他にも方法はある。人を殺さずに見るヨモギの方がきっと綺麗さ。だから、戻って来い!」
    「うるさい、うるさいうるさーい! もう、無いもっちぃ……もう」
      だから、草モッチアはわめきちらした。
    「そんなに気落ちすることでも無いと思うのだが……ここじゃなければいけない理由でもあったんだろうかね」
     説得に効果がないなら耳を塞ぐ必要はない。
    「じゃ、始めようか」
     ここから先に待つのは、避けられぬ戦い。カマルは取り出したスレイヤーカードの封印を解き、殲術道具の鍔を鳴らした。

    ●本当は
    「もちっ」
     エクスタミネイションロッドを振りかぶったまま、智以子はアスファルトに引かれた白線を飛び越え、草モッチアは慌てて腕をかざした。
    「うぐっ」
     ロッドのぶつかった場所で内から起こる爆発にご当地怪人はたたらを踏み。
    「っ、よく」
    「……いきます」
    「もちぃぃっ」
     飛びずさった智以子が無言のままに構え直す時間を作るかのように、入れ違いの形で撃ち込まれた唯のオーラが腰簑少女を飲み込んだ。
    「ヨモギの植わったこの土地を愛した貴女がいるように、いま、このショッピングセンターを大事に思う人もいると思うの」
     少女と向き合い、そう諭した智以子は、ただ機械的に草モッチアを追いつめて行く。
    「失う悲しみを、貴女は知っているの。その気持ちを、他人に押し付けてはいけないの」
     と、続けた言葉も今の智以子からは発せられない。
    「……可愛らしいお名前ですよね」
     いや、話しかけたところでもう日下部・もくじは反応を示さなかった可能性もある。
    「これ以上、惑わすなもっちぃぃぃ!」
     撃ち出されたビームも、ダークネスとしてはだが非常に弱々しいものになっていたのだから。
    「おっと」
     向かってくる光線とすれ違うように前方へカマルは飛び。
    「お餅もいいけど、ケーキとかパンもいいよね。けどさ……そんな事してたら一緒に作れないから」
     仲間の作った握り拳が嵐の如く草モッチアへ撃ち込まれる様を見ながら、來地は声を開けガトリングガンを少女に向ける。
    「早く戻ってきて楽しもう!」
    「うぐ、ぐぁ」
     弾丸と共に飛んだ声には偽りなど無い。灼滅者達の攻撃に翻弄された腰簑少女は、よろめき。
    「花梨」
    「わうっ」
     主人に名を呼ばれた霊犬が、アスファルトを疾駆し、跳躍する。口にくわえた斬魔刀の刀身がオレンジに輝き。
    「もちぃっ、あ」
     自分からアスファルトに転がって斬撃をかわした草モッチアの腰簑は、飛来した光の刃に切り裂かれた。
    「きゃぁぁぁ」
     痛みを感じ、視線を下半身へやったからだろう、攻撃から悲鳴までの間は短かく。
    (「好きな相手の露出でなければ嬉しくもない」)
     ご当地怪人は更に際どい姿になっていたが、織緒は怯まない。
    「あ、もちぃっ?!」
     気の逸れた一瞬で織緒に抱きすくめられた草モッチアの身体は、次の瞬間高々と持ち上げられていて。
    「悪いな」
     持ち上がった身体が次に向かう先は、アスファルト。
    「っきゃ」
     悲鳴をかき消すように爆発が少女の身体をかき消す中、蓮は高速で振り回し、加速させたウロボロスブレイドの刀身を爆炎の中へ差し向けた。
    「今の内に手当てしてしまいましょう」
     天使を思わせる声で歌い出しながらも、光理は薄れ始めた爆発の余韻を横目で見る。説得で弱体化しているとはいえ、流石にこれで戦いが終わるとは思えなかった。
    「もっちぃぃぃっ!」
     実際、弾丸に込められた爆炎の魔力で炎に包まれたまま、飛び出してきた腰簑少女は地を蹴って高く跳躍する。
    「っ、ひとりで暴れてないで」
     そのまま跳び蹴りの態勢を作ろうとする草モッチアへ、龍の翼の如き高速移動で突っ込んでいったのは、サリィ。
    「ああぁぁぁぁっ!」
    「いっしょに、草餅を食べれる仲間がいるから――」
     空中で二つのシルエットが交差し。
    「くうっ」
    「っ」
     双方が空中でバランスを崩して落下する。
    「相打ち……大丈夫ですか?」
     激突を目で追っていた光理は分裂させた小光輪をサリィの盾にし。
    「ま、まだ……」
    「……そこまでですよ」
     唯は、強かに背を打ちながらもよろよろと身を起こすご当地怪人へウロボロスブレイドを巻き付ける。
    「想いは人それぞれですな」
     傷だらけになりつつも起きあがった草モッチアを見て、そう言ったのは誰だったか。
    「終わりにさせて貰うよ、戻ってきて欲しいから」
     弱体化した時点で応援を含む灼滅者達に勝つこと自体難しかったのかもしれない。
    「わぅ」
     霊犬の花梨が短く鳴いて、殺到する灼滅者達の攻撃が、草モッチアの意識を刈り取る。
    「どうし……」
    「ま、上手くいったかね」
     一面オレンジの色彩の中、崩れ落ちる少女の身体を抱き留めると、カマルは肩をすくめた。戦いは終わったのだ。

    ●着替えの時間
    「痛」
     鈍い音がした。どうやら目隠しをした蓮が駐車場の塀にぶつかった音らしい。
    「はい……着替えです……あ……男子にはこれを……目隠しです……」
     と、唯がついでに男性陣へ目を覆うものを配ったこともあってか、人に戻った少女が着替えを異性の目に晒すことはなかった。
    「男は回れ右っ! こっち見るなっ!」
     他にも気を配った者は居たし、男性陣への警告が飛ぶ中、衝立のようにバスタオルでカーテンを作っていた光理も協力者の一人だろう。
    「柏餅の次は草餅……。次は何モッチアさんが現れるのでしょうね……?」
     外からの視線を遮りつつ、微妙に遠い目をしていたとしても。
    「サイズは大丈夫でしたか?」
    「うん、ありがとう」
     もぞもぞと光理から手渡された着替えに腕を通しながら、まだ何処か困惑した様子で漏らした少女は、頷いて。
    「これ、ありがとうございました」
     着替えを終えた少女は、自分にかけられていた上着を來地とカマルに返す。
    「どういたしまして。役に立ったなら何よりかな」
    「さっきは何だか偉そうな事言ったけど、実は俺も解決法とかわかってないのよね」
     馴れ馴れしいぐらいの笑顔で來地が上着を受け取れば、カマルは自分の上着を抱えたまま暴露すると肩をすくめて言葉を続け。
    「ま、そこら辺は責任とって一緒に考えてあげるよ。俺に出来ることなら何でも協力してあげるし」
    「武蔵坂なら、無駄に土地がいっぱいあるの」
     智以子が口を挟んだのは、もっと明確なビジョンを描いていたからか。
    「……いいの?」
     どこか場所を借りて、ヨモギをいっしょに植えようと誘う智以子へ戸惑いつつも少女は問うて。
    「もちろんなの。春になれば、草餅も作るといいの」
     即座に肯定する智以子を示し、サリィは聞いた。
    「ほら。嘘じゃなかっただろう、もくじちゃん?」
     と。説得の時の言葉に偽りはないと。
    「……うん」
    「ってなわけで今後ともよろしく」
     笑顔で答えた少女へカマルは笑いかけ、織緒はマフラーで目隠しをしたたま、犬の姿で口にくわえたヨモギを差し出す。
    「では、残ってる草餅を片づけてしまいましょうか」
     悪夢は終わり、夕暮れの駐車場で灼滅者達は、お茶を楽しむ。
    「えーと、オイラもこれ着替えたいんだけど……」
     その中で、「君にしか出来ない作戦だ」と言い含められ、ヨモギの妖精にされた少年は呟いた。
      

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 4
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