修行場は遊園地?

    作者:緋月シン

    ●目指すは
     とある山道を、一人の男が走っていた。
     いや、正確に言うならば、そこを山道と表現するのは正しくない。少なくとも周囲に木々が生い茂っているような場所を道とは呼ばないだろう。
     だが男はそんな場所を苦も無く走っていた。
     その速度は一定ではない。理由は単純で、一定にしてしまっては木々にぶつかってしまうからである。
     勿論男にとってはその程度何と言うことは無い。どころか、むしろ木々を薙ぎ倒しながら進むことすら可能である。
     しかし男にとってそれは意味のないことだ。意味がないということは、する必要のないことでもある。
     それは修行だった。より厳密に言うならば、修行のための準備運動。
     例え一歩毎に地面を抉り、移動速度が人の限界を軽く超えていようとも。男にとってその程度は普通なのである。
     男は自分を鍛える以外のことに興味がない。だから余計な破壊をもたらす事も無い。
     そんな無駄なことをするぐらいならば、少しでも自分を鍛えることに費やす。
     故にこそ、男はそこを目指しているのだ。
    「待っていろ――富士急ハイランド」

    ●修行のために
    「遊びに行くっていうんなら、まだよかったんだけどね……」
     そう言うと、須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は困ったように溜息を吐いた。
     もっともその場合は別の問題が発生していたような気もするが。
     ともあれ。
    「じゃあ何で向かってるのかっていうと……実は富士急ハイランドに不安定なブレイズゲートが現れたみたいなの」
     断定することが出来ないのは、それが普通のブレイズゲートとは異なるからだ。
     ご当地怪人選手権で集められたサイキックエナジーが関係あるかどうかは不明であるが、何でもこのブレイズゲートは、突然現れたり探索後に消滅するといった不思議な特性があるらしい。
    「それで、このブレイズゲートの探索も勿論必要なんだけど、その男の人――アンブレイカブルはそこに向かってるみたいなの」
     アンブレイカブルは純粋に修行の為にブレイズゲートに来るようだが、観光客で賑わう富士急ハイランドにアンブレイカブルが来ると、どんな事故が起こるかわからない。
    「だから、富士急ハイランドに入る前に、アンブレイカブルを撃退して欲しいんだ」
     アンブレイカブルの名前は豪(ごう)。戦闘力は、アンブレイカブルとしては普通であろう。
     つまりは、全員で協力して戦っても勝てるかどうか分からない程度、ということだ。
     使用するサイキックはストリートファイター及びバトルオーラ相当。ポジションはクラッシャーである。
    「注意してもらいたいのは、戦闘は必ず富士急ハイランドの入り口より前で、周りに人がいないような場所で行って欲しいってこと」
     何といっても場所は富士急ハイランド。下手な場所で戦おうものなら一般人を巻き込みかねないし、ESPなどで人払いをしようとしても逆に混乱を招きかねない。
     豪は修行の為に来ているので、手合わせを願って場所を変えようと提案すれば、その場所についてきてくれるだろう。
     尚、豪は『自分の修行が足りない』という事を納得すると出直して来る潔さがあるので、灼滅させずに撤退させる事も可能だ。
    「まあ真面目に修行しようとしてるところを私達が邪魔してる、とも言えるわけだしね……」
     そのまま灼滅させてしまってもいいし、納得したところで見逃してもいい。
     勿論、まずは勝てなければ話にならないが。
    「どうするかは皆に任せるね。それじゃあ、頑張って」
     そう言って、まりんは灼滅者達を見送ったのだった。


    参加者
    華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)
    各務・樹(夏色ファンタスク・d02313)
    フィズィ・デュール(麺道三段・d02661)
    伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)
    戒道・蔵乃祐(酔生夢死・d06549)
    月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)
    雛本・裕介(早熟の雛・d12706)
    契葉・刹那(響震者・d15537)

    ■リプレイ

    ●富士急ハイランド、駐車場側入り口近く
     休日ともなれば多くの人で賑わうそこも、平日とあってはさすがに疎らである。
     それでも僅かに存在する人の流れの一角に、それは居た。
     ただその場に居るだけなのに、周囲に撒き散らされる威圧感。歩くたびに人が自然と避け、視界が開ける。
     そしてその先に、彼らは居た。
    「狭い日本、そんなに急いで何処へ行くのさ」
     言葉を投げかけたのは戒道・蔵乃祐(酔生夢死・d06549)だ。
     軽い調子で話しかけつつも、浮かんでいる笑みの中でその目は笑っていない。
     必要とあらばいつでも殺界形成を使用出来るように備えながら、それ――豪の様子を探っていた。
    「……俺が用があるのは、この先にあるものだけだ。退け」
    「まあそう言わずにさ。ブレイズゲートに行く前に、少し運動していかない?」
     修行が楽しいということには同意を示す月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)であるが、あくまでもそれは他の誰かに迷惑をかけるものでなければの話だ。
     迷惑をかけるというのであれば、邪魔をしないわけにはいかない。
     同じく修行そのものを肯定するのは雛本・裕介(早熟の雛・d12706)。
     むしろ殊勝だとすら思うが、相手はその意図に関係なく人に害を与える存在である。
     そしてここは遊園地。その被害は推して知るべし、だ。
     故にすることはただ一つ。
    「アンブレイカブルと見受ける、一つ儂らと手合わせ願おうか」
     それでも礼儀を弁えた態度なのは、申し出ているのが自分達のほうであるがため。
     その胸に殺意を宿すのみに留め、武人であることに期待し返答を待つ。
    「初めまして。武蔵坂学園の灼滅者です。一手お手合わせ願いたく参上仕りました」
     畳み掛けるように口を開いたのは、華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)だ。
     先日のグリュック王国のことは聞いている。もしあれと同じように、ここがアンブレイカブルにとっての王国になってしまったら。
     それは可能性の話でしかないが……そんなことは絶対させないと、握る拳に力を込めた。
    「お前達が俺の相手をする、ということか?」
    「そういうこと。腕試しがしたいんだよね確か?」
    「鍛練がしたいなら、俺たちが相手になろう。お前をこの先に通すのは色々不都合なのでな」
     蔵乃祐の言葉に、伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)が続ける。
     背後に居るのは、一時の安息を楽しむ人たちだ。通すわけにはいかないと、紅緋も視線に力が入る。
    「……喧嘩を売っているようにも見えるが」
    「うむ、喧嘩を売っているのだ。黙って買え」
     頷く蓮太郎に、豪は面白いとでも言いたげに口の端を歪めた。
    「あなたは鍛錬をすることが出来、私たちは実力を試すことが出来る。お互いに損はないと思うわ。手合わせ、お願いできるかしら?」
     各務・樹(夏色ファンタスク・d02313)の言葉に、豪は答えなかった。ただその返答代わりとでも言うように、威圧感が増す。
    「まあ待った。戦う気の無い弱者は真剣勝負には不要じゃない?」
    「ちょっと人気の無い所へ移動しようか。私たちも全力を出したいしね」
    「そうですね、場所を移しましょう。こんな一般人のやってきそうなところじゃ、思いっきり戦えませんから」
     言いながら、その視線が樹へと送られる。
     それを受け、樹が頷いた。そこまでのルートは、事前に調べ頭に入れておいてある。
    「こっちよ、着いて来て」

    ●北富士演習場
    「では、始めるか。この後でまたあそこに戻る必要もある」
    「残念ですが、あなたにはこの先はありません。あなたが辿り着けるのはここまで」
     到着早々の言葉に、紅緋はそう言って返した。
     それは強がりではない。可能かどうかも問題ではない。
    「ならば、やってみせろ」
    「言われるまでもなく。これ以上のご託はいいですよね? 拳で語り合いましょう」
     紅緋達は、それを成す為にそこにいるのだから。
    「やってることは今のところ何の問題もないんですが……ま、巡りあわせってことで」
     言いながら構えるフィズィ・デュール(麺道三段・d02661)ではあるが、その様子は何処か仕方なしという感じだ。
     フィズィは目の前の相手に対し、割と嫌悪するところがない。状況が違えさえすれば、また別の方法を選んでいたかもしれない。
    「最高の鍛錬をご提案します……殺り合いましょ?」
     だがそうではなかった。それが全てだ。
     契葉・刹那(響震者・d15537)は所謂男性恐怖症である。克服しようと頑張っているものの、未だ目を合わせたり会話することが苦手だ。
     それは目の前のアンブレイカブルにしたところで同じであったが、さすがにそんなことを言ってもいられない。
    「正々堂々戦いましょう。宜しく、お願いしますね」
     それでも僅かに顔を赤く染めながら丁寧に頭を下げる姿は、何処か場違い感すらある。
     だがその瞳の奥にある意思を感じ取ったのか、豪は何も言うことはなかった。
     蓮太郎のサウンドシャッターによって周囲の音が遮られ、これで万が一にも誰かに気付かれる心配はない。
     場は整った。後は。
    「Bienvenu au parti d'un magicien!」
    「我が前に爆炎を」
     響いたのは樹と玲の解除コード。一瞬の後、その身に纏うは殲術道具。
     それを見て、豪は僅かに口元を歪めた。
     そして。
    「華宮・紅緋、これより灼滅を開始します!」
     それが戦闘開始の合図となった。

    ●灼滅の意思
     先陣を切ったのは紅緋だ。放った言葉そのままに、豪へと踏み込んでいく。
     駆けながら使用するのはブラックフォーム。闇色に心が澄み渡り、一時的にその力を引き出す。
    「それじゃいきますよ、鬼神変! 受け止めてみせてください」
     振り下ろすのは、ヴォーヌ・ロマネに覆われ異形巨大化した腕。迎え撃つ豪の腕は、アンブレイカブルらしく豪腕ではあるものの、あくまでも人としての範疇に収まっている。
     どちらが有利かなど、子供でも分かることだ。
     直後、二つの拳がぶつかり合った。拳同士の衝突音とは思えない音を立て、しかしその片方が弾き飛ばされる。
    「……っ!」
     弾き飛ばされたのは、紅緋だ。
     だがそれは紅緋にとっては予想の範囲内。故にその勢いに逆らう事無く、そのまま後ろへと下がる。
     追撃はなかった。厳密に言うならば、豪にその暇は与えられなかった、というべきであろうが。
     紅緋と入れ替わるように、再度異形の腕が豪を襲った。
     樹である。
     再び響く轟音。
     振り切った直後を狙ったのだが、それでも対応してくるのはさすがか。こちらが押されることも、含め。
     硬質な手応えを得ながら、樹はふと自分達と同じような依頼に参加した者達のことを思い出した。
     正確に言うならば、聞いた話のことだ。今回ここに修行に来たアンブレイカブルを灼滅してしまうと、業大老との関係が悪化するという話。
     目の前の相手は、果たしてどうなのか。
     もっともそうだとしても、樹には灼滅以外の道は思いつけない。
    (「気になることは他にもあるけど、今は戦いに集中ね。このまま富士急ハイランドには向かわせられないもの」)
     心の中だけで呟きながら、地面を軽く蹴る。移動方向は、後ろだ。
     それは本当に軽いものであったがために、移動した距離も極僅かである。豪が一歩踏み込めば届いてしまう、その程度の距離だ。
     だがそれで十分だった。
     豪が踏み込むよりも先に、一人の少女が間に割って入る。
    「まー、アレだね! 修行をするのはいいけど他の人の迷惑になっちゃあいけないね!」
     玲だ。
    「まだまだ力不足な私だけど、あなたの全力……受け止めさせて頂きます!」
     その言葉に応えるように、豪の腕が振るわれた。
     踏み込むための距離はなくなっていたが、その程度どうということはないらしい。放たれたのは先ほどまでと遜色のない一撃だ。
     まともに受ければ、耐えられるものではない。まともに受ければ、の話だが。
     向けられた力をそのままに、後方へと受け流す。
     それでもさすがに完全には無理であったか。
     痺れた腕と、既に次の動作に移っている豪。次は捌けない。
     しかし玲はその心配をしていなかった。視界の端に映るのは、マテリアルロッドを振りかぶっている樹の姿。
     ふと脳裏を過ぎったのは、先の樹と同じもの。目の前の相手と、業大老。
     だが。
    「私は難しい事考えるのは苦手だし、先の事考えてもしょーもないと思うんだ」
     豪が動くよりも先に振り下ろされたそれに合わせるように、玲の足が振り上げられた。
     その足に纏うのは、脚部の宝玉より生じた炎。内部で爆ぜた魔力の衝撃により、一瞬だけその顎が無防備になる。
    「だからあなたは灼滅する。目の前の脅威を見逃すことが出来るほど、私には余裕が無いからね」
     ぶちこんだ。
     そして足を下ろすよりも先にその身に刺さったのは、癒しの矢。
     裕介より飛んだそれが、痺れた腕を癒していく。
    「集団戦には集団戦のやり方があるものでな」
     回復に徹しながら、裕介は豪に告げた。あくまでも修行の体は崩さない構えだ。修行といってこうしている以上はそれが礼儀だろう。
     もっとも豪にそれを考える暇があるか――与えるかは、別にして。
     物騒な音ばかりが響き渡っていた中に、不意に清涼な音が流れた。刹那の歌である。
     ディフェンダーとして守りを重視している刹那ではあるものの、当然攻撃をしないわけではない。
     歌を選んだのは、きっと攻撃として通り易いと思ってのものだ。
     それともう一つ。
     戦場で不謹慎かもしれないが、歌っている時は、怖さも痛さも忘れて幸せになれるのである。
    (「豪さんにとって、それは戦うことなのでしょうか」)
     そんなことを思い、敵として出会わなければ友達になれたかもしれないと、そんなことも思う。
     だがおそらくは、敵としてでなければ出会うことさえなかったのだろう。
     だから。
     灼滅することでの弊害が無い、と言えば嘘になるだろう。だがこれが、自分達の選択だ。
     歌に攻撃の意思を込めながら、響かせた。
     持ち直そうとする豪に、しかしフィズィはその暇を与えない。代わりに与えるのは、死角からの斬撃だ。
     足止めを狙ったその効果の結果は、確認しない。あくまで全力で殺しに行くと、反撃により受けた痛みも無視し、オーラを集中させた拳を叩き込んだ。
     結論から言ってしまえば、確かにその効果はあった。だがむしろ重要だったのは、それにより豪が一瞬だけ気を逸らしたことだろう。
     その隙に乗じ、蓮太郎が盾で殴りかかった。相手の注意を引き付けつつ、向けられた攻撃を防いでいく。
     相手はアンブレイカブル。本当ならば思い切り正面から殴り合いたいところだが……。
     そこは役割分担だ。ワガママは言えない。
     だが。
    (「敵の全力を受け切り、そこから反撃していくのもまた楽しいものだ」)
     そんなことも思いながら、雷を纏わせた拳を繰り出した。
     正直に言えば、蔵乃祐は豪のことが気に入らなかった。
     だが今回の役割はメディックである。さらに相手の攻撃は生半可なものではなく、手を抜くことは出来ない。
     思うところはあれど、仲間を癒すことに専念していった。

    ●意思の向こう側
     幾ら頑丈なアブレイカブルとはいえ、攻撃を受ければ傷つくし、いつかは限界が訪れる。問題はそれがいつなのかということだが……。
    「……っ」
     今回は灼滅者よりも先だった。
    「さて、どうやら僕達の勝ちみたいだけど」
     膝を付いた豪に近づいたのは蔵乃祐だ。
     少しでも逃げる素振りを見せれば挑発をしてみせるつもりだったのだが、どうやらその必要はなさそうであった。
     しかしその姿を見下ろしながら、ふと良いこと思い付いた、とばかりに手を叩く。
    「そうだ、命が惜しかったら業大老か葛折つつじさん、他の偉そうな人でもいいや。今どこに居るのか教えてくれたら見逃してあげるよ? 大丈夫大丈夫、君が喋ったってことは皆には内緒にしておくからさあ?」
     その内容はともかく、聞きたいことがあったのは他の者も同様だ。
    「俺も聞きたいことがある。お前と同じ目的のアンブレイカブルが沢山いるが、それは何故だ? 誰かにここのブレイズゲートのことを聞いたのか?」
    「そうね。どこで富士急ハイランドのブレイズゲートの情報を入手したのか、気になるわ」
     蓮太郎や樹も共に問いかける。
     そしてそれを受けた豪は。
     俯けていた口元に、微かな笑みを浮かべた。
     ――まずい、と蔵乃祐が思った時には、既に遅い。その視界に映ったのは、ただの軌跡だ。
     轟音がしたのと、腹部に衝撃を感じたのは、果たしてどちらが先だったか。
     しかしそんなことを考える暇もなく、吹き飛ばされた。
     流れる視界の中で、蔵乃祐はそれよりも早く動く豪の姿を捉える。
     追撃。それを今受ければどうなるかなど、考えるまでもないだろう。それは咄嗟に準備した予言者の瞳を使用したところで同じだ。
     故に蔵乃祐は諦めた。
     それでも外さなかった視線が、合う。
     ――詰めが甘い。
     言われた気がした。
     ――知ってる。
     だから返した。伝わったかは知らないけれど。
     力の抜けたその身体へと、豪の拳が迫る。
     甲高い音が響いた。
     拳が叩いたのは、盾だ。その持ち主である蓮太郎は、蔵乃祐からの治癒を受けその場に踏み止まる。
     さすがに強引であったためにかなりギリギリだ。受け止めた腕は嫌な音を立てているし、視界の端で豪がもう片方の腕を振り上げているのも見える。
     だが心配はしていなかった。それと同時に、別のものも見えたからだ。
     豪の腕が振り下ろされるよりも先に、樹のフォースブレイクが撃ち込まれた。
     構わずに下ろされた腕を、紅緋が跳ね返す。
     それでも止まらない豪へと腕が薙ぎ払われ、風で不意打ち、放たれる毒と石化。ブラックフォームで心の内の力を汲み上げ尽くして。
     それでも豪は、ただ前へと進む。
    「まだ満足しないですか!? いつまでも戦っていたいけど、もう終わり!」
     それでも限界は……いや、限界ならばとうに訪れていた。先ほど膝を付いた、その時が豪の限界だ。
     勝敗はとうに付いている。これは自身の力を高めることにしか興味がなかった男が、最後の瞬間までそれを続けているに過ぎない。
     だから結末も変わらない。
     玲の蹴りが豪の片腕を消し飛ばした。
     ふらついた身体に、もう癒しは必要ないと見た裕介の拳が突き刺さる。
     流れる刹那の歌声。
    「この戦いとあなたの力、ワタシの研鑽として活かし続けるとお約束します……さようなら」
     最後は出来れば苦しまずにと。豪を掴んだフィズィが投げ飛ばし、地面に接触するよりも先にその拳がその命を刈り取った。
     後に残ったのは、静寂。
    「目ぼしいものがないかどうか、探そうと思ったのだけれど……」
     呟く樹の視線の先には、何も残されていなかった。まるで最初から何もなかったかの如く。
     何処か遠くで、笑い声が響いた気がした。

    作者:緋月シン 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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