
●服の溶ける触手だって言ってるだろ!
「こ、こないでっ……!」
息を切らせ、森を走る。
素足が土や枝を踏み散らすが、構っている時間など無かった。
とうに靴どころか、靴下すらなくなっているのだ。
代わりにどろりとした粘液が足をつたい、肌を隠していた布を溶かしていく。
後ろを振り向くのは恐い。
髪を振り乱し、必死に木々の間を抜けようとしたその時……!
「あっ……!」
足に絡みつくタコのような触手。
一瞬にして上下逆さに吊り上げられ、体中を触手が這い回った。
脚が、胸が、身体のありとあらゆる全てが晒される。
「や、やめて……」
かぼそい声でハゲたオッサンは言った。
「おじさんの服返してえええええええええっ!」
……よっしゃ、冒頭からもう一度読み直そうじゃないか。
●服が容赦なく解ける触手(ただし男だけの模様)
「ッテイウコトダヨー」
須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)が死んだ目をして言った。なんか、見ちゃ行けないものを見たっていう目だった。
「高速道路から多少離れたとある森林地帯にね、タコミダラさんっていう都市伝説が実体化したんだよね。タコミダラさんは服を溶かす触手をもつ恐ろしくエッロエロな生き物だって噂だったけど、主に腐食系女子に伝わる噂だったからか男性の衣服だけを執拗なまに溶かしにかかるものとして実体化したんだよね。もうね、アレだよね。アレだよ」
その後小刻みに震えながら語ったまりりんによると、このタコミダラさんは人が森林地帯に入ってくるとどこからともなく(本当にどこからともなく)現われ男たちを拘束し服という服を剥きにかかるというのだ。
話によると大体五体くらいいて、強さはまあ普通かそれ以下だけど、なんていうのかな、メタいこというと真面目な女性対策としてマトモに戦うだけのタコミダラさんも一応いないでもないよ?
「とても恐ろしい敵だから、キヲツケテテネ。だいじょう、なんとかなるよ!」
| 参加者 | |
|---|---|
![]() 露木・菖蒲(戦う巫覡さん・d00439) |
![]() 御幸・大輔(イデアルクエント・d01452) |
![]() 九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795) |
![]() 弐之瀬・秋夜(捕まりそう系執事・d04609) |
![]() 祁答院・哀歌(仇道にして求答の・d10632) |
![]() カミーリア・リッパー(切り裂き中毒者・d11527) |
![]() フランセット・ラグレーン(薔薇の騎士・d14260) |
![]() 槙・雪郎(お山の白狐・d18309) |
●「お前が行け」「いやお前が」「どうぞどうぞ」の展開を予想していたらまさかの触手大歓迎モードで例の人がおののいているさまを想像しながらご覧ください。
突然だが、御幸・大輔(イデアルクエント・d01452)が触手に蹂躙されていた。
いきなり何を言い出すんだと思われるかもしれないし、これはは全年齢対象ゲームだよって言いたい人もいるかもしれないので補足しておこう。
「やめっ……んっ、んん……!」
肌色の多い表紙で知られるとある淑女向け小説レーベルの絵が似合いそうな神○浩史声の大輔が粘液に両手首と左足首を固定したまま木の幹へ押しつけられ、頬が木の皮をこする感触と腰から内股へと這いずる触手の感触に苦悶の表情を浮かべるという構図である。
……わかってる。何言い出すんだと思うだろうし、これは全年齢対象だって言いたいのもわかる。
だが待ってほしい。もうちょっとカメラを引いてみてほしい。
「我は騎士! 我が盾と薔薇に誓おう! 触手になど、負けない!」
男装女子なのか女装男子なのかハッキリしないが一応性別は男性だというフランセット・ラグレーン(薔薇の騎士・d14260)がレイピアと鎧をフル装備にして触手に挑んだかと思ったら次のシーンではもう両手を頭の後ろで縛られていて両膝を上にあげつつ開くという英語のMに近い形に固定され(レイピアはその際膝に挟まれている)ドンキで買ってきたアルミ鎧は余裕で溶け落ちかろうじて右胸にプレートが一個引っかかっている程度という防御力でありながらまだ抵抗する気なのか目をそらし『くっ……殺せ……!』とか言い出してる姿が見えるはずだ。
……うん、わかる。わかるよ。今携帯電話の数字キーを見ながらどこを押せばいいか考えてるってわかる。でもまだそれは押さないでほしい。もうちょっと、もうちょっと引いて貰えれば分かるはずだから。
「ふ、ふえぇ……やぁ、きもちわるいよぉ……!」
サモエド犬を思わせる白い犬耳やしっぽをつけた小学一年生男子の槙・雪郎(お山の白狐・d18309)が和服の帯を千切れさせ、胸の先が露わになるかならないかのところまで裾を崩した状態で地面に両手両膝をつけているがそれは触手に押さえつけられているからで足首から膝まで螺旋状に這いずってくる触手が和服の中へと潜り込んでいくのが見えるだろうか。
……だよね。押しちゃうよね。でも通話ボタンはまだ押さないで。ね? 最後まで確認しないとほら、誤報ってこともあるかもしれないし、まだギリギリゴールデンタイムいける映像なはずだから。きっとそのはずだから。その証拠にあと数メートルカメラを引いた映像を見せるから。
ほら、触手がぎっしりとうごめくタコミダラさんへゴスロリ男子のカミーリア・リッパー(切り裂き中毒者・d11527)がまるで椅子に腰掛けるかのように背中を預け頬をつつく触手を優しく撫でたかと思うと大胆にかぶりつき、内側から頬を押されるのも構わず舌をからめていき触手は触手で首から胸元へと入り込みそのまま平らなボディを蛇行したかと思うとスカートを内側から押し出すように先端を持ち上げ彼の腰にわたされたリボン結びのヒモを露わにするのが……。
……待って。後生だから。生活があるから。
もうちょっとだから。もうちょっとで分かって貰えるはずだから。騙されたと思って。ね?
ほらほら、両手首をあわせるようにくくられた巫女服の男子こと露木・菖蒲(戦う巫覡さん・d00439)が太い木の枝から吊るされていて、つま先がつくかつかないかの状態でんうーんうーって唸ってるんだけど妙に息が荒いと思ったら巫女服の脇部分から触手が入り込んで彼の身体をなで回しているからで、ついでに言えば巫女服にはズボンとかのポケットがある部分にもスリットがあってそこからも触手が入り込むもんだから菖蒲は触手のうねりに連動するかのように身体をうねらせるのも納得がいくよねなるほどぉ……って、ストップ、ストップ!
大丈夫だから、まだゴールデンタイム……は無理でも夜10時くらいならいけるから。土曜日の10時はあれだよ、全年齢の時間だよきっと。だからこれも大丈夫なはずだから。
え? 待ってそんなこと言わないで。たしかにすごくそれに似てるかもしれないし、『ライト系から入って女装騎士にアニマルにゴスロリに巫女さんにと盛りだくさんすぎるだろどうなってるんですか武蔵坂学園のボーイたちはさあ!』って思うかも知れないけど、そこはこの女の子が説明してくれる筈だから。ほら、女の子! 女の子ちゃんといるから!
この祁答院・哀歌(仇道にして求答の・d10632)が百万を超える高画質はもちろん光学式手ブレ補正やスムーズなズーム機能などさまざまな機能を備え昨今では映画撮影くらい余裕と言われるハイスペックハンディカムを『わざと』草むらの茂みが入るように構えて匠の目をしているのが……………………ああ、うん。
「ライト系から入って女装騎士に和服わんこにゴスロリに巫女さんにと盛りだくさんすぎるだろどうなってるんですか武蔵坂学園のボーイたちはさあ!」
哀歌さんってもっとシリアスというか、真面目な人だった気がするんですが、もしかして夏場に入って腐敗が始まったのでは?
「いえ、私は腐海系女子ではないのですが。皆さんの戦闘記録を撮り残し、後の参考資料にしようと思っているんですよはい。もちろん肖像権にも配慮すべく全員の目に黒い線を入れて映像化しますのでご希望の方はこちらのアドレスまで」
……などと。
哀歌は虚空に向かって『連絡先はこちら』のジェスチャーをした。あなたの脳内にはきっと彼女のメアドが見えている筈です。きっと。
そんな彼女の後ろでは、九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795)があえてボロけたミリタリー衣装を着て読者モデルポーズをとっていた。要するに普通に立っていた。
ジェスチャーを停止させて振り返る哀歌。
「九牙羅先輩、なにやってるんです?」
「ん? コスプレ」
じゃじゃんと言いながらコートを開くと、内側にはそれこそドンキで売ってそうなナース(あえてこの表現)やポリスをはじめ多種多様なマニアックコスチュームが詰まっていた。
どうやって収納されてたんだろうこれ。
「今日はコレ使ってファッションショーすんの。な、秋夜!」
「おうよ!」
ブライダル用っていうより『そういうアレ』用のウェディングドレス的な何かを着込んだ弐之瀬・秋夜(捕まりそう系執事・d04609)が読モポーズをとった。要するにちょっと気取った立ち方である。
「それより男の裸体見放題のパラダイスだって本当か!? 読者アピールできるってマジか!?」
「マジマジ。ほーぅら森の小路で雑草がくぱぁっと」
「うっひょう!」
…………。
…………。
あ、おまわりさんこちらです。
●イラストがないことをいいことに表現の限界に挑戦するの図
これは、とある祁答院の哀歌さんから提供された定点カメラの映像である。
夜間の撮影に耐えるためか、それとも撮影者の拘りか微妙に画質が粗く色が薄いことはご了承いただきたい。音声も一応とれてはいるが、なぜなのか雑音が多いがこれもご了承いただきたい。
まずご覧頂きたいのは一匹のタコミダラさんとの死闘を繰り広げるカミーリアである。
「カメラはあっちなんで、目線入れないように気をつけてくださいね。序盤はなすがままにして、中盤から応えていってあとは流れで」
「カミー、頑張る、します」
両足を投げ出したお人形のような座り方をするカミーリアのまず背後へ回るタコミダラさん。戦闘で背後に回るのは当然のこと。そして無数にある触手のうち一本だけを首へ近づけ、先端部分だけをそっと撫でるのだった。そう、戦闘にジャブは必須なのだ。
ンと小さく唸るカミーリアだが表情は変わらない。だが次の瞬間ダムの決壊がごとく全ての触手が飛び出しカミーリアの全身に巻き付いた。瞬時に、そして螺旋状にとかされていくゴスロリ服。プレイングには紐パン派だって書いてあるけど、これ読んでるひとは男性用(正しくは男の娘用)の紐パンとか知らないんじゃないだろうか。物理的に無理だろとか言うだろうと思う。でもあるんだ。どうしても知りたかったらググってほしい。もしくは哀歌からビデオ買って欲しい。
……とかなんとかやっていると、哀歌は素早く別のカメラを手に取った。高速連写と光学式光彩機能などを搭載しところによってはグラビア撮影にすら使われるというデジタルカメラを連写モードでオン。かと思えば足踏み型のシャッターでもってモノクロフィルム式カメラを連写始末。
「いーですよいーですよー、はいここからフランセットさんへドン!」
昔の運動会とかでしか見たこと無いようなデカいビデオカメラを方向転換レバーでもってパン移動。
すると……。
「や、やめろ! 肌を晒す相手は初めての……くっ、そんな、そんな所に触れるな!」
フランセットが目をぎゅっと瞑って首を振っていた。かろうじて残っていた鎧(パーティー衣装)も完全に崩れ落ち、もはや騎士らしい部分は彼の眼光と魂だけだった。しかしながら目の光もまた徐々に喪われ、顎も上がりぼうっとした表情が多くなっていく。
「見る、な……だめ……だ……」
ついに光を失い、軽く白目をむいたフランセットが沈黙のままびくびくと痙攣する光景だけが哀歌のカメラに納められていた。これでは魂も残っているかどうか……。
「後で字幕いれましょうね。『騎士様も人間ってこった! ほらしゃぶれよ!』と……ハッ、こうしれはいられません。ケモノ枠とミコ枠を同時に映せるアングルが通ってるじゃないですか!」
限界まで動けとばかりに片手でノーパソをタイピングしつつ定点カメラとハンディーカムを同時に移動。
そこではまるで抱き合うように寝転がった菖蒲と雪郎がいた。いや、正確には仰向けに組み敷かれた菖蒲の上に、同じくうつ伏せに組み伏せられた雪郎が固定されている状態である。互いの接着面には粘液がとどいていないのかかろうじて布が残っているもののそれは和服の裾。前部分だけ残っていてもたかがしれていた。あとは腕に申し訳程度に引っかかった袖のみである。
「んっ、んあああっ! や、やすませ、てっ……も、もうっ!」
「映されてる! ボクのこと写されて、映されて、撮されてる!」
仰向けの菖蒲のすぐ近くまでズームする哀歌カメラ。
「ほーら、ビデオ見てる人に言うことありますよねー?」
「か……かわいい女の子だと思った? 残念、菖蒲くんでし……ひゃ、ひゃあああああああ!」
「た、たのしいこれ、毎日やりたい……ハアハア」
カメラを両手に構えて動画静止画共に一切の素材を無駄にするものかと奮闘する哀歌である。
「よぉしイケる! いけますよー! ここで満を持しての男子高校生三人のォ――!」
はいドォーンとか言いながら全カメラを大輔へと向けた。
定点はもちろん三脚式の大型カメラもである。そしてハンディを持った哀歌はニンジャめいたスムーズな円移動で前から後ろへのゆっくりとしかしなめ回すような(比喩表現です)撮影を開始した。
「く、くそっ……こんな触手……んくっ!」
手を強く握り歯を食いしばる大輔。そんな彼を背中を合わせるように秋夜が巻き付けられていた。
「や、こんなおっきいの……むり……ぃっ……!」
互いの頭を交差させるかのように、同時にびくんとのけぞる秋夜と大輔。
服という服は溶けていくのだが、そのたびにメイド服や女子高生服などにチェンジされているため脱いでは溶け脱いでは溶けの繰り返しであった。そして途中まで着せ替えを担当していた獅央も両手両足を触手に絡められ大の字で宙に固定されていた。ついでにマイクロビキニだった。
「ら、らめぇぇっ! 天然素材の粘液ぬられてまひゅうううううう! 老廃物でちゃううのおおおおおお! なっちゃうううううう! お肌すべすべになっちゃうううううう!」
「おおっとラストをハードで、しかも自ら飾るとは……ではこちらも」
哀歌は徐々にバックし、ズームアウトと組み合わせ画角を広くとると、全員が一斉に映るアングルへと移動した。
「もうやだぁー!」
「はなせ……放せよ……化け物!」
「そこはダメェ!」
「もぉヌトヌトぉ……」
「んっ……ン……」
「くっつい、て……」
「や、やめ、あああああっ!」
…………。
…………。
…………。
…………。
ご覧頂けただろうか。
これが武蔵坂学園の勇敢な灼滅者たちが恐ろしき都市伝説と戦い、そして勝利するまでの映像である!
●文字として見えてないだけですごく熾烈な戦闘をしているはず
草むらの上に積み重なる無数のタコミダラさん。
かれらがじんわり溶けて消えていくのを見つめながら、菖蒲とフランセットはぐったりと横たわっていた。目に光は無かった。あと粘液だらけだった。完全に事後だった。あ、戦闘事の後って意味です。
「クリーニング……しなきゃな……」
「うん……」
その後ろでは、犬になった雪郎がボストンバッグにもぞもぞと潜り込み、スタイリッシュモード(意味深)の大輔が優しくバッグの口を閉じてやっていた。
「あの後右足首を触られた俺は思わず暴れ出し、気づいた頃にはタコミダラが死んでいたんだ」
「ね、すごかったねアレ。映像残ってる?」
「正直どうなんでしょうねこれ」
秋夜と一緒にノーパソを覗き込む哀歌。
後ろでは役目を終えたカミーリアが無表情で木の幹によりかかっていた。事後だった。だから戦闘事の後だって言ってんだろ!
「ねえ、一応モザイクかけといてね?」
「任せてください。触手の先端にカラーモザイクかけますから」
「なんで?」
真顔で振り返る獅央。
「あ、そうだ。皆の着替え預けといたよな。クリーニングしたらそれ着てこ」
「はいはい。ちゃんと離れたところに置いておきまし――」
振り返って固まる哀歌。
同じように振り返る一同。
着替えが入っているらしいナップザックの上に、でろんとタコミダラさんの死骸が乗っていた。そして溶けていった。
「…………ハハッ!」
哀歌はもう一度振り向き、親指を立てた。
この後どうなったのかなんて知らないし、知りたくもないです。
| 作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2013年7月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 28/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 16
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