お空の向こうに飛んで行け

    作者:なかなお

    ●とある草原で
    「お空の向こうに飛んで行けー、ですよ」
     ただっぴろい草原の片隅で、一人の少女がふわり、紙飛行機を空へと送り出した。風にあおられたそれは、くるくると何回転かして、やがて草の中へと姿を消す。
    「よし、じゃあ今日はあそこまで声を届けるですよ」
     自らのやる気を確認するように呟いて、少女がさて発声練習を、と口を開いた――その時。
    「ラブリンスター一派の淫魔だな」
    「え……?」
     掛けられた言葉よりも、背中に突き付けられた尖った得物の感触に、少女はゆるゆると目を瞠った。ゆっくりと振り返れば、フードを目深に被った見たこともない男の姿。
     更にその後ろでは、四人の男たちが炯々とした瞳で少女を睨み据えている。
    「漸くだ……漸く、裏切者への復讐の時が来た!」
    「アモン様――貴方様の無念、今ここで晴らして見せます!」
     まるで祈りを奉げるかのように男達の口から紡がれる言葉にも、まるで思い当たる節がない。訳が分からない。
     突然の事態に動転する少女に構わず、フードを目深に被った男――ソロモンの悪魔は容赦なく得物を振りかざした。
    「うわ、わ、わ……っ」
     服一枚を犠牲にして何とかその一撃を避けようとも、衆寡敵せず。少女が地に伏すまで、あと数十分。

    「不死王戦争で灼滅したアモンの残党が、また事件を起こすよ」
     集まった灼滅者達をくるりと見渡すと、須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)はそう切り出した。
     ラブリンスターが武蔵坂と接触した事を『裏切り』ととったのか、或いはラブリンスターと武蔵坂は以前よりつながっており、不死王戦争敗北の原因がラブリンスターの策略であったと思ったのか――どちらにせよ、彼らはラブリンスター一派への復讐を決めたのだ。
    「ダークネス同士の戦いだから放っておいても問題はないんだけど、ソロモンの悪魔を倒すにはいい機会なんだ。だから、皆にはソロモンの悪魔の灼滅を目的に動いてほしい」
     まりんは数枚の写真と地図を机に広げた。
    「まず、襲われるのは、淫魔・ゆんゆ。この草原で夕日に向かって発声練習をするのが習慣らしいんだけど、そこをソロモンの悪魔とその配下四人が襲うの」
     ソロモンの悪魔の名は、スズミヤ。刀剣を持ち、魔法使いと日本刀のサイキックを使用してくる。配下の強化一般人が使用するのは影業。
     ちなみに、ゆんゆはそれに対してサウンドソルジャーとサイキックソードのサイキックで応戦する。
    「ひらけた場所だから戦いやすいと思うけど、立ち入り禁止区域ってわけでもないから、一般人対策もしておいた方が安心かもしれないね」
     一通りの説明を終えたまりんは、そこで少し困った様な、複雑な顔をした。
    「それで、接触のタイミングなんだけど……選択肢は二つあるよ」
     一つ目は、スズミヤとゆんゆの戦いが始まってすぐ。こちらを取るならば、状況の分からないゆんゆを守って戦うのか、それとも上手く意思疎通をして共闘するのかという点も決めておく必要がある。
     二つ目は、スズミヤがゆんゆとの戦いを終えた時。この場合、ゆんゆが配下一人を倒し、一人に深手を負わせていることで敵戦力は十分に削れている。スズミヤも多少なりとも疲弊しているだろう。
    「どっちを選ぶかは、皆に任せるよ。それから、ないとは思うけど、ゆんゆを悪戯に刺激するとダークネス二種を相手取ることにもなりかねないから、十分に気を付けてね」


    参加者
    終夜・魃(灰燼・d00877)
    古樽・茉莉(百花に咲く華・d02219)
    ジュラル・ニート(ストレンジジャーニー・d02576)
    天羽・桔平(信州の悠閑神風・d03549)
    弥堂・誘薙(万緑の芽・d04630)
    和泉・凪翔(奔放不羈・d05600)
    龍田・薫(風の祝子・d08400)
    御剣・譲治(デモニックストレンジャー・d16808)

    ■リプレイ


     吹き抜ける風が、さわさわと葉を揺らす。
    「なんとまー逆恨みも良いとこで」
     一面夕日色に染まった草原に目を細めながら、和泉・凪翔(奔放不羈・d05600)は肩をすくめた。
    「まあ、ソロモンの悪魔なんざさっさと片すのが一番ってね」
    「うむ」
     嘯く声に、ジュラル・ニート(ストレンジジャーニー・d02576)が軽く頷く。
    「どうもアモン様が大好きな奴みたいだし、きっちり灼滅してアモン様と同じところへ送ってあげないとな」
     揶揄る言葉に、凪翔は違いねえ、と口端を上げた。
    「可愛い女の子が傷つくのは、やっぱり放っておけないからね――おっと」
     物腰柔らかく続いた終夜・魃(灰燼・d00877)が、ふと声色を変える。途端に鋭くなった視線の先には、一見しただけで『ガラの悪い』と表現できる男の集団――スズミヤ達がいた。
     スズミヤ達から少し離れた場所に一人佇む少女――ゆんゆに目を移し、弥堂・誘薙(万緑の芽・d04630)は一つ瞬く。彼女は、今回は敵ではない。
    「行きましょうか」
     スズミヤとゆんゆの距離が十分に近づいたのを確認し、灼滅者達は柔らかな地を蹴った。

    「うわ、わ、わ……っ」
     フードで目元を隠すスズミヤの得物が、ぱっくりとゆんゆの服を割る。咄嗟にその手に光る刃を出現させたゆんゆは、続く配下の男の影を何とか弾きかえした。
     その背に、スズミヤの二撃目が迫る。
    「そこまでです、ソロモンの悪魔」
     ゆんゆが避けきれない攻撃にぎゅっと目を瞑った時、ぱああ、と広がった光の網がスズミヤの剣先を捕えた。
     突然の乱入者に、スズミヤが音を立てて振り返る。
    「彼女を殺させはしないです」
     真っ直ぐにスズミヤを睨みつける古樽・茉莉(百花に咲く華・d02219)の瞳とぶつかり、スズミヤは不快と不審に顔を歪めた。
     その隙に、残りの七人がゆんゆを背に庇い囲む様に場に割り込む。
    「何だ、テメェら!」
    「首突っ込んでんじゃねぇぞ、退かねぇとぶっ殺すぞ!」
     恫喝するように喚く配下達の前に立ち、スズミヤはただ灼滅者達を見定める様にじっと見つめていた。
     天羽・桔平(信州の悠閑神風・d03549)がふぅん、と笑いとを含んだ目で首を傾げる。
    「そんで、俺達がいなくなったら5対1でふるぼっこ? 女の子1人に大の男5人って……かなりかっちょわるーい!」
    「なっ」
     かっちょわるーい、と言いつつ指まで指されて、配下達は怒りにかっと目元を赤く染めた。今にも飛び込みそうなほど影をざわめかせながら、しかしそれでも一歩を踏み出さないのは、スズミヤが何も言わないからだろう。
     緊迫した空気の中、龍田・薫(風の祝子・d08400)はくるりと背後を振り返った。
    「大丈夫?」
    「…………へっ?」
     突然の事態にぽかーんと口を開けたままフリーズしていたゆんゆが、たっぷり五秒の間を開けてようやく薫の顔を見返す。
    「僕らはキミをたすけにきた。だから、きみのチカラも借りたいんだ」
    「え、あ、え?」
     戸惑うゆんゆの代わりに、スズミヤの後ろで怒りに体を震わせる配下達ががなり立てた。
    「おい、勝手なこと言ってんじゃねぇぞ!」
    「スズミヤさん、こんな奴らまとめてやっちまいましょうよ!」
     それでも動こうとしないスズミヤを、それまで黙って場を見守っていた御剣・譲治(デモニックストレンジャー・d16808)が挑発する。
    「アモンが負けたのは、慢心のせい。あるいは、裏切りで負ける程度の実力。どっちにしても、筋違いで、頭が悪い」
     淡々と告げられたその言葉に、スズミヤは頭の中から『撤退』の二文字を消し去った。


    「アモン様を馬鹿にするな……!」
     突くようにして斬り込んできたスズミヤの切っ先を、譲治がシールドで殴りつける。
     譲治一人分空いた先にいるゆんゆ目がけて突っ込んでくる配下の一人の前に躍り出ながら、魃は視界を曇らせる霧を放出させた。刃のように鋭く光る影を日本刀で弾き返す。
    「邪魔するなッ」
    「可愛い女の子が傷つくのは、やっぱり放っておけないだろう? 邪魔するのは当たり前だ」
     は、と嘲るように吐息を零せば、男はわかりやすく目を血走らせた。
    「ちょい、そこの淫乱魔の子……って長えな」
     逆にスズミヤ達を囲むように陣を組み直しながら、未だ『ボーゼン』の域を脱しないゆんゆに防護符を飛ばして凪翔が呼びかける。
    「俺は凪翔って言うが君は?」
     突然額にぺったり張り付いた符にびくりと体を震わせたゆんゆは、しかしそれが害を成すものではないとわかると、そっとその符に触れた。防護符から除く瞼をぱちぱちと瞬かせ、
    「ゆんゆ、です」
     ゆっくりと答える。
    「ゆんゆちゃんね」
     ゆんゆの頭上に飛び上がった桔平が、ゆんゆを見下ろしてふっと笑った。
     大きな波となって伸びてきていた配下の影に、着地と同時に槍に纏わせていた炎を叩きつける。
    「俺は桔平。ちょっと今忙しいから、後ろから手伝ってくれると嬉しいかも」
    「手伝う?」
    「アモン残党が逆恨みでラブリンスター派の淫魔を攻撃してるんです! あの悪魔を今倒さないと、ラブリンスターさんまで手を出すかもしれません!」
    「……へっ?!」
     それまでどこか反応の鈍かったゆんゆは、解体ナイフから夜霧を展開させながら切羽詰まった声で告げる誘薙の言葉に目をまん丸に見開いた。
    「ほんとう、ですか?」
    「こんなところで嘘なんて――」
    「逆恨みではない」
     嘘なんて吐かないよ、という魃の言葉を、スズミヤがその喉笛を生成した矢で掠めることで遮る。つ、とこぼれた一筋の血に、茉莉がすぐさま祭壇を展開させ、結界を張ってスズミヤの体を魃から遠ざけた。
    「お前の慕うラブリンスターが、アモン様を売ったのだ」
     しかし、唸るスズミヤは体から冷気を放ち、結界を割って魃と凪翔の体を絶対零度の寒さの中に突き落とす。
     ジュラルが舌を打ってマシンガンの形状をしたガトリングガン・triglavを構えたとき、ふと背後から甘やかな歌声が聞こえてきた。
    「あなた達の慕う人を、わたしはしりません。でも」
     歌声は魃と凪翔の凍りついた体を溶かし、魃の傷口を塞いでいく。
    「ラブリンスター様を狙うなら、わたしには貴方と戦う理由ができました」
     つい数分までのぽやぽやとした雰囲気からは想像もできないほど研ぎ澄まされたゆんゆの瞳に、ジュラルがぴゅうと口笛を吹く。誘薙がありがとうございます! と安堵したように笑い、配下の影を赤い掌で受け止めた薫がところで、とゆんゆに問いかける。
    「全裸にパーカーて……淫魔的には?」
     その言葉が指すのは、もちろんスズミヤだ。
     ゆんゆはちらりとスズミヤの前身を確認し、
    「ないですね」
     ふい、と顔をそむけた。

     ――意思疎通完了、共闘開始。


    「八つ当たりとか……、悪魔さんって結構、性根が曲がってんだね!」
    「っぐぁ」
     桔平の妖の槍が、螺旋の唸りを伴って配下の男の影を食い破り、その腹を穿つ。かは、と血を吐いて宙に浮いたその体を、さらに凪翔の冷気のつららが貫いた。
     しゅうしゅうと氷とともに消えていく男に、別の配下の男が炯炯とした瞳で凪翔を射抜く。
    「ふざけやがって、ふざけやがって……ッ!」
     四方から絡みつこうと伸びてくる影を、凪翔は素早く飛び退いて避けた。
    「ふざけてないさ。大真面目だ」
     嘯く魃が、上段の構えから振り下ろした剣先で男の体の中心に赤い線を引く。
    「このっ」
     我武者羅に延ばされた影に左肩を貫かれ、ばしゅ、と上がった血飛沫に、魃はどくりと心臓が大きく脈打つのを耳のすぐそばで感じた。
     は、と短く熱のこもった息が零れる。
    「……ッく、はは……いいぜぇ」
     まるで人が変わったかのように唇を歪ませる魃に、男はひ、と息をのんだ。
    「最高だ……。もっと……、もっと……!!」
     戦いの悦におぼれた魃の瞳が、男の体を恐怖で塗り固める。もっとだ! と振り下ろされた刃を、男は避けることができなかった。先ほどの傷を、寸分違わず、今度こそぱっくりと割る剣先。
     目の前で二つに裂けた仲間に、残った配下の二人は考えるよりも早く体を動かしていた。
     ――逃げなければ、逃げなければ……!
     すぐそこに襲い来る『死』から逃れようと、もつれる足で必死に背後を振り返る。
     ばさり、白色の髪が男たちの視界に舞い込んだ。
    「ソロモンの悪魔の配下ともあろうお方が逃げるんですかぁ~?」
     挑発する言葉と同時に突きつけられたガトリングガン・triglavが、炎を纏った弾丸で一人の体を燃え上がらせる。
    「くそッくそがァアアアアアアッ!!」
     ついに一人になった配下は自棄になったかのように叫び声を上げると、ぱちぱちと小さな炎を燻らせるジュラルの銃口を素手で握り締めた。そのまま力まかせに銃を引きよせ、バランスを崩したジュラルの首元を鋭利な影で切り裂く。
    「五樹!」
     回復を唄い続けるゆんゆに任せ、誘薙は霊犬・五樹に呼びかけた。わふっと応えた五樹が、かちゃりと咥えなおした刀で男の銅を狙う。
     五樹を抑えようと男の影が前面に集中したところで、誘薙が前に翳した解体ナイフを両手で握り締めた。
    「これで、お別れです」
     ナイフの刃から溢れ出した毒の風が、竜巻となって男の体を襲う。螺旋の風に巻き込まれ、男の体は空へと消えた。
     げいん、と鈍い音がし、スズミヤの足止めをしていた茉莉の霊力がスズミヤの得物にいなされる。
    「お前が、お前の所為で……!」
     回復を担うゆんゆに向けて放たれた矢を、譲治が砲身と変じた腕を胸元に押しつけ、撃ち落とした。
     息をのんで体を固めていたゆんゆをちらり、目だけで振り返り、
    「……助太刀。下がって」
     必要最低限の言葉で安心を与える。
     そこに更なる刃を重ねようとするスズミヤに、茉莉はわざと聞こえるようにくすくすと笑い声を零した。
    「ねぇ、貴方の慕うアモンの最後、ご存知ですか……? 今思い出しても情けなさで笑えてきます」
     口元に手を当てて、遠慮もなく肩を揺らす。
    「貴様――!」
     怒りに周囲が見えなくなったスズミヤの背を、薫が激しい唸りを上げる風の刃で切り裂いた。


     右肩甲骨から左脇腹にかけて割れた肉に、スズミヤは冷気を放つと同時に背後を振り返った。
    「剣術使いなら、前に戦った六六六人衆、四七七番のが怖かったよ」
     睨み合いの中、スズミヤを挑発する薫の声が震えるのは寒さ故か――それとも恐怖か。
     前に立つ薫の体が注意しなければ分からないほど小刻みに震えていることに気づき、懸命に唄い続けていたゆんゆはぷつりとその歌声を止めた。
    「だいじょうぶ、ですか?」
     薫の服を引いてその意識を引き寄せる。それに続く、叱咤するような霊犬・しっぺの一声。
     薫ははっと息をのんだ。
    「悪を許さぬ峻烈な心、か。……そうだね、しっぺ」
     自らに言い聞かせるように呟く薫の鼻先を、スズミヤの刃が切り裂く。つう、と伝う血ごと恐怖も拭い去って、薫はマテリアルロッドを振りかざした。
    「八重雲を吹き放つ如く、祓い給え!」
     しっぺの斬魔刀でスズミヤの動きを止め、古銭の混じった竜巻でスズミヤの体を巻き上げる。
     真っ赤な空にくるくる踊るスズミヤよりも高く飛び上がった譲治が、スズミヤの目の前でぐっと拳を握り締めた。
    「アモンの所に、ご案内」
     身動きの取れないスズミヤの顔面を、シールドを叩きつけて張り飛ばす。
     ちィッと舌を打ったスズミヤは、地に叩きつけられる瞬間、ひゅん、と得物で空を一閃した。
    「五樹、ゆんゆさんを守んだ!!」
     放たれた三日月に似た斬撃に、誘薙が叫ぶように五樹に指示を出す。五樹がゆんゆのまえに庇うように身を躍らせたのとほぼ同時、衝撃が誘薙と、五樹ジュラルを襲う。
    「倒させたりしません」
     その時声を上げたのは、ゆんゆだった。先ほどとは曲調の違う、唄うというよりは叫ぶに近い歌声が二人と一匹を包み込んでいく。
    「そのとーり! 僕達がやられるわけにいかないっしょ」
     きりっと表情を引き締めた桔平が、体勢を立て直すスズミヤの懐に入り込み、瞬時に日本刀を抜いた。しゅん、と鮮やかな音を立て、その切っ先はスズミヤの腹を切り裂く。
     息を詰めるスズミヤに休む間を与えず、凪翔の撃ち出したつららがスズミヤの肩を、脇腹を、頬を撃ち抜いた。
    「へぇ」
     ぱさ、と破けて地に落ちたフードを尻目に、凪翔が顕になったスズミヤの顔に目を細める。
    「あんた、黙ってりゃそれなりにかっこいいのな」
    「そうですか?」
     褒めているのか貶しているのか微妙なその言葉に、同意しかねるという声音で返したのは茉莉だった。死角から回り込み、スズミヤの動脈を断とうと手刀を振りかざす。
     きん、と音を立てて、スズミヤの得物と茉莉の手刀がぶつかった。
    「落ち目のくせに、こんな余計なことして……黙っていても道化の手下に変わりありません」
     嘲るその言葉に、しかしスズミヤに言い返すだけの余力は残っていない。茉莉の力に押し負け、からん、と得物が手から零れ落ちる。
     咄嗟に一度身を退いて距離を取ろうと重心を後ろにかけたスズミヤの視界に、きらりと赤い光がちらついた。
    「これ以上時間はかけない」
     いつの間にか物腰柔らかな雰囲気を取り戻した魃の手から放たれた光が、スズミヤの胸元で紅の逆十字となって花開く。
    「アモン様っアモン様……っ!」
     うわ言のようにその名前を繰り返すスズミヤが最期に見たのは、ジュラルのバスターライフル・troglavの銃口、そしてそこから放たれる、自らを貫く白金の光線だった。
    「――サタニストには死をってな。まあなんだ、苦しみもがいて死んでいけ」

    「みんな、だいじょーぶだった?」
     一瞬しんと静まり返った草原に、ぱっと桔平の笑顔が咲く。
     喉が涸れるほど唄い続けたゆんゆは、先ほどの真剣な眼差しはどこへやら、どうにも脱力を誘うぽやっとした微笑みを浮かべた。
    「何が何だかよくわかりませんしたが、良い声出しになったです。よかったら、ライブも聞いて行ってください」

    作者:なかなお 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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