修行者・中二病

     休日の朝、とある電車内。
     車内は家族連れや若い男女が乗っていて、分かっている者が見れば、乗客のほとんどがこの路線にある遊園地が目当てだと見当が付くだろう。
     そんな乗客の1人で、髪を三つ編みにして、スレンダーな体つきをTシャツとホットパンツで包んだ高校生と思しき少女がニヤニヤと、窓の景色と上に貼られた路線図を交互に見ていた。
    「ククク……もうすぐ着くぞ富士急ハイランド。そこで我は矮小なる者どもの次元より解脱し、更なる高みへと昇るのだ。さて、一体どんな修行が待っているのだろうなぁ……」
     などと独り言を呟いているから、当然少女は周りの乗客から奇異の目で見られる。
    「ねえママ、あのお姉ちゃん、何ブツブツ言ってるの?」
    「シッ、指さしちゃいけません!」
     そう子供を注意した母親がチラリと少女を見るが、幸い少女の耳には入ってなかったようで、心の中で安堵する。
     この時母親だけでなく、乗客全員が、その幸福に感謝するべきだった事を、幸か不幸か誰も知る由は無かった──。
     
    「それじゃ、みんな集まったみたいだし、説明に入ろうかね」
     教室に集まった灼滅者達を前に、篠村・文月(高校生エクスブレイン・dn0133)は例によってハリセンで机を叩きながら説明を始める。
    「この所富士急ハイランドにブレイズゲートが発生してるんだけどね、突然現れたり消えたりと言う具合に、どうも不安定みたいなんだよね」
     富士急ハイランドと言えば、今年の4月に『第2回ご当地怪人選手権』が開催され、記憶に新しい灼滅者もいるだろうが、それと関係があるかどうかはまだ分からないそうだ。
    「まあそのうち探索なり何なりしてその辺はっきりさせなくちゃならないんだろうけど、まずい事にアンブレイカブル達がそのブレイズゲートを目当てに富士急ハイランドへ向かってるみたいなんだよね」
     これらのアンブレイカブル達は、格好の修行場としてブレイズゲートを目指しているようだが、観光客で賑わっている富士急ハイランドにアンブレイカブルがやって来たら、どんな事件が起こるか分かったものではない。例えアンカレイブル達の目的が純粋に修行だったとしても、一般人が巻き込まれない保証など無いのだから。
    「と、言うわけで、アンカレイブルが富士急ハイランドへ入るのを、みんなの手で食い止めて欲しいのさ」
     ハリセンの先で灼滅者達を指して、文月は言った。
    「今回みんなに止めて欲しいアンカレイブルの名前は天城・久美と言って、外見は高校生くらいの女の子だけど、何てったってアンカレイブルだから、あんた達1人1人よりずっと強い。……なんだけどね、言動が大仰って言うか何て言うか……ぶっちゃけ中二病なんだよ。中二病なんだけど強いよ。重要な事だから2回言ったよ!」
     ハリセンで机を2回叩いて文月は説明を続ける。
     久美は富士急ハイランドへ向かう電車の中でもブツブツ中二病な事を呟いているそうだから、見つけやすいし、接触自体は難しくないだろう。
    「ただね、一般人が沢山乗ってる電車の中で戦いなんてしたら周りが巻き込まれて大変な事になっちゃうから、途中の駅で降りて戦うように話を持っていかなきゃいけないよ」
     幸い、久美は修行のために来ているので、手合わせを願って場所を変えようと提案すれば素直に付いてくるだろう。更に言えば接触や申し出の仕方も彼女の性格・嗜好に合わせればより確実だろう。多少の勇気は必要だろうが。
    「途中の駅を降りて少し歩いた所に、人気の無い開けた場所があるから、戦うならそこが良いよ」
     そう言って、文月は地図を広げてみせる。
    「ああそうそう、今回の目的は久美が富士急ハイランドに入らないようにする事だから、無理に灼滅させなくても、行くのをやめさせさえすればOKだよ。向こうも『自分は修行が足りない』と考えれば引き返すくらいの分別はあるみたいだし。さっきも言った通り強いけど、中二病な所を上手く利用すれば、『自分は弱い、修行不足だ!』と思わせる事も出来るかもね。そこの所考えてどうするか決めておくれ。どっちを取るにしても、みんな無事に帰って来るんだよ」
     そう灼滅者達を気遣うように言って、文月は説明を締めた。


    参加者
    財満・佐佑梨(真紅の徹甲弾・d00004)
    久我・街子(刻思夢想・d00416)
    永瀬・刹那(清楚風武闘派おねーちゃん・d00787)
    珠瀬・九十九(藍色ナインテイル・d02846)
    姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)
    ソフィリア・カーディフ(春風駘蕩・d06295)
    ウォーロック・ホームズ(ロリコンじゃない魔術師探偵・d12006)
    鈴木・昭子(ガラスの森・d17176)

    ■リプレイ

    ●電車内の誘い
     とある休日、全国的な知名度を誇る遊園地・富士急ハイランドが沿線にあるこの電車内は、朝早くから遊園地目当てと思しき家族連れや若い男女が大勢乗っていた。
     そんな乗客の1人で、髪を三つ編みにして、スレンダーな体つきをTシャツとホットパンツで包んだ高校生と思しき少女が、電車が駅を1つ過ぎる度に、
    「ククク……また一駅過ぎたぞ。高みへの入口──富士急ハイランドへまた一つ近づいた……」
     周囲から奇異の目で見られるのも意に介さず、少女がそんな独り言を漏らしていると、
    「――見つけた。次元のきざはしを昇る者」
     淡々とした声が、電車の走る音に乗って聞こえてきて、少女──天城・久美(あまぎ・くみ)が振り向くと、3人の少女が久美に向かって立っていた。
    「我に何か用か? 悪いが我はこれより矮小なる次元より解脱し、更なる高みへ昇る道へと向かう身。下らぬ雑事に関わる時間はない!」
     初対面の相手に向かっていきなり中二病全開な台詞を飛ばしてくる久美に対し、
    「わたし達は、極限なる門を潜らんとする汝を試す者」
     財満・佐佑梨(真紅の徹甲弾・d00004)は真正面から堂々と返す。
    「我らは彼の地を守護する使命を継ぎし者。今こそ一千一夜の約定を果たす刻。彼の地へ至るためには、守護者の試練を乗り越える必要がある」
     最初に声を掛けた鈴木・昭子(ガラスの森・d17176)が、無表情で淡々と台詞を紡ぐ。普通の人間がこんな事を言われたら、イタズラか、相手の正気を疑うかだろうが、久美はクククッと含み笑いを漏らしたかと思うと、「ハハハハハッ!」と大笑いする。
    「柴崎め、面白い場を教えてくれたものだ。まさかこのような守護者がいるとはな!」
    (「うわっ、真正面から乗ってきたわ……」)
     久美の反応に、佐佑梨は『本気で言ってるの!?』と突っ込みたくなるが、作戦がぶち壊しになるのでぐっと我慢する。
    「良かろう、ならばその試練、受けて立とうではないか!」
     そう言って身構える久美だが、「お待ちなさい」と珠瀬・九十九(藍色ナインテイル・d02846)が制する。
    「ここでは存分に戦えない。戦いの舞台『試練の地』へと誘いましょう」
    「試練の地?」
     九十九の言葉に久美が尋ねると、
    「鉄の箱を降りて兎を追え。そこで、あなたの運命が待つ」
     予言を告げるように昭子が言った直後、電車が駅に止まり、開いた出入り口を昭子が指す。
    「ならば共に向かおう。試練の地へ!」
     昭子の手招きに応じて意気揚々と電車を降りる久美の後を他の2人が続こうとすると、
    「ねえママ、あのお姉ちゃん達、何テレビみたいなこと言ってるの?」
    「シッ、指さしちゃいけません!」
     そんな親子らしき会話が耳に入ってくる。
    (「耐えるのよ、わたし! これもあの親子や、富士急ハイランドへ遊びに行く人達のためなんだから!!」)
     握り締めた拳と、食いしばった歯から血が出そうな程に力を込めて、佐佑梨は叫びたい衝動をこらえるのだった──。

    ●不思議の国の久美
     一行が駅の出入り口まで行くと、燕尾服に仮面、白手袋、頭に兎耳を付けた少年が出迎える。
    「狂ったお茶会に案内するよ、平たきレディ! 甘き闘争と苦き逃走、どちらの一杯をご所望かな?」
     ウォーロック・ホームズ(ロリコンじゃない魔術師探偵・d12006)の挑発的な呼び方に、
    (「ちょっと、ここで久美が怒って戦ってきたらまずいわよ!」)
     内心ハラハラする佐佑梨達だったが、
    「これはまた、試練のうちだとしたら随分安い挑発だな。かつての我は周りとの体型の違いに、劣等感と嫉妬を抱いていたが、武の道に目覚めてからは、そのような下らぬ感情、とうに超越している! むしろ武の道を極めるためのこの体であると分かって、感謝さえしている!」
     意外にも久美は笑って流す。
    (「ああなるほど、過去のコンプレックスを、『これも未来の栄光のためだった』と自分の中で解決させる、いかにも中二病がやりそうな事ですわね」)
     呆れる九十九だが、口には出さない。恐らく他の灼滅者達も同じ事を考えているだろう。
    「流石は試練に挑まんとする者。では試練の地へ案内しよう!」
     外連味に満ちた口調でウォーロックはクルリと踵を返して歩き出すと、久美と灼滅者3人も後に続く。
     そうして少し歩いて行くと、建物の間に空き地──と言うか異様な空間が広がっていた。
     地面には大きく魔方陣が描かれ、その周りには幾つもの像が囲むように置かれている。良く見ると仏像や、学校の美術室にありそうな石膏像など、統一性というものがなかったが、
    「ほう、ここが『試練の地』か」
     久美は全くその辺りを気にしていないようだった。
    「来ましたね。彼の地へ挑む者よ」
     電車組とは別に、『試練の地』の用意をしていた永瀬・刹那(清楚風武闘派おねーちゃん・d00787)が、厳かなたたずまいで久美を迎える。
    「ようこそ天城さん、我らが試練の場に。その名前の通り天に至る資格があるか試させてもらいますね」
     ソフィリア・カーディフ(春風駘蕩・d06295)も続いて言うと、隅で一休みしていた久我・街子(刻思夢想・d00416)が久美をチラリと見て、
    「……ああ、なるほど。あなたも、そちら側の人間でしたか……フーン、面白そう」
     そう意味深に呟きながら、近づいてくる。もちろん意味など無く、久美の興味を引くための計算された演技である。そのおかげもあってか、先程から久美のテンションは灼滅者達の目から見ても上がりまくっているようだった。
    「さあ、時は一瞬たりとも止まる事は無い。早く試練とやらに入るぞ!」
     待ちきれない様子の久美を、
    「逸る気持ちは分かりますがお待ち下さい、天城さん」
     やんわりとソフィリアは抑え、
    「あの場所で高みに臨む修行をしたいのであれば、私達に認められて聖痕を得る必要があります。10分以内に私達の4人を倒せたのであれば資格ありと認めましょう。できなければ資格なしと判断します」
     聖地に仕える巫女の如く、ソフィリアは告げると、姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)が持つ、数字が大きく表示されたデジタル時計を指し示す。
    「良かろう、我が力を存分に見せてくれよう!」
     完全にノリノリの様子で、久美が構えを取る。
    「それでは、わたくし達【高天原(ハイランド)の守護者】がお相手いたしましょう。貴女の魂の輝き、存分に示しなさい!」
     セカイもそれに答えながらデジタル時計を見やすい場所に置くと、スレイヤーカードを出して封印を解除し、更にスタイリッシュモードに変身する。それを見て目を輝かせる久美を前に、他の灼滅者達も封印を解除するのだった。

    ●中二病武闘
    「ハァァァァッ!」
     久美が声を上げると、彼女の両手に光り輝く球体が現れる。
    「喰らうがいい、シャイニング・シュート!」
     期待(?)を裏切らず技の名前を叫ぶと、久美は振りかぶって球体を投げ放つ。球体は光を放ちながらメディックのセカイに向かって飛び、セカイはとっさに身を捻って紙一重でかわすが、着弾した背後の地面に大穴が空く。
    「おやおや、強そうなのは名前と見かけだけですか?」
     首筋に浮かぶ冷や汗を隠しつつ、セカイは嘲笑するように言いながら、ソーサルガーダーで守りを固めるクラッシャーのソフィリアへ癒しの矢を放ち、彼女の感覚を強化する。
    「──行きます」
     同時にメディックを務める昭子も体に付けた鈴を小さく鳴らしながら縛霊手で殴りかかり、縛霊撃で久美の体を絡みつける。
    「くっ!」
     左腕に絡む霊力の網を外そうと久美はあがくが、
    「余所見とは余裕ね!」
     その隙を突いてクラッシャーの佐佑梨が間合いを詰め、螺穿槍を繰り出すが、
    「舐めるな!」
     空いている右手を、捻りを加えながら繰り出し、槍と逆の回転で威力を削いで攻撃を捌く。
    「なっ──これが次元のきざはしを昇る者の力……」
     驚愕の様子を見せる佐佑梨に、久美はどうだと言わんばかりに薄い胸を張る。
    「フム、私がローマの風呂屋だったら富士急に浴場型アトラクションの企画書でも閃いてしまう平ったさだね!」
     仮面に手を遣り目を凝らすようにして、ディフェンダーのウォーロックは予言者の瞳を発動させながら、相変わらず挑発するように言うが、
    「達者なのは口だけか?」
     軽く久美に鼻で笑われ、ムゥと悔しげに唸るウォーロックを押しのけて、同じポジションの九十九が龍砕斧を構える。
    「我が名は『蒼穹の守護龍』、珠瀬・九十九なり! いざ尋常に……勝負!!」
     そう名乗りを上げ、自身の影を龍の翼に形作ると、飛翔するように突っ込んで龍翼飛翔で久美の腹を薙ぐ。傷は内蔵には至らないようだったが、血の滴が地面に落ちる。
    「僕は炎を纏いし、む、武蔵坂の戦士! 悠久の時を経て、今貴方に相見えた……これが何を意味するか、わかりますね!?」
     更に同じディフェンダーの街子が名乗りを上げる。最後の言葉の意味は実は街子自身も分かっていなかったが、
    「無論だ。貴様らは我が道に立ち塞がる壁! 全力を以て打ち破ってくれよう!」
     久美は真っ向から返してきたので、街子も「さて、できますかね?」と合わせつつ、レーヴァテインを繰り出すが、炎を宿したマテリアルロッドを久美は素手、それも片手で掴む。流石に驚きを隠せない街子に、久美はニヤリと笑ってみせるが、そこへドス黒い殺気を覆い被さるように襲いかかる。
    「これが邪桜帝に連なる者にしか使えぬ力、闇色桜吹雪(ダークワールド)だ……」
     久美に向かって鏖殺領域を展開させながら、クラッシャーの刹那は言う。本当は恥ずかしくて仕方ないのだが、顔に出ないよう懸命にこらえる。
    「ククク、面白い。だがこいつが先だ!」
     久美はもう片方の手で街子の腕を掴むと、
    「インフェルノ・ストーム!」
     その勢いで街子の体ごと担ぎ、頭から急角度で地面に叩き付ける。額から尋常でない勢いで血を流し、それでも立ち上がろうとする街子に、メディック2人が急いで駆け寄り、セカイがエンジェリックボイス、昭子が祭霊光で治療に掛かる。
    「見たか、我が技の威力を!」
     得意げに言う久美に、
    「まだ倒れていませんよ。調子に乗らない事ですね」
     努めて冷静に言いながら、間合いを詰めて抗雷撃を叩き込む。
    「時計を見てみなさい。どんどん時間が過ぎていくわよ」
     続いて佐佑梨がそう言って、久美の注意が一瞬逸れた隙を狙い黒死斬で足の腱を斬る。更にウォーロックが仮面の眉間から放ったご当地ビームを当てると、出血が止まった街子が立ち上がる。
    「やれやれ、さっきのは僕の見間違いでしたかね?」
     いささか失望したように街子は言うと、再度の龍翼飛翔で久美の肩口を斬る。一連の集中攻撃で片膝が崩れかける久美に、
    「この先屈辱に塗れて生きるのは苦痛でしょう。今ここで楽にしてあげますよ」
     刹那はそう言ってティアーズリッパーを仕掛けるが、
    「舐めるなぁっ!」
     久美は刹那の縛霊手をアッパーカットで弾くと、構えを取って息吹の声を上げる。直後、久美の体から凄まじい量のオーラが溢れ出し、体の傷がみるみる塞がり、左腕に絡んでいた縛霊撃の網も消し飛ぶ。
    「やっと体が温まってきた所だ。さあ、ここからが本番ぞ!!」
     掛かって来いとばかりに久美は叫んだ。

    ●中二病はしぶといんです
     その後も久美と灼滅者達の激戦は続き、灼滅者達の集中攻撃は幾度も回復されるものの着実に久美の体力を削り、対して久美の攻撃は一撃の威力が大きくメディックだけでは治療が追いつかない事態が何度もあり、双方共に時間の経過と共に少なからず消耗していった。
    「どれ、そろそろ1人目を倒すとするか。フラッシュストーム!」
     久美が機関銃のようなパンチの連打を繰り出しながら街子へ向かって突進するが、パンチが街子に届く寸前、けたたましい電子音が鳴り響き、久美の拳が止まる。一拍遅れて、それが電子時計のアラーム音で、約束の10分が過ぎたと皆が気付く。
    「審判の時は過ぎ去りました。その力と魂はお見事ですが、運命の女神は今雌雄を決する事を望んでおりません。いずれ最終聖戦の地にて再び相まみえましょう」
     疲労を隠しながらセカイが優雅に告げると、久美は悔しそうに歯噛みする。
    「くっ……あともう少しだったのに……」
     実際、今の攻撃を受けていたら街子が倒されたかも知れず、そうなれば戦況のバランスが一気に崩れる危険もあったので、灼滅者達は密かに安堵の息を吐く。
    「レディ、あれを見るがいい」
     ウォーロックは先日世界遺産に登録された、日本で最も有名な山を指さす。
    「あの富士の登山道にも観光用のなだらかな道と玄人向けの険しい道があると聞くよ。頂を目指す者として敢えて険しい道を選んだ事は後の糧になるはずさ!」
     だから今引き返すのは恥ではないと言外に匂わせる。
    「だが……」
     まだ納得しきれない様子の久美に、昭子が近寄ってその手を取る。
    「さすがは希代の器。しかし、今は未だ満たされていない。機と力、双方が満ちるまで、我らは待つ。また会おう」
     そう静かに、だがしっかりした口調で昭子が言うと、久美は手を放して灼滅者達をビシッと指さし、
    「今回は貴様らに勝ちを譲ろう。だが次に相まみえる時は、我は更なる高みに昇って、貴様らを打ち破ってみせる。その時までせいぜい牙を研いでおくがいい!」
     そう捨て台詞を残すと、ふらつきかけながらも久美は去って行く。三つ編みを揺らす彼女の後ろ姿が灼滅者達の視界から完全に消えると、
    「行ってくれましたか……」
     流石に疲れ果て、地面にへたり込む九十九。
    「あ~もう、あいつツッコミ所満載なのに、言えないんだもん!」
     比較的元気で、そう不満を言う佐佑梨だが、『結構ノリノリで相手をしていたじゃないか』と他の灼滅者達は言葉を飲み込む。
    「でも、向こうに上手く合わせる事ができて良かったです……」
     そう言って刹那は一冊の本を取り出す。その表紙には手書きで『誰でもできる! 中二病語録』と大きく書いてあった。
    「言動はともかく、実力は本物でしたからね。何時の日か再戦したいです」
     ソフィリアがそう呟くと、周りからも「確かに、あれはね……」と返ってくるが、
    「その時までにもっと私も強くならないと……」
     そうソフィリアは、グッと拳を握り締めるのだった──。

    作者:たかいわ勇樹 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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