●
「ねえ……ここって、出るんでしょ? 怖くないの?」
「怖くなんかないさ」
事実、カズヒロは怖がってなどいなかった。
このあたりで有名な心霊スポット。本物の幽霊が出ると噂になっており、わざわざお化け役を手配せずとも、肝試しとして最適な場所だ。
最近では、あまりにも怖い、怖すぎて笑えない、むしろ泣く──といった評価から、あまり近づく人間はいない。それもまた、好都合だった。
カズヒロが読んだ『ドキドキ☆ 恋愛成就マニュアル』に、確かに書いてあったのだ。意中の彼女を落とすには、緊張感のあるシチュエーションで告白するのが一番だと。
「やっぱり帰ろう。怖いわ」
「僕が守るから、だいじょうぶさ」
繋いだ手を強く握る。
華奢な手がそっと握り返してきて、カズヒロは、いまだと思った。
いましかない。さあ、レッツ、アイラブユー。
「み、ミツエちゃん!」
意を決し、隣へ向き直る。
カズヒロの目が、見開いた。
いつのまにか、隣にいたのはミツエではなく、見ず知らずの女になっていた。
白装束に長い黒髪、切れ長な一重まぶた。
「ナァニ?」
女が、にたりと笑う。
カズヒロの悲鳴が、夜の空にこだました。
●
「肝試しっていうのは、ある程度怖がってなんぼ、みたいなところがあると思うんだけど」
教室に集まった面々の顔を一通り見て、須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は肩をすくめた。
「みんなはどうかな。そういうのって、怖い? 怖くない?」
答えを求めているわけではなかった。それはわかっているのだろう、灼滅者たちも特には答えず、続きを待つ。
「今回の『都市伝説』はね、肝試しをしてるのにぜんぜん怖がってないと、頭からがぶりと食べられちゃうっていうのなんだ。今夜も放っておくと、被害者が出ちゃう」
被害に遭うのは、吊り橋効果を狙って告白したい下田カズヒコと、その友人、高橋ミツエ。共に高校生。食べられてしまうのは、怖がっていない下田カズヒコだけだ。
「場所は、公園として開放されてる、神社の裏にある小さな山だよ。あんまり手入れされてなくて、草とか木とかすごいから、視界はよくないかも」
自然公園といえば聞こえがいいが、要するに人の手が入っていないのだ。奥の祠へ行って帰ってくるのが、定番の肝試しコースらしい。
「目的は、二つ。一つは、日が落ちる前に現場に行って、二人が肝試しをするのを阻止すること。もう一つは、実際に肝試しをして、出てきた『都市伝説』をやっつけること。もちろん、怖がらないでね」
だれか一人でも怖がっていなければ、『都市伝説』は出現するらしい。
「『都市伝説』の見た目は、綺麗な女の人だよ。祠にたどり着くぐらいのタイミングで、いつの間にか音もなく、出てくるみたい。髪の毛をビュンビュン伸ばして攻撃してくるから、気をつけて。髪につかまったら、今度は食べようとしてくるからね」
まりんは口を開いて、かぶりつくまねをした。彼女がやったのではかわいらしさだけが際だって、あまり恐ろしげではない。
「最初のうちは、怖がってなかったひとだけ狙ってくるよ。そこはうまく、フォローしてね。高いジャンプ力と、伸びる髪の毛を駆使して、どこからでも攻撃してくるから」
そこまで説明して、まりんは小さく息をついた。眼鏡のズレを直し、灼滅者たちを見据える。
「向こうは一体だけだし、それほど苦戦はしないと思うけど──でも、油断しないでね。応援してるから!」
小さな拳を握りしめ、にこりと微笑んだ。
参加者 | |
---|---|
アスリィ・ロートン(華麗で優美に情けない・d00988) |
錫崎・流(ただしもんじゃは口から出る・d01416) |
アリス・エアハート(殺戮人形・d02260) |
谷古宇・陽規(高校生魔法使い・d02694) |
中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248) |
松苗・知子(なんちゃってボクサーガール・d04345) |
ヴァーリ・シトゥルス(バケツの底は宇宙の真理・d04731) |
宮良・葉菜(やいまラテン系セニョリータ・d07045) |
●
「お、来たね」
懐中電灯の光が二つ、近づいてくる。
神社から裏山へと通じる道で、谷古宇・陽規(高校生魔法使い・d02694)はターゲットを待ち伏せていた。茂みでは、仲間たちが身を隠し、様子をうかがっている。道の真ん中に堂々と立っているのは、陽規だけだ。
「ねえ、帰ろうよ」
「なにいってんだよ、ここまで来て」
歩いてくるのは、高橋ミツエと、下田カズヒコ。どちらも、陽規に気づく様子はない。
陽規はいま、闇を纏っていた。彼の姿は、一般人から見えることはない。
「だって、本当にお化けが出たらどうす……」
びくりと、ミツエが身を縮こまらせた。陽規が背後に回り込み、そっと肩に触れたのだ。
「ちょ、やめてよ、カズくん!」
過剰なほどに驚くミツエに、陽規は声を出さずに笑う。完全にバレない状況で人を驚かせるというのは、存外に楽しい。
「虫でもいた?」
一方、まったく怖がる素振りのないカズヒコは、やはり強敵だ。しかし、対策は万全だった。
二人が背後に気を取られている隙に、行く手にふらりと少年が現れる。うつろな目をして両手を夜空に掲げた、中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)だ。
「ダメだ……俺はもう、ダメだ……!」
震える声で、銀都はつぶやいた。カズヒコとミツエが、銀都を見る。二人は驚いたようだったが、お化けの類ではないのは一目瞭然だ。
「ほら、お化けじゃないよ」
「でも、様子が……」
ミツエがカズヒコに寄り添った。観客を得て、銀都の演技はヒートアップしていく。
「友情も努力も勝利も、幻想、だったん、だ……!」
なかなかの熱演だ。陽規は笑いを堪えつつ、観察に徹することにする。
銀都は、ポケットからカッターナイフを取り出した。大仰な仕草で構え、腕に向かって振り下ろす。
「どうせ、俺なんか──!」
勢いよく振り下ろしたわりには、ちょびっとだけ、皮膚を切った。
ゆらりと、傷口から火が燃え上がる。
「意外と小さい!」
茂みの中で、松苗・知子(なんちゃってボクサーガール・d04345)が小声で叫ぶ。
「……クリエイトファイアの火力及び明るさは、傷口の大きさに比例」
その隣で、アリス・エアハート(殺戮人形・d02260)が淡々とつぶやいた。
しかしこれでは、火が出たっぽいけど気のせいかもしれない、といった程度だ。ミツエは震えているが、カズヒコは手品かなにかだと思っているのか、怪訝そうに目を細め、じっと見つめている。
「あんまり怖がってないぜー。これ、やべえんじゃねぇの?」
「人体発火で怖がらないとは……! いやもちろん僕はコワクナイケドネ?」
錫崎・流(ただしもんじゃは口から出る・d01416)が身を乗り出し、アスリィ・ロートン(華麗で優美に情けない・d00988)は呻いた。
「こうなったら、ボクが魂鎮めの風を使うさ」
ポニーテールを左右に揺らし、宮良・葉菜(やいまラテン系セニョリータ・d07045)が立ち上がろうとする。
「いえ、まだです」
それを、バケツが──ではなく、バケツをかぶったヴァーリ・シトゥルス(バケツの底は宇宙の真理・d04731)が制した。
彼らの目線の先には、動きを止めた銀都。彼はまだ、諦めてはいない。
「みぃたぁなぁ……」
銀都はぎょろりと二人を睨みつけた。炎を見せつけるように腕を前に出すと、わざと大きな足音をたてて、二人に向かって突進していく。
「みぃぃたぁぁなぁぁー!」
「うわ!」
「いやぁ──!」
さすがに、二人は悲鳴をあげた。
「いまよ、ヴァーリ!」
思いついたように、知子がヴァーリの背中を押す。ヴァーリはいわれるままに、二人の前に躍り出た。
「あ、こんばんは」
「きゃ──!」
「バケツ──!」
効果はてきめんだった。
飛び上がるようにして、逃げていくミツエ。少し遅れて、カズヒコも駆けていく。
「ま、待ってミツエちゃん……! はっ、吊り橋効果! すすす好きだ──!」
ドサクサに紛れた告白が、遠くから響いてきた。
やがて、二人が手にしていた灯りが、完全に見えなくなる。
「大成功!」
銀都が拳を握りしめる。
「さすがなのよ!」
「……なぜなのでしょう」
知子のアツイ視線をバケツに感じながら、ヴァーリは首をかしげた。
●
八人の灼滅者が、うっそうと茂った山の道を、歩いていく。
一般人二人を無事に追い返し、いよいよ肝試しの開始だ。
「いやあ、おもしろいよねえ。実におもしろい文化だと思うよ。だっているはずのないものに怯えるとか、ねえ? 怖いわけがないじゃないか、ねえ?」
霊犬を抱きしめ、アスリィがいう。アイスブルーの霊犬、エレノアは、実に迷惑そうだ。
アスリィはヴァーリとともに、一番後ろを歩いていた。女性と見紛うほどの美しさを持ちつつも、二つの懐中電灯を額にくくりつけた状態では、優美さはどうしても欠けてしまう。
「アスリィさんにはエレノアさんがついています。私にも、ポリが。それに心強い仲間もいっしょですもの、怖くなんかないです」
バケツで表情は隠されていたが、ヴァーリの穏やかな口調からは、恐怖は一切感じられない。
「……周辺環境自体に恐怖を覚えるのはナンセンス。アスリィ、あなたの声の振動、膝の振動は、演技によるものではないと推測」
その前を行きながら、振り返ることもなく、ごく落ち着いた声でアリスがいう。
「お化けなんて、ほんとーにいるはずないのよ! 出てきたら、あたしの右ストレートをお見舞いしちゃうわ!」
先頭を行く知子は拳を構えつつ、周囲を警戒していた。健康的、かつ好戦的だ。
「ま、怖がるのは悪いことじゃねえよなあ。肝試しだぜ、せっかくなんだから、楽しまねえとな!」
「そーだ、そーだ! しかし俺のこれは武者震いだぞーっ、怖がってなんかないぞーっ」
流は己の言葉通り、全力で楽しんでいるようだ。対照的に、銀都は一応は震える様子を見せている。なかなか真に迫っているが、演技だろう。
「こういうのは、楽しんだもん勝ちだよねえ……──わあ!」
「わはーっ!」
陽規が突然後ろを向き、大声を出す。アスリィは文字通り飛び上がった。
「あはは、いい反応!」
満面の笑みだ。どうやら彼も流と同様、この状況を楽しんでいるらしい。
「わざわざ驚かすことないさー。あれ、でもキミ、さっきまで怖がってなかった?」
まだ小学四年生の葉菜もまた、怖がっている様子はない。その葉菜に見上げられ、陽規は肩をすくめた。
「怖がってたよ。でもなんかこう……飽きたっていうか。疲れるよね、怖がるフリって」
「それいっちゃうんだ……」
あまりにもマイウェイだ。
「お、なんか見えてきたぜ」
離れすぎないよう注意しつつも、前へ横へと動き回っていた流が、ふと足を止めた。
目線の先には、小さな祠。この肝試しコースの、折り返し地点だ。
「では……そろそろですね?」
ヴァーリのバケツに緊張が走る。霊犬のポリもまた、警戒するように彼女の足下からそっと離れた。周囲の様子をうかがっているのだろう。
「そうね。みんな、気を引き締めて……わわっ」
注意を呼びかけようとした知子の声が、裏返った。
知子は、隣には銀都がいるものだと思い込んでいた。実際、そのはずだった。
しかし、立っていたのは、見知らぬ長身の女性だ。いかにも日本的な切れ長の目を細め、じっと知子を見つめている。
「怖ガッテナイ、ノガ、七人モ……」
赤く湿った唇が、開いた。そこから漏れ出たのは、囁くような、かすかな声。感情は込められていない。
しかしやがて、女のつややかな黒髪が、ゆっくりとうねり出す。
「バ、カニ……シテェ……!」
叫び、女は跳躍した。灼滅者たち全員が、飛び退くようにしてそこから距離を取る。戦闘開始だ。
「……マスターアーム・オン。タリホー、バンディット。エンゲージ」
アリスはあくまで冷静だった。スレイヤーカードを手に、封印を解除する。小さな体躯には不釣り合いなライフルが、彼女の手に収まった。
「うう、さすがにびっくりしたのよ!」
「なにがなんでも驚かさないと、気がすまないのかな? 悪趣味さ」
知子がファイティングポーズを取り、葉菜がサイキックソードを構える。敵の姿は見えない。木の陰に身を隠し、攻撃の機をうかがっているのだろう。
「作戦通りだね。僕はちゃんと怖がってるふりをしていたから、狙われないはず! ささ、エレノア先生、あとはよろしくお願いします! 応援はワタクシめに任せて、どうぞどうぞ」
アスリィはその場に正座すると、エレノアに向かって低く低く頭を下げた。エレノアはアスリィの後頭部を前足で踏んづけ、彼から離れていく。
「怖がりの演技、お上手です」
「……演技ではないと断言」
大鎌を構えつつヴァーリが感嘆し、アリスは静かに告げた。都市伝説のいった七人とは、おそらくはアスリィ以外の全員のことだろう。
一方で、銀都と流は、それぞれ最前線まで躍り出ていた。
銀都は姿の見えない相手に向かって、正々堂々と名乗りを上げる。
「たとえ天が見逃しても、俺たちが見逃さねぇ! 平和は乱すが正義は守るものっ!中島九十三式・銀都、参上!」
めらめらと燃えていた。その横で、大きめの岩を見つけた流が、いそいそと岩に乗る。
「──見えた、もんじゃの一滴!」
叫び声と同時に、スレイヤーカードが光り輝いた。流自身もまた、光を放つ。
「変身! 鉄板戦士、ムーンモンジャー!」
たちまち、彼の衣装は白いスーツへと切り替わった。目には、大きく鋭角なサングラス。頭には三日月の飾りまでついている。
びしりと取った決めポーズも、完璧だ。
「アツイねー」
燃える男二人を尻目に、陽規はごくマイペースに、スレイヤーカードを手にする。彼の目は、木々のざわめきを捉えていた。都市伝説はまさにいま、攻撃を仕掛けようとしている。
「怖がってるフリするつもりだったけど、お見通しならしょうがないね。──今回は君で、遊んであげるよ」
封印解除とほぼ同時に、長く伸びた髪が襲いかかった。
●
「照明弾の撃ち上げに問題はないと判断。閃光への注意を喚起」
アリスが巨大なライフルを空に向かって構える。ほとんど同時に、照明弾を撃ち上げた。木々を越えた頭上で、光が爆ぜる。
「……降下まで数分、視界確保」
「アリス、ナイス!」
知子は目を閉じ、それから静かに開いた。灰色の瞳に、バベルの鎖を集約させていく。彼女の持つ予言者の瞳は、対象の行動予測を容易にするのだ。
「確実に、狙っていくよ!」
「遠近自在の突き、避けられるかな?」
髪の伸びる方向を頼りに、葉菜がサイキックソードで突きを繰り出した。生み出された風の刃が、女を切り裂こうと向かっていく。
「……小癪ナ!」
照明弾により明るくはなったものの、周囲が草木で埋め尽くされているのは変わらない。この地を熟知しているであろう女は、ぎりぎりで身を翻したようだった。木から木へと、素早く飛び移っていく。
「おっと!」
姿が捉えきれないなか、髪だけが飛んでくる。銀都は右腕をつかまれそうになったが、ひるまず炎を生み出した。刀の形をしたそれを振り上げ、髪の消えていく方向へと跳躍する。
「レーヴァテイン!」
炎が炸裂する。しかし女も、動きを止める気配はない。
「ちょこまかと……!」
「行かせねえよ! 鉄板ダイナミィィック!」
即座に女を追った流が、巨大鉄板を振り下ろす。女は悲鳴を上げたが、致命傷には至らない。
「少しずつかわされてるね。じゃあ、これはどうかな!」
「こちらも、行きます!」
陽規が魔法の矢を放ち、ヴァーリが裁きの光を放つ。二方向からの攻撃に、女の動きが鈍った。それでも木の幹に隠れるようにして、髪を伸ばして攻撃の威力を削いでいく。
そこへすかさず、狙いすました正確な弾が複数飛び込んだ。ガトリングガンを構え、アスリィが不敵に笑う。
「僕もいることを、忘れていないかい?」
唯一本気で怖がっていたアスリィは、女にとって意識の外側にあったのだろう。黒髪が逆立ち、女が吠える。
「アアアアアッ!」
「……妨害任務、遂行」
怒り狂った髪が四方へ伸びるよりも一瞬早く、アリスがバスタービームを放つ。光線は女の腹部に命中し、彼女の体勢を大きく崩した。狙いを定めていたはずの髪が、ことごとく空をつかむ。
「ボディががら空き……よっ!」
その隙にステップを踏み、知子が懐に潜り込んだ。ごく至近距離で、閃光百裂拳を放つ。避けることもできず、女の身体がかすかに浮く。
その足元めがけて、茂みの影から二匹の霊犬が飛び出した。追い打ちをかけるように、ポリとエレノアの斬魔刀が両足に斬りかかる。
「ウ……!」
ぐらりと、女がよろめいた。
「いまだ!」
叫び、銀都が横に跳ぶ。その影から、流が飛び出した。
「月島の力を借りて……今! 必殺の! もんじゃビィィィィィィムッ!」
流の──否、鉄板戦士ムーンモンジャーの口から、白く濁ったどろどろのビームが、飛び出した。
避けることなど、できるはずもなかった。
女の見開いた目が、最後に、もんじゃビームを映し出す。
「ア、アアアアア────!」
悲痛な叫び声が、照らされた山に、響き渡った。
●
再び、暗闇が訪れた。
各々が準備していたライトの灯りは、照明弾の消えた今となってはあまりにも頼りない。しかし、肝試しというのなら、本来はこれで充分だ。
「……任務を完遂。迅速な帰還を推奨」
すぐにライフルをスレイヤーカードへと封印し、アリスが踵を返す。
「楽勝だったな! 無事役目を果たしたわけだし、全力で、帰るぜ!」
「苦戦はしなかったけど、けっこう疲れたのよー」
流と知子も、アリスに続く。
異を唱えたのは、銀都だ。
「おっと、ここは肝試しの仕切り直しだろ! 今度は俺の本当の漢気ってのを、見せてやるぜ!」
「いやいやいや、ここは帰るべきなんじゃないかな。もちろん怖いわけではないけどね。怖くないのだから、肝試しもやぶさかではないのだけどね」
もはや取り繕っても無駄なのだが、アスリィが必死に平静を装う。エレノアはそんな相棒を置いて、さっさと歩き出している。
「長居は禁物さ。速やかに帰るよー」
「まりんさんのいっていた、肝試しは怖がってこそというのは、本当ですね。怖くもないのに、肝試しをしても……」
葉菜とヴァーリも、帰還を推す。
「そんじゃ、まあ、帰るでいいんだぜ……」
銀都は肩を落とした。納得はしたものの、後ろ髪を引かれる思いのようだ。
そんな銀都を眺め、陽規はひとつ、提案をした。
「じゃ、ボクらは帰るけど……銀都とアスリィ、キミらだけで、肝試ししていけば?」
「お?」
銀都の目が、輝きを取り戻す。
「やっちゃう?」
期待の目だ。全員の視線が、アスリィに集中する。
「ゴメンナサイコワイデス、カエリタイデス」
アスリィは、即座に土下座した。
作者:光次朗 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年9月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 17
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