非可換の愛情

    作者:るう

    ●高層マンションの一室
    「世の中には、真実の愛が足りませんよね?」
    「ええ、それはもう疑いようもなく!」
    「是非とも愚民どもに、真実の愛を!」
     印刷所から届いたばかりの『聖典』を前に、女たちが桃色の声を上げる。
     彼女らは皆、ソロモンの悪魔の信奉者。最初は二次元愛から始まった彼女らは、男性同士がくんずほぐれつ絡み合う絵をふんだんに散りばめた『聖典』を手に、今や三次元への蚕食をも目論んでいた。

    「ですが私たちは、残念ながらブースの抽選に落選してしまいました」
    「疑いようもなく陰謀です!」
    「ブースなどなくとも、是非ともこの『聖典』を、配って配って配りまくりましょう!」
     『聖典』を鷲掴み、紙吹雪でも舞わせるかのように窓の外に投げてみる一人の女。他の二人も笑って見ていたが、無闇にばら撒いても価値が落ちるということで、彼女らは一旦部屋の中に戻った。

     今回の物語は、その一冊を、とある灼滅者が拾ったところから始まる……。

    ●武蔵坂学園、教室
    「これは一体、どういう意図で書かれたものだ?」
    「う~んと、男の人と男の人が……?」
     首をかしげる五十里・香(魔弾幕の射手・d04239)に、顔を赤らめて答える須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)。
    「いや、そういう意味ではなくてだな……ストーリーが支離滅裂で、漫画としての体をまるで成していない」
     それでも、読んだ一般人を洗脳し、脳味噌を薔薇色に染め上げる程度のことはできる……この冊子は、そういう代物だ。
    「これを描いたのはソロモンの悪魔の教団で、来月の同人誌即売会でこれを大量にばら撒いて、信者を獲得しようとしてるの!」
     ようやく正気に戻ったまりんの説明によると、教団はサークル出店の許可もないのに冊子をばら撒いて、会場に混乱をもたらそうとしているようだ。その前に彼女らのアジトへと赴き、灼滅するのが今回の任務だ。

    「アジトって言ってもマンションの一室だから、場所さえ知ってれば訪れるのは簡単。だけど、入るにはちょっとした工夫が必要かな?」
     腐女子たちは、男同士のアブナイ関係に飢えている。男性が二人以上で『仲良く』訪ねてくれば、彼女らは喜んで迎え入れてくれるだろう。その隙に、隠れていた他の仲間も一緒に押しかけてしまえばよい。
    「教団員たち三人のうち、ソロモンの悪魔の力を完全に使いこなせるのは、ヤヨイさんっていうリーダーただ一人。けれど、他の二人も決して弱くはないから、注意してね!」
     彼女らは魔法使いと同様のサイキックの他、男性には影業のサイキックを嬉々として行使してくる。その時にちょっとサービスしてやれば、彼女らは興奮して、しばらく戦闘が手につかなくなるかもしれない。
    「男の人には悪夢かもしれないけれど、わざわざサービスなんてしてあげなくても何とかなるとは思うから、みんな、頑張ってね!」
     頑張れ、以外にかける言葉を、まりんはどうしても思いつかない。


    参加者
    江良手・八重華(コープスラダーメイカー・d00337)
    御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)
    板倉・澪(いつもしろちゃんと一緒・d01786)
    黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)
    五十里・香(魔弾幕の射手・d04239)
    御厨・司(モノクロサイリスト・d10390)
    唐都万・蓮爾(亡郷・d16912)
    八重波・智水(刹那享楽破戒僧・d17932)

    ■リプレイ

    ●ステキな訪問者
    「こちらの本を描かれた方は、おいででしょうか?」
    「まるで僕と智水さんのことを描いているのかと思ってしまいました」
     八重波・智水(刹那享楽破戒僧・d17932)と唐都万・蓮爾(亡郷・d16912)の突然の訪問に、ドアチェーンの向こうのぱっとしない女は大いに色めき立った。
    「もしかして、読んで下さったんですか!」
    「ええ。切なくて、けれどあたたかな物語ですね……ねえ智水さん」
    「本当に、素敵な物語ですね。真実の愛の姿を描いて……」

     これ以上は我慢ならない、という風に求める智水の視線を受けて、困ったような表情で女に視線を投げ掛ける蓮爾。
    「ああ、駄目ですよ、こんな所で……彼女が見ています」
     本当は女である蓮爾の、控えめながらも意志の籠った表情は、彼女の男役としての役者人生ゆえか、本物の男がする以上に魅力に溢れて見えた。
    「大丈夫、彼女なら、わかってくれますよ」
     微笑む智水に、受け止めるようにゆっくりと頷く蓮爾。次第に距離を縮めてゆく二人の唇……それが今にも重なろうとした、その瞬間!

    「つ、続きは是非とも部屋の中でお願いします! ヤヨイさーん! 是非とも可及的速やかに布団の用意をー!」
     ドアチェーンを外す手間も惜しんで強引にぶち開けられた扉の中に、二人はするりと滑り込んだ。

    ●時を待つ狩人たち
     時は、少しだけ遡る。

    (「あの本の通りになれば、この国は、近いうちに滅びるだろうな」)
     物陰に張り付いて二人の様子を伺いながら、江良手・八重華(コープスラダーメイカー・d00337)は、誰にともなく一人ごちた。滅亡要因は恐らく、出生率の低下。
     もっとも、そんな彼の仲間たちの中にも、出生率に貢献することのないカップルを作っている者はいるのだが。
     離れたところで壁にもたれながら、御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)は同性の恋人を想う。
    (「『仲良く』、ですか……彼に拗ねられない程度に、出来る範囲でやらせていただきましょう」)
     この場に彼と共に来てさえいれば、二人で幾らでも惚気ることはできたかもしれないが、今日のパートナーは五十里・香(魔弾幕の射手・d04239)だ。メイド仕込みのプラトニック・ラブを語るくらいなら、彼も許してくれるだろう。

    (「なるほど……大体は学習した、してしまった……」)
     件の『聖典』をぺらんと閉じて、香はため息をついた。さらしを巻いた上から着込んだ男子制服。香自身、男勝りな自覚はあるが……どうしてこうなった。
    「次の参考資料です」
     薄い本がみっちり詰まったバッグの中から造作もなく二冊を取り出して、一冊を香に渡す黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)。香の顔が一瞬引きつったような気はするが、別段気にしない。
     もう一冊は、御厨・司(モノクロサイリスト・d10390)の元へ……けれど司は腕組みしたまま、何やら携帯の準備を始めた璃羽を一瞥してから目を伏せる。
    「俺は、理解しようとは微塵も思わんのでな」
     そういう趣味があることを、司は否定はしない。けれど、それを押し付けられるとなれば、話は別だ。
    「必要ならば俺もやる……が、今はそこまでは必要ないだろう」
    「カッコいいのに、もったいないのです~♪ ボクだとたぶん、お姉さんたちの御眼鏡にかなわないのです……」
     しょんぼりとナノナノの『しろ』を抱きかかえる板倉・澪(いつもしろちゃんと一緒・d01786)。そんな澪の頭を、しろは柔軟な体をめ一杯伸ばして撫でようとしてあげた……かなり、距離が足りないけど。

    「……無駄話はそこまで。扉が開いたぜ」
     言った時には既に、八重華は智水と蓮爾を追い始めていた。他の仲間たちも、時を置かずにそれに続く……。

    ●愛をわが手に!
    「なんか、関係なさそうな人たちまで来……」
    「清澄なる水、流るるが如く」
     出迎えた女が言い終えるよりも早く、智水の雷撃が淀みだだ漏れな魂の持ち主を撃つ。すかさず舞いを紡ぎ上げる蓮爾の所作から、もう一人の男装の麗人『ゐづみ』と影が生まれ、慌てて奥の部屋まで逃げ込んだ女を苛み、縛り上げる!
    「ごめんなさいなのです~♪ でもお姉さんたちは、ボクの宿敵なのです……わわっ!」
     すてーん! 玄関の僅かな段差に、盛大に躓く澪。ほら、余所見しながら駆け込んだりするから……。
     てへっ♪ と舌を出す澪の手を引いて立ち上がらせ、璃羽は奥の部屋雪崩れ込む仲間たちを追う。
    「璃羽お姉さん、ありがとうです~♪ ところでずっと疑問だったのですけど、この本、一体どこが面白いのです~?」
     澪の純真な問いに腐女子どもが一瞬にして凍りついたのは、澪以外には何となくここからでもわかった。

     キッチンの脇を通りリビングに現れた灼滅者たちの姿を見て、ふくよかなもう一人の女が金切り声を上げる。
    「貴方がたは、疑いようもなく敵ですね! もしや……私たちのカップリングに異を唱えるサークルの手の者!?」
    「さあてね、答えてやる義理はないな! 行くぞ裕也、わたし達の連携というものを見せてやろう!」
     裕也の両肩を捕まえて、笑顔でヤヨイの元へと突き飛ばす香。突き飛ばされながらも裕也の振り回すチェーンソー剣が、ヤヨイの肩口を辛うじて捉える!
    「何という鬼畜眼鏡攻め……! しかしあなたの顔立ちは、少々女性的すぎる。一度、受けになってみてはいかが?」
     ヤヨイの言葉に応じるように、部屋奥の祭壇(例の本が満載されている)の下から伸びる影の触手。それが撫でるように、太腿へと纏わりつく……わが身を挺して香の前に立ち塞がった、裕也のそれへと。
    「あなたが傷つくのは、見たくありません……」
     ぶぴゅるぴゅるぴゅる。
     蓮爾の影に縛られたままの女から、赤い飛沫が噴出する。何事もなかったかのように、優雅に避けるゐづみ。
    「貴女ともあろう方が、受けと攻めを取り違えるなんて! そちらのショタが攻めに決まっているでしょう?」
    「も、申し訳ありません、つい……。お詫びの印として、ヤヨイさんには是非とも、あの二人の真実の愛を捧げさせて下さい! ……さあ、素敵な絡み愛を!」
     絡みつかれているのは一体どっちだ、などとツッコミをしている余裕はなかった。鼻から血を垂らしながら嬌声を上げる女に、八重華と司の背筋に同時に、冷たいものが流れ落ちる。
    「俺に、そういう趣味はない」
    「俺まで巻き込むようなら、容赦はしない」
     共に抑揚のない声で、揃って拒否する八重華と司。
    「まったく二人とも、仲がいいんだから……」
    「……狙い撃つ」
     茶化そうとにやけた女の眉間に、八重華から放たれた一条の光線が突き刺さった。
    「……後は、任せた」
     そして、司と背中合わせに現れた、長い黒髪の少女。司の、失った恋人の面影を持った少女が女を覗き込むと……女は、小さく悲鳴を上げて気を失った。

    「真実の愛を知ろうとしないなんて、疑いようもなく可哀想な人たちですね! 何故なら……」
     ふくよかな女が、怪しげな喘ぎを上げる。急激に凍てつく大気の中で、彼女は勝ち誇ったように哄笑した。
    「さあ、これでどう? 真実の愛の炎なしで、この冷気に耐えられるものなら耐えてみなさい! もちろん疑いようもなく、あざといロリっ子どもには生存権はありません!」
    「ボクは男の子です~!」
     キッチンへの扉を閉ざして冷気をやり過ごした澪が、少しだけ扉を開けて覗きながら抗議する。あざとい、という単語の意味は悪口だとしかわからなかったが、自分が女の子扱いされた事くらいはわかる。不満の感情が魔法の形を取って扉の隙間から放たれるのに合わせ、しろも怒りの風を起こす!
     吹き荒れる冷気が収まった頃、璃羽は頬を膨らます澪を押しのけてリビングに戻ると、無表情に囁いた。
    「真実の愛の炎というのは、こんな妄想のことですか?」
     璃羽の手にした同人誌の中から、黒い影が伸びてゆく。女を包み込んだ影が映し出すシーンは、到底普通の小学生では到底知りえないものばかり!
    「腐女子以前にヘンタイですね。こういうのが大好きなんですか?」
     女は言葉の代わりに顔を上気させ、二筋の赤い飛跡でそれに答えた。

    「俺も、アンタに礼をしないとな」
     影に包まれて悶絶する女に、八重華は怒りも蔑みもなく、ただ淡々と黒き銃口を向ける。銃床に刻まれた椿の花が、鈍く光る。
    「貴様の血を以って、傷を癒す」
     紅き炎が銃口より噴き出し、女の肌を刺す。女から邪悪な力が抜け出てゆくのに比例するように、冷え切った八重華の肌が温かみを取り戻し始めていた。
    「何てことを……私の同志たちが……! さあ、真実の愛の力があれば、貴女は負けないはず!」
    「一つだけ、言っておこう。性別の壁は、余程強くなければ乗り越えられない。漫画で愛の力を伝えたければ、過程も巧く描くことだな」
     そんな八重華の忠告を聞こうともせず、ヤヨイの影は、今度は智水を絡め取る。下半身から上半身へと、ねとつく影に溺れるがごとく覆われてゆく智水。
     助けを求め、すがるように伸びる錫杖……その『求不得苦』の銘の通りになるのならば、彼に救いがもたらさされう事は決してなかっただろう……しかし!
    「たとえ神仏が貴方を見捨てても、私は貴方を決して見捨てない!」
     恐怖に屈しそうになる智水の腰を、優しく支える蓮爾の腕。神秘的な作法に則った抱擁が智水を鼓舞し、どこからともなく飛来した輝く札がその体を癒す。
     見つめ合う、瞳と瞳。今この瞬間、二人には、互いの姿しか映っていない。
     互いの顔が徐々に近づき……瞼を閉じ……智水の唇の奏でる、愛の唄……。

    「ぐっはぁ!?」
     二人目の女、愛の力で復活どころか、出血多量により戦闘不能。

    ●盲目の愛情
    「私のサークルメンバー達を倒すとは、中々やりますね……しかし!」
     ヤヨイが『聖典』に手を伸ばすよりも早く、司の手が乱暴にそれを掴み取った。
    「これが入り用か? ……だったら、切り刻んでやればいいか?」
    「BLの価値がわからないなんて、貴方の目はとんだ節穴ですね! 貴方も今しがた見たでしょう、あの二人の生み出した、愛の奇跡を!」
    「それは、自分の節穴をどうにかしてから言う事だな……お前には本当にあれが、愛が傷を癒したように見えたのか?」
     司の指が、一揃えの護符を広げる。智水の周囲を回っていた札が飛来すると、それは輝きを失いながらその中に納まった。
     これ以上の説明をしてやるのも馬鹿馬鹿しい。司は無言で、仲間たちへと道を譲る。

    「まやかしだわ! 真実の愛は、ちゃんとあるのです!」
    「裕也!」
     怒りを孕んだどす黒い力に蝕まれ、裕也がその場に片膝をつく。
    「貴様、よくも裕也をやってくれたな……!」
     次の瞬間! ヤヨイの体は軽々と、部屋の中を舞っていた。ヤヨイの、裕也が攻め、香が受けるべきであるという信念が、香の真意を読み違えさせていたのかもしれない。
    「大丈夫か!?」
    「もちろんです……愛する人がいる限り、僕は決して斃れはしません。それが、愛の力というものですから」
     ヤヨイは、裕也が香を攻めようとしない理由を知らない。
     儚げに笑む裕也の言葉が、彼の真の恋人に向けたものだと知っていれば、ヤヨイの判断も少しは変わっただろうか?

     けれどヤヨイの苛立ちは、彼女の言う正しい『カップリング』を見せない裕也へと向き続ける。
    「あらゆるカップリングを許容できずに、何がヲタクか」
     淡々とした言葉と共に、璃羽の影がヤヨイの影を抑え込み、逆に蝕んで行く……仲間がされたのと同じように。
    「このままでは、どうやら違うジャンルに突入しそうです」
    「真実の愛の伝道師たるこの私を、汚らわしき存在と同等に貶めるとは……!」
     璃羽の挑発にわなわなと震え、歯軋りするヤヨイ。けれど、ある事に気付いた途端、彼女の感情はすっと穏やかなものへと変わっていった。
    「貴女たちは、穢れています! ここは、もっと幼少期から『教育』をするのが良さそうですね!」
     狂喜と共に、ヤヨイの操る影は一気に伸びる! 無防備に立ち尽くす、澪の元へ……。
    「や……エッチです……」
     影に服を奪われそうになり、顔を赤くする澪の脳裏に、畳み掛けるように捻じ込まれる半裸の男の映像!
    「……何でお兄さんは、服を着てないのです~?」
     きょとんとする澪。冷や汗を垂らすヤヨイ。
    「くっ! 幼少過ぎても無意味でしたか……!」
     そんなこんなでいい感じに収拾がつかなくなってきた頃。今までノリノリの主人を邪魔せぬよう控え目に戦っていた智水のキャリバー『紅鏡』が一挙に飛び跳ねると、ヤヨイを半ば投げやりに跳ね飛ばして止めを刺した。

    ●結局どうしようこの腐女子ども
    「時には、こういう演技も楽しいものですね」
     紅色のボディに燻るような雰囲気を漂わせる紅鏡をぽんと叩き、智水は乱れかけていた服装を整えた。
    「男色は、舞台でも良き題材となります。今日は良い経験となりました」
     もっともそう答える蓮爾にも、実は同性の恋人がいるのだが。帰ったら、今日のことが浮気ではないと示すためにも、大いに甘やかしてやらないと。
    「それにしても、いろいろな意味で凄い戦いでしたね……彼女的には、僕は攻めでしたか」
    「てっきり、わたしが攻めだとばかり思っていたのだが。まあ、彼女たちも死なせずに済んでよかった」
     自らの恋人を想い、何やら企んでいるかのように悪戯っぽく笑う裕也に、呆れたように香が答える。

    「それより、他二人はともかく、リーダーはどうする?」
    「この本も、どうするのです~?」
     八重華の言葉を受けて、澪が『聖典』に触れようとしたその瞬間!
    「それに触れちゃダメぇ!」
     突如飛び起きたヤヨイの瞳に、再び燃え上がる憎悪……が。
    「アンタの『聖典』は負けたんだ。もう一度やり直せ」
    「ぐっ……」
     八重華の指摘に言葉を詰まらせたヤヨイに近づいて、璃羽は戦闘中もこっそり弄っていた携帯を見せる。
    「もしお友達になれたら、幾らでも先ほどの場面の動画をお譲りできるのですが」
    「「は?」」
     素っ頓狂な声を上げたのはヤヨイだけでなく、他の灼滅者たちも同様。
    「まさか、俺は出てこないだろうな」
     司の疑念に、璃羽はさっと何かを操作すると、何事もなかったかのように言い放つ。
    「動画の一部を紛失したので、代わりに愛憎&秘蔵コレクションを見せてあげても構いませんけれど……」
     コレクション=例のバッグ。
     もっとも彼女にとってのBLは、学術書から同人誌まで、ありとあらゆる書物を読み漁る中で出会った一ジャンルに過ぎないのだけど。
    「……師匠!」

    「ところでそれは、わたしも撮影されてるのか……?」
     その答えを聞く前から、香はわかっていた。そして自分が、消してくれと頼むタイミングを逃したことも。
     直後、一本の箒に乗った人物が破れかぶれでマンションの窓から飛び出してきたことを、『バベルの鎖』に囚われた人々は気にも留めなかった。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月25日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 7
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