ヤツザキ人形

    作者:かなぶん

     ねえ、こんな遊び知ってる?
     友達の友達から聞いた話よ。
     「ヤツザキ人形」っていう遊びがあるの。
     これはね、絶対にやっちゃいけない遊びなのよ。
     近くに廃線になった踏切があるでしょ?
     この遊びはそこでするの。
     まず紙人形を一つ用意して、踏切でそれを八人で囲むようにして持つの。そうしたら、それを全員で一斉に引き千切るのよ。文字通り八つ裂きにするわけ、ビリビリっとね。
     すると、「裂け女」っていう化け物が現れて、遊びをした人間を引き裂きに来るのよ。
     紙人形を千切ったのと同じようにね。
     裂け女は全身がビリビリに裂けた姿をしていてね、出会った人間を自分と同じ姿にしようとするの。だからビリビリ裂ける音に寄って来るのかもね。
     怖い? そんなのただの噂だって?
     それじゃあ試してみよっか。
     大丈夫だよ、どうせただの遊びだもの。
     
    「ねえ聞いた? あの踏切でバラバラ死体がいっぱい見つかったんだって」
    「辺り一面血だらけで、誰の体かもわからない状態だって」
    「まだ足と手が何本かそろってないってさ」
    「もしかして、あの遊びをやったのかな……」
     
    「これが私の聞いた噂よ。全く、いい趣味した遊びもあったものね」
     皮肉げに目を細め、君津・シズク(積木崩し・d11222)は深い溜め息を吐き出す。
     彼女はとある町で噂される、やってはいけない遊びの存在を突き止めた。
    「詳しくは私が」
     依頼の説明を五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)が引き継ぐ。
    「その町では学生達の間で「ヤツザキ人形」という遊びが噂されています」
     噂は人々の恐怖を集め、その噂に出てくる「裂け女」という化け物を都市伝説として実体化させてしまったらしい。
    「残念ですが、すでに被害者も出てしまいました」
    「放っておけば、また誰かがこの遊びをやって殺されるかもしれないわ」
     そうなる前に都市伝説を倒さなくてはいけないと、二人は言った。
    「裂け女の出現条件は噂の通りです。一つの紙人形を八人で一斉に引きちぎること。皆さんには事件のあった踏切で、やってはいけないとされるこの遊びを、あえてやっていただきます」
     姫子は地図を広げ、町の一点に印を書き込んだ。
    「現場は町の外れにある廃線になった踏切です」
     その場所で噂の遊びを行えば、裂け女が現れる。
     彼女は鋭い爪と怪力で獲物の手足を「四ツ裂き」にして動きを封じ、それでも足りなければ更なる「八ツ裂き」行為で傷口を広げる。自分の体が壊れれば傷口を「くっつける」ことで回復もするという。
     裂け女は皮膚や四肢をビリビリに千切られた姿をしていて、遊びを行った人間達の体を引き裂いて殺す。自分の姿と同じように。
    「犠牲になった子達も、そんな風に殺されたってわけね」
     シズクの呟きに頷き、姫子は説明を終える。
    「これ以上、何も知らない人がこの遊びで殺される前に、事件を終わらせてください」
    「殺された子達の為にも、ね。こんな死に方、惨すぎるもの」


    参加者
    東雲・軍(まっさらな空・d01182)
    苑田・歌菜(人生芸無・d02293)
    天樹・飛鳥(Ash To Ash・d05417)
    栗橋・綾奈(退魔拳士・d05751)
    闇縫・椿(狂う歯車・d06320)
    笹山・蓮月(微笑の死神・d07324)
    シュテラ・クリューガー(星の淵源・d09156)
    君津・シズク(積木崩し・d11222)

    ■リプレイ

    ●踏切の向こうに
     廃線となって、役目を終えて死んだ踏切は不気味なほど物静かだった。もう傍らの信号機が警報を鳴らすこともない。
     線路に茂った伸び放題の草が赤く見えるのは夕日のせいだろうか。
     『ヤツザキ人形』の噂に出てくる踏切に訪れた灼滅者達。
     夏にも関わらず、そこには夜を溶かしたような黒衣の女が立っていた。
    「人はなぜ「してはいけない」というものに対し興味を抑えきれないのか」
     呟いた闇縫・椿(狂う歯車・d06320)は「まぁそれはどうだっていい」と言い捨てる。
     彼女の興味は敵との戦いにあった。
    「ヤツザキ人形……そんな物騒な遊びがあるとはね。正直、聞くだけでゾッとするよ……」
     背筋を走る寒気に天樹・飛鳥(Ash To Ash・d05417)は小さく震える。
    「既に被害者も出ているし、放って置けないね」
    「そうね」
     頷く君津・シズク(積木崩し・d11222)の目は厳しい。
    「口裂け女ならぬ全身裂け女か……何にせよ質が悪いわ」
    「子どもって知らず知らず残酷な遊びしたりするよな」
     肩をすくめる東雲・軍(まっさらな空・d01182)。
     栗橋・綾奈(退魔拳士・d05751)は噂の内容を反芻する。
    「怪談絡みの遊びはいくつか聞いたことがあります。その手の遊びは決まって、軽い気持ちで遊ぶのはダメと言われていますね」
     『絶対にやってはいけない』
     その言葉にはそれなりの理由や戒めがあるものだ。
     もしも興味本位でその遊びをすれば……。
     事件のあった現場に、苑田・歌菜(人生芸無・d02293)は視線を巡らせる。
    「たわいない子供の遊びは、遊びで終わるからいいのであって、ホントに起きるのはちょっとね。人死にが出るなら尚更だわ」
     これ以上、遊びが現実となって無垢な者を傷付ける事のないように。
    「さくっと去ってもらいましょ」
    「ああ、踏切という名の境界を越えさせるつもりはない。さっさと退場して貰おうか」
     軍の殺気が踏切の周囲を満たし、人目を遠ざける。
     そして灼滅者達は遊びの準備を進めた。
     シズクが用意してきた紙人形を取り出す。
     なんていうことはない、人の形をした一枚の紙切れだ。
     これを八人で引き裂けば、都市伝説が出現する。
     準備が出来たことを確認し、歌菜が言う。
    「さぁ、裂け女さんとやらをお迎えしましょ?」
     恐る恐る紙人形を掴む綾奈。
    「この手の遊びをしたことはないけれど……緊張しますね」
     これを引き裂いた瞬間に、裂け女が自分達を殺しに来る。
     はじめはただの遊びだったはずなのに。
     紙人形を掴んで笹山・蓮月(微笑の死神・d07324)は考える。
    「この都市伝説にも、きっと元となる事件があったのでしょうね」
     誰が言い出した噂かは分からない。
     しかし自分達にできることは分かっている。
    「どうか……みなさんが、安らかな眠りにつけますよう。悲劇が悲劇を呼ぶ……そんな、悲しい連鎖はおしまいにしましょう」
     灼滅者達が紙人形を囲むように掴む。
    「実を言うとさ、子供達を守ろうなんて気はわたしにはないんだ。でも都市伝説を放っておく気もない」
     シュテラ・クリューガー(星の淵源・d09156)は躊躇いなく紙人形を掴んだ。
     彼女なりに割り切っているのかもしれない。
    「いい? ……ちゃんと掴んだ?」
     シズクの問いに全員が頷き、シュテラが合図を送る。
    「それじゃあ、始めようか。せーのっ!」
     ビリビリッ!
     彼等は一斉に紙人形を引き千切った。
     静かな踏切に紙を引き裂く音がやけに大きく響き渡る。
     紙人形が八つ裂きに破れて八枚の紙片にバラバラになる。
     一瞬の沈黙の後、ゾクリとした感触。途端にその場の空気が変わった。
     綾奈は素早く後方へと飛び退る。
     彼女の視線の先、線路を挟んだ向こう側に一人の女が立っていた。
     振り乱した髪、左肩から胸まで袈裟がけに裂けた大きな傷、口も裂けてだらりと顎が垂れている。それ以外にも所々の皮膚が裂けた姿は、間違いない、裂け女だ。

    ●死因は八つ裂き
     目が会った。
     濁った瞳で裂け女が睨む。
     振り乱した前髪の奥、暗い、血走った、見開かれた、大きな、目が、じっと睨んでいた。
     恨めしげに、或いは道連れを求めるように、睨む彼女と対峙したシュテラと綾奈は、
    「醜いな。そんな姿で世の中に生まれてしまうなんて、哀れな話さ」
    「これが裂け女……こんなのを見てしまったら、確かに怪談です」
     ギョロリと眼球を巡らせる都市伝説。
     二人は腕に縛霊手を纏う。
    「ま、わたしらの手できっちり終わらせてやろう、安心しな」
    「怪談は怪談で終わらせなくちゃ!」
    「犠牲になった子達には一秒ぐらいなら同情するがね」
     椿は白い菊の花を握りつぶして線路に花びらを捨てる。
     次の瞬間には彼女は裂け女しか見ていなかった。
     椿は鋭い眼差しで殲術道具を構える。
    「また戦う前から満身創痍って感じじゃない。やり難いわ……」
     シズクは嘆息し思考を振り払う。
    「だけど見た目に騙されちゃいけないのよね」
     これは戦う力を持った都市伝説。
     それにもう犠牲者も出てしまっている。その数は、
    「最低でも8人。繰り返される度にもう8人! だから私も全力で戦うわ。手加減はなし。今日で終わりよ」
     シズクは巨大はハンマー「積木崩し」を、蓮月は咎人の大鎌を握る。
    「我らに勝利を……」
     不気味に嗤いながら襲い掛かる「裂け女」を迎え撃った。
     裂け女が綾奈へと手を伸ばす。
    「やらせはしないよ!」
     彼女を庇って飛鳥が、その手に掴まれた。
     鋭い爪が肉に食い込み、左右に引っぱられる。
     遊びで引き裂かれたあの紙人形と同じように。
    「ぐっ……あぅ……っ!」
     飛鳥が苦痛に身をよじる。
     彼女の肉が裂けそうになったとき、蓮月がジャッジメントレイを放った。
    「護りの光を……」
    「ッ……!?」
     裁きの光から身を守ろうとして裂け女は手を放す。
     同時に、解放された飛鳥の痛みを蓮月の光が和らげた。
    「ありがとう。相手は1体とは言え、油断は出来ないか……」
    「引き裂くだなんて随分まどろっこしい攻撃ね。相手を殺すまでに何回引き裂けばいいの? それより全身まとめて砕いちゃえばいいのよ……こうやってッ!」
     怯んだ都市伝説の懐に飛び込み、シズクは強く地面を踏みしめる。
     大振りのハンマーが女の腹を打った。
     吹き飛ぶ裂け女を軍の槍が貫く。
     裂け女は自身を穿つ槍を掴みニタァと嗤った。
     捕まる。直観で危険を察知した軍は咄嗟に身を引く。
     追いすがる裂け女を歌菜の弾丸が撃った。途端に都市伝説の動きがぎくしゃくと狂いだす。
     忌々しげに顔を歪める裂け女。
     すかさず、飛鳥と綾奈が縛霊手の拳を構える。
    「目標を捕縛する!」
     振り抜いた二人の拳が当たる瞬間、網状の霊気が都市伝説の裂けた四肢を捕縛した。
     動きを止めれば敵は格好の的だ。
     裂傷だらけの女にシュテラは異形化した拳を叩きこんだ。
     女は軽々と紙のように吹き飛ぶが、爪を地面に突き立てて踏み止まる。
     噂のまま殺意を向ける都市伝説にシュテラは、口の端を釣り上げた。
    「噂が人を殺すとは世も末だなあ」
     高速で伸びる影でのティアーズリッパーが、死角から裂け女の裂傷に食い込む。
     裂け女は狂ったように声を上げた。
     反撃の爪が椿の四肢を引き裂く。
     殺戮と鮮血に、椿は静かな笑みを浮かべる。
    「裂け女……ねぇ。バラすのは俺も得意だ。どっちが八つ裂きになるか、楽しもうか。まぁただで八つ裂きになってやるつもりはないがな?」
     戦場に戦いの音が響き渡る。
     縋り付くように裂け女は軍を捕まえると、四ツ裂きにして地面に放り投げた。
     彼はもつれそうな足で立ち上がる。
     激痛に軍は足を止めそうになった。
     しかし身体を雷が駆け巡り、風が背中を押す。
     戦場の踏切を清らかな風が吹き抜けていく。
     蓮月の操る風が仲間たちの傷を浄化していった。
     今度は八ツ裂きにしようと迫る裂け女から、軍を庇い、シュテラは至近距離から制約の弾丸を撃ち込む。
     椿のビハインドが立ちふさがり、椿と軍を守った。
     裂け女はビハインドを引き裂こうと手を伸ばすが、
    「よそ見はいけませんよ」
     踏み出した裂け女の動きが封じられる。
     女はすでに綾奈の除霊結界の中に入り込んでいた。
     歌菜の影が蠢く。
    「裂け女さん、動かないでくれるかしら? 大人しくしてて、ね……!」
     伸びる影が裂け女の腕を絡め取る。
     縛り付ける影が女をその場に縫い止めた。

    ●地を這う女
     踏切の戦場には絶えず風が吹き続けた。
     風は灼滅者達を包み浄化をもたらす。
     体を引き裂かれようと前衛は立ち止まらない。
     彼らが戦いに集中できるように蓮月は傷を癒し続けた。
    「皆さんの背中は私が守ります」
     灼滅者は裂け女の動きを封じることを重視する。
     まともに動くこともままならず、裂け女は無造作に腕を振り回した。
    「まだ妨害が足りないみたいね、退屈しないわ」
     さらに彼女を妨害するために歌菜が走る。
    「苑田さん!」
     綾奈の声が響いた。
     直後、デタラメに振り回された腕が歌菜の眼前に迫る。
     風切音がかすめる。
     身を屈めた歌菜の頭上で、裂け女の手が虚しく空を掴んだ。
     裂け女は綾奈を睨み、殺意を彼女へと向ける。
     彼女は都市伝説から振り下ろされる右手を捌き、掴みかかる左手をいなし、その身をひるがえした。
     裂け女の視界から綾奈の姿が消える。
     がら空きの背後に回り込んだ綾奈が縛霊撃を叩きこんだ。
     バランスを崩して地面に倒れ伏す裂け女。
     霊力が女を縛り、拘束する。
     それでも彼女はずるずると地を這いながら、ゆっくりと迫ってきた。
    「往生際が悪いな……いいから大人しくしてろ!」
     シュテラの口調が変わる。
     彼女の影がさらに都市伝説を縛り上げる。
     拘束から逃れようと裂け女が暴れると、彼女は不敵に笑んだ。
    「しつけぇなぁ」
    「蓮月、回復は頼んだ。皆巻き込まれるなよ」
     叫ぶ軍。彼の妖槍「群小蝶」が炎を宿して燃え上がる。
    「……灰にしてやる」
     軍のレ―ヴァテインが裂け女を燃え盛る炎に包みこんだ。
     全身を焦がす炎熱に裂け女が悶える。
     炎に包まれながらも、女はのろのろと迫ってきた。
     更に椿と彼女のビハインドが、フォースブレイクと霊撃を叩きこみ、体力を削る。
    「ああ、ああああ……!」
     ガリガリ、ガリ……ガリガリガリガリガリ。
     裂け女はコンクリートの地面を掻きむしる。
     炎が皮膚を焦がし、弾丸が裂傷を抉ろうと、拘束が身体を苛み、刃が肉を削ぎ落とそうと、裂け女は止まることなく這いずってくる。
     金切声を上げて、女が手を伸ばす。
     仲間を庇うシズクの体を裂け女が八ツ裂きにする。
     皮膚を千切られ、真っ赤な血が戦場に飛び散った。
     シズクの表情が苦痛に歪む。
    「全く……引き裂かれる痛みを知っているなら、どうして他人を同じにしてやろうだなんてッ!」
     言葉をかけても、裂け女は大きな裂傷の刻まれた顔で不気味に嗤うだけ。
     さらにシズクを引き裂こうとした彼女の腕を、蓮月のシールドリングが阻んだ。
     周囲を舞う光輪が盾になる。
     睨む裂け女の殺意を、蓮月は穏やかな笑みで受け止める。
    「ぃぎいいああああああ!」
     裂け女が拘束を引き千切って灼滅者に飛びかかる。
     敵の動きを見極めて、綾奈は裂け女の背後や側面に回り込み、翻弄する。
     右往左往する都市伝説に接近し、歌菜は目を見開いた。
     予言者の瞳が裂け女の動きを見せる。
     裂け女の爪が掴みかかる瞬間、歌菜は不意に足を止めた。
     タイミングを狂わされた敵の攻撃が虚空を切る。
    「私は私にできることを!」
     虚を突いた歌菜は、曇りのない所作で刀を振り下ろした。
     斬! 地面に裂け女の腕が落ちた。
    「ぐぎいゃあああああああああああああああああああああああああ」
     腕を切断され、裂け女が肩を押さえて絶叫する。
    「ああ……ああ、あ…………」
     呻きながら裂け女は切り落とされた腕を拾い上げてくっつけようとする。
    「させるかよ!」
     シュテラとシズクが彼女の懐に滑り込んだ。
     二人は同時に拳を握る。
     鬼神変と鋼鉄拳が裂け女の傷口と結合部を粉砕した。
     傷だらけの体を引きずって椿は畳み掛ける。
    「Schmerz……痛みを感じるか? 楽しいだろ」
     問いかけ、酷薄な笑みで椿は戦斧を彼女の裂傷に食い込ませた。
     振り下ろされた斬撃が傷口を深々と抉る。
     光刀【迅牙】を逆手に構え飛鳥は、
    「一閃するっ!」
     ダメ押しの一撃。閃光が裂け女を両断した。
     切り裂かれた裂け女は、まるで紙切れが千切れるようにして空中へと掻き消えていった。

    ●遊びの終わり
     都市伝説の消滅を見届けると、飛鳥は仲間の無事を確認し、緊張の糸をほぐした。
    「何とかなったみたいだね……」
     これで、「ヤツザキ人形」の噂が人を殺すこともなくなった。
     噂の始まりについて考える綾奈。
    「踏切が舞台と言うことは、噂の元は列車事故で亡くなった人、だったのでしょうか」
    「誰が言い始めるんだろうなこんな噂」
     椿は無表情に戻り、千切れて地面に散らばった紙人形の紙片を見下ろす。
     誰も幸せにはならないのに……と、小さく呟きながら。
    「……ホント酷な遊びだよな」
     八つに千切れた紙人形の紙片を、拾い集めて軍はテープで張り合わせる。
     新たな犠牲を食い止めることができたのは、ある意味ではこの人形のおかげなのだ。
     なのにこのままではあまりにも忍びない。だから、
    「お役目ご苦労さん」
     踏切に花を供えて犠牲になった子供達の為に祈る。
    「もうちょっと早く見つけてあげられたらよかったのかな……」
     それはきっと誰のせいでもない。
     それでもシズクは「もしも」を考えないではいられなかった。
    「ごめんね……」
    「さって、んじゃ飯食って帰ろ。ここはやっぱり高校生のセンパイ達の奢りデスヨネ」
     その場の空気を換えるように軍が言う。
     ひと暴れした後の飯は格別だと。
     そして彼等はその場を立ち去った。
     残されたこの踏切で事件が起こることはもうない。
     ただの噂の舞台として伝えられ、そしていつか、噂と共に忘れられていくだろう。

    作者:かなぶん 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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