学園祭~名残のひとしずくまで

    作者:中川沙智

     多数のクラブ企画や水着コンテスト等で、二日間に渡り賑わいを見せた今年の学園祭。
     楽しい時間が過ぎるのは早いとはよく言ったものだ。大盛況だった学園祭も、とうとう終わりの時を迎えようとしている。
     それでも学園祭終了後の夜、僅かながら時間は残っている。
     最後に打ち上げをして余韻を味わうのも、悪くない。
     
    ●想い出は終わらない
     校外も校内も華やかに飾り付けされた武蔵坂学園の校舎。勿論学園祭のメインとなったのはクラブ企画で使用された教室だが、そうでない教室も少しはある。それらは軽く装飾されているものの、基本的には空き教室として使用されていた。
     この教室もそのひとつ。
     夜を迎えた学び舎はどこか密やかだ。夕方まではあんなに賑やかだったのに、学園祭の終わりを静かに受け入れようとしている気さえする。
     楽しかったからこそ、一抹の切なさが胸を過ぎるのかもしれない。
     窓の外ではグラウンドで焚かれるキャンプファイヤーや花火の灯りが鮮やかだ。目に焼きつくのは光だけではなく、きっと想い出そのものに違いない。
     さて、どうやって学園祭最後の夜を過ごそうか。
     参加したクラブ企画の想い出を反芻するのもいい。残った料理や飲み物を片手に語り合えば、記憶は味わい以上に色濃く身体に染み入るだろう。
     それとも友達と水着コンテストの話題で盛り上がろうか。晴れ舞台の姿を思い返して、まだ終わりのない夏へと思いを馳せるのも楽しい。
     ただ只管に、今の雰囲気を噛み締めてもいいだろう。目を閉じればきっと瞼の裏に鮮烈に蘇る、学園祭の風景。
    「お疲れ様、鴻崎」
    「……小鳥居か」
     頬に当たるひやりとした感覚に鴻崎・翔(中学生殺人鬼・dn0006)は瞬いた。小鳥居・鞠花(高校生エクスブレイン・dn0083)に手渡されたオレンジジュースを受け取り、翔は視線をグラウンドへ戻す。
     窓の外ではしゃぐ生徒達の姿に、鞠花は頬を緩めた。
    「ふふ、皆楽しそうね」
    「ああ。……楽しかったな」
     翔の呟きが夜風に紛れる。
     学園祭の名残に浸る、穏やかな空気の中で。


    ■リプレイ

    ●彩
     学園祭の余韻が身体の中で火照る。落ち着かせるべく空き教室を探していた心葉の瞳は、ある教室の窓際に見知った姿を捉える。
    「こんなところでどうした?」
    「こんばんは。少し休憩中です」
     僅かな疲労感を感じ、慎悟朗は緩やかに窓の外を眺めていた。心葉が窓に凭れると、彼も近くの机に腰かける。
    「学園祭というのも悪くないですね。興味深い事が沢山ありました」
     慎悟朗から感じるやや饒舌な気配。普段はあまり感情を動かさないのにと心葉は関心を示す。
    「君は何処かへ行ってきたのか?」
     促されて言葉が滑り出るのは、祭の熱気にあてられたのかもしれない。
     窓際の席に座った美咲の唇からは、ため息が。
    「はぁ、全然見て回れなかったよ……」
     お喋りの隙間に垣間見る残念さ。夏輝は美咲を癒してあげたくなる。
     だって、美咲にしょんぼりした顔は似合わない。
    「ね、今からでもこの後夜祭でいっぱい楽しいことしよう? 私もお姉ちゃんとの思い出、まだまだ作りたいよ!」
     夏輝の声に顔を上げた美咲の胸に、元気と未来が広がる。
    「来年は夏輝ちゃんと、い――っぱいっ! 色んな所を見て回るよっ!」
    「一緒に最初から最後まで回れるといいね」
     笑顔で宣言した美咲に夏輝も目を細めた。きっと来年は今年より、素敵な学園祭になる。
     日中会う機会がなかったからと、瑞樹は鴻崎・翔(中学生殺人鬼・dn0006)と、どんな企画を体験したか語り合う。
    「俺は、モダンアート風の塗り絵を体験したものが印象的だった」
    「そうなのか、すごいな。俺は美術が得意じゃないから……」
     ただ線画が先鋭的で感性の豊かさを感じたとも瑞樹が付け足せば、翔も思わず笑みを零す。
     次回は一緒に回れるといい。あるいは戦場でという言葉に、翔は頷きを返した。
     窓辺から眺めるとキャンプファイヤーの明かりが社の眼鏡に映り込む。ラムネの瓶で乾杯すると、涼やかな音が夜に響いた。
     交わす話題は穏やかに揺蕩う。クラブの神社の出し物で、男も巫女服を着るとは思ってなかったと、夕鳥は笑い声を漏らす。他のクラブ企画を巡るのも楽しかった。
    「一緒に万華鏡作ったのも、いい思い出です」
     社の呟きに、夕鳥は懐から和紙に包まれた万華鏡を取り出した。慈しむように、撫でる。
    「オレも、一緒に万華鏡作れて楽しかったぜ。……お前さんと作った思い出だ、大事にしねェとなァ」
     また来年も共に学園祭を楽しもう。密かに交わされる、約束。
     夢から醒めるようで、切なさを湛えても想い出として大切にしたい。
    「ショウ、クラブに遊びに来てくれて、ありがと」
     ゆずるが驚いたけどすっごく嬉しかったと告げれば、翔は楽しかったよと更に礼を返す。
     ふとハンカチに翔の視線が留まる。汗を拭く際に貸してもらい、翔が洗濯して翌日返したのだ。そういう誠実なとこ、素敵だよとゆずるが笑顔を浮かべると、翔は照れて視線を外す。
    「また来年も、たくさん遊んで。こんな風に灯り、眺められたら、いいね」
     肩を寄せ合い学園祭に思いを馳せる。沢山の想い出に彩られた、愛しい時間。
    「色々自分で考える事が、こんなに楽しかったなんて」
     彩歌に満ちる充実感。すべては隣にいる悠一が切欠をくれたから。悠一は彩歌が何かと忙しい事を心配していたものの安堵の息を吐く。が、
    「……ね、お兄様のお好みに合わせてみたんですけど……水着、いかがでした?」
     と訊かれて平常心が吹っ飛んだ。
    「俺の好みって、どこで知ったんだよっ!?」
     狼狽えながらも、似合ってたと思うと声を絞り出す。
     それでも。
    「次の学園祭も、楽しみましょうね、悠一」
    「……他の行事も、普通の日常だって。一緒に楽しむんだよ、彩歌」
     誓うように、悠一は彩歌を抱きしめた。

    ●沫
     続いていた会話の波が、途切れる。
    「……学園祭で歌おうと思ってたヤツだけど」
     密やかに旋律を紡ぐルーファスの姿が月明かりに映える。悠は己の頬を押さえた。きっと赤い。気づかれないといい。
    「俺、こんな事しか出来ないからさ。結局俺は戦うのが嫌いで、遊ぶ事しか出来ないんだって思うんだよ」
    「そんな事無いよ!」
     悠は頭を振った。だって薄々気づいている。嘗て闇堕ちした際、救出してくれたのは――。
    「昔、ボクのこと助けてくれたもん」
     手を握る悠の懸命な訴えに記憶が呼び起こされる。
    「……じゃあさ、俺にもう一回守らせてくれない?」
    「えっと、よろしく、ね?」
     ルーファスは静かに、悠を抱きしめる。
    「重かったんだぞ」
     ため息ひとつ。期待に満ちた瞳の【理科棟】の面々に、秋帆は未完成のラムネが入った硝子瓶を配り始める。朱海が運んだクエン酸を砂糖水に入れ、重曹を秋帆に手渡す。それを融かし込みながら独断で、
    「リア充の月之瀬には初恋の苺味な」
    「ってリア充とかかかか……っ」
     月之瀬・華月の顔が朱に染まる。
    「ありがとうなの、アキホくんお疲れさま!」
     粋な計らいにハナが微笑を浮かべる。瓶の気泡が弾ける様は鼓動に似ていると、秋帆の思考に薄ら過った。
     普段より砕けた皆の顔を思い出し、煌介は吐息を漏らす。
     用意された瓶はカーテンコール。
     魔法より憧れだった理科実験をもう一度。沸き上がり弾けては消える手製ラムネの泡沫は只管眩しい。
     シンも瓶の夏空のブルーを透かす。今はまだこんなに鮮やかに思い出せる。泡沫が儚く弾けても。
    「ほら、朱海」
     君もあの時と同じ顔で笑ってる。
     それは自然に湧き上がったもの。自らの変化に怯えながらも、心地良いから今は笑おうと朱海は思う。
     ラムネの沫は二日間の喧騒と笑顔。
     煌介の胸裏にあたたかさと寂しさが過るけれど。
    「思い出す度きらめく何かは、きっと忘れないはずだから!」
     察したようなハナの声。
     感傷は全部泡に溶かして飲み干してしまおう。
     ――乾杯!
     私のやらかした諸々は忘れる方向でー! とシンは誤魔化しながら咳払い。小さな笑みと共に囁いた。
    「楽しかったね、とても、とても。また来年も、皆で、こうして乾杯しようね」
     この約束が叶っても叶わなくても、そう願えるほど幸せな今がいとおしい。
     屈託のない声に完敗し、秋帆もつられて笑ってしまう。楽しかったと素直に瓶を掲げれば、瞳を閉じラムネを喉に落とした煌介が呟いた。
    「皆、大好きだ」
    「……まあ、嫌いじゃねえよ。俺も、な」
     秋帆の声に眦緩め、朱海は仲間がいる幸福を反芻する。
    「人と人の交わりは化学変化ね」
     噛み締める。月之瀬も頷いて、瓶の煌きを瞳に宿した。
    「想い出の泡は消えないもの、何時だって心の中に浮かんでるの」
     こうしてまた未来へ繋がっていく。願いを抱き眺める光景は、きっと掛け替えのない宝物。
     相棒の霊犬達、豆助と知和々は足元でおやすみ中。互いに寄り添う姿に日和の頬は緩み、白黒マガタマみたいと宗佑は笑う。
     切なさも心を過る。また高校生活の行事が終わりを告げる。卒業の足音は確かに近づいてくる。
     その分二人で重ねた想い出が増えていく事は、嬉しい。
    「夏休みの宿題早めに終わらせたら、どこか遊びに行かない?」
     日和は瞬く。同じアパート住まいの彼が、最近遅かった理由を理解したからだ。バイト代ちょっと頑張って貯めたからと言葉を濁す宗佑に笑顔でひとつ提案を。
    「喜んで! でも、割り勘にもさせてくださいね」
     優しい指切り。
     これからの切なさも楽しみも、全部、大好きなあなたとはんぶんこ。

    ●滴
     マフィンを半分ずつ分け合い紅茶をカップに注ぐ。静かで小さなお疲れ様会。
    「では、改めて御疲れ様でした。副部長殿」
    「んむ、部長さんもお疲れ様なのだよー……乾杯」
     カップを鳴らせば、あっという間の日々が蘇る。クラブ企画には大勢の人が来てくれた。
     本当にありがとうを。お世話になりっぱなしだと帷は実感する。ましろもそれは同感で、優しくて頼もしくて、気が合う不思議な友達――……。
     途端に、より特別な感覚にましろは首を捻る。
    「ん? そうか。なら……今日から相棒だ」
     残りのマフィンを頬張りながら帷が提案。ましろも勿論否はない。
    「これからもよろしくだよ、相棒さん」
     外の花火が見える場所は二人の特等席だ。もとい、夜深が作ったパペット人形のまかろんも連れてパンケーキを囲む。
     一緒にと誘ってもらえば小鳥居・鞠花(高校生エクスブレイン・dn0083)も笑顔でお邪魔する。
    「夜深、まかろんから『あーん』だってさ」
     芥汰が器用にまかろんを操りパンケーキを差し出せば、夜深は目を輝かせてぱくり。
    「まかろん、喫食、補助? 謝々!!」
     もふもふと満喫してお返しを。どう食べようかと芥汰は困り顔。
     クラブ企画で想い出を飾る花壜だった小瓶には、今は果実水が満ちている。花片と金平糖が泳ぐそれを芥汰が配ってくれる。
     掲げて乾杯したら想い出ごと飲み干そう。
     夜深がちびちび飲む最中、芥汰が楽しんでくれてたら嬉しンだけどと呟く。幸せがお腹で咲いてるわと鞠花が笑った。
     クラリーベルが振り返るのは恋人と過ごした時間。
     彼女自身クラブ企画等で忙しく、一緒に回れたのはお化け屋敷とその後の喫茶店だけ。それでも楽しかったと笑みが浮く。
     正直あそこまで怖がるとは思わなかった。きっと隣に安心して寄り添える人がいたからだろう。
     ありがとう――小さく夜に囁いた。
    「ひゃぁ!?」
     のんびりグラウンドを眺めていた綾乃に不意打ち。正体は蔓が首筋に押し当てた冷えたジュースだ。綾乃は仕方ない人ですねと苦笑する。
    「お疲れ様~♪」
     所属クラブの企画が一位になった事を祝う。他の企画を一緒に回れなかったのは残念だったけれど、共同作業が出来た事は何より素敵な想い出。すごく嬉しいと、蔓は語る。
     椅子を移動し、蔓は綾乃の肩に頭を乗せる。夢心地で囁いた。
    「……何度も言うかもしれないけどまた言うね?」
     愛してる。
     綾乃の目が眩む。今はありがとうございますと返すのが精一杯。そろそろ返事を、しなければ。
     プールサイドでの別の打ち上げの後、校内散歩。錠は翔の姿を見つける。
    「よォ、オツカレ」
     二本のカフェオレのうち一本を差し出し、お前を探してたんだと口の端を上げる。
    「LIVE観に来てくれてサンキュな」
    「こっちこそありがとう。すごく、楽しかった」
     濡れた髪を拭く振りで涙を誤魔化す。錠にとって音楽は殺人衝動を抑える手段だった。それがようやく、別の何かに変わろうとしている。
    「……なァ、翔。どう変わるのか、見届けてくれるか?」
     突然の言葉に翔の瞳が揺れるが、俺に出来るのならと頷いた。
     学園祭期間中はあまり話せなかったから、少しゆっくり出来たらいい。
    「……沙月、色んな人と話してたわね」
     楽しそうでよかったと思う反面、寂しさを感じるのも事実。他の人にもそんな表情を見せるなんて。華月は姉のぬくもりを確かめるように抱きついた。
     妹が落ち込み悩んでいるような、複雑な感情を抱いている事を察していた沙月は、あやすように髪を撫でてやる。
    「……こうして二人だけで過ごしたいと思うのは華月ちゃんだけだからね?」
     沙月を束縛し、本当に姉を想っていると言えるのかと考える華月。もっとしっかりしないとと息を零す沙月。互いの感情が交錯する。
     もうすぐ、後夜祭も終わりを迎える。

    ●雫
     一緒の教室にいる事が仁奈は新鮮で、隣の席に座ろうと奈兎を誘う。
     仁奈が奈兎の手を握り思い出すのは彼の水着姿。逞しくてずるいとむくれ顔。素知らぬ顔でその頬を摘めば可愛い抗議が返る。
     続いて奈兎の顔に差し出されたのは、兎のぬいぐるみだった。その黒兎は己の水着姿に似ていると奈兎は悟る。
    「奈兎、水着コンテスト出場おめでと」
    「サンキュ」
     礼の代わりに兎に口付け、そのまま兎の口を仁奈の唇へ。本当にされたみたいと仁奈の胸が高鳴る。
     今度は海に行こう。仁奈の水着を一番に見せるのは、一番近い存在は、これからもずっと奈兎だから。
     夜の帳が下りた教室の片隅。忍び込んだみたいですと密やかに沫は囁く。識も声を潜め、肩に寄せられる頭の重さも自然に、受け入れる。
    「こんな景色があるの知りませんでした」
    「そうだね……俺もこんな世界があるなんて知らなかったよ」
     互いに過るのは過去。静かに体温を添え、分け合う。
     学園祭が楽しかったかと識が問えば、今のほうが識と居られて楽しくて嬉しい気がすると、沫が返す。識は瞬く。不思議な心地に満たされ、彼女の髪を撫で微笑んだ。
     今は識と居るから沫の後夜祭の想い出は識が独占。
    「……沫も、いいですか?」
     光の花が宵に消えるまで。
    「いいよ、今だけは沫に独り占めさせてあげる」
     この教室は喧騒も遠い。見つけた姿にオニキスの元気な声が飛ぶ。
    「えへへ、お隣お邪魔します。座席料代わりにどうぞ!」
     翔にジュースを渡して隣の席へ。翔も彼女を歓迎する。ずっと会いたいなって思っていたと言われたら、流石に少し照れたけれど。
     潤う喉から零れる想いが、深い夜に流れ溶けてしまわぬように。一滴だけでも、掬っていて。
     終わりはいつもちょっぴり切ない。だからこそとオニキスは笑う。
    「またね。そして、これからよろしくね」
     翔は眦を下げ首肯した。
     初めての花火鑑賞をするノアの瞳に、彩りが映り込む。
    「本物は、色が沢山で、キレイだね」
    「本で見るのとじゃ違うでしょー」
     持ち寄った茶や煎餅を味わいながら、環は椅子の背凭れに両腕を組んで乗せて軽妙に笑う。
     ふと環は密かに顔を伏せる。
     毎日がこれだけ色鮮やかならどんなにか――感傷で一滴、涙が零れたけれど。欠伸をして顔を上げれば常の笑顔が浮かんでいる。
    「色んな色の花が空に咲いて、綺麗だよな」
     花火に視線を向けたまま、ノアは一度閉じた口を開く。
    「七鳴の目の色も、あるね。僕の目の色も、あるよ」
     返事は求めずに小さく付け足した。大丈夫だよ。
     環も感謝を胸に、何気なさを装った。
     クラブ企画が盛況だとやはり嬉しいもの。楽しい夢の二日間は終わりを迎える。現実だが、後から思うとあたたかい夢に違いないのだ。
     ジュースを片手に希沙が学園祭で撮った写真を広げる。映るのは釦の花と友達と笑っている自分達。
    「ね、ふじ。友達、と呼んでもいい人ができるんは嬉しいね」
    「えぇ。友達が増えるなんて思いもしなかったこと」
     楽しい思い出が増えるのも、友の笑顔が増えるのも。希沙の笑顔が目映い事もとても嬉しいと藤乃は噛み締める。希沙はその楽しさも夢のようだから大切にしたいのかもと思う。
     花刺繍のハンカチと傍らの存在と一緒に、もう少し余韻に浸ろうか。
     ビハインド の揺籃と窓の外を眺めると、感じるのは空虚。
     そう思う程に――この数日が楽しかったのだろうか。
     掌の万華鏡から力を緩められない烏芥の手を、揺籃の掌が優しく包む。見れば微笑んでいて、それは楽しそうで。
     ありがとうと零し空へ視線を戻す。
     
     夜空に燈る彩。この日の空もきっと忘れない。
     最後の一雫まで鮮明に染み入る様に。

    作者:中川沙智 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月30日
    難度:簡単
    参加:40人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 17/キャラが大事にされていた 1
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