残虐な美食家

    作者:奏蛍

    ●お口にあいます?
     知る人ぞ知る店と噂のレストランで事件は起きた。ふてぶてしい一人の男の様子を五人の男がちらちらと見ている。
     一口、見られている男が出された料理を口に運ぶ。そして止まった。
     ごくりと、見守る男たちの喉がなる。そして、食した男が机を思い切り放り投げた。
    「こんなもの食えるかぁあ!!」
     叫んだ瞬間に、見守っていた男の二人がキッチンに向かって走り出した。さらに残りの一人が出入り口を塞いだのだった。
     何が起こったのかわけもわからずポカーンとして見ていた客の表情が恐怖に変わるまでに時間はかからなかった。
     キッチンから連れてこられた料理人が、異形巨大化した男の片腕で吹き飛ばされ息絶えたのだった。途端に悲鳴が響き渡る。
     しかし逃げることができない客たちは、料理人と同じように無残な最後を迎える。
    「ちっ、気分が悪い。もっと美味いもん出す店に行くぞ」
     美食家の羅刹は、ナプキンで口を拭くと真っ赤に染まった床を平然と歩き店を出て行く。仲間たちもまた、表情変えることなく店を後にした。
     
    ●謎の好み
    「美食家って言うより、好みじゃないでしょうか?」
     考え事をして呟いた華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)が、仲間の足音に顔を上げた。
    「待ってたんだよ」
     考え事を中断した紅緋が柔和な表情を浮かべて見つめた。そして、須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)からの情報を話し始める。ダークネスの持つバベルの鎖の力による予知をかいくぐるには、まりんたちエクスブレインの未来予測が必要になる。
     もしやと思った紅緋の予想が当たり、美食家の羅刹の存在が確認された。名前は美味と書いてよしみ。
     子分の五人を引き連れて、美味い店と噂の店に出没する。自分の味覚と合わないと判断すると料理人、客を問わず、その場にいた全員を殺してしまうのだ。
     みんなにはこの美味たちを灼滅してもらいたい。
     美味たちが行く予定の店に到着してしまうと全ての人を助けるのが不可能になってしまう。そのため、店に向かう途中の道で青空カフェを開いてもらいたい。
     試食会を行っているという名目で、何としても美味たちに食事をさせてもらえたらと思う。ここで注意してもらいたいのは、わざと不味く作ってもらいたいということだ。
     けれど、毒薬や通常料理に使わないものを使って作ると気づかれて食べてもらえなくなる。あくまで通常の食材と調味料を使用して、びっくりするくらい不味い料理を用意して頂けたらと思う。
    「どれか一つでも好みに外れてたらいいみたいだよう」
     紅緋が少し複雑な表情を浮かべながら付け足した。どうやら、自分の好みに合っていれば不味いと言われるものも特別美味しく。
     逆に美味しいものでも好みから外れていれば不味いと判断するらしい。いろいろと方法をみんなで模索してもらえたらと思う。
     どれか一つでも不味いと判断すれば、怒った美味が攻撃してくるだろう。逆にどれも不味いと判断しなかった場合は、みんなの方から仕掛けることになる。
     この場合、逃走確率が上がって取り逃がしてしまう場合があるため気をつけてもらいたい。
     美味は神薙使いのサイキックと鋼糸を使ってくる。子分の五人は、鬼神変 と龍砕斧を使ってくる。
    「子分も十分な強さがあるから気を付けないとだよ」
     紅緋が赤い瞳を瞬きさせた。


    参加者
    蒼月・杏(蒼い月の下、気高き獣は跳躍す・d00820)
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    黒守・燦太(中学生神薙使い・d01462)
    色射・緋頼(兵器として育てられた少女・d01617)
    瑠璃垣・恢(皆殺半径・d03192)
    霧渡・ラルフ(奇劇の殺陣厄者・d09884)
    シエラ・ヴラディ(迦陵頻伽・d17370)
    ミツキ・ブランシュフォード(サンクチュアリ・d18296)

    ■リプレイ

    ●青空カフェOPEN
    「近々オープンする青空カフェですけど、本日プレオープンで試食会やってます、宜しければご参加いただけませんか?」
     笑顔でお客さんを呼ぶミツキ・ブランシュフォード(サンクチュアリ・d18296)の声が響き渡る。可愛らしい女の子の呼び声に、一般のお客さんもだいぶ集まっている。
     青空カフェは思っていた以上に盛況だ。
    「いらっしゃい、青空カフェ、いかがですか?」
     ギャルソン風の格好に身を包んだ蒼月・杏(蒼い月の下、気高き獣は跳躍す・d00820)がウェイターとして通りがかった美味たちに声をかけた。快晴のおかげで本当に青空カフェだが、暑い。
     そっと汗を拭いた杏は伊達眼鏡に触れる。どうやら癖らしい。
    「そこのいい体格のお兄さん方。試食やってますよ」
     杏の言葉に足を止めた美味たちに瑠璃垣・恢(皆殺半径・d03192)も声をあげる。その手には一般のお客さんのためのクラムチャウダー。
     黒守・燦太(中学生神薙使い・d01462)が美味たちとは別に用意したものだ。そんな一般のお客さんを美味は吟味している。
     美味しそうに食べているのなら、期待出来るかもしれないと。席に座った一般客は笑顔で霧渡・ラルフ(奇劇の殺陣厄者・d09884)が用意したトマトと塩漬けレモンの冷製パスタを口にしている。
    「あなた、かなりの食通と見ました」
     どうだろうと言う顔をしている美味に色射・緋頼(兵器として育てられた少女・d01617)がさらに声をかける。そしてそんな方には特別席を用意していますと囁く。
     試食会に足を止めた一般人とはかなり離れた特別な豪華な席。緋頼が指し示す席を見て美味は歩を進めた。今日行く予定の店はここで試食してからでも遅くはない。
     美味が寄ると言うなら、黙って従うのが子分だ。その様子を見たギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)が思わず笑みを作る。
     トリック・オア・トリートの青空カフェ開店っすっと、席に付く美味たちを見て心の中で呟く。美味たちの存在を予想した後輩の紅緋は別の依頼に行っている。
     そんな後輩の紅緋のためにも、しっかり解決すると言うように気合を入れる。
     一般のお客さんのために、肉じゃがを配膳したシエラ・ヴラディ(迦陵頻伽・d17370)がそのまま美味たちの席に向かう。トレイに残されているのは、真っ黒な肉じゃが。
     美味たちのためにお醤油をわざと入れすぎて作った一品だ。
    「お口に……あう……かしら?」
     そっと置かれた黒い肉じゃがに、子分たちの顔が引きつった。これは明らかにおかしい。
     焦げた匂いはしていないのに、色が尋常じゃない。
    「どれ……」
     迷いなく口に運んだ美味に尊敬の眼差しを送る子分たちだが、そこもおかしいことに気づいて欲しい。ごくんと飲み込んだ美味の瞳が見開く。
    「うまいじゃないか!」
     美味の言葉に子分たちは肩を落とした。美味が美味いといえば全てが美味いのだ。
    「じ、自分たちにも寄こせ」
     言い方はえらそうだが、声は震えていた。
    「ポトフになります」
     おいしく柔らかそうなポトフに子分たちから感嘆の声が上がる。しかしこのポトフ、味がない。
     一般のお客さんにはちゃんとした味のある美味しいものが提供されているが、美味たち用は全く味がない。
     一番不味いものは、味のしないものだと聞いた事がある杏の料理だった。早速と美味が肉を刺すと、柔らかい肉はすっとフォークを通す。一口。
    「おぉ、柔らかいじゃないか!」
     どうやら食感が気に入ったのか、ご満悦な表情の美味。子分にも食べろと勧める。
     嬉しそうに口に運ぶ子分たち。しかし口に入れて止まった。肉は確かに柔らかい。でも、味がしなくありません?
    「甘いもんが食いてぇな」
     その言葉にギィとミツキが反応する。ギィが用意したのはマスタードの詰まったシュークリーム。チョコレートの下に辛子明太子を詰めたエクレア。
    「さぁ、いかがっす?」
     フランス人相手に、どんな高説が聞けるのかとギィは興味津々と言う様子で口に運ぶ美味たちを観察する。動いていた口が止まる。
     悲痛な声が子分たちから上がる。しかし、美味は静かに飲み込む。そしてエクレアも一口。
    「なかなか冒険するじゃねぇか」
     エクレアを飲み込んだ美味がにやりと笑った。その心意気が気に入ったと言った美味は、子分たちを見る。
    「お前ら、ちゃんと全部食えよ」
     押し付けられた……子分たちの顔は心なしか青くなっている。必死に飲み込み続ける子分たちの前に、ミツキのスイーツが並ぶ。
     ティラミスとチーズケーキ。明らかにしょっぱく、明らかに酸っぱいのは仕様……と思いきやそうでもない。
     自炊するミツキは料理は下手な方ではない。だがしかし、素で調味料を間違えてしまうぼんやりさんなのだった。
     特にお菓子はやらかしてしまう……と言うことで、美味しく作るはずだった二つのスイーツの行く末は先ほど語った通りだ。
     まずいモノ出す予定だったし、いっか。と頷いていたミツキが様子を伺う。
    「この酸味、ちょうどいいな!」
     チーズケーキを美味しく食べる美味を横目に、子分たちは無言でティラミスを口に運ぶのだった。

    ●どれが不味いです?
    「黒カレーになります」
     焦がして黒くなったカレーにこれでもかと言うほど山程のタバスコをぶっかけた恢の料理に、子分の目は涙目だ。
    「おお! ちょうどいい辛さだな!」
     味覚が壊れているとしか思えない。これは美食家じゃない。
     子分たちはすでに声を発しなくなっている。ただひたすらに料理を口に運んでいる。
    「特製チーズ&フィッシュの納豆パスタです」
     これならどうです? と言うように緋頼がとても匂いの強いパスタを置く。反応が乏しくなっていた子分たちでさえ、瞬時に鼻を塞いだ。
     ニンニクたっぷりに、匂いの強いエピキュアーチーズ、そして具材にはくさやの焼いたものを使用している。そして納豆まで追加される。
     味見をしていないので、もちろん味の保証はない。
    「匂いは強いが味はなかなか……」
     ぱくぱくと口に運ぶ美味。もう残りはスープしかない。
    「吸血鬼も泣くトマトスープと甘味たっぷりコーンスープだ」
     泣くほど辛い。そして甘いを通り越してドロ甘だ。てめえの味覚なんか知るかよな燦太だった。
     しかし、わざと不味く作るということに屈辱を感じるのも確か。どうやら辛いのが好きなのか、美味い美味いと口に運ぶ。
     子分たちはもう一気に飲み込むしかないと思ったのか、コーンスープを流し込みトマトスープを流し込む。青いを通り越して顔が真っ白になっている。
    「お、これが最後か!」
     期待出来ると言うような顔でコーンスープに美味が手を伸ばす。そして、飲み込んだ。
    「ぶはっ!?」
     いや、飲み込めなかった。
    「何だこれは!? こんなもの食えるかぁあ!」
     辛いものは好きだが、極端にというかドロ甘はお気に召さなかったらしい。怒り心頭で美味が立ち上がった瞬間、恢の大音声の警告が響き渡る。
    「ここは危険だ、早く逃げろ!!」
     さらにラルフが放った殺気に急いで客は席を離れる。
    「どこが不味いのか指摘もせずに暴れるなど、美食家としては三流ですネ」
     クハハッ! っとラルフが声を上げて笑う。戦闘狂の気があるため、心が躍る。
    「お客様、暴れてはいけませんよ」
     前に出た緋頼が挑発するように言葉を紡ぐ。
    「何かありましたら存分にどうぞ。すべて受け入れます」
     低姿勢でありながら、十分に挑発しているのがわかる緋頼の言葉に美味の片眉が釣り上がった。
    「俺の影……目覚めてここに力を!」
     挑発のおかげでか、今にも暴れだしそうな美味に向かって力を解放した杏が魔法弾を放つ。
    「呪われろ……その戒めは貴様の罪だ」
     命中した攻撃にさらに美味の顔が不愉快になる。けれどすぐにその顔に笑みが広がる。
    「覚悟しろよ!?」
     頭に黒曜石の角を生やした美味が異形巨大化した片腕で迫る。咄嗟に防御の体勢を取った杏だったが、凄まじい威力に吹き飛ばされた。
     美味が動いたことで、子分たちも席を立つ。しかし、顔面蒼白だ。
     そんな一人にシエラが激しくギターをかき鳴らした。発生した音波が子分の一人を傷つける。
     すかさずミツキがシールドで傷を負ってふらつく子分を殴りつけた。同時に別の子分にミツキの霊犬、ういろうが飛び出していく。
    「殲具解放!」
     力を解放するのと同時にギィは飛び出していた。超弩級の一撃が、子分を粉砕する。
     悲痛な声を上げた一人が、倒れる前に体をボロボロにして消えていった。

    ●美味と言うこと
     美食って何に対しての美食なのか。美味ければいい。
     けれど美味いって言うのは人それぞれの好みだ。そこまで考えていた燦太は軽く肩をすくめた。
     ダークネスに行っても仕方ない。軽く跳躍した燦太は大鎌をぶん回した。死の力を宿した断罪の刃が子分を斬り裂く。
     青い顔をしながらも異形巨大化した片腕で子分が迫る。
    「不味いもの食わせやがって!」
     なぜだろう……美味より危機に迫っている気がする。ぶんっと、音がする程の威力で拳が振られる。
     美味に比べたら力は弱いのだろう。しかし、威力は十分だ。足に必死に力を込めた緋頼だったが、ずざーっと言う音を立てて後方に下げられる。
     倒れず立ち続けた緋頼が軽く首を振った。
    「美味しさなど好みに過ぎないのです」
     美味にそう言いながら緋頼は前に出た。そしてそのまま突っ込み、シールドで美味を殴りつける。
     だからこそ美味は食通などではなく、ただの我儘だと告げる。その言葉に美味はにやりと笑った。
    「好みじゃねーもん食わせる店はいらねぇなぁ!」
     その声に三人の子分が一気に攻撃に出る。高速移動で突っ込んできた一人目が前にいた灼滅者たちを薙ぎ払っていく。
     咄嗟に避けたラルフの目の前に異形巨大化した腕が迫る。避けきることが出来なかったラルフの体が衝撃に揺らぐ。
     しかし、ラルフの顔に笑みが広がる。楽しそうに笑ったそのまま攻撃に転じる。
     オーラを拳に集束させて突き出す。オーラが尾を引き鳩のようになって、叩き込まれていく。
     ラルフが止まった時、攻撃を受けていた子分の姿は消えていた。まるで手品のように。
     隣では、一手二手と攻撃を避けた恢が漆黒の魔人と化したオーラと共に直進する。拳が届く範囲に踏み込んだ瞬間、激しい連射砲のように拳を叩きつけていく。
     一片の容赦なく目の前の敵を打ち砕いていく。同時にギィが赤き逆十字を出現させた。
     打ち砕かれ、斬り裂かれた体がボロボロと消えていく。
    「ちっ……」
     消えていく子分たちに美味が舌打ちして、地面を蹴った。異形巨大化した片腕が攻撃を受けた緋頼を狙って振り下ろされる。
     子分の時に受けた以上の威力と衝撃が緋頼を襲う。持ちこたえようとした体が後方に飛んだ。
     すぐに天使を思わせるシエラの囁くような優しいい歌声が響き渡る。そして緋頼の傷を癒していく。
     残った子分の片方にミツキが必殺のビームを放つ。正直、自分の気に入った味じゃなければ美味しくないというのはわからなくもない。
     けれど、作る苦労を知れという感じのミツキだった。自分で作ることもせずに気に入らないと言いうのが、殺す以前に許せない。
    「砕けろ!」
     声と同時に凄まじいモーター音が響き渡せ、杏が美味を攻撃した。

    ●青空にカキ氷
    「これで終わりデス」
     最後の子分にラルフが止めを刺した瞬間、美味から漏れた不穏な声をかき消すように恢が声を出す。
    「この世に嫌いなものが二つある」
     不愉快そうな顔をして見返してくる美味に恢が言い切る。
    「偏食家とわがままな子供だ。美味、あんたはその両方みたいだな」
     ご飯を食べる時くらい、ケチをつけずに静かに食べるべきだ。まさかこんな当たり前のことをダークネスに教える日が来るとは思っていなかった恢だった。
    「誰がガキだ!?」
     吠えるように声を荒らげた美味にミツキが飛び出す。シールドで思い切り殴りつけた。
     その間にシエラが立ち上がる力をもたらす響きを奏でる。
    「……美食家……語るのなら……携わった人達の……料理に込められた……心まで……感じて……」
     日頃から喋るのが苦手なシエラだが、想いを口にする。作ってくれたものへの感謝。そんなこともわからない人が料理を語る資格はない。
    「あなたのは……小さな子供と同じ……単なる……わがまま……よ」
     さらにガキと言われた美味がシエラに向かって異形巨大化した拳を叩きつけた。
    「……んっ」
     避けることが出来ないと悟ったシエラは身構えた。しかし、衝撃は襲ってこなかった。
     シエラの代わりにミツキの体に衝撃が走った。苦痛に耐えたミツキをういろうが急いで回復する。
     鋼糸を構えた緋頼がまっすぐに美味を見つめる。
    「貴方が我儘で人を殺したのは許されません、灼滅します」
     罪を告げるのと同時に放たれた鋼糸が美味に巻き付いていく。
    「戒めの十字架に身をゆだねよ」
     すぐに杏が動く。赤きオーラの逆十字が美味を斬り裂いて行く。
     鋼糸を振り払うように暴れた美味を、燦太がさらに風の刃で斬り裂いた。苦痛の声を上げながら、逃れた美味が異形巨大化した拳を振り下ろす。
     自分に向かってくる美味に、ギィが構え地を蹴った。間合いが変わらないのを用心した上で、真っ向からぶつかる。
     ぶつかりあったサイキックが相殺され、その衝撃に二人の体が離れるように後方に飛んだ。お互い綺麗に着地した瞬間、美味の体に恢が止めとばかりに迫る。
     冷たい眼で美味を見ながら、オーラを腕に纏わせていく。突っ込んだスピードそのままに、強く打ち付ける。
     同時に魔力を流し込み、すぐに後ろに飛び下がった。美味の体内に流された魔力が内部から爆破を始める。
     苦痛の声と言うよりは、吠える獣のような声を響かせた美味の体が崩れていく。残ったのは、荒れた青空カフェ。
    「お疲れ……様。怪我……大丈夫?」
     仲間の傷を確認したシエラが、片付けを始める。そんな中、料理を見た燦太が軽く息をついた。
     残ってしまう料理の心配をしていたのだが心配は不要だったようだ。美味と子分によって綺麗に片付けられた不味い料理。
     一般客に出した美味しい料理。どれも綺麗に片付いている。食物を粗末に出来ないと思っていた燦太は肩の荷が下りた気分だった。
     片付けながら伊達眼鏡に触れた杏がふと疑問に思う。美食家ってなんだろうなと。
     そもそも美味しいと言うものは普遍的なものではない。世間が美味しいと言う店に行って、美味しくなくてがっかりする事だってある。
    「それにしても、だ」
     それはそれ、やはり考えていてもしょうがない。
    「せっかくだからうまいものでも食べに行こうか」
     忘れていた暑さが返ってきて、空を見上げる。
    「この暑さだしかき氷でもどうだ?」
     ふと、みんなの頭に自分の好きな味を選んでかけることが出来るカキ氷が浮かぶ。
     ある意味、美食家の望む自分好みの味がそこにあった。

    作者:奏蛍 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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