おしえた。だから、きて、ほしい。

    作者:幾夜緋琉

    ●おしえた。だから、きて、ほしい。
    「皆さん、集まって頂けましたね? それでは、説明を始めます」
     五十嵐・姫子は、集まった皆に頷く……その手には一枚の手紙。
     宛先は学校に向けてだが、リターンアドレスとかなにもかいてない。そして……その手紙を開き、皆にみせる姫子。

    『しゃくめつしゃ、へ
     おまえたちに、ちょっと、きてほしい。
     わたしのすみかに、かまをもったやつが、あばれてる。
     わたしのちからでたおすのも、いいけど、しゃくめつしゃじゃない、しゃくめつしゃみたいなひとがくる。
     くろきばさま、からいわれたとーり、くろきばさまから、きいたれんらくさきに、こーやって、てがみ、だす。
     おしえた。だから、きて、ほしい』

     ……そして、姫子は。
    「この手紙は、静岡県は熱海の方から来ました。どうやら……熱海にすむ、イフリートさんが出した手紙の様です」
    「ひらがなだけの文章なので、かなり読みにくいのですが……かみ砕くと、一般人に被害を出さない為に、皆さんにはぐれ眷族の鎌鼬を倒して欲しい、という事になる様です」
    「ちなみにはぐれ眷族さんが出てきているその温泉ですが、熱海の中でも山中にある隠れ温泉と言われて居る所にいるみたいなのです」
    「勿論隠れ温泉と言われるからには、余り人が訪れる所では無いのですが……最近は秘境温泉を好んで訪れるような方々もいるみたいで……そういった方々を、どうやらイフリートさんは傷つけたくないから、皆に頼む、と言っているみたいです」
    「はぐれ眷族、鎌鼬の数は10匹。山中を徘徊し周りながら暴れ回っているみたいです。幸い、まだ一般人の方達に被害は出ていませんので、早急にここで対処してきて欲しいのです」
    「ちなみに彼らのメインの攻撃手段は当然というべくその手の鎌。鎌を振り回して、近付いてくる人を次々と斬りつけようとして攻撃してきます。尚イフリートさんが出て来るかどうかは解りませんので、その辺りは余り気にしないようにした方がいいと思います」
    「何はともあれ、被害者が現われないうちに対処出来るのは幸いな事です。皆さんの力ではぐれ眷族さんを倒して、イフリートさんにも安心して貰えれば、被害が出ることは無いと思います……どうか、宜しくお願い致しますね」
     と最後に頭を軽く下げ、姫子は皆にお願いするのであった。


    参加者
    浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839)
    内藤・エイジ(高校生神薙使い・d01409)
    四季咲・玄武(玄冥のルネ・d02943)
    櫛名田・まゆみ(八咬・d03362)
    龍統・光明(九頭龍ヶ巣食う千変万化・d07159)
    ユエ・アルテミア(書物蒐集狂・d10468)
    フィア・レン(殲滅兵器の人形・d16847)

    ■リプレイ

    ●おてがみ、よんだ?
     姫子より話を聞いた灼滅者達。
     静岡県は熱海市……イフリートから来た手紙を手にしつつ、灼滅者達は山の入口に立っていた。
    「……また……鎌鼬……退治……? ……でも……イフリートからの……依頼……珍しい……事も……あるんだね……」
    「そうだな。イフリートからこうして手紙を貰うなんて、全く以て思いもしなかったぜ」
    「うん。まぁ、クロキバ様から言われた通りとあるし、そういったものを判断して、頑張って慣れない手紙を書いてみた……って感じ?」
    「……恐らくそうだな。まぁ、こういう書き方の手紙は見にくいものの、何だか必死さが伝わってくるよな」
     フィア・レン(殲滅兵器の人形・d16847)の言葉に、龍統・光明(九頭龍ヶ巣食う千変万化・d07159)と四季咲・玄武(玄冥のルネ・d02943)、そしてラズリフィア・ジュエルディライト(空色少年・d16798)が笑う。
     確かにイフリートのあの手紙は、ひらがなのみの手紙で見にくかった。
     でも、イフリートが頑張って、伝えようとした手紙というのは、何となく解る。そしてクロキバ様の言いつけを、しっかりと守ろうとしようとしているのも。
    「……ともかく、被害が出る前に退治しないと……ですね……でも…………」
    「……ん?」
     内藤・エイジ(高校生神薙使い・d01409)の言葉に、櫛名田・まゆみ(八咬・d03362)が小首を傾げると。
    「……ほんとうはおしえないでほしかったっ! だって、怖くて行きたくなかったからっ。温泉と言えば入浴、つまり裸だから……そんな事になるなら部屋の炬燵で……」
     うじうじと言ってるエイジに、まゆみはぽんぽん、とその背中を叩きながら。
    「大丈夫だって、気にするなよ!」
    「う……わ、わかりました……」
     しょぼーんとしているエイジ。そしてまゆみは。
    「しっかしなぁ……秘境温泉たぁ、イフリートも中々良い場所に住んでんな。しゃくめつしゃみたいなひと、って言うのも気にはなるが、先ずは鎌鼬退治だな」
     ニッ、と笑うと、浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839)も。
    「確かにはぐれ眷族もそうだが、イフリートと言う所の『灼滅者じゃない灼滅者みたいな人』というのも気がかりだ……羅刹の産み出した地獄絵の鬼か、最近出没し始めたデモノイドロードか、或いは……全く違う別物なのだろうか……色々気にはなるが、まずは人的被害を出さない事が第一。はぐれ眷族とは言え、あまり甘く見すぎると、思わぬ所で足下を掬われかねないしな」
    「ああ。さぁ、サクッ、と行こうぜ!」
     梗香にまゆみが頷くと、ユエ・アルテミア(書物蒐集狂・d10468)が。
    「……それじゃ、早速……始めるわよ……」
     と言うと共に、マテリアルロッドに又借り、空飛ぶ箒でふわり浮き上がる。
    「あ、ユエ良いなー……俺も飛びたーい。今度乗せて?」
    「……ん……ちゃんと、荷物持って」
    「はいはーい。りょーかいですよー」
     ユエの荷物を入れたバックパックを背負うラズリフィア。
     そして猫耳フードの付いた白パーカーを被ると共に。
    「それじゃ……頑張って行きましょうか……うう……」
     エイジはネットから印刷しておいた地図を、先頭を歩くラズリフィアに渡して、山中へと潜り始めた。

    ●きた。たおして、きて
     そして山中。
     先頭に立つのはラズリフィア……DSKノーズを使い、業の強い匂いに常に気を掛けつつ、山道を歩いていく。
     勿論足下はちゃんとした登山靴に皆身を包み、給水対策もバッチリにして……傍から見れば、しっかりとした登山客の様にも見える。
     ただ玄武は歩くと大変だからといって、ビハインドにおんぶしてもらっているのと、ユエがマテリアルロッドで空を飛んでいる以外だが。
    「しかし……中々険しい山だよなぁ……まぁ登山するとしたら、これくらい険しい山の方が登り害がある、って事かもしれねぇな」
    「……ん……」
     まゆみにこくり、と頷くフィア。
     ……そうしていると、目の前に横たわる大きな大木が現われる。
    「……どうする……?」
     とユエが小首を傾げると。
    「全くだ。邪魔だなぁ……よっ、と」
     とまゆみが一旦前に出て、怪力無双でその巨木を避ける。
     そして巨木を避けたら更に進んでいき……今度は帰り道と思しき一般人と遭遇。
     飛んでいたユエは少しその場から離れ、パニックテレパス。また玄武も隠れて殺界形成を使用し……威圧して早々にその場を後にさせる。
     そして暫らく進んでいくと……DSKノーズに鋭くその匂いを感じ取る。
    「……ん……匂うぜ。強い匂いだ」
    「に、臭いますかっ……うう……こ、怖いよぉ……」
    「おいおい、大丈夫か? しっかりしろよ!」
    「は、はいい!」
     ラズリフィアの言葉に恐れるエイジを励ますまゆみ。
     ……そして匂いに誘われるがままにその方向へと進んでいくと……鎌鼬がキシャー、と暴れている所に遭遇。
    「げぇっ、鎌鼬!? アッシ要りませんでゲス! オカマイタチとかノォーっ!」
     悲鳴を上げるエイジ……に冷たい視線を投げかける女性陣……と、それはさておき。
    「……まずは一匹、と」
    「ええ……Sie sehen mein Traum、Nergal」
     ラズリフィアに頷くフィア。
     力を解放すると共に、高名、ユエも。
    「我九頭龍乃体現者也……おいで、十六夜……」
    「……おいで、黒の書」
     と、同じく解放……そして皆解放し終わると共に、即座に突撃していく。
     先陣を切るクラッシャーの梗香は、敵の至近で高速演算モードを発動させ自己強化すると、続けて光明、ユエが。
    「行くぞ。閃刃流……九頭竜穿」
     共に打込むは螺穿槍。
     鎌鼬の身体の正中へ、渾身の一撃を叩き込む。
     ピキィィ、と甲高い悲鳴を上げる鎌鼬……その悲鳴が他の鎌鼬に届く前に、速攻連携。
    「潰れろ」
     玄武が鬼神変を穿つと、そのビハインドも合わせて霊撃。
     またフィアも日本刀の二刀流でバトルオーラを放出。
     更に、青き寄生体が一挙に身を包んだラズリフィアは、シールドバッシュを使う事でその攻撃を自己へ引き付けていく。
     クラッシャーと、ディフェンダー陣が、完全に敵の攻撃を引き受けるように動くと、残るまゆみとエイジはそれぞれ中衛、後衛に配置し。
    「よし、内藤! 俺達は味方の強化だ、行くぞ!」
    「は、はいぃ」
     まゆみにこくりと頷き、エイジと分担してシールドリングによる盾の付与。
     そして次のターンは一斉攻撃。
    「立ち塞がるのなら……唯断ち斬るのみ……閃刃流……閃刃」
     言い放つ光明の居合い斬りに、梗香が黒死斬、ユエもフォースブレイクの一撃。
     それらクラッシャーの効果も合わさり、まずは一匹目の鎌鼬が死亡。
    「まずは一匹ー……っと」
     ラズリフィアがまたDSKノーズを使用する……と、すぐ近くから、業の匂い。
    「……どうやらもうおいでになったようだぜ……ほら!」
    『キシィィ……!!』
     間近の木をなぎ倒しながら一匹、二匹……いや、三匹登場。
     流石に一挙三匹を相手にするとなると、中々に厳しい。
    「利くかわからねーが、しないよりはマシだろ……いくぜ!」
     まゆみはギルティクロスの催眠効果を一匹に展開。残る二匹を、玄武とビハインド、そしてラズリフィアがそれぞれ立ち塞がる。
    「ターゲットは……玄武の方で行こう」
    「……了解」
     梗香のターゲット指示に従い、クラッシャー陣とフィアが連携して攻撃。
     勿論鎌鼬らは、反撃してくるが、エイジが清めの風を使用し、的確に回復……手不足となれば、まゆみも集気法により回復を追加で施す。
     ……とは言え数が三匹となれば、難易度も上がる。
    「……負けない。必ず……斬る」
     しかし決して怯む事無く……灼滅者達は協力し、一匹、また一匹……と討伐していく。
     そして、合わせて四匹を討伐し……周りでDSKノーズに感じ取る気配が一旦消え失せるのを確認すると。
    「……ふぅ……」
     息を吐くユエ、そして光明、梗香が。
    「先ずは第一陣終了って所か……ちょっと休もう。下手に休めずにいくと、不意を突かれるかもしれないしな」
    「そうだな……そうしよう」
     そう頷き合うと、イフリートや……手紙にあった「しゃくめつしゃじゃない、しゃくめつしゃみたいなひと」が居ないかを、常にDSKノーズによって注意を継続しながら休息を取るのであった。

     そしてその後も、山中を歩き続け、鎌鼬を一匹、また一匹……と倒し続ける。
     そして空がほのかに夕焼けに包まれた頃……。
    「……と、また来たぜ」
     と、ラズリフィアが告げる。
     その声と共に、現われたのは鎌鼬。
    「こいつで10匹目? ……やっと最後か」
     と玄武が言うと、ユエ、フィアも。
    「……そうね。でも、あのしゃくめつしゃみたいな、しゃくめつしゃじゃないひと……って何だったのかしら……?」
    「……分からない……でも、倒さないと……」
    「ええ……そうだったわね……」
     と、会話を交しつつ……最後の鎌鼬へ一斉攻撃。
     残り一体となった鎌鼬は、その手の鎌を振り回し続けるが……その攻撃で事態をひっくり返す事は出来ず、最後のイフリートも崩れ去るのであった。

    ●たおした? ありがとう
    「……ふぅ、終わった」
    「そうだな……まったく面倒なヤツラだったよな」
     玄武にラズリフィアが肩を竦め頷く。
    「一応鎌鼬は全員倒せたわけだけど……後は、しゃくめつしゃみたいな、しゃくめつしゃじゃない人……というのが気にはなるな」
     と梗香の言葉に、フィアと光明が。
    「……イフリートの、認識……一般人を……指し示している……かも……しれないけど……」
    「そうだな。灼滅者じゃない、ってのは、灼滅者と同じ様な気配をした人という考えも十分に考えられるし……まぁ、もう少し探してみるか」
     と言葉を交しあい、ラズリフィアがDSKノーズを使い、もう暫し山中を探索。
     とは言え……他の気配を感じ取る事は出来ず、その後……イフリートが棲まうという秘境温泉へ。
     湯気立つ温泉に……イフリートはいない。
     でも、湯気立つ温泉はとても快適そうで。
    「おお、これは快適そうだよなぁ!!」
     満面の笑みで、その温泉にざぶんと入浴。
     他の仲間達も、同様に温泉に入浴し……戦闘後の疲れを癒すのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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