学園祭~気紛れシェフの気紛れピザパーティ

    作者:呉羽もみじ

     7月14日と15日の2日間にわたって開催され、多数のクラブ企画や水着コンテストなどで、とても盛り上がった学園祭。
     しかし、その学園祭も、とうとう終わりの時を迎えてしまった。
     だが、学園祭の夜はこれから。
     最後にみんなで楽しく打ち上げをしよう!

     ここは屋台通りの片隅。
     2日間慌ただしく働いた灼滅者達が、心地よい疲労感を味わっているところに、黄朽葉・エン(中学生エクスブレイン・dn0118)が、良く通る声で皆に声を掛ける。
    「学園祭お疲れ様。でも、ちょっと遊び足りないなー、って思ってる人もいると思うんだ。俺も含めて。だから、もう少しだけ学園祭の余韻を楽しまないかい?」
     学園祭の催し物は大盛況のうちに終了しただろうが、それでもどうしても残ってしまう、売れ残りや材料の切れ端。
     そういったものをピザに乗せて、打ち上げ用の特別メニューとして皆で食べてしまおうというのが、彼らの計画だ。
    「ピザの生地とチーズはこっちで準備してあるから、皆は、乗せる具を持ってきてくれれば良いよ」
     調理室からひょっこり顔を覗かせる、水上・オージュ(中学生シャドウハンター・dn0079)も、エンと同じくまだまだ遊び足りないという顔。
    「材料を乗せるだけ、っていうお手軽料理だから、料理経験は無いって人も気軽に来てくれると嬉しいなー。あ、勿論、料理は任せて! って人も大歓迎! 皆でわいわいピザパーティーしよーぜぃ!」


    ■リプレイ

     ピザ。それは、世界創造時の神々の軽食として作られた料理。
     真偽の程は定かではないが、アイスバーンが愛して止まない食べ物。それはピザ。
     肉乗せピザにトマトのピザを重ねピザで挟むという、ピザバーガーを口いっぱいに頬張る。
    「幸せです……。生まれ変わったらピザになりたいくらいです」
     緑色のハーブとカラフルな肉を敷き詰めて。
     はたして食べられるのだろうか、と仄歌は作る手を止める。
    「これも使おうぜ。企画で一番人気だったダークマター。きっとカオスなものが作れると思うぜ」
    「ボク達が食べるんですよね、このピザ……」
    「あ、オレ今腹いっぱいだから」
    「えっ」
     ノックスは、良い笑顔できっぱりと言った。
     日本人のイリスに洋食は合わないから、と国産に拘った和風ピザを作る。
     海産物ピザに山菜ピザ、果てはうどんや焼きそば、ご飯をピザの具にして?
    「和風な感じがしないね。どうしてかな?」
     気を取り直し作るのは鰻ピザ。
    「これを食べて夏を乗り切るんだよ」
     クラブ企画用の執事服を脱ぎ、浴衣に着替えた優貴は、巴と共にピザを片手に、学園祭の余韻を楽しんでいた。
     学園祭の日を慌ただしく過ごした巴にとって、優貴の話す思い出話は、素敵な追体験としてインプットされていく。
    「これで学園祭も終わっちまうんだな……。来年の学園祭も一緒に楽しもうぜ」
     優貴の笑顔と共に言われた言葉に、一瞬きょとんとするも、直ぐに柔らかい笑みを浮かべこう返す。
    「また来年も、よろしくお願いするね」
     【リトルエデン】のテーブルでは早々に美味しそうなピザが並べられていた。
     ハムやトマト等で作ったオーソドックスなピザ。
     たこ焼きやイカ焼き、おにぎりの具等を使ったシーフードピザ。
     鶏としめじ、エリンギと玉葱の上に海苔を散らした和風ピザ。
     パイナップルと焼きりんごとカスタードのピザ。
    「屋台の残り物食材でこれだけの物が出来るのか」
     峻の感嘆の声に作り手である、るりかと香乃果は嬉しそうな顔。
    「ボク、こんなにピザ食べられるなんて幸せ」
    「るりかちゃんのデザートピザも甘くて美味しいの」
    「上にアイスを乗せるともっと美味くなりそうだ。乗せてみるか?」
     峻の提案した、アイスクリーム載せピザは、暖かくて冷たくて。初めての食感に三人はあっという間にピザを平らげる。
    「ねえ、香乃果ちゃん、ボク、リトルエデンを見つけられてよかった」
    「どうも有難う。これからも小さな幸せをいっぱい見付けていきたいな」
     微笑みあうるりかと香乃果を、峻はジュース片手にそっと見守っていた。
     ミカの準備した食材は、桃、エビチリ、カニクリームコロッケ。
    「桃以外、今食べたかったもの準備したけど……まあいっか」
     円の準備した食材は、カツオのたたき(半額)、高級カマンベールチーズ、中華スープの素。
    「単体でも食えるし」
     互いの持ち寄った食材に憎まれ口を叩きつつ。
    「お互い持ってきたの全部乗せてみよーぜ」
    「ピザに乗せる為に買ってきたんですから、ね」
     そこには、カツオがこんがりと焼かれ、モモの甘い香りと中華っぽい香りが混在するという摩訶不思議なものが。
    「……、凄いピザできたんだけど、誰か食べてみたい人~!」
     ――しかし返事はなかった。
     カマンベールにモッツァレラ、ゴルゴンゾーラ。
     もうひとつは生地にバターと蜂蜜をたっぷり塗って。
     チーズの焦げる香りと、蜂蜜の甘いが漂えば、百花のお腹が控え目に自己主張する。
     お腹の虫を治めようと、ハニーピザをぱくりと頬張る。
    「もも、これがあれば何にも要らな……」
     恋人のエアンの作ったチーズピザも気になるようで。思わず、じいぃぃ。
    「どちらも楽しめるし半分に分けよう。二人で半分、楽しさも嬉しさも。幸せは二倍だね?」
    「……幸せは、倍以上です」
     エアンの言葉に百花は頬を染めて俯いた。
     焼き立てのピザが食べられると聞いて。
     我先にとやってきた、奏と夏海は早速ピザ作りに取りかかる。
     夏海は焼き鳥や唐揚げ、焼きそばを載せ、仕上げにチーズを被せる。
     奏はどんなものを作っているのだろうと覗きこんでみれば。
     たこ焼きに焼きそば、イカ焼きは軽く刻んでたっぷりのチーズに絡めて。
     オーブンで焼けば屋台風ピザが2枚完成。
     奏のピザが気になる夏海は、自分のピザそっちのけで一口頂戴と強請り、口元に運ばれたピザを齧れば「美味い!」と幸せそうに笑う。
     お返しに齧られたピザを、美味しいと評されれば「もっと食べて良いぞ!」と嬉しそうな顔。
     高校最後の学園祭をずっと笑って、――今も笑い合って。
    「また一緒に遊ぼうな?」
     夏海は当然と言いたげに頷いた。

     【駅番】のメンバーに大文字から課せられたミッション。
    『デリバリーピザを作れ』
    「どんな具材なのか解らねぇが……きっとウメェに違えねぇぜ。チラシで見たんだ」
     伝説の食材『デリバリー』を求め団員達は走る!
    「美味しそうなピザですね、ちょっと分けてくださいお願いします。……デリバリーを我らが大将に届けないといけないんです!」
     花色が無き落とし作戦を敢行したり。
    「あっすみませんお邪魔します。そこのトマト分けて貰っても良いですかダメですかそこをなんとか!」
     奏が無き落とし作戦を敢行したり。
    「ポテト山盛り下さい。どがーっと! ――ピリ辛チキン? いいな、それ。わけてくださいっす! ……強奪言うなし」
     善四郎がちょっと強引にねだってみたり。
    「すみません、デォリバルィェ(巻き舌)持ってませんか?」
     なかなか成果の上がらない恭太朗が、試行錯誤の末、素敵な発音で食材を求めてみたり。
    「鶏肉とトマト、少し分けていただけないでしょうかっ。その代わり、色々お手伝いします」
     謳歌が、食材を貰う代わりに手伝いをするという正攻法で攻めてみたり。
    「すいませーんデリバリーくださーい! えっ? これをピザのところまで運べばいいの?」
     夏蓮もお手伝い要員としてあちこちを忙しく飛び回ったりもしながら、デリバリーを収集していく。
    「おっしゃー貰って来たぜー! ブッコロだかシャッコラだかっていう名前の葉っぱ」
     なんか怖い感じの名前の葉っぱを分けて貰った蓮次が団員達の元へと走る。
     そこには、
    「トマトと鶏肉は究極の駅番特製デリバリーピザには不要だ! 全力で排除しないと!」
     と、熾が苦手らしい食材をせっせと取り除き、除去作業が終わったのを見計らって、
    「好き嫌い、いくない……」
     と、舞依が愛する兄の為に、取り除かれた食材をそっと戻し、ついでにあちこちで貰ってきたフルーツもピザの上に乗せる。
     最後の仕上げに人が女性の胸部を模した、セクスィな感じのプリンをごってり乗せる。
    「さぁさぁ食べたまえよ! むさぼるように食べたまえよ! あるいは……揉みたまえよ!」
     かくして、ピザは焼き上がる。
    「これは……斬ッ新ッ! なんて美味そうなんだ! 番長! 俺達の愛が籠ったスーパーダイナミックデリバリーピッツア! 受けとれぇぇい! 」
     しかし、感動しているのは龍暁のみ。
     発起人である大文字も腰が引けている。
    「……おれは皆を信じるぜ」
     ぱくり。
     ――ブラックアウト。
     続きは皆様の心の中でお楽しみください。

     【空部】のコンセプトは「好きなものを乗せて、食べる」。
     供助は、ソーセージにサラミ、肉団子をを乗せて。特製「肉ばっかりピザ」。
    「体に悪い感じの野菜のなさ……!」
     野菜はソースに使ったトマトだけだから、そう思うのも仕方ない。
    「好みのものに集中するのは理に適ってると思う」
     という訳で、アシュは甘いものに特化し、リンゴやバナナを乗せたデザートピザを作り始める。
    「……さすがにケーキ乗せるようなセンス感はないけどね?」
    「え、ケーキは乗せナイの? アイスは?」
     アシュの呟きに朱那は首を傾げる。
    「堀瀬、アイスはせめて焼けてからな」
    「あ、夜斗のピザお店で見るようなのだ! 焼く前からイイ匂い!」
     玉ねぎ、サラミ、ピーマンの上に香草を散らした、夜斗の作るピザはスタンダードなもの。が、だからこそ味を連想し易く、朱那は感嘆の声をあげる。
     出来あがった3枚のピザを皆で食べる。
     折角作ったものだから、残さず食べると意気込んでいた夜斗だが、あまりの美味しさに「残す」という選択肢は始めから必要なかったようだ。
     【そよ風クラブ】では個性溢れるピザを着々と作り上げていた。
     ナツメ、陳皮、ピータン等を使用した瑠璃羽特製、薬膳ピザを見て、悠基と由燠は虚ろな瞳。
    「……何か言った?」
    「俺は何も言ってないぞ?」
     有人はそんな話題沸騰中のピザを一口食べ、少し思案しカレー粉をぱらり。
    「カレー粉には様々な具の味や香りを、一つにまとめる効果があるんですよ」
    「皆様、出来上がりましたよ~。名付けて【黒橋☆すぺしゃる】ッ!!」
     恭乃が運んできた巨大ピザがどーんと机に乗せられれば、通行人も思わず足を止める。
    「恭乃のピザ美味っ! ……俺のも食えないことはないだろ?」
     不安そうに差し出された由燠のピザは、鶏、豚、牛、羊と肉をふんだんに使った、肉好きの肉好きによる肉好きの為のピザ。
     メインのピザを食べ終えれば、デザートピザがお待ちかね。
     瑠璃羽のバナナカスタードのチョコがけピザに、有人の作ったカスタードクリームにミルクティを混ぜたソースにサクランボをトッピングしたピザ。
     デザートピザを作るグループに使って貰おうと、会場内を回っていた静穂の枇杷もピザの上にちょこんと鎮座。
    「ミルクティー、美味しい! 今度レシピ教えてね!」
    「バナナチョコ! 俺大好き!」
     チョコにピザってしつこいような。そんなことを言いながらも、悠基は残さず平らげ、仕上げに胃薬をごくり。
    「これで……全てなかったことにするんだ」
    「エン君はどれが美味しい?」
     客として招かれたエンは、そうだなぁと一言言って黙り込み。
    「全部美味しかったけど、薬膳ピザは斬新で面白かったと思うよ」
    「本当? じゃあ、残さず食べてね♪」
    「え、……あ、いや、喜んで」
     部長の咲夜がグリュック王国で囚われてしまうという、まさかの事態に【占い研究会】の面々は少々気落ちしていたが、悲しんでいても仕方がない。
    「あの子の分まで後夜祭は楽しむわよ!」
     明美の号令に皆は元気良く拳を上げる。
    「上手くいけばトッポギの様な感じに……」
     桐香は自分の直感を信じ、うどんを生地に乗せ、
    「ハムとツナと、いちごとパイナップルと、生クリーム。多分、おいしく、できると、思うのですー」
     世寿は総菜とフルーツ、生クリームという奇跡のコラボを実現しようとし、
    「用意してた材料とか余っちゃいましたからねー、全部いっちゃいましょうっ!」
     ゆいながどっさどっさと材料を乗せる。
     エデの作るピザは苺やバナナをクリームでデコレーションし、仕上げに金平糖をトッピング。
     完成したものを全て机に並べてみれば、
    「……ふ、普通のピザがボクのしかない!?」
     朱音が悲鳴に近い声を上げる。
    「ふわぃじょーぶ、おいひいよ?」
     口いっぱいに頬張り幸せそうな顔のゆいなを見て、
    「朱音ー、一切れもらうわよー」
     と明美も一口齧ってみれば、自然に笑顔が零れる。
    「緋薙先輩の、いただきます、です。……もちも、ち……ぱりぱ、り?」
    「世寿さんのもカラフルで見た目も楽しいですし、美味しくて幸せですわ」
    「で、そっちのがせっちゃんの?」
     ぱたり。
    「明美お姉ちゃん、大丈夫なのですか!?」
    「世寿ちゃんのハムとツナの部分はおいしいんだよ」
     占い研究会は今日も平和です。
    「みんな元気だよー! 早く帰ってこ~いっ」
     エデは、遠い地にいる咲夜に届けと精一杯声を張り上げた。

     【有閑倶楽部】はハーフ&ハーフの特大ピザを作る予定。
    「雅ちゃんとボクでデザート部分を、マハルさんは海鮮部分をよろしくです♪」
     くるみと雅は、フルーツを思い思いに載せていく。
     甘い香りのデザートピザに触発され、海鮮部分はスパイシーにしようと思い立つタージ。
     甘さと辛さが混在するピザが完成すれば、くるみは手早く切り分ける。
    「それでは最初は部長のマハルさんから……あ~ん♪」
    「スイートピザだね、とても甘いよ。くるみにも、食べさせてあげるね。はい、あ~ん?」
    「あ~ん……えへへっ♪」
     照れつつも、タージからピザを食べさせて貰ったくるみは、とても嬉しそう。
    「あ、私も~」
     ふたりに続いて、雅も完成したばかりの熱々のピザを頬張る。
     少々大きなピザになってしまったが、
    「でも、きれいにできたから満足です♪」
     雅は楽しそうに微笑んだ。
    「熱いよー気をつけてね」
     亜理栖はそう言い、【井の頭中学3-G】の皆が待つ机にピザを置く。
     何故熱いのか知っているのって? それは持っていく途中で少し食べてしまったから。
     そんな焼き立て熱々を皆の元に運ぶ大任を果たし、ふうと一呼吸。
    「見て見てこのトローリ具合」
     結弦の作ったピザはチーズ3倍増しの特別製。落ちるチーズを慌てて食べ、舌を火傷するのも醍醐味かもしれない。
     クラリスが持参したキノコと、裕也が是非にとリクエストしたウインナーたっぷりピザは、シンプルがゆえに幾らでも食べられる。どうせなら変わり種、と思っていたなをも、美味しいピザに舌を巻く。
    (「あの頃はまだまだ周囲に馴染めずにいたものだが、今はこうして……」)
     一年前では考えられなかった光景。食べる手をふと止め、黎嚇は感慨にふける。
    「シャーベット、持ってきたけどいるー?」
     結弦の声に我に返り、自分も欲しい、と黎嚇は手を上げた。
     カレーソースをたっぷり塗って、野菜にソーセージ。
    「じゃじゃーん、夏野菜カレーピザ!」
     いち早く完成させた遊は、【井の頭2-6】の皆がどんなピザを作っているのか興味津津。
     嘉月は自家製トマトソースに、クラス企画で使用した新鮮な野菜、鳥肉をトッピング。横から、
    「寺見の所の野菜くれくれ」
     とねだる玲の手にトマトやピーマン等の定番の野菜達が載せられる。
    「このままじゃつまらないな」
     と、企画で使った団子を幾つかトッピング。
     少し不格好でも美味しければ問題ないということで、配置を気にせず自由に載せる。
     由宇は、半分にバジルやサラミを載せたオーソドックスピザ、もう半分は、ベリー系の果物に、団子をトッピング。ご飯ピザとデザートピザ。一枚で二度美味しいハーフ&ハーフピザの完成だ。
     嘉禄が作るのは和風デザートピザ。生地に餡子を伸ばし、団子とチーズを満遍なく。抹茶、黄粉、みたらしソースの三種を混ざらないように慎重に塗って。
     焼き上がったピザの良い香りに、伸びそうになる手を抑えつつ、参加できなかった人の分を横に確保して。
    「飲み物は行き渡ったか? 誰か貰ってないヤツはいないか?」
    「学園祭、お疲れ様でした。乾杯!」
    「「「かんぱーい!」」」

     【宵空】の面々は競い合うようにピザを作り始める。
     シーフードミックスにチーズ、ケチャップをかけソースも混ぜて。青海苔かけてもいいんじゃね?
    「しまった……まぁ愛情込めれば美味しくなるっていうし」
    「愛情ってなんだろうな……」
     朔之助の作ったピザを見て、葵は虚ろな瞳。
     そんな葵の作るピザは、カスタードクリームにバナナとマシュマロを載せ、チョコソースを掛けたデザートピザ。
     その横では七がちょっとしたスパイス的な存在になるかしらんと、キムチピザを作成中。
    「ふんだんに! ふんだんに! 盛り付けるぞー。大切だから二回言いました」
    「人間の食べられる辛さでお願いシヤス!」
     食べる前から涙目な透の作るピザは、各種チーズをどっさり、味付けした肉もどっさりの食べ応えがありそうなピザ。
    「……野菜? ナニソレ?」
    「お野菜も食べないと大きくなれませんよ」
     と突っ込む小学四年生、咲耶が作ったピザは、豆乳ホワイトソースに、具は鶏肉、白葱、しめじ。
     下味は醤油麹で八分通りまで火を通してから乗せるという手の込みっぷり。
    「皆のピザ、とても美味しそう。私も頑張るのよ!」
     皆の様子をにこにこと眺めていたオデットが、張り切ってピザを作り始める。
     夜に見立てたイカ墨ソースに、月のような卵の黄身、星型のハムに、カニカマでかに座を表現。
    「今回のクラブ企画のイメージで作ってみたわ」
    「ふは。どれもんまそーだ」
     嵐はまずは自分が作ったものをと、餅とタラコのピザを食べようとし、ふと思いつく。
    「普通はグラスで乾杯だケド、ここはピザでやるか? なんてな」
    「ピザで乾杯か、面白いかもな」
     茶化して提案を取り下げようとしたけれど、皆はピザを片手にスタンバイ。
    「かんぱーい!」
     ピザが触れあった時に、チーズがびよーんと伸びたのは御愛嬌。
     複数いれば、それぞれの趣向が集まる訳で。【Innocent Rose】にもそれは当然当てはまる。
    「本を読んで具を選んでまいりました」
     夜一は、野菜やベーコンをバランス良く配置したお手本のようなピザを作る。
    「野菜も沢山取れそうなのでいかがでしょうか」
     そんな夜一のピザとは対照的なイリヤのピザは鳥肉や豚肉をメインに使った成長期の男子には嬉しいボリューミーなもの。
    「焼肉みたいな匂いがするかも」
    「美味しそうだよ。後でわけっこしようね」
     きらきらとした瞳で言う、海松の手元にはケチャップの上に果物を載せ、その上にハーブを散りばめて。
     見た目はもう料理というより、実験材料の様相。
    「海松さん……それ、大丈夫です、か?」
     心配しつつも手は休めないアレシアが作るピザは、マヨネーズに玉ねぎと納豆という和伊折衷。
    「料理したら何ができるかもわからん俺がピザ作るとか死亡フラグやないの……」
     微妙にしょんぼりしつつ、夕眞はチーズを生地にばらまく。
    「生地とチーズ、とりあえず食えるはずだ」
     焼き上がれば、皆で切り分けて。
     美味しそうなものも、不思議なものも。皆で美味しく頂きました。
     貴子と稜の誕生日が近いということで、【武蔵境2G】はバースディピザを作ることに。
    「生地はブ厚くてトマト沢山入れる感じー?」
    「ピザにロウソクって立つかな?」
    「いちごの代わりにミニトマトを乗せて……、ほら、すっごくそれっぽく……見えるよね? ね?」
     賑やかにピザ作りは進行していく。
     完成したピザに二八本もの蝋燭を立て。
    「誕生日おめでとうと学園祭お疲れ様」
     夏槻の笑顔に貴子は思わずほろり。
    「お誕生日までお祝いしてもらえるなんて……」
    「だが、お祝いだからといってピザを譲って貰えると思ったら大間違いだァーッ!」
    「ピザは早いもの勝ちなっ」
     七緒と斬が一気にピザに襲いかかる!
    「ぼ、僕と神坂さんが主役じゃないの!?」
     そんなこんなで、ピザはあっという間に平らげられ、思い出話に花が咲く。
    「キリーの浴衣可愛かった、和央も着てくればよっかったのに」
    「妹さんもかわいかったよね。……しまった、写真を撮り忘れた!」
    「妹の写真ならあるぜ? 欲しいか?」
    「ほしいー!!」
     楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、
    「来年もまたみんなで後夜祭出たいな! 今年いっしょに参加できなかった奴もいっしょにさ?」
     斬の提案に皆大きく頷く。
     戦いに身を置く灼滅者達は、平穏な明日が来る保証はないけれど。約束が未来に繋がると、そう信じて。

    作者:呉羽もみじ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月30日
    難度:簡単
    参加:74人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 15/キャラが大事にされていた 5
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