7月14日と15日、2日間に渡って開催された学園祭。
多くの企画が開催され、おみやげにコンテストに盛りだくさん。
そんな学園祭も、もう終わり――。
「でも、学園祭の夜はまだまだこれからです。皆さん、打ち上げをしましょう!」
学園祭での余韻がまだ残る花咲・冬日(中学生エクスブレイン・dn0117)の声は、まだ熱を帯びる。
冬日が示したのはグラウンド。
その広い場所を使って、学園祭の終わりに、大切な人、或いは同じ学園の知らない誰かとダンスを踊ろうと冬日は言った。
「でも、せっかくだから最後まで学園祭を楽しんじゃいませんか?」
冬日は言う。
ただ踊るのでは無くて、大切な「誰か」を探し当てて手を繋ごう、と。
冬日はランプを用意して、次いで自分を指差した。
そこには白い犬のつけ耳と、つけ尻尾。
「今日は月がとても綺麗。だから、照明はお月様と、このランプだけ。そして、踊る相手はこのランプと、ランプに照らされる影だけで探すんです。お互いを探し当てたら踊りましょう――そんな提案です」
ルールは簡単。
ペアならお互いに、つけ耳側とランプ持ちに。
グループならば同じように複数人でどちらを持つか分かれる。
どんな耳を付けているのかは予め伝えていても構わない。
そして時間になれば別々の場所からグラウンドに集合し、探索スタート。
ランプ持ちがランプを掲げて、あの子の耳を探し出す。
もし1人で参加しても、灯りに照らされた素敵な耳の、新しい出会いがあるかも知れない。
そして無事に「誰か」を探せたらランプを消して、手を取って月の光の中で踊り出す。
最後に皆が大切な誰かを探し当てたら、灯りは月だけになるだろう。
きっと、それはとても素敵な思い出になってくれるはず。
「私も耳を付けて行きますから、もし良ければ、声をかけてくださいね」
冬日は笑って、そろそろ行きましょうかと夜のグラウンドへと翻る。
さて、貴方は誰の姿を、灯りに探す――?
●
灯る明かりは探し人。
あなたの影は――。
●
「僕はここにおるよ~」
なんて、斎槻は思わず言ってしまう。目立つように、耳も尻尾も大きくして、くるくるきょろきょろ。
「何あれカワイイ、っていうか。萌え……」
ランプ持ちの葵は勿論見つけていたけれど、もうちょっとだけ観察していたくて足が止まる。けど、見つけてあげた斎槻は嬉しさのあまり尻尾が振って見える程。
「葵さん、僕と踊ってくれる?」
最後まで一緒にと思いながら、でも、終わって欲しくないこの時間。
由燠と瑠璃羽は耳同士で探し合い。
灯りが無いのは寂しいけれど、由燠はきっと、ピンと尖った耳にふさふさ尻尾。瑠璃羽はきっとたれ耳つけてる筈。
思いは同じなのに、あの影も、この影も違うと探す瑠璃羽の後ろには、そんな可愛い姿を堪能する由燠の影。
「由燠君、みーつけたっ♪」
「あっ……」
不意に振り向かれて見つかった。嬉しそうにジャンプして抱き付かれるのは、抱き留める幸せ。
じゃあ、先に行ってるからねと置いてかれた花音は、それでもその耳は想像出来た。
けれど見つけたのは、背も低くて眼鏡も無い。でもそれは、奈津の意地悪だと気付いてしまった。
「奈津兄、見つけた……」
何度となく必死で追いかけた背中、間違うはずは無くても少し不安だった声を聞き取れば、奈津は猫の耳を花音につけてあげる。
「夜目が効く花音は、俺よりずっと猫さんだな」
じゃれつく笑顔は、幸せの証。
結月はうさぎ耳、竜生は狼耳。
2人で決めた耳同士、はやく見たいと焦っても、辺りが月明かりしか無くっても、それで十分。
迷わず見つけた2人は抱き付き合う。
「ゆきうさのこと、迷わないで見つけられた?」
「うん、迷わなかったよ。狼は鼻が利くからね」
静かにのんびり踊るダンスに、また来年も過ごそうねと、うさぎと狼は笑って手を繋ぐ。
マッキの足取りは堂々たるもの。
優希那が変身しているのはいつも見てるから。
「ゆきな! 見つけた!」
「えへへ、マッキ様なのです~! 見つけたのです~!」
暗くて泣きそうだったポメ耳も、尻尾ぱたぱた振りそうなくらいに満面の笑み。
リードは全部マッキのもの。赤くなってぎこちない優希那を、マッキはひょいと抱き上げた。
「ゆきなは軽いな」
あばばばばと恥ずかしがって真っ赤になるのも、愛おしい。
(「近くでこっちのこと見てるんじゃないかな。ああ見えて結構寂しがりですし。あと、猫の耳かな? ただあんまりあっさり見つけちゃうとつまんないって言われそうな……」)
そんな夏樹をリコは案の定先に見つけていた。
――近くて遠い。けど、こんな風に相手のことがわかるくらいの付き合いを実感して、夏樹は小さく笑う。
リコに夏樹が気付けば、珍しいスカート姿は、似合っていて可愛いと手を取った。
友梨は簡単には捕まらないと言っていた。
別に、隠す事じゃないけれど、2人でいるところ見られるのは恥ずかしいというか照れくさい。静流といる時は情けない顔してるだろうから。
だから隠れてしまった友梨を静流はランプで照らし出した。
少し追いかけっこをしても、最後はしっかり捕まえる。逃がさない。
顔を隠すように友梨は静流に抱き付いて、――こんな風に踊るのは初めてだねと、ステップ1つ。
さて何故こうなったのかというと、ゲームに負けたから。
決して友達以上ではないと強調する影薙の猫耳を見たかったから、祐一は問答無用でランプ持ち。
クラブ以外で会うのは初めてだから手間取った祐一に、「遅いじゃない」と影薙はにべもない。
来年はもっと早く見つけるからさと手を触れて、見よう見まねで踊るけれど。
「必要以上にくっ付いたら即座に蹴り上げるわよ」
「影薙、俺のこと警戒しすぎじゃね?」
その1歩を、影薙は踏ませない。
回れなかった学園祭の、思い出を。
黒猫の明はくすりと笑う。
見つけてくれるかな。見つけてくれたら良いなぁと。
梓は仮面を外して手を差し伸べた。
「お待たせしたな。一緒に踊ってくれるか、お嬢さん?」
消したランプに重なる掌。好きに踊っても、受け入れてくれる。
素敵な思い出を、こうやって増やしていこうと言葉も重なる梓と明は、パートナーだから。
赤い猫耳はぐるぐる回る。
式を先に見つけてしまったから、でも見つけて欲しいから。
そうしていれば消えるランプ。あれっと思えば後ろから温かい掌が視界を塞いだ。
「だ~~~れだ?」
「式君! 捕まっちゃったっすね。それじゃあ、一緒に踊ろうっす」
無邪気に笑う菜々にたまらず式は抱き締めた。この鼓動すら聞こえても良い。
「言葉に表せない位、大好きになっちゃったから。その……」
頬を真っ赤にした式が、強く、強く、見つめ合う。
灯りが消えるのは、不安になる。
他の誰かに見つけられてないか、なんて思うけれど、求めるのは大切な友達、ひよりの白猫耳。
近付く影が悠だと気付けばひよりは手を差し伸べるけれど、それより先に悠が強く抱き締めた。
「ハッ、わ、悪い……!」
慌てて離れる悠の手を、ひよりはしっかり握りしめて。そういえば、繋いだのは、これが初めて?
何でだろう、少し照れてしまうけれど。
言葉に出来ないこの気持ちが、繋いだ手から伝わるように強く握って、探してくれてありがとう。
●
白いウサミミがぴょこんと揺れる。
慣れたように陰を進んで、コリンが探すのは深くて静かなアンバーと、優しく暖かいアメジスト。
それを見つめるのは朝礼台に腰掛けた黒と灰色の耳の主。霊犬を連れた杣は、消えていく灯りにくすりと笑う。
探されるランプはここだよと高く掲げられて、――こっそりきゅっと握られた。
見つけたわよ、と杣が言う。大丈夫、繋いでいたら離れないよとキラフが言う。
夜は怖くないけれど、もう少しくっついててもいいよねと、重ねたコリンの掌は、皆お揃いの陽華が彩っていた。
そんな静寂に身を任せるのも、今は不思議な気持ち。
ひとりぼっちを探す鏡のランプに、見つけた白い耳。
「こんばんわ、おひとりならば、一緒に踊りませんか?」
鼻歌交じりのその声に、冬日は掌重ねて踊り合う。
またいつか出会える日までの、そんな一時に手を振り合えば、
「見っつけましたよー!」
「その声――かなめさんですね!」
ビシィッと指突きつけ合うのは2人の挨拶。かなめと冬日はくすりと笑えば手を繋ぐ。
お月様が友達になりたい人を引き合わせてくれたなら、それはとっても嬉しいもの。
「それが花咲さん……いえ、花ちゃんさんです」
大丈夫。冬日は手を握る。
「貴女は私の、大切な友達よ」
にっこり笑ったかなめが始める大回転に思わずぽーんと飛ばされた冬日が顔を上げれば、緊張した面持ちの影1つ。
「俺と踊ってくれる?」
なんて、手を繋ぐのも緊張している芥汰の姿。
冬日は白耳をぴんと伸ばして、「シラタマさんとお揃い」と猫の真似。
くすりと2人笑い合えば、描く花壜の思い出。
「お客サンだって大切だろ。――冬日」
「ありがとう、芥汰さん」
名前を呼んで、名前を呼ばれて。頷く代わりに掌握り返せば、2人この星の巡りに感謝して、またねの約束1つに尻尾が揺れる。
●
(「……あれ、なんだか」)
白犬の亮を探す苑果が感じるのは、優しくて温かな視線。
亮はそこに居た。先に見つけてしまったけれど、苑果が見つけてくれる約束だから、声を待っている。
見つけ、ましたの言葉が2人の合図。初めてのダンスでも手を取って。
「さぁ、踊ろうか、お姫様!」
――この温かい気持ちは、何だろう?
月に灯る桜色は2人の合図。けれど期待と不安に足が止まる。このまま、1人だったら?
「心っ……!」
明莉は強く強く抱き締める。
見つけたのは、高鳴って泣きそうな位に嬉しい心桜の肩。寂しかったの一言で、全て理解出来る愛おしさ。
「学園祭、楽しかったのじゃ」
「俺も、楽しかった」
伝えきれない想いと言葉は胸の内。今はまだ、もう少しこのままで。
黒い猫耳は見つけにくいけれど、神流なら必ず見つけてくれると、霧は信じて待っている。
そんなの当然。だって、
「この学園で霧ちゃんと出会えてこと自体が奇跡なんだ。そして僕はもう迷わないし離れないって誓ったんだから」
聞こえた声に、照れながらも嬉しくて思わず伸ばしてしまった霧の手と手が触れたなら、これから2人、きっと今みたいに踊るように歩んでいける。
月下に待つのはマーメイド。
鰭の耳は難無く見つけることが出来るから。
「こんばんは、人魚さん。どうかワタクシと一時を過ごしていただけませんカ?」
役目を終えたランプを吹き消して、ラルフと夜好で刻むダンスはまるで月が太陽に照らされて輝くよう。
笑顔の華が、ぬくもりに咲く。
彼の耳はすぐ見つけられるはずだからと――思ったけれど。
蘭世は紫信を見つけられない。一人ぼっちみたいで、胸が、痛い。
「蘭世さん……!」
零れる涙を止めたのはピンクウサギの紫信の声。
ここにいるからと抱き締められれば平気な振りなんて出来なくて、涙が伝う。けれどもう出会えたから。
「笑って? 僕らも踊ろうか」
「うんっ、紫信くんが来てくれたからもう、大丈夫なのですよ♪」
こげ茶の耳の瑚々は、振り返る。もしかしてあの人かも、なんて思っていると、差し伸べられるのは誰でも無い唯識の掌。
暗い中ごめんねと共に引き寄せられる。
灯りはいらない。もうこんなに近いから。
じっと見つめると頬が熱くなるけれど、
「僕と一緒に踊ってくれませんか」
そんな殿方らしさも、甘えたいくらい好きだから。
「喜んでお受けいたします、私の……灯りさん」
桃灯りを高らかに照らして探すのは白虎の耳。
人混みは苦手だと知っているから、煉の声は誇らしげ。
「やっぱりいた。紋」
けれど照らされたのは、白兎の耳。隠すなと低い声で掴まれた。
「ちが、み、見間違え……!」
なんて、後の祭り。可愛い。嬉しい。愛おしく抱き締めれば額にそっと紋次郎が触れた。
何がなんて知っているのはお月様だけ――踊り方も忘れるくらいに、顔が熱い。
手を取った2人には、外さない互いの指輪。
「shall we dance」――「Sure, I'd love to」
合言葉のように笑ったのはランプの空に黒猫灯倭。
月明かりが思ったよりも明るいから、空の顔が見えて安心する。灯倭が可愛く照らされる。
空に少しリードされて、まるで灯倭は物語の中のお姫様。ガラじゃないなんておどけても、空は言う。
「灯倭は俺にとっては立派な姫君だよ」
――それはとても、幸せな、気持ち。
悪戯な黒猫は愛。
さっきからそれらしい姿を見かけるけれど、紛れてしまう。不意を突けばしっかりと千歳はその手を握った。
「あらあら、見つかっちゃったねぇ……」
けれど愛はとても嬉しそう。照れて赤くなってしまうけれど、しっかりその目を見つめて、千歳は執事のように丁寧に頭を下げた。
「また僕と踊ってくれますか? お嬢様」
重なった掌に、今回は上手に踊れるはずだから。
重巳が探すのは茶色の犬耳。
不安だけど――見つけたアイリスは、隠れる気なんか無かったと、重巳は知ってる?
「あのねあのね、誘ってくれてありがとう。重巳は優しいね。あたし、重巳のそういう所好きだよ」
そう言ってくれたアイリスに、重巳が伝えるのは、ある言葉。
「……月が、綺麗ですね」
伝わらなくても。本当の言葉に出来ないなんて、情けない気もするけれど、差し出されたのは赤いコスモス。
「あたしも重巳が好き」
匂いを探せば楽なのに、駄目と言われてしまったけれど。白兎は何処に居ても見つけられる。
少しだけの不安も、聞き慣れた声に遅いわよと巳桜は微笑んで。その姿に知らず安堵の色がアルトに宿る。
初めてのダンスに足を踏んでしまってへたくそなんて言われても、巳桜が此処に居るのが嬉しい。
隣に素敵な王子様が居て、童話のような世界と巳桜が笑う。
月の下で共に過ごすのも好きだとアルトが重ねた。
正流は灯りを消した。
澄ます耳に聞こえるのは2人だけが知る凱歌。
「見つけましたよ、我が歌姫」
「私と踊ってくれるのは貴方?」
1人静かに踊る黒猫の手を取って、甘く囁く演技に任せ。
踊り疲れて抱き上げたなら、律希から重ねる初めてのキス。
受け取りなさいと演技のまま言えば、再び交わす二度目の口付け。
「では貴女にもご褒美を……」
「……もしこのまま見つからなかったら」
と、不安に駆られた千尋は不意に後ろから抱き締められて、耳元で囁かれた。
「捕まえましたよ。僕の方が早かったですね」
その手のランプが消えているのは、ゲイルのちょっとした意地悪だけど、鼓動が聞こえる程に嬉しくて、恥ずかしい。
淡い灯りの中で重ねたファーストキスは、千尋を緊張と喜びで震わせる。
時よ止まれ。今この瞬間を永遠にと――願いながら。
緩り彷徨い、辿り着く。
暗がりでも鮮やかな可愛い白兎。
「見つけてくれてありがとう。王子様!」
嬉しさに跳ねるシェリーを抱き締めて、七狼は改めて胸に手を当て誘いかけた。
「姫君、俺ト踊ってくれませンか」
冬に一緒に踊ったから、七狼はステップを踏める。
シェリー、と、不意に名前を呼べば、暗がりの抱擁と口吻。
重なる影の秘め事は、2人だけの秘密だねと笑いながら物語の続きを約束する。
君と思い出、多く刻んでいきたいから。
柴犬耳のエイダがくるりと回る。
何も伝えられていなくても、柴犬耳だと確信があった。だから呼ぶ。
「アディ、見つけた」
青士郞の名を呼べば、歌ってくれるエイダのメロディ。
ステップの振りして一歩近付けば、浮かんだ心の言葉。
「あのね、さっき……せいしろさんが、王子様に……見えた、ですよ」
青士郎が微笑む、大好きな、マイ・フェア・レディ。
灯りが消えて、見つけたあなたを月が照らした。
踊る影はあなたと一緒。
見つけた掌、繋いだ手は、もう少しだけ、あなたとこのまま――。
作者:斗間十々 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年7月30日
難度:簡単
参加:58人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 15/キャラが大事にされていた 0
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