学園祭~祭りの余韻に舌鼓を

    作者:篁みゆ

    ●祭りのあと
     7月14日、15日の2日間にわたって開催され、多数のクラブ企画や水着コンテストなどでとても盛り上がった学園祭。
     しかしいずれ終わりは来る。その学園祭もとうとう終わりの時を迎えてしまった。
     だが、学園祭の夜はこれからだ。
     最後に、皆で楽しく打ち上げをしようではないか!
     
    ●舌鼓をうつ
     ここは校舎の傍に用意された特設屋台通り。
     企画の後片付けをしながら売れ残ったものを食べたり、皆で残った料理を持ち寄って楽しんでいる生徒たちで賑わっている。
     店番が忙しくてあまり食事に行けなかった者も、ここに来ればいろいろな料理が食べられることだろう。もし持ち寄る料理がなくても、声をかけてみれば分けてくれる人もいるはず!
     集まった人達と交換するのもまた一興。初対面だから遠慮してしまう? そんな空気など吹き飛ばしてしまうのがお祭り効果。きっと、打ち上げが終わるまでその効果は続いている。
     お腹を満たしながら、学園祭の感想について語り合うのもいいだろう。売れ残ったものを臨機応変に調理して新しい料理を作ってしまうのも面白いかもしれない。
     みんなでわいわいと食べれば、いつも以上に美味しく感じるはずだ。
     屋台そのものの撤去は明日、業者によって行われるので、ゆっくり食べても問題ない。

     心地よい疲労感をいだきながら、祭の余韻に酔うのも良いのではないだろうか。


    ■リプレイ

    ●わいわい
     祭の後の祭は、今まさに盛り上がりの最中だ。
    「グルメストリート1位のイフリート焼き食べませんかーっ。今食べないと損しちゃいますよーっ!!」
     【炎血部】の唯が声を上げる。その隣で淼は持ち込まれた食材を臨機応変に調理していた。
    「学園祭で人気だったもふリートです! 今ならばイフリート焼きのミックスもありまーす!!」
     法子もまた、着ぐるみの上だけを脱いだ格好で呼び込みをしていた。それを着てずっと文化祭に参加していたらしい。『よくあること』なので気にしてはいけないとか。
    「イフリート焼きあるかな?」
    「そっちに顔出せなかった詫びだクラブの皆で食べてくれ」
     覗きこんだ殊亜に淼は聞かれた品だけでなく大量の料理をもたせる太っ腹。側にいたユリアにまでイフリート焼きを3種手渡して。
    「……イフリート焼きとその人形焼交換しませんか?? それ美味しそう……」
    「勿論だよ」
    「ありがとう!」
     唯は礼を言って一口ぱくり。うん、美味しい。
    「乾杯!」
     殊亜と同じ【ライドキャリバークラブ】の摩那斗と葉蘭はジュースで乾杯。殊亜が持ち込んだ品と先ほど炎血部から貰った品を合わせるとよりどりみどりだ。
    「運転上手な人も結構いたし僕も負けてられないね」
    「そんなに上手い人が沢山いたのですか?」
     摩那斗の言葉に葉蘭が首を傾げると、殊亜は近くにいたユリアを視界に収めた。
    「ユリアさんとか、結構乗りこなしてたよ。良かったら一緒にどう?」
    「お邪魔していいのですか?」
     突然声を掛けられて戸惑うよりも嬉しそうにユリアは会話に加わった。

     食べよう、なにはともあれ食べよう。ひとしきり屋台の料理を買い揃えた【月影の庭】の面々は、空いた機材の周囲に椅子を持ち寄って料理に舌鼓をうつ。その真中には鉢巻をつけた真守の姿があった。
    「おにーさん、全員分、特盛で」
     面白いからと沢山頼んだ瑠依の言葉に数分後に帰ってきたのは、大量の焼きそば。
    「へい特盛全員分お待ち!」
     爽やか笑顔の真守は蒼護と燈に扇子で扇がれて一息つく。
    「ってか真守って料理できるんだ……意外だ」
    「この焼きそば、ちゃんと食えるんだろうな?」
     焼きそばを口にして紫廉はぽつり呟いた。紫桜も焼きそばを一口。美味しい。
    「作れるなんて凄いや」
     連雀もはふりと戴いて、感心の言葉を漏らす。どれどれと口にしようとした夕霧は猫舌だったものだから、瑠依に冷ましてもらったたこ焼きを先に一つ。
    「やっぱり祭といったらラムネかな?」
     蒼護はキンキンに冷えたラムネを一人ひとりに手渡していく。手にしているだけで涼しい気分になるから不思議だ。
    「ラむネ! そーごおにーちゃ、謝々! 乾杯? 乾杯?」
    「ふむ……勢いをつけた方がいいのかな? えいっ」
     夜深の隣でラムネを開けたリファに、中身が襲い掛かる。
    「……? 開封、至難? リファおねーちゃ、大事件……」
     蒼護がリファにハンカチを差し出す横で、瑠依も夜深も蓋をあけることができない。そっと紫廉と連雀が手を出して二人のラムネを開けてやった。
    「カンパーイ!」
     紫廉の音頭で近くの仲間と瓶を軽く当てあって。皆で乾杯するとすごくお祭りっぽい気分になる。そんな仲間達をアリスはのんびり見つめていた。こっそり大切な赤い櫛を取り出しひと撫で。思い出すのは夕日に染まる庭。皆の楽しげな声が重なると、いつの間にやらうとうととしてしまう。仲良しなのは、とても幸せ。
    「学園祭。皆、ウきうキ。素敵ネ……」
     夜深もいつの間にか船を漕ぎだして。
    「夜深大丈夫か? おぶってやろう」
    「しおー先輩が夜深ちゃんおぶるなら荷物は燈が持つね!」
    「アリスも眠そうだ。さすがに疲れたか」
     仲間達の楽しい声と楽しい思い出に抱かれながら落ちる眠りは、きっと幸せなものだろう。
    「ホントに楽しかったなぁ……来年もずっと……みんなと一緒に過ごせたらいいなぁ」
    「ああ、来年もまたみんなで過ごせるといいな」
     燈の言葉に紫桜も頷いて。
    「あんま参加できんかったけど、この雰囲気だけでも十二分にお祭り気分が楽しめるっちゅうもんや」
    「来年もこんな時間が過ごせるといいな」
    「来年も楽しみだ」
     夕霧は楽しそうに目を細め、リファと紫廉もこの気分を来年も楽しめるようにと願った。

    「さあみんな! 思いっきり楽しむわよ!」
    「おー!」
     部長であるまぐろの掛け声に、それぞれの声色で賛同する【光画部】の面々。早速屋台を制覇する勢いで片っ端から食べているのは星暝。ほっぺは常にパンパンである。
    「さてっ! 沢山食べちゃいますよー!」
     屋台の主に許可をとって食べ物や屋台を写真に収める空。辛い物好きな彼女は辛いモノを中心に探して回る。
    「これ、どのくらい辛いですかっ!」
     尋ねる瞳もキラキラだ。
     それぞれ目的の物を食べていく面々だったが、彼らが気になっていることは他にあった。彼らが狙っているのは二組のカップルのチャッターチャンス! さすが光画部だけあって、皆カメラ持参である。
    「いちごくん……ねえ、一緒に回らない?」
    「2人で回る余裕もなかったですし、いいですね」
     真っ赤になって自分から誘った由希奈。部の皆も周りにいるけれど気にせずに2人で、いちごは快諾する。部員達はシャッターチャンスを狙っているようだが、気にせず2人は歩いて行く。
    「由希奈さんも一口いかがですか?」
     つい無意識に、先程まで舐めていたソフトクリームを差し出したいちご。彼の申し出を受けるとどういう状況になるか察した由希奈の顔は一気に真っ赤になった。
    「あの、えっとね、これってもしかして間接……」
    「!」
     言われて気がついたいちごも釣られて顔が真っ赤になり――そしてこんなシャッターチャンスを光画部が逃すはずはなく。
    「おお、恋の華や間接キスが目白押しじゃのっ♪」
     串焼きを頬張っていたイルルだったが、彼女の愛用のデジタル一眼レフが火を噴く。逃すわけにはいかないと。咲哉は企画では撮り手だった仲間達の姿をコンパクトデジカメで収めていく。勿論、ラブラブだけでなく、それを撮影する面々の生き生きとした表情も。
    「……ああ、悪くない」
    「って、フォーカスされた!?」
     驚く由希奈ににこにこ、桐香が意味深な笑顔を送っていた。
     けれどもソフトクリームは美味しかったから、由希奈は幸せそうに微笑み、そっといちごの手を取る。由希奈が楽しんでくれたのならいい、いちごもそっと手を握り返した。
    「写真撮影お疲れ様、はい。フランクフルトどうぞー、あーんしてあげますよー」
    「なによ、あーる……え!? た、食べさせてあげるって……!?」
     部員たちが気になるもう一組はまぐろと仲次郎。真っ赤になったまぐろはしょうがないわねとあーん、口を開く。フランクフルトを食べたあとはお返しだ。
    「ほら、あんたもあーんってしなさいよ」
    「わー、私もですか、それじゃ、あーん」
    「みんなーシャッターチャンスだよー!」
     シャッターチャンス! 星暝の声に部員達の眼が光る。たこ焼きをつまみぐいをしながら部員のサプライズショットを撮っていた翠はあーんの瞬間を捉えて。イルルもシャッターを切る。
    「ちょ、あんたらなに撮ってんのよ!?」
     まぐろに怒られても怖くない。だってシャッターチャンスを逃したら、光画部の名が廃る。
    「まぐろさんたちは安定のいちゃつきっぷりですが、まだちゃんとお付き合いまで行っていないんでしたっけ?」
     でもしっかりとデジカメに収めた朱毘。楽しい時間はこうして形に残る。

    「……1瓶50シェイクしてもええ?」
     炭酸飲料を手に悪戯っぽく訪ねたのは【鴉真道場】の悟。慣れているのか寅綺は悟の膝裏を蹴り抜き、キムチ焼きうどんを作っていた航は「悪戯したらうどん抜きで激辛にしますよ」と告げる。
    「げふっ。ええっ、うどん抜きは嫌や! おとなしゅうしとくさかい俺にもうどぉーん!」
     蹴られてバランスを崩し、しかもうどんを人質……うどん質に取られた悟は悪戯を諦めて。
    「細切りの豚肉と青ネギ、鰹節たっぷり入れるのがポイントです~。そして辛さはマイルドに仕上げました~。沢山作ったのでどうぞ?」
     航の焼きうどんと寅綺の持参した焼きそば、悟の持ってきたキンキンに冷えたソフトドリンクが振舞われる。
    「……振ったりとかしてないよな、それ……?」
    「炭酸は好きだが、出来れば振ってないものを頼みたい」
     レイシーと玲仁が念を押す。おずおずと蓋を開けて、普通の炭酸でひと安心。
    「学園祭、来年こそはちゃんと参加したいなぁ」
    「ああ……来年も、こうして学園祭に参加したいものだ」
     寅綺と玲仁が頷き合い、皆が楽しそうにしているのを近くの椅子に腰掛けて花月は見ている。
    「アイスキャンディ食べるか?」
     レイシーが差し出したアイスを受けとり、中々輪に入るのは難しいけど……こういうのも悪く無いかな、なんて花月はぼんやりと思った。

     遊びに来てくれたお礼に一緒にいかが? 【静かな礼拝堂】の皆に誘われてユリアはその輪の中に加わった。
    「オレ的にオススメはフルーツタルト! 旬の果物と愛情をぎゅぎゅっと込めましたー! よく冷えたメモリアも一緒にどうぞー♪」
    「メニュー表も持ってきたけん、ゆっくり選んでね~」
     稲葉と由宇に勧められ、学園祭の間に食べられなかったスイーツに手を伸ばすユリア。
    「まだ食べてないメニュー、選んでくれ」
     迦月に勧められ、順番に食べていく彼女の表情が幸せそうで、迦月は学園祭中の事を思い出した。とても幸せそうに食べる姿を見て、嬉しいと思ったのだ。もぐもぐと食べるのに集中していた直人は黄金色のアップルパイを勧めつつ、部員の分のお菓子に手を伸ばす。
    「そういえばユリアさんはムーンストーンだったんだよね?」
    「はい、素敵なロザリオありがとうございます」
    「僕のはこれ。エンジェライト……大切な物を守ってくれる石だよ」
     砌のロザリオを見せてもらったのを期に、稲葉も由宇もロザリオを取り出す。稲葉は紫水晶、由宇はムーンストーンだ。
    「向坂さんも同じよね? お互い頑張っていい恋しましょうか! ……なーんてね♪」
    「こ、恋、ですか?」
     由宇の言葉に真っ赤になるユリア。
    「皆言ってるが、ムーンストーンはお前にとても良く似合っていると思うぞ。弓使いなところも、月の女神のようだよな……?」
    「ああ、よく似合う」
     直人に同意して、柄じゃないが今だけ、と迦月は告げる。
    「神の祝福を」

    ●静かに
    「まるで夢の中の様な、楽しい学園祭でした。この様な日常を護る為に、わたくし達は戦っているのですね」
    「そうだね。灼滅者の皆にはいつも感謝しているよ」
     瀞真と共に甘味とお茶をいただきながら、セカイはそっと盛り上がりを見つめた。
    「……手つないで、よろしいです?」
    「ん? うん」
     隅っこに座った二つの影。あげはの要求を真熱は普通に受け入れる。
    「本当になすがままですわね。だったら、私のお願いも聞いていただけますか?」
     こそこそと耳元で囁かれたお願いに、真熱は頷いて――喧騒から隔離されたようにそっと、二つの影が重なった。
    「ん……甘い味」
     冗談で、手でも握ってやろうかと口に出した棗。そっと糸子が手を繋いできたものだから。
    「――うお、いきなり握んなよ、ビビった」
     なんて言いつつも手は放さないで繋いだまま屋台を巡っていく。
    「来年はどう過ごしてんだろうな」
    「来年もまた誘ってくれる?」
    「……ま、ねーちゃんが暇なら」
     返ってきた答えに糸子はふへへと笑んだ。
    「また誘ってやるから一緒に過ごそーぜ」
    「忘れちゃ嫌だよう? 約束!」
     両手いっぱいに食べ物を抱いた結弦。おねだりで色んな人から食べ物を分けてもらったフローレンツィア。
    「あ、結弦のそれもおいしそう。ね、一口ちょうだい?」
    「ん、ええよー」
     差し出されたクレープを、ちょっと背伸びしてぱくり。
    「あ。わたしもそっちのちょうだいー?」
    「はい、どうぞ」
     お返しにとフローレンツィアは焼き鳥を差し出し、2人は笑いあう。来年もまた、こうして一緒に楽しめればいいな。
    「忙しい中、来てくれてありがとう♪
    「いえ、楽しませて頂きました」
     瑠璃羽はユリアにファンシーなチョコバナナを渡して。2人は空いたベンチを見つけてそっと腰を掛ける。とれたての思い出話はこれから始まる。
    「学園祭、瀞真はどんなの見てきたんだ?」
     涼しいところに二人で腰を掛けて、冬舞は問う。互いが選んだ食べ物を交換し合いながら、のんびり思い出を交換しあって。
    「来年はOBとして一緒に巡れたらいいな」
    「来年も楽しみだね」
     手を繋いで屋台を巡る黒虎と銀河。銀河がふと綿飴を売っている屋台で足を止めて。
    「はい、これ黒虎の分!」
     二つ買った片方を差し出したのに、黒虎が顔を近づけたのは銀河が今食べている口元。それはまるでキスのような食べ方。
    「……!?」
     あまりのことに一瞬思考停止した銀河。無意識に自分の唇に触れて。
    「あ、あの……! その、お、美味しい?
    「……うん、美味いな!」
     銀河が美味しそうに食べていたから余計に美味だ。
    「ポム・ダムール?」
     何が食べたいと聞いたら聞きなれない単語が返ってきて、煉夜は困り顔だ。その顔を見上げながら悪戯っぽい笑みを浮かべる誰歌。
    「……そう、りんご飴を買って欲しいな、奢ってくれ。代わりにたこ焼き買ってくるから」
    「りんご飴ね? 了解した」
     値段は釣り合ってないけれどそんなことは気にせず、色々回りたそうな誰歌に出来る限り付き合うつもりの煉夜。とにかくお互い楽しめればそれが一番。
    「ハラヘリー、タコ焼き美味そうッス」
    「ふふっ、ほら、あーん」
     いつも先手を打たれている気がするから、たまにはこちらから。今日子はたこ焼きを立夏の口元に差し出して。
    「チョ……照れるッスみたいなー」
     頬を赤らめてキョロキョロした立夏は、すぐにあーんとたこ焼きにかぶりついた。
    「キョーコだけズルイッス、俺も俺もー」
     同じようにタコ焼きを差し出す立夏。2人で過ごすのは楽しい。
    「今度は浴衣姿のキョーコを見てみたいッスねー」
     奢るという約束を果たすべく、屋台村に繰り出した華月と九里。一先ず普通のたこ焼きを一皿買って、落ち着けるところを探す。
    「遠慮なく全部食べていいわ」
    「れでーふぁーすとと言う奴に御座います。さぁ先にお食べ下さい」
    「だから、あたしの事は気にしなくても……」
    「誰かと食べたと言う事も、立派な思い出だとは思いませんか? お姉さん」
     そう返されると華月も困ってしまう。
    「……わかった、それじゃあ一つだけ頂くわ。それならいいかしら?」
     頷いた九里は、華月が食べるのを確認してから、自分もたこ焼きに手を付けた。

     祭の後の祭は刻々と終わりに近づいている。
     だが皆の心には、忘れられない思い出となって夏の一夜がしっかりと残っているはずだ。
     来年もまた、楽しく過ごせることを祈りつつ――。

    作者:篁みゆ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月30日
    難度:簡単
    参加:56人
    結果:成功!
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