学園祭~学園祭の夢はプールに浮かぶ

    作者:旅望かなた

     7月14日と15日の2日間に渡り開催された学園祭。
     たくさんのクラブ企画が、水着コンテストが、そしておみやげを手に楽しげに歩き回る人々が、賑やかな祭を作った――けれどそれも、とうとう終わり。
     けれど、まだ『夜』がある。
     お客が全員帰った後、武蔵坂学園生徒にだけ開放される後夜祭。
     さぁ、最後の打ち上げが始まるぞ!
     
    「学園祭の打ち上げってね、プールが解放されるらしーずぇ!」
     嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)の言葉に、緋音・奏(中学生サウンドソルジャー・dn0084)がそうなんだ、と頷く。
     水着コンテストの会場ともなったプールで、水着の感想を言い合ったり、プールで思いっきり遊ぶのもいいだろう。
     プールサイドで企画で余った食べ物に舌鼓を打ちながら、それを眺めるのもまた一興。
     暑さ残る夜に遊ぶプールは、涼しく楽しいに違いない!
     さぁ、あなたも仲間を誘って、祭の余韻を残したプールに足を運んでみませんか?


    ■リプレイ

     学園祭の賑わいは、プールにて華やぎ続ける。
     一際賑やかなのは野郎オンリー【純潔のフィラルジア】のメンバーである。
    「とりあえず、アレだ! この切ない状況を打破すべく、超かっこよく飛び込……」
    「おいせーじゅん邪魔だよ! いつまで変なポージングして騒いでんだ、黙るか早く飛び込め」
     どげしぃっ。
    「ぎゃああああ!」
     清純の背中に、途流の容赦ないキックが決まる――が、その脚を咄嗟に引っ掴んだ清純の「死なばもろとも!」攻撃で一緒に水中へ。
    「……ご愁傷様です」
     明らかにオチが見えてましたよね、と合掌する静樹。
    「バッカお前死んだらどうする! プール意外と深いぞあほー!」
    「死なばもろともじゃねーよばか! あと俺の方が5センチ背高いし!」
     そして何が何やらの戦いに。
    「それにしても途流センパイ華麗な足裁きお見事!」
    「こういう某ホラー的な潜水方法ありましたよね」
     傍観者に徹していた狭霧とみをきの足をがっしり掴み、清純と途流が息を合わせて引っ張り込む。
    「わ、ちょ……! やめ……ぶっ、……ぷはっ!」
    「溺れたらどうするんすかもー! げほ……っ! ちょ、気管に水入った!」
     まさかの攻撃に静樹は唖然。だが一瞬後には「プールの床で引きずり込まれないとか無理ゲ……」と叫びながらぼちゃんと仲間入り。
    「く、思わぬ攻撃に後れを取った。挑まれたなら全力で応えよう!」
    「てか待って俺も落とされた側だから!」
    「俺被害者側……」
     やー全くいつも通り賑やかで楽しいですね!

    「無礼講なりプールに飛び込めー!」
     希沙がダイブ!
    「無礼講じゃーい篠村隊長に続けー」
     小太郎がさらにダイブ!
    「ぶれいこう、よきには……足がつかない!! しんでしまいます!」
     千佳が既に溺れかけ!
    「千佳ちゃん! この碇浮き輪に掴まるのだ!」
    「おお篠原さんなんて素敵な碇浮き輪あなたが救世主ー!?」
     掴まると浮力で縦に大回転する碇浮き輪!
    「鼻に、はなに水がうわあー! たすけて! 鹿野さん助けて!」
    「この子どもの成長を見守る親の様な気持ち……父は敢えて手を貸すまい、頑張れ娘よ」
     わぁひどい。
    「耐えるのだ娘よ、父は救世主が倒そう。いざ、潜水勝負!」
     その言葉と共に希沙と小太郎も水中にどぼん。
    (「秘儀・赤嶺貴紀先生」)
    (「ゴボッフ! ぐおお酸素が……だが男には戦わねばならぬ時がある……」)
    (「!?」)
    (「見よ、物真似奥義――『演歌の若様』」)
    (「ぶはっ! ちょ、主に笑い死ぬ!」)
     勝敗の行方と彼らの明日はどっちだ!

     学園祭で右九兵衛にしてやられた報復を胸に誓いつつ、油断を誘おうと千巻は浮き輪でぷかぷか。
    「水の上って優雅な感じだよねー」
    「浮き輪にそうやって乗ってはる人見たらなァ、やることはヒトツやろ!」
     そこに近付いたのは張本人、右九兵衛。
    「今考えた必殺の! 大回転浮き輪スペシャル炸裂!」
    「って何か回ってる! 早い早い! ライドキャリバーよりはやーい! じゃなくてっ! ちょ、やめ、あーれー……!」
    「浮き輪に乗ってたんが運の尽きやでクヒャラララ!」
     ――復讐は、次回に持ち越されそうである。

    「さ、コイツで乾杯しましょう?」
    「他の倶楽部を廻ってご馳走を集めてきました」
     光がケースで炭酸飲料を持ち込み征士郎がトレーにご馳走をたっぷり載せて。「んじゃ、乾杯と行きますかァ」と八千夜が声を掛ければ紅子が立ち上がり。
    「学園祭クラブ企画2位を祝して、かんぱ~い☆」
    「「かんぱーい!」」
    「皆様お疲れ様でした」
    「みんなお疲れ、と、二位おめでとさん」
     グラスが涼やかな音を立てる。「今回の接客功労者だなァ、紅子」との八千夜の言葉に「おおきに~」と紅子は笑って。
    「あ、それ美味しそうやね。ちょ~だい☆」
    「あっ!?」
     ご馳走を片っ端から頬張るリリアーシャと取り合い。それを八千夜は『水妖祭』限定の団扇を手にちょっと羨ましげに眺めて。
    「とにかく、2位おめでとうな。少しでも誰かの思い出になればそれでいい」
     奏夢が微笑んで、霊犬のキノが舐めるのと同じジュースのグラスを空ける。そして一人と一匹はプールに滑り降りた。
    「私も遊ぶ~! よ~し、キノちゃんとイヌカキ競争や!」
     華麗に泳ぎだすキノを紅子が追いかけて。
     プールサイドでのんびり後夜祭の雰囲気を楽しんでいた征士郎に、そーっと光とリリアーシャが近づく。突き落とそうとしたところで体を反転させて征士郎は逃れ、代わりに男子制服のままのリリアーシャがプールにばしゃり。
    「服で泳ぐなんて大胆やね~。透けるよ~」
     笑いながら紅子が差し出したタオルに、リリアーシャは笑顔で顔を埋めて。祭の後の祭だから、楽しまないと!
    「獲りましてぁっ!?」
     そして油断したと思った征士郎に襲い掛かった光も返り討ちでばしゃり。
     呆れたような表情だった八千夜も、いつしか微笑みを浮かべて――夜は、更けていく。

    「さーちゃんの水着、綺麗だなー特にこう、腰の辺りがむちっとしててですな……たまらん」
    「あんまし僕の体マジマジ見ないでよ!?」
     目を輝かせる優奈に、プールに入っていた沙花が慌ててガードのポーズ。
    『はい、みなさん、みずぎすがた、とてもステキだと思います』
     そう雪は耐水ボードに書いて、にっこり。
    「皆綺麗で、すてきだね」
     そうトロピカルジュースのストローに口を付けてから、恢も頷いて。
    「ゆうな先輩ったら、見所がマニアックね」
     けれど確かにスタイルの良さがよくわかる、と微笑んだ花梨に、がばと優奈が向き直る。
    「花梨と雪も超可愛いよ! 二人とも天使! 写真を、撮らせておくれ……」
    「不純な写真はだめだよ?」
     そう言って足元の影を揺らした恢に、「あ、お父さんごめんなさいもうしません」と優奈はぺこり。
    「まずユーナは少し落ち着こうか。花梨と雪を今にも捕食しそうな勢いを感じるから」
     頭を冷やそうかと、沙花がプールに優奈を引っ張り込んだ所で。
    『しゃしんですか? じゃあ、みんなでとりませんか?』
    「ゆきちゃんは本当に天使ね」
     それを切欠に、通りかかった奏にカメラを渡して非常に健康的に記念撮影。
     やがて恢も水へと入り、仲間達と水に戯れ遊ぶうち、黒髪から水を滴らせ健康的な笑みを浮かべる優奈と目が合って。
    「綺麗だね」
     一度だけそう言えば、続く仲間の賞賛に頬を染めぶくぶく沈んでいく優奈。慌てて助けようと恢が潜り――。

    「あ、ちょ……こ、こっちじっくり見んな! バーカ! 変態!」
     水着コンテスト上位者の誘いを断らないよな、なんて女子用白スク水姿のヘキサが声をかけるから。
     その隣で美乃里が、「一緒に水球をしませんか?」とほわっと微笑み灼滅者達を誘って。
    「よし、オレもやってやろうじゃないか!」
     瑠璃が早速見事な飛び込みを見せ、歓声が上がる。
     さらりと名乗ってから、美乃里が魅せる水中とは思えぬ動き。「美乃里姉ちゃんこっちだぜ、パスパス!」とのヘキサの声に頷き、球を投げる――時に揺れた胸に、目のやり場に困る数名。
    「っらあっ!」
     立体軌道で動き回っていた瑠璃が凄まじいシュートを決める。「瑠璃姉ちゃん、ナイスシュートォ! やったなァ!」とヘキサが駆け寄って――さらに、進撃!
    「止められるモンなら止めてみな! 必殺・兎玉ァ!」

    「ジョー、こっちこっち! ね、泳がないの?」
     結理に誘われて、錠がうまうまとプールの淵へ。そこで啓が「あ」と声を上げる――水に落ちていくバンクルに「弱ったなぁ」と棒読みで呟き、啓はプールに体を滑らせて。
    「お、どうした探してやろ……おうっふ!?」
     近付いた錠の後ろから貫が華麗なる膝かっくん!
     さらに葉が助走をつけて飛び蹴り!
    「ごぶおっ!!」
    「あ、落ちた」
     ハゼリと協力してジュース作りに余念のない千波耶が、ふと顔を上げれば派手に上がる水飛沫。回避に失敗した啓が鼻を押さえるが、作戦成功のハイタッチには勿論加わって。
    「ゴメンね……ふふっ」
     謝ってタオルを差し出しながらも思わず結理の口から笑みが零れる。
    「夏だからって油断すると風邪引くよ……!」
    「アンガト……って誰のせいだオイ!」
     結理にツッコミを入れているようだが、視線は貫と葉へ。
    「海賊ライブお疲れ様っした! 俺、殆ど観客状態でしたけど……みんなカッコよかったっす!」
     俺もいつかははあんなライブを……できるかな、と少し不安げな真昼に、やってみろよと先輩達が背を叩く。
    「さあ、そろそろロシアンの時間ね! 錠くんの明日はどっちだ!?」
    「万事はパイナップルが弱点なのは知っとったけど、まさか自分からバラしとるとは。よっぽど軽音部の仲間を信頼しとるんじゃね」
     信頼した結果が濃度4段階パインジュースである。
     表情が見えぬよう狐面で顔を隠し、真昼がジュースの乗ったトレーを差し出す。
    「戯れ方が激しいのも軽音流か、まァお前ららしいけどよ」
     とかく全員ジュースを選び、目一杯の幸せと楽しかったを込めて。
    「LIVEの成功を祝して、乾杯!」
    「「学園祭、お疲れ様でした! 乾杯!」」
    「お疲れジョー。水も滴るいい男」
     にやりと笑って貫がグラスを合わせる。
    「逝ってみようかやってみようか♪ はいしゃーくめつ! しゃーくめつ!」
     葉さんどうしちゃったの。
    「「「ゴウブッハ!」」」
     そして錠と葉、真昼がプールサイドに転がる羽目になった。
     人を呪わば何とやら。
    「ねえ、なんで、錠くん灼滅することになったんだっけ?」
    「……錠サンだからじゃねぇかな」
     千波耶と啓がぽつりと呟き合う。慌てて結理が口直しのクッキーを手に駆け寄る中。
    「また来年も皆と遊べたらえぇなと思うよ」
     綺麗にまとめるハゼリだった。


    「ひゃー、冷たい!」
    「ありがと、ルーヒ!」
     ふらふら人数分の飲み物を持ってきたルーヒに明と道文は礼を言って、プールサイドでお疲れ乾杯!
    「ルヒの水着はすごく可愛かったよね」
     来年は用意したいとの道文の言葉から、来年はどんな水着がいいかと、さらには明のお弁当屋さんも結構売れて良かったと皆で盛り上がり。
     途中でふっと疲れを感じた明が、「誰か膝貸して」と頼めば。
    「いけない子ー!」
     ルーヒに額をぺちっとされて、むっとなって仕返し。さらにルーヒが明の顔をむにむにしようとして――すったもんだの末、止めようとした道文もろともプールにぼちゃん。
    「ああ、もう!」
    「冷たっ!」
     でも何だかおかしくて、思わず皆大笑い。
    「こうして過ごすのも高校生最後だね」
     いい思い出が出来た、と道文の膝を枕に眠る明の頭を撫でながら、ルーヒはくすと笑った。

     水着の注文間に合わず。企画は通らず。
    「そんなハイナを構ってあげるニエはクソ優しいですね」
    「お前ひょっとしてそのためにわざわざ僕を呼んだの?」
     不機嫌なハイナに対し、仁恵はご機嫌。
    「ハイナはニエを褒めて行くスタイルで行くべきです!」
    「そのおやついいからよこしなよ。その檻みたいな部分とかわけわかんなくてステキだと思うようん」
    「うれしいば!」
    「でもそれ泳げなくな」
    「なるほど、折角ですし泳ぎましょっか。一緒に。遠慮はいらないですよ」
    「えっいや僕水着着てな……ちょっやめろ!」
     水飛沫が夜のプールに舞った。

     恋人を、ウォーターガンで狙い撃ち。
     実はナイスバディのなおに、剣冶のテンションが上がってるのは内緒。
    「きゃ……!? もう、反撃ですぅ!」
     なおも水鉄砲で反撃しようとするけれど、凄い反射神経でかわされて。
    「むぅ……! ならばこうですー!」
     周りに人がいないのを確認、なお突撃!
     抱き着き!
     そして二人でプールにどぼーん!
    「うぉ、体当たりは駄目だ」
     剣冶は急いで立ち上がり、しがみつくなおをしっかりと抱きとめる。
     やっとかなった反撃と抱きとめる腕に、にこにこ嬉しいなおだった。

    「あのね。いつもありがとうっ!」
     全速力の泳ぎから戻った慧樹に、羽衣は笑顔で言う。一緒にいれて楽しいよ、と。
     いつも一緒に遊んだり出かけたりしてもう1年。
    「な、なんだよ突然ありがとうって。そんな、遊びに行ったりするの、当たり前じゃんか!」
     友達なんだからと照れつつ慧樹は、浮き輪に座った羽衣を水に引きこみ背中を押しながら泳ぐ。ハタから見たらデートかな、とふと考えて。
    「深い方、いかないでね!」
    「俺の足、もう床に付いてないんだ……」
    「って、ええっ!?」
     二人の夏はまだ始まったばかり。

     訓練の一環として泳いでいた緋頼がふと見れば、鞠音と鈴乃が話しながら泳いでいて。
    「すずはメイドきっさをしたのです。おきゃくさまにごほうししたのですよ」
     凄く楽しかったとはしゃぐ鈴乃に、鞠音は背泳ぎのまま赤い瞳を何度もゆっくりと瞬かせ。
    「まりねさまのみずぎ、とてもすてきなのです」
     そう瞳を輝かせた鈴乃に礼を言い、泳ぐ手を鞠音は止めて。
    「鈴乃さん、の、水着も、鈴乃さんも、可愛いです、よ」
    「すずのはそんなにかわいくなんかないのですよ」
     真っ赤になる鈴乃に、そんなこと無い、と言う様に立ち上がるとそっと鈴乃の頬を撫で――その手に手が重なり頬は更に染まる。
     潜水で泳ぐ白焔と、見事なクロールの緋頼は互いに感心し合う。教えてほしいと白焔が緋頼に頼めば丁寧な指導が返って来て、「じゃ、やってみるか」と軽く言えばすぐさま教えられた通りにクロールで泳ぎ出す。
    「で、教えてもらって何に使うのです?」
    「何に使うって事も無いけど。どんなもんかなって」
    「どんなものかな、ですか」
     ふと考え込んだ緋頼は、白焔を見つめ「潜水教えてください。どんなものか知りたいので」と口を開くのだった。

     少し、皆から離れた場所で。
    「……どう?」
     感想をねだるあきつに、棗のプールに向けていた輝く瞳が振り向き上から下まで走って。「おー、良いんじゃね?」とけらり明るい笑顔に、安堵した頬がむず痒い。
    「……入る?」
    「おー、入る入る」
     あきつが問うたらもうプールの中の棗。水は苦手、それでも付いて行きたいって思うから。
    「ほら、ナギちゃんも」と差し伸べられた手を取り、飛び込んで。
    「付き合ってくれてアリガトな、ヒナ……!」
    「おう、たっぷり、一緒に遊ぼうぜ!」
     今宵位、目を離さないでいて。

     しばし泳いでから水着を可愛いとアレクセイが褒めれば、月夜が褒めてもらえて嬉しいとにっこり。
    「こういう学園祭みたいなイベントは初めてだったんですが、楽しかったです」
     感謝してもし足りないと言うアレクセイに、月夜は自分も初めてだけど面白かった、また一緒に行きたいと。
    「もし何か困った事でもあれば何でも言って下さい。必ず力になりましょう!」
    「にゅ、ありがとうですー。アレクセイ君も困ったことがあったら相談して下さいねっ?」
     約束。そして来年も一緒にの約束。再び、二人は泳ぎ出す。

    「今日はリボンがいっぱいでカワイイ、ね」
     そう言って千明は「お兄ちゃんと一緒だから、おいしい物がもっとおいしくなるね♪」とかき氷を頬張る水着姿の白雪を愛しげに見つめて。
     やがてエイティーンで白雪は18歳の姿になり、くるりとその場で一回り。
    「……今のこの姿なら、兄様との釣り合いも少しは取れるかな?」
    「どの姿でも、白雪は俺の中で常に一番だよ」
     ふんわり微笑む大人の白雪に千明は見惚れて。兄様と呼び、でも甘えんぼさんは変わらぬ妹が愛おしく。

     プールサイドで足を水につけながら、持ち込んだピザやジュースを分け合って。
    「はい、あーん」
    「あーん♪」
     ベルタに差し出されたピザを、深那は嬉しそうにぱくり。
    「お祭りは楽しんでなんぼやしなー♪」
    「せやな! なぁ、ベル太、ちょっと水入らん?」
     ぷかりと浮かんで見つめ合う時間も、また格別。

    「そ~れ! あはは、当ったり~!」
    「ほらほら、そんなにはしゃぐと危ないですよ」
     水着の感想を聞きたい千尋。
     チラチラ向く視線に気付かないふりをするゲイル。
    「わっ!?」
    「……ほら、言わんこっちゃない」
     転びそうになった千尋を、ゲイルが抱き止めて。体温や息遣いを感じた次の瞬間、ゲイルは真面目な顔で。
    「素敵ですよ、その水着」
     そしてすっと離れて両肩に手を置き、今度は笑顔で。
    「似合っています、とても」
     心臓が跳ねる。
     ホント、我ながら溺れてるよ全く、と千尋は一人ごち、頬を染めた。

    「朱毘さんの話がつまらないとかではなくてですね、その……改めて水着姿の朱毘さんを間近で見ると、その……綺麗だなって……」
    「……あんまりジロジロ見ないで下さいね、三成さん?」
     そう言いながら朱毘は二の腕で胸を挟んで強調して、真っ赤になる三成の反応を楽しんでから。
    「わかってはいましたが、この学園って美人でスタイルのいい人、多いですねぇ……」
     ほらほらあの人もー、と無邪気に指さす朱毘に、ぽかんとしてから三成はくすと笑って。
    「……来年の学園祭こそは、一緒に過ごしたいですね」
     串焼きを手渡しながら、そう声をかけた。

    「御弦は、この水着、私に似合っていると思うかしら?」
     良く見て正直に答えるのよ、と桃乃に言われ、御弦は頬を掻いて。
    「桃姉の水着、かぁ……うん、似合ってる、んじゃないかな」
     本当は近くでよく見たかった、との本音は内緒。気恥ずかしくて、目も思わず逸れて。
    「……あら? もしかして照れちゃったのかしら?」
     遊んであげるから機嫌を直して、と笑い桃乃は水を掬ってぱしゃり。
    「わぷっ……このっ、やられたらやり返すのが僕の流儀だからね。悪く思わないでよっ」
     そして二人は、一時の水遊びに興じる。

    「本当に人が沢山で大変だったなぁ」
    「うん、大勢のお客さん来てくれて、忙しかったけど楽しかったぁ……」
     色々なお客さんがいて、ちゃんと接客できて、自分が淹れた珈琲、美味しいと言ってもらえて……。
     尽きぬ悠里の話を、來鯉は頷きながら聞く。フルーツポンチは審査員特別賞の自信作、珈琲や5種のムースアイスも一緒に通りかかった伊智子や灼滅者達にもお裾分け。
     やがて悠里は、來鯉の膝の上で眠ってしまう。
    「本当に、頑張ったんだね」
     そっと頭を撫でれば、嬉しそうに悠里の寝顔がにこっと笑んだ。

    「どうだろう、似合っているかな?」
     華琳が頬を赤らめ尋ねるのに、つい泰河は気恥ずかしくて目を逸らしそうになるけど「少しは……女の子っぽくなれただろうか」の言葉には再び目を合わせて頷いた。
     泳ぎは得意じゃないけれど、手を取ってプールに誘われて、泰河は軽く水面に触れてからちゃぽん、と身を沈めて。
     突如後ろから抱きしめる、温かな腕。
    「……愛してる」
    「……ななななな何言ってるのさー」
     気恥ずかしくて思わず視線を逸らす。けれど、皆の目が集まらぬうちは。
     二人だけの時間を過ごしていたい、学園祭の騒ぎが終わるまで。

    「うふふ……♪ お耳を拝借……♪」
     相棒のフルートを唇に当て、スミレが奏でるのは幾分激しいメロディ。それをプールサイドに座ってゆったりと聞きながら、司は目を閉じる。
    「あ、綺麗な音色。スミレのフルートだね。せっかくだし挨拶でも……にゃ!?」
     奏でる人はスミレというのか、そう思い目を開くと、司の上に見知らぬ女の子が盛大にすっ転んび倒れ込んで――。
    「っ!?」
     むにゅん。ごちん。
    「痛った……」
     後頭部をしたたかに打った司が頭に手をやろうと――むにゅっ。
    「えっ?」
    「何するのーっ!?」
     見れば自分の手が、彼女のたわわんな胸を掴んでいて――頬に、衝撃。
    「っ!? いや、それ僕の台詞だ!」
     思わず言い争いになりかけたところで、現れたのはスミレ。
    「あらあら桜花さん、後夜祭も大胆ですわね。うふふ……♪」
    「やりたくてやってるわけじゃないから!?」
    「何でこんな目に遭ってるんだ僕……?」
     大混乱の二人を残し、スミレはくすと笑って他の知り合いに挨拶へと向かう――。

     新しい出会いが、友情が、そしてもしかしたら他の何かも、芽生えて育ったかもしれない学園祭が、幕を閉じるまで――夢は、プールに浮かび続ける。

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月30日
    難度:簡単
    参加:66人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 12
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