Serial killer

    作者:立川司郎

     最初に手にしたのは、カッターナイフだった。
     男はカッターナイフを使って封を開けている時、うっかり自分の手を切ってしまったのである。
     そのぬるりとした感触が、忘れられなかった。
     次は金魚を切ってみたが、ヒトの感触には到底及ばず満足は出来なかった。
     そして、次は近所の野良猫を。隣家の住人は猫の糞害に困っていたから、居なくなって清々したと言っている。
     猫の感触は少し固く、ナイフが割れてしまった。
     男は、次は山岳用のナイフ。
     それから日本包丁にたどり着き、愛用するようになった。鋭く研がれた包丁を、肉に突き立てたときの感触。
     肉を包丁で切るのが、一番心地よい。
     それも、柔らかい体の女や子供がいい。
     いつしか自分の体がヒトの体ではなくなっていたが、思うままに暴れる事を幸いと思っているうち、元の人間にも戻れるようになった。
     男はこうして今も、ヒトの体とデモノイドの体を行き来しながら、獲物を物色しているのである。
     
     強い日差しがじわじわと校庭を焼いていたが、この武道館だけは何故か風がよく通り抜けていた。
     エクスブレインの相良・隼人(高校生エクスブレイン・dn0022)は、静かに座して灼滅者たちを待ち続ける。
     一人、二人と集まり、ようやく揃うと隼人は口を開いた。
    「来たな。……ちらほら聞き及んでいるかもしれねぇが、実は最近デモノイドの力を使いこなす連中が現れ出した。デモノイドロード、と呼称しているンだが、このデモノイドロードの若い男が、地下鉄の構内をウロウロしているのが分かった」
     彼らのやっかいな所は、普段は人間の体で居る事が出来るが、危機に陥るとデモノイドの体となって暴れる事が出来るのである。
     そして危険が去ると、またヒトの体に戻り雑踏の中に消えて生活に戻る。
    「こいつ等はヒトと同じ知恵を持った、ごく普通の犯罪者と同じだ。まぁ何が言いたいかってぇと、他のデモノイドのように知恵のない木偶の坊じゃないってこった。ただし、一つだけ弱点があってな……強い悪意によって制御しているから、その悪意を失うとデモノイドから戻る事が出来なくなる」
     まぁ、コイツの場合悪意が無くなる事はなさそうだが……と隼人は説得があまり効果が無いだろうと話した。
     彼とは、戦うしかないのだ。
    「こいつは昼間は働いているらしく、捕まえるのは困難だし危険だ。夜間になると地下鉄の駅構内をウロウロして犠牲者を物色している。こいつの狙いは女である事、一人で歩いている事、清潔そうで柔らかい体をしている事と香水や貴金属をつけていない事、周囲に人があまり居ないこと……あとは子供なら小学生低学年くらいまでが好みのようだな」
     弱い所を狙うのかと、誰かが呟く。
    「おそらく夜9時を過ぎると構内も人が減るだろうから、その時間を狙うといい」
     デモノイド自体は力がとにかく強く、デモノイドヒューマンとほぼ同じスペックだと思って良いと隼人は話す。
    「こいつは追い詰められたら何でもする。とにかく逃げられないように気をつけていけ」
     今回において、情けなど無用だと隼人は静かに言った。
     ただ、悪意を体ごと粉砕する。
     その為の依頼だ。


    参加者
    風波・杏(陣風・d03610)
    三条・美潮(高校生サウンドソルジャー・d03943)
    斉藤・キリカ(闇色子守唄・d04749)
    綾辻・綾乃(キルミースパイダーベイベー・d04769)
    越坂・夏海(残炎・d12717)
    嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)
    アデーレ・クライバー(地下の小さな総統・d16871)
    原・三千歳(深緑へ望む光・d16966)

    ■リプレイ

     通勤ラッシュの人混みが去る時刻、駅はその事件を知ってか人も疎らになってきた。足早に駅から出て行くOL、のろのろと駅の改札を抜けてホームに向かうサラリーマン、駅の外から微かに歌声が聞こえるのは、近くでストリートライブでもしているのだろうか。
     構内の見取り図を見ていた風波・杏(陣風・d03610)は、ふとストリートライブの音楽に耳を傾けるように顔を上げたが、すぐにマップに視線を戻した。
    「逃げられないように、どこか狭い通路があればいいんだけどなぁ」
     今までのデモノイドと違い、人の姿に戻って逃走を図る可能性があるという。地図を見ながらそれぞれ散策を続けると、地上に出る出口や商店の間の通路が意外に挟み込み易い事が分かった。
     携帯で地図を見ながら、杏は仲間に連絡を続ける。
    「隠れられそうな場所がある通路だと、丁度いいんだけど」
     杏が言うと、少し離れた所を歩いていた三条・美潮(高校生サウンドソルジャー・d03943)が袋小路と通路とどっちが良いかと聞き返してきた。美潮としては行き止まりでもいいかと思っていたが、それだと挟み撃ちに出来ない。
     すぐ傍に隠れる場所というと難しいが、出口付近ならば地上で待機するという手がある。考え込んでいる美潮に、嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)は通路の方を指して言った。
    「戦いやすい方がいいと思うっすよ。な、出口付近だと地上の方の人払いも要るしめんどくさいし」
    「あー、確かに戦いやすい場所の方がいいな」
     携帯電話を取りだし、美潮は皆に知らせる。
     とりあえず待機。
    「じゃ、始めようぜ」
     嬉しそうな顔をしている絹代を、美潮はちらりと見返した。落ち着けというように肩を叩くと、絹代は首を振る。
     落ち着いていない訳ではない。
     多分、性分なのだ。
    「似たモノなんすかねぇ、やっぱ」
     六六六人衆の中にあるモノと同じ臭いを、ヤツの中に感じる。純粋な悪意と殺戮衝動、というやつである。
     しかし、美潮はちょいとアデーレ・クライバー(地下の小さな総統・d16871)の方を視線で見送る。絹代が通路の向こうにぽつんと立った彼女を見ると、アデーレは違う所を見ていた。
    「まあ、少なくともお前の業とデモノイドロードの業は量が違うっぽいな」
     量……それとも質だろうか。
     ならばなおさら、見て見たい。
     絹代がにたりと笑うと、気付いたようにアデーレがこちらを振り返った。

     改札から少し離れた地上出口付近で、アデーレは一人ぽつんと壁に背を預けて立っていた。鞄の中に詰め込まれた『荷物』は、もぞもぞと息苦しそうに動いている。
     まるで習い事の帰り道であるかのように、アデーレは幼い少女の不利をしてポケットに手を突っ込む。
     飴が一つと、ハンカチ。
     そして鞄の携帯を出すと、アデーレは歩き出した。
    「あ、ママ? 駅に着いたよ……うん」
     電話の相手は、彼女の声を聞いてくすりと笑う。
     ママ……ね。
     実際はママでもパパでもないので、アデーレの話に適当に合わせて返事を返す。どちらにせよ、電話の内容は追跡者には聞こえはしないだろう。
     アデーレは電話の相手、つまり現場付近で待機する杏に話しかけながら、歩き出した。やや遅れて歩き出した影に、彼女は気付いている。
     どす黒くて、そして波打つコールタールのような重い業。
     『業』は、アデーレにその存在感を嫌でも知らしめる。
     彼が追いかけるのは、もしかしたら居たかもしれない、小学生のごく普通のアデーレ。ママに今晩の御飯について聞くアデーレ。
    「大丈夫よママ、ちゃんと待ってるから」
     そう、アデーレはイイ子で待ち合わせ場所に行くから。
     アデーレの声は、先ほどより少し低かった。
     周囲の人影が、何時の間にか消えている。先ほどすれ違ったのが斉藤・キリカ(闇色子守唄・d04749)と綾辻・綾乃(キルミースパイダーベイベー・d04769)である、と気付いている。
     キリカは携帯電話を使いながら、出口付近に歩いて行く。途中で電話を切って、道を聞く振りをしながら歩いていたサラリーマンを一人引っかける。
     そのまま、腕をかるく引いて地上口の方へと歩いて行った。
     綾乃は地上から聞こえる歌声にちらりと誘われるように歩き出し、何人か声を掛けてきた少年たちとツレだって歩き出す。
     アデーレはそうして、彼女達に助けられながら待ち合わせ場所へと向かう。
     アーケードエリアの連絡路の役割を果たす、細くて人通りが少ないシャッター街である。この辺りはちらほら端の方に店があるだけで、店も人も見当たらなかった。
     ぽつん、とアデーレが立つとゆるりと影が伸びた。
     影の手には、大きな鋭いエモノが握られている。エモノをゆっくりと振り下ろそうとした時である。
    「フーッ!」
     突如、彼の前に飛びかかったものがあった。
     飛び退いた男の足下に、噛みつきそこねた蛇が落ちる。瞬時に元の姿に戻ると、武器に手を掛ける。
     足がよろりとふらつき、原・三千歳(深緑へ望む光・d16966)は笑った。
    「鞄の中も楽じゃないねぇ。暑いし揺れるしもう……」
     二人が体勢を整える間に、男の姿も変化していた。
     細くて頼りないヒトの姿から、巨大で青白い異形に変わっていく。
    「アデーレ、大丈夫か?!」
     気にする越坂・夏海(残炎・d12717)の声に、アデーレはこくりと頷き構える。拳が飛び、青白い腕が夏海の脇を抜けてアデーレに叩きつけられた。
     とっさに体勢が整わなかったが、ふっ飛んだアデーレの代わりに三千歳がフォローに回った。彼女を庇うように夏海と男を挟み込む。
     仲間が到着するまでは、ほんのわずかの差である。まずはキリカと綾乃を除いた三名が合流し、包囲する。
     声をたてて笑うと、絹代が影を纏わせた。
     影とともに、絹代は殺気を迸らせる。
    「お前か、件の殺人鬼は。……ほれほれ、お望み通り女がいっぱい来てやったっすよ!」
     三人とも中学生以下という時点で女が一杯、と言うべきかどうかはさておき。
     そうしている間にも、男は暴れ続ける。刃のように鋭い男の爪が夏海を引き裂くと、呻きながらよろめいた夏海の体を杏が後ろから支えた。
     何故だろう、仲間が居るだけで、声を聞いただけで夏海はホッとした。
     不安は声に出さないが、夏海はサンキューと杏に伝えると体を起こす。先ほど痛めつけられた鈎爪の痕はふさがりかけ、杏の盾で守られていた。
    「相手のパワーはこちらを上回っている、正面から受け止めない方がいいよ」
    「ああ、忠告胸に刻んでおくよ!」
     夏海は再び前へと飛び出すと、シールドをシッカリと構えた。
     とにかく攻撃を後ろに回さない為にも、夏海は盾を構えて飛び込んでいく。男の気を惹くように、シールドでの攻撃を続ける。
    「……やっぱり」
     小さく呟いた三千歳の声に、夏海はちらりと顔を向ける。初手でその巨大な腕を男に叩き込んだ三千歳であったが、何かに気付く。
     笑みを浮かべてはいるが、三千歳の顔色に少し影が見えているように夏海には見える。
    「ボクが得意な攻撃は、あなたも得意……当たり前、か」
     続けて炎を撃ち込むが、男はうっとうしそうに振り払う。包囲した道彦をぎろりと睨み、腕にぎらりと光る刃を振り上げた。
     来る、というのは分かって居るものの、その刃を三千歳は受け止めきる事は出来なかった。体を切り裂かれる感触が、ぬるりと伝わる。
     男はにやりと分かったようで、道彦は眉を寄せて床に転がった。
    「下がって!」
     アデーレが前に立ちふさがり、三千歳は腕を杏に捕まれ後ろに引き下げられた。まだ立つ力はあるが、油断出来る程の相手ではない。
     ヒトから変わる所を見た。
     三千歳は、あの男の中にあるものが自分と同じであると戦いの中で感じ取っていた。
     同じ?
     それとも違うもの?
     ちらりと夏海を見ると、彼もまた三千歳と似たような表情をしていた。
    「同じ……なのに、同じじゃない」
     呟いた三千歳の背後から、足音が響いた。
     元気の良い二人の声が、次第に近づいて来る。
    「みんなゴメンネ、待ったー?」
     手を振り、キリカが駆け込んでくる。
     カツンと蹴った床から黒い影が飛び出し、デモノイドロードの巨体を絡め取るように切り裂いていった。
     影にはその後ろにいた綾乃の糸も忍ばせ、影と糸は男の体をしっかりと縛り上げた。キリカのビハインドがアデーレの傍に立ち、綾乃のキャリバーは滑り込みながら男に突っ込んでいく。
     全員揃った事がこんなにも頼もしく、そして安心するものだとは……。

     キャリバーのタイヤを、霧が包み込んだ。そのうっすら冷たく白い霧は、絹代の方から発生している。吸血鬼の霧は、ビハインドを……そして盾になってくれているアデーレや夏海の方へも流れていった。
     その霧を蹴散らすようにして、構えた絹代が影を放つ。
    「斬るのが好きなんすか」
     にたりと笑い、影を走らせる。
     食らいついた影をかわす男であったが、絹代は諦めない。更に執拗に影を這わせ、意地でも心わ抉ってやろうという構えが見て取れる。
    「……どうしてもそれじゃないと駄目?」
     キリカが聞くと、絹代は頷いた。
    「トラウマで埋め尽くしたら、恐怖が無くなって人間に戻るんじゃないかと思って」
    「いいわよ、とりあえず試してみましょう」
     キリカは絹代の攻撃に合わせ、自分も影を使いはじめた。フォローするように綾乃は糸で縛り上げていくが、男は姿を変える気配はない。
     むしろ、何が見えているのか更に激しく攻撃を切り出してきた。男の砲撃を間一髪でかわし、キリカが小首をかしげる。
    「やっぱり善意に目覚めないと駄目なのね。……じゃあ仕方ない」
     ぽんと手を打ち、キリカが縛霊手をぎらりと光らせ構えた。
     縛霊手を使い、除霊結界を展開していく。
    「イヴァン、攻撃がキツイと思うけどもうちょっと頑張ってね」
    「アレで駄目なら仕方ねぇな、ぶっ潰すしかない……善意なんかこれっぽっちも無いクソ野郎なんだからなァ!」
     絹代は叫ぶと、風のように切り裂いた。
     男の腕がイヴァンの首を掴み、ギリギリと締め上げていく。キリカはそれを視界の片隅にいれながらも、縛霊手による衝撃を与え続けた。
     攻撃を引き留めようとしている綾乃の糸を通して、その強烈な引きは感じていた。
    「機銃掃射で一瞬隙を作る、とにかく足止めをしよう……何か……逃げそう」
     様子を伺っているのか、あまり踏み込んでこない。
     綾乃はそっと下がると、糸を握りしめた。杏がイヴァンの傷をシールドで庇いながら、男の背後に回り込むのが見える。
     綾乃は、自分や杏の所まで突破されなければそれが一番いいがと案じながらキャリバーに声わ放った。
    「……今よ、機銃掃射!」
     綾乃の指示を受け、キャリバーが弾幕を張る。
     飛び込んだ絹代が影で一閃すると、夏海が拳を叩き込む。その拳は既に自分の血で濡れていたが、力が緩められる事はない。
     ひたすら叩き込む拳は、男の体勢を怯ませた。
     下がろうとした男の足を、美潮の斬鑑刀が切り裂く。
    「どこ行くんだ?」
     ずしんと転がった男の体を、美潮が見下ろす。
     美潮の顔は笑っていたが、その目に宿るのは怒りと力。
    「てめぇは弱いモン嬲るだけで、戦闘経験なんてこれっぽっちもねぇんだろ?そんなヤツが逃げようったって、すぐバレんだよこのド素人が!」
     男の頭部を美潮の刃が突き破ると、その体をアデーレの刃が宿した炎が包み込んでいく。炎に焼かれ、青白い体はあっという間に力を失う。
     その時、意識を失っていく男にアデーレが声をかけた。
    「……どうしてヒトを殺そうとするの? その力をあなたは、どう考えていたの」
     アデーレの問いに、男は嬉しそうに笑った。
     ……心奮わすほどに気持ちよいからだ、と。
    「心地よいから? みんなと笑ったり楽しんだりする以上に気持ちいいっていうの?」
     彼の答えを聞いてぎゅっと拳を握りしめ、そして三千歳も影を放つ。
     先ほどまでの戸惑いを振り払い、その刃は真っ直ぐ切り裂いた。男の体がゆっくりと消えていき、綾乃の糸の手応えが無くなると、彼女はようやく力を解いてペタリと座り込んだ。
     ようやく終わったのである。

     傷が深いように見えた夏海も、戦いが終わるとすぐに癒えていた。
     安心したように杏は息をつき、笑みを浮かべる。少しだけタイミングが遅れた為、大丈夫だったのか戦いの最中も気にしていたのである。
    「でも良かった」
     そっと目を伏せながら、杏は言う。
     ヒトの知恵を持っていて、その上デモノイドとしての力も使いこなす。そんな敵との戦いに、それぞれ心構えがあっただろう。
    「ここで仕留められてよかった」
    「……そうだね」
     答えた三千歳の声は、少し沈んでいる気がした。
     そんな迷いをかき消したのは、何げない絹代たちの会話であった。戦いの最中も、さほど迷いの無かった彼女達であったが。
    「気持ち良い、ってのはちょっと分かる気がするっすね」
    「あの男のこと?」
     綾乃が聞き返し、ふと表情を和らげる。
     ああまで思い切って鬼畜だと、遠慮無く狩れるから好きだと綾乃は言った。そう言い返した綾乃は、自分もまた同類かもしれないと薄々感じている。
     特にどこか迷いが感じられた夏海や三千歳に比べると、そうであった。
     迷っている仲間が居ると分かっているからこそ、綾乃にとってそれがはっきりと自分に写る。
    「最初からヒトを殺す為にダークネスになってる訳だから、その点分かりやすいのよね」
    「んー、しかも悪意に使われてデモノイドになった奴がロード名乗るって、やっい王様っすね」
     美潮はけらけら笑って綾乃に言った。
    「こっちがヒューマンなのに、外道の方が王……ロードとか、ちょっとムカツクわよね」
     キリカの怒りは、どうやら彼らの名前にある様子。
     あくまでもダークネスとしての処理であり、ああして純粋にヒトを傷つけるだけの存在に容赦は必要ないのかもしれない。
     ぽつりと少し離れた所に立っていた夏海に、美潮が気付いて歩み寄る。言いかけた言葉を飲み込み、ひょいとその横に立って視線を地下道の向こうにやる。
    「な、ちょっと向こうの自販機に変わった飲み物あったんだけど行かないか?」
    「ほんと? 行く行く」
     笑顔を浮かべながら、夏海は平然と歩く。
     夏海も、感じていたのである。
     あの男がヒトから変わっていくのを見て……そこに居るのがヒトであると実感した。ヒトであると認識すると、もうそこから迷いが滲み出てしまった。
     無理に話そうとする夏海は、何時の間にか後ろにアデーレがついて歩いているのに気付いて足を止めた。
     アデーレは美潮ではなく、夏海に顔を向ける。
    「コレは化け物の力。でも、あの男の中にあったのもバケモノ。そうでしょ?」
     自分の手のひらを見せながら、アデーレは言った。
     自分達の中には、確かにヒトの魂とココロが宿っているのである。

    作者:立川司郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年7月31日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 11/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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