●捧ぐ魂
青い巨体を返り血に染めたデモノイドが、周囲を見渡す。
人の気配はない。少なくとも、生きている人間の気配は。公園にあるのは、デモノイドの力で蹂躙された無数の死体だけだった。
安全を確認したデモノイドが、姿を変える。井門・開馬(いど・かいば)という人間の姿に。
開馬は踵を返し、血塗れの公園を後にした。
家に帰ったところで、母親はいない。自分が八つ裂きにしたから。父親もいない。自分がどろどろに溶かしてしまった。妹だって、踏み潰した。
「それでいい」
開馬は呟いて口を笑みの形に歪める。今、自分は笑っているのだと、自分に強く言い聞かせながら。
そうしないと、自分が自分でなくなる。青い化物に、身も心も乗っ取られてしまう。
「そうだ。どうせ殺すなら、次はクラスの連中にしようか」
あと半年もすれば、大学受験だ。ライバルを減らしておけば、一石二鳥というものだ。
「それがいい」
あの化物はいつだって腹ぺこで、どんどん食わせてやらないと、自分が食われてしまうのだから。
生き残る為なら、誰だって生贄にしてやる。
●悪人であっても、人である為に
「説明を始めてもよろしいでしょうか」
園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)は教室に灼滅者達が集まったのを確認してから、控えめに一礼する。
「デモノイドの事は、みなさんもご存知だと思います。デモノイド寄生体に体を支配され、本能のままに暴れるデモノイド……。しかし、強い悪意を持った者が、寄生体のコントロールに成功する、という事例があるようです。それが、デモノイドロードと呼ばれる者達です」
自身の悪意によって寄生体の支配に成功したデモノイドロードは、人の姿を保つ事ができる。自らに危険が迫れば意識を保ったままにデモノイドの姿に変異して戦い、或いはデモノイドの力を使って我欲を満たす為に悪事を働くのだ。
「井門・開馬という青年も、そんなデモノイドロードの1人です」
開馬はデモノイドロードの力を使い、既に肉親を含む多くの罪なき人々を殺めている。
「デモノイドロードは、人並み外れた悪意によって寄生体を支配しています。つまり、本人の悪の心が薄まれば支配を維持できなくなり、通常のデモノイドと同じように本能のままに暴れる理性なき存在となります。それを恐れる彼は、デモノイドロードであり続ける為に、多くの人の命を奪い続けています。みなさんに、彼を止めてもらいたいんです」
デモノイドロードは自らの意思で闇堕ちできる灼滅者のような存在だが、開馬の心は既に悪に染まりきっている。仮に説得によって改心させたとしても、その時点で肉体も精神も寄生体に支配され、理性を失った完全なデモノイドとなって暴れる。
開馬と戦い、そして灼滅する以外に道はない。
「彼は駅前の予備校に現れ、そこにいる人々を無差別に襲おうとしています。事件が起きるのは午後2時30分。それより前に予備校前に待ち伏せてデモノイドロードと接触、彼が予備校に入るのを阻止してください。デモノイドロードの出現より前に予備校の中にいる人達を避難させてしまうと、デモノイドロードは現れないので注意してください」
予備校に関係ない人をあらかじめ戦場から遠ざけておくのは問題ない。
「彼は完全なデモノイドになってしまう事を恐れて、自らの悪意を強く保つ為に人を殺しています。戦闘前に言葉を交わせる時間はほとんどありませんが、もし彼の罪の意識を呼び覚ますことができれば、改心させられる可能性も僅かながらあります」
ただし、その時点で開馬は完全なデモノイドとなって暴走する。説得は、彼の命を救うための手段ではない。
彼をデモノイド寄生体から救う方法はないが、井門・開馬という人格の今際の際に、その罪を悔い改めさせることはできるだろう。
「彼の望み通り、デモノロイドロードという人の意識を持ったまま灼滅されるか。それとも完全なデモノイドになろうとも、犯した罪を悔いながら最期を迎えるか。どちらが正しいのか、私には分かりませんが……」
それを判断すべきは、灼滅者達だろう。
「デモノイドロードはクラッシャーのポジションから、デモノイドヒューマンと同様のサイキックを使用して戦います。また、デモノイドロードはデモノイドの姿になっても人としてのその悪意ある知性を保ち、身の危険を感じれば逃走という判断もしますし、周囲の人を盾にするなどの狡猾な手段も用います。周囲に被害が及ばないよう、充分に注意してください」
特に、予備校の中の人々には注意しなければならない。戦闘が始まったら、可能な限り予備校から引き離すようにしつつ戦うべきだろう。
「彼もまた、デモノイド寄生体の被害者なのかもしれません。しかし、だからといって罪を犯すことが許されるわけは、決してありません。これ以上の被害者を出さない為にも、どうか彼を止めてください」
灼滅者達に頭を下げた槙奈は、目を伏せながらそっと呟く。
「それがきっと、彼の為にもなると思うんです」
参加者 | |
---|---|
森野・逢紗(万華鏡・d00135) |
風音・瑠璃羽(散華・d01204) |
迅・正流(斬影騎士・d02428) |
殺雨・音音(Love Beat!・d02611) |
姫切・赤音(紅榴に鎖した氷刃影・d03512) |
天道・奈落(堕落論・d16818) |
上土棚・美玖(中学生デモノイドヒューマン・d17317) |
黒鐵・徹(オールライト・d19056) |
●食うか食われるか
「申し訳ありませんね、この先は工事中でして。迂回をお願いします」
車に駆け寄った姫切・赤音(紅榴に鎖した氷刃影・d03512)の言葉を疑う様子もなく、中年男性の運転手はハンドルを切って走り去っていった。
工事中の看板の隣に立つ迅・正流(斬影騎士・d02428)が上土棚・美玖(中学生デモノイドヒューマン・d17317)をちらりと見やるが、まだ美玖が開馬の業を嗅ぎつけた様子はない。
交通整備を装って道を封鎖する灼滅者達の試みが成功し、予備校付近を通る車はない。そう長いこと誤魔化せるわけではないが、この事件に片を付けるまでの間くらいはもつだろう。
歩道を行く人々は、黒鐵・徹(オールライト・d19056)達が個別に対応していく。
「こっちに来たらだめですよ」
王者の風を発動させた徹の一言で、若者のグループは大人しく引き返す。
流石に歩いてくる者全員の対応はできないが、人通りも随分と少ない。開馬と戦う為の環境は整いつつあった。
唐突に鼻をついた臭気に顔をしかめたのは、天道・奈落(堕落論・d16818)だった。
まともな人間が背負いきれるとも思えぬ、尋常ではない業の臭い。それも肉親殺しを為した開馬の物だと考えれば納得がいった。
「殺雨さん」
奈落は近くで交通整備の手伝いをしていた殺雨・音音(Love Beat!・d02611)を呼ぶ。それだけで、音音は状況を察した。
「開馬ちゃんが来たんだね? 私、皆に知らせてくるよ!」
音音が駆け出し、奈落も近くの仲間達に合図を送る。
報せを聞いた赤音と正流、そして音音が予備校の入口の前に陣取る。付近には、いつでも背後を取れるように森野・逢紗(万華鏡・d00135)と風音・瑠璃羽(散華・d01204)も控えている。
灼滅者達の待ち伏せの陣形が完成してから数分と経たず、デモノイドロードの青年、井門・開馬は予備校の前に現れた。
「何だよ、あんたらは。邪魔だから退きな」
「貴方を通すわけにはいきません」
開馬を真っ直ぐに見据え、正流が開馬に宣言する。同時に、逢紗と瑠璃羽が開馬の背後に回り、他の灼滅者達も駆けつけて包囲網を形成した。
「何を――」
「――オレ達が何を言いたいか、心当たりはあるでしょう?」
開馬を遮った赤音の言葉に、開馬は周囲に視線をやりながら鼻を鳴らす。
「妙に人通りが少ないと思ったら、あんたらの仕業か。正義の味方ってとこか?」
作業着姿の正流が発する殺気を受け流しながら、開馬はさしたる疑問も持たず状況を理解した。
「人を殺すほど僕達は怪物に近づくんです」
徹の縛霊手を飲み込むように融合するデモノイド寄生体を目にして、開馬が眉を跳ねさせた。
「君のしていた事は全部無駄で、君は只の家族殺しの悪人です。……でも、自分の罪を後悔できるなら、まだ戻れるかもしれないですよ」
「只の悪人? それで結構。戻ってどうしろってんだ。化物に食われるくらいなら、俺は怪物になる。俺が化物を食ってやるさ」
開馬が嘲笑混じりに言葉を返し、挑発的に笑みを浮かべる。
「早い話が、だ」
言った開馬の体をデモノイド寄生体が侵食し始める。寄生体は開馬を包みながら膨張し、人とも獣ともつかない姿に変えていく。
「喜べ化物ォ! 食い甲斐のありそうな餌が現れやがったぞ!!」
青い化物が嬉々として咆哮を上げた。
●正解探し
「逃げなさい! 早く!」
奈落の鋭い叱責に、呆気にとられていた通行人が悲鳴を上げながら逃げ始める。
「無双迅流の真髄は闘志にあり!」
鴉の死鎧を纏って高らかに吼えた正流が、破断の刃を構えて真っ向から開馬を迎え撃つ。
「期待させていただきますよ、無双迅流の真髄とやらを。そういえば、実戦で見せて頂いたことは無かったンでね」
ポケットに手を突っ込んだままの赤音が、足元から影業の巨腕を生やして正流に続く。
正流が突進から振り下ろす巨大な刃を、開馬は交差した腕で受け止める。それでも正流は止まらず、刃をねじ込みながら押し進み、予備校から開馬を引き離す。
開馬は両足に力を込めて踏ん張り、同時に交差した腕を振り開いて正流を弾き飛ばす。
「こういう時はどうする、正義の味方さんよ!」
くぐもった声で開馬が叫ぶ。
開馬の組んだ両手が融け合って一体化し、巨大な砲身を象る。震えながら光を溜め込む砲口が向けられたのは、灼滅者ではなく予備校だ。
開馬が禍々しい光線を発射する寸前、その射線に割り込んだのは徹だった。
徹は寄生体の腕にWOKシールドを展開して盾にし、身を挺して光線を受け止める。腕を灼かれ吹き飛ばされた徹は、予備校の外壁で受身を取って着地する。
徹は自分の意思に従っていることを確かめるように、寄生体の腕を撫でる。応えるように、寄生体の腕が巨大な刃に形を変えた。
「僕は……」
「さっすが正義の味方、他人を守る余裕があるなんて羨ましい限りだな!」
「君の罪を裁く!」
嘲笑う開馬にDMWセイバーの切先を向け、徹が飛び出す。
デモノイド寄生体の刃と刃が、激しくぶつかり合う。反動を受け流し開馬の刃の上で跳ね上がった徹は、全身のバネを使ってDMWセイバーを振り下ろした。
ヒットアンドアウェイで即座に退がる徹と入れ代わり飛び込んだ赤音が、展開したWOKシールドで覆った影業の巨拳を繰り出す。
開馬は迫る影業の拳を鷲掴み、もう1発も受け止めて赤音と組み合う。
「随分とゴキゲンですね。人より優れた力を得られれば、そりゃァ楽しいでしょうよ。……ですが、今の貴方はそれで満足ですか?」
「別に望んで得た力じゃないんでね!」
巨大に見える影業の腕も、赤音本来の力を上回る力を出せるわけではない。そして、単純な腕力勝負においては、開馬に分があった。
開馬は力ずくで影業を押し切り捩じ伏せ、赤音を鷲掴む。
「欲しけりゃくれてやるよ!」
開馬は赤音を掴んだまま腕を砲身に変え、ゼロ距離砲撃で赤音を吹き飛ばした。
赤音はポケットに手を突っ込んだままの姿勢で、器用に空中で身を翻し、よろめきながらも着地した。そこに音音が駆けつけ、シールドリングの回復を赤音に施す。
「開馬ちゃん……どうして、殺そうと思ったの?」
「……ああ?」
音音の開馬を真っ直ぐ見ながら、問いかける。
「お父さんも、お母さんも、妹ちゃんも嫌いだった? 憎かった?」
「何を言い出すかと思えば……」
音音の問いかけを、開馬は鼻で笑って一蹴した。
「あいつらを殺さなきゃ、俺が化物に食われてたんだ。それに、どうせ化物は俺を食った後であいつらを殺したんだ。結局同じことだろうよ!」
開馬は笑みさえ浮かべて吼える。
踏み込み一瞬で開馬に肉薄した奈落は、激昂する開馬とは対照的に静かに抑えた言葉で問いかける。
「……自己正当化の時間は終わりましたか?」
「正当化、ときたか」
開馬が笑いを噛み殺し、それから腕を振りかざす。
「こっちは正解探しなんざとうの昔にやめちまってんだよっ!」
開馬は刃に変えた腕を、ギロチンの如く振り下ろす。
が、刃は振り切られることなく、奈落から噴き出した影の塊によって受け止められた。
開馬の腕を押し止め、奈落は冷淡に開馬を見上げる。
「何を言おうと、貴方の犯した罪は決して消えない。貴方が殺した人達も、決して還っては来ない」
「その通りだ! 人間死んじまったら終わりなんだよ! 罪人になろうが悪人になろうが、俺は生き延びてやる!」
「……悔い改める気が無いのであれば、ここで貴方を打ち倒します」
開馬の腕を飲み込んだ奈落の影業が膨張し、一気に開馬を侵食した。
●正解なき正解探し
開馬は激しく体を振って影を振り払い、組んだ両手を奈落目掛けて振り下ろす。奈落はバックステップで躱し、地面に叩きつけられた開馬の拳が派手にアスファルトを巻き上げた。
飛び散る破片を掻き分け奈落に追って突っ込む開馬の前に、逢紗が割り込み立ち塞がる。
「道を間違えなければ、灼滅者になれそうな意思の強さね……」
逢紗は突進してくる開馬の鼻先にWOKシールドを押し付けつつ真上に跳び、旋転で捌く。舞い上がった逢紗は落下の勢いと遠心力を乗せたシールドバッシュを開馬の背中に叩き込み、反動で後退して間合いを取った。
「今の悪意に満ちた、罪に塗れた貴方の姿が、果たして人と呼べるのかしらね?」
「だ、黙れ! 黙れぇ!」
或いは攻撃以上に、その言葉は深く開馬に突き刺さっていた。
開馬が撒き散らすDESアシッドの弾幕の中、日本刀を構えた瑠璃羽は果敢に前に出た。同時に美玖がDESアシッドを放って開馬の酸弾を撃ち落とし、瑠璃羽の突入を支援する。
開馬を間合いに捉えた瑠璃羽の足元を、美玖の影業が追い越し伸びる。二手に分かれた影業は開馬の真下から垂直に伸び、開馬の両腕に巻きついた。
同時に開馬の懐に入った瑠璃羽が地を蹴り割りながら踏み込み、背中からぶちかましを仕掛ける。開馬が後退すると瑠璃羽は上体を切り返して刀を水平に振り抜き、更に逆手に持ち替え振り上げた。
赤い剣閃が空を斬り裂いて飛び、開馬の胸に逆十字を刻み込んだ。
「死んでたまるか!」
踏み堪えた開馬が、即座にDESアシッドを撃ち返す。
「生きて、貴方は一体何がしたいのかしら?」
瑠璃羽に当たる寸前の酸弾を、横から叩き落としたのは逢紗だ。
「生き延びて、俺は……」
「開馬ちゃん……」
「俺はっ……!」
「家族も友達もみんないなくて、1人ぼっち。……そんなの、寂しいよ」
音音の言葉に、開馬は二の句が継げなかった。
正流が飛び込み跳躍から振り下ろされた破断の刃を、開馬は刃に変えた腕で受け止める。
「心の底から家族を殺したかったのですか?」
正流は踏み込み旋転から逆水平に刃を振るい
「自分には貴方が化物に食われる事より肉親殺しの罪をこそ恐れているように見えます……嘗ての自分の様に」
交錯する破断の刃を開馬の刃の上で滑らせ、正流は更に踏み込み逆袈裟に斬り上げ、
「僅かでも罪の意識が残っているなら……最後に思い出してあげてくれませんか? 家族の笑顔を……」
正流は刃を返してもう一撃叩き込んだ。
正流の言葉と斬撃を黙して受け続けていた開馬が、反撃の刃で正流を弾き飛ばす。
「覚えているのは、この手で殺した時の感触だけだよ」
開馬は吐き捨てるように呟き、自分を取り囲む灼滅者達を見やった。
「なあ、答えろよ」
開馬は問いかける。
「俺はどうすればよかった? 何が正しいのか、教えてくれよ。正義の味方さんよ」
その問いに、答えられる者はいなかった。
美玖は奥歯を強く噛み締める。
生きる為には、肉親さえも殺すしかなかった開馬の辛さも。罪なき人々を守る為に戦い、辛辣な言葉を投げかける仲間達の辛さも。どちらもが理解できる。
だからこそ、美玖は沈黙と攻撃をもって開馬に答えた。
美玖のDESアシッドを浴びて焼ける自分の――否、デモノイド寄生体の体を見下ろし、開馬は鼻で笑う。
「……そうかよ」
開馬は毒づいて空を仰ぐ。
「あんたらは正義の味方で、俺は悪人の怪物で。そんなの、不公平じゃねえか」
デモノイドの咆哮が、天を衝いた。
●悪人が殉ずるは
「もう、元には戻れない……ならば、これ以上罪のない血を流さない為に……討つ!」
覚悟を決めた瑠璃羽が前に出る。
「ゴアァああアあァァぁああ!!」
デモノイドが咆哮を撒き散らしながら、突進で瑠璃羽を迎え撃つ。
真っ向からのぶつかり合いでは、デモノイドに分があった。しかし、瑠璃羽は衝撃を堪えて踏みとどまる。
瑠璃羽は軋む脚に活を入れて踏み込み日本刀で突き、踏み込み袈裟懸けに斬り、踏み込み刃を返して逆水平斬りを振り抜く。
前へ前へ、瑠璃羽は決して退かず前進と共に斬撃を繰り出す。しかし、デモノイドはダメージなど意に介さずに吠え猛り、刃に変えた両腕を滅茶苦茶に振り回した。
瑠璃羽を吹き飛ばし、更に追い打ちをかけようと跳ぶデモノイドをナノナノのたつまきが襲い、そこに逢紗が飛びかかる。
デモノイドは標的を逢紗に変えてDCPキャノンで蹴散らす。荒れ狂うデモノイドの攻撃は、手当たり次第の暴走に等しかった。
正流は面頬と眼鏡を外して素顔を露にし、吠え狂うデモノイドに宣言する。
「安心して下さい……。貴方と犠牲者達の仇は……我々が討ちます!」
「その仇討ち、乗っからせてもらいましょうかね」
正流の隣に赤音が立ち、2人が同時に駆け出す。
迎え撃つデモノイドの酸弾を、赤音は影業の腕で打ち払い、正流は炎を纏わせた破断の刃で斬り捨てる。
振り下ろされるデモノイドの刃を、赤音は細かいステップを刻んで躱しつつデモノイドの腹の下に潜り込み、同時に正流が跳躍した。
赤音が垂直に突き上げる影の巨拳でデモノイドを打ち上げ、
正流が燃え盛る刃を逆水平に振り抜きデモノイドを吹き飛ばし、
赤音が追いかけ影業の右ストレートを叩き込み、
正流が飛び込み逆手に握った破断の刃を突き刺す!
正流は刃を捩じ込み、刀身に纏わせた炎をデモノイドに流し込み、柄を握り直して引き抜き、同時にデモノイドを蹴り跳び間合いを離す。
「無双迅流! 紅蓮爆華斬!」
正流は着地から刃を返して即座に踏み込み再突入し、大上段からデモノイドを叩っ斬る!
デモノイドの傷口から炎が溢れて膨張し――、
「散華!」
――爆炎が大輪の花を咲かせた。
爆風にデモノイドが吹き飛び、地面を転がる。
そのまま動かなくなったかと思いきや、不意にデモノイドは体を起こした。が、ふらつく体を支えようと地面をついた腕は、腐った果実のように潰れた。
「もう怖れなくていい……家族の元へ逝きなさい……」
最早、手を下すまでもない。正流は破断の刃を下ろし、溶け崩つつあるデモノイドを見つめた。
灼滅者達を見つめ返し、開馬がせせら笑った。
悪人を退治した正義の味方が、なんてツラしてやがる。
開馬の呟きは、ちゃんとした言葉にはならなかった。
開馬は地面に倒れ、空を仰ぐ。それから、今度は灼滅者達にも聞こえるように、毒づいた。
「……ついてねぇな。ついてねぇよ……」
不意に吹いた風にさらわれるように、開馬は溶け崩れて消えていった。
死の間際、理由を失ってなお、開馬が自分本位の悪人である事を貫き通したのは、誰の為だったのだろうか。
美玖は謝罪の言葉を胸に、静かに黙祷を捧げる。
涙を零したのは徹だった。
「あ、あれ……?」
理由も分からないままに泣く徹の頭を奈落がそっと撫で、胸の前で十字を切る。
「革命家曰く、『結果を正当化する何かがある限り、その結果はそれまでの途中段階をも正当化しかねない』。彼がどうすべきだったのか、それは解りませんが……」
正解など、誰にも分からない。
「……少なくとも、彼の凶行を止められたのは私達灼滅者だけ。為すべき事を為した、それだけです」
正しい事を為したのだと、信じるだけだ。
作者:魂蛙 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年8月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 11/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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