お金で買えるものとは?

    作者:陵かなめ

     私立至高ヶ上高校の数学教師・金村は、愕然と試験の解答用紙を眺めていた。
    「ま、まさか、本当にこんな方法が……」
     その隣に、つい先週転校してきた山田・愛姫(やまだ・あき)の姿。
    「言ったとおりでしょ? 皆、賢い解決方法を探していたの。だって、ここって私立の高校でしょ? 赤点を取って夏休み補習授業を受けるより、お金をかけても自由を手にしたい生徒が多いの。それに先生だって、夏休みは休みたいよね。まだお子さんは小さいんだっけ? 学校で補習授業をするより、家族でお出かけしたいじゃない? 点数が上がれば、みんなハッピーだよ☆」
     金村が解答用紙に添えられている茶封筒の中身を確認する。そこには、数枚の1万円札が見えた。
     10点1万円。数学の点数を買う、と言うのだ。
     今回は、愛姫が赤点を取りそうな生徒に声をかけ、お金を添えさせた。

     その噂は瞬く間に至高ヶ上高校の生徒達に広まった。最初は、どうしても赤点を免れない生徒だけ。そのうち、楽をしたい生徒に。
     最後にはきっと、まじめに勉強していた生徒にも、その方法が蔓延していくはずだ。
     愛姫は、金を目の前に興奮する金村を見てほくそ笑んだ。
     
    ●依頼
     「ヴァンパイア学園が動き出したようですね」
     教室に入ってきた五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)が、そう切り出した。
     ヴァンパイア達の学園である、朱雀門高校の生徒達が、各地の高校に転校してその学園の支配に乗り出しているらしいのだ。
    「ヴァンパイア達は強大なダークネスです。現時点で完全に敵対するのは自殺行為でしょう。けれども、このまま多くの学校が支配されること、見過ごすわけには行きません」
     転校先の学校でのトラブルと言う程度であれば、戦争に発展する事もおそらくないだろうと姫子は言った。
     今回の依頼の目的は、ヴァンパイアの撃退ではない。学園支配を防ぐことだ。
    「ですので、戦わずに支配の意志を砕くことが出来れば、一番いいですね」
     更に姫子は説明を続ける。
    「今回のヴァンパイアは山田・愛姫と名乗っています。私立至高ヶ上高校の支配を目論んでいるようですね。数学の金村先生を唆して、お金を支払った生徒に試験の点数を上乗せしているようです」
     最初は愛姫自身が赤点を取りそうな生徒に打診して、金を支払わせた。次第に噂が広がり、次の追試では夏休みの補修授業を受けたくない生徒達が、こぞって金を包むと言う。
    「夏休みはだれだって遊びたいでしょうけれど……、このままでは至高ヶ上高校の皆さんが、勉強せずお金で点数を買うようになってしまいます」
     それは、学生にとっては堕落。愛姫の思う壺である。
    「やはり、金村先生がお金を受け取らないのが一番だと思うんです。何とか先生を説得出来ればよいのですが。あとは、別のアプローチとして、生徒さんを何とかする事でしょうか」
     その方法は皆さんにお任せしますと、姫子が微笑んだ。
    「ヴァンパイアは作戦を邪魔する者がいると気づけば襲ってきます。戦闘は避ける事ができませんが、『自分達を倒しても作戦は継続できない』事を納得させるか、あるいは『このまま戦えば、自分が倒されるだろう』と感じさせれば、撤退します」
     できるだけヴァンパイアを灼滅しないように、事件を解決してほしい。
    「夏休み中で大変ですが、皆さん頑張ってきて下さい」
     姫子は最後にそう締めくくった。


    参加者
    榎本・哲(狂い星・d01221)
    村山・一途(硝子罪躯・d04649)
    モーガン・イードナー(灰炎・d09370)
    イリス・ローゼンバーグ(深淵に咲く花・d12070)
    桜木・和佳(誓いの刀・d13488)
    塵屑・芥汰(お口にチャック・d13981)
    八祓・れう(先生のたまご・d18248)
    ルーウィン・アララギ(愚直なまでの信念・d18426)

    ■リプレイ

    ●私立至高ヶ上高校
     広く豪華な門を抜けると、手の行き届いた花壇があった。校舎前の広場には、いくつも彫刻が見える。
    「金かかってそーなガッコーだなぁ」
     私立至高ヶ上高校を見た榎本・哲(狂い星・d01221)の感想だ。校門を通る際に、さり気なく出入り口などを確認する。
     門をくぐる生徒の姿が見えた。一人で音楽を聞く生徒、集団で駄弁る生徒など、様々だ。
    「これなら、8人で固まってても、大丈夫だよね」
     追試予定の生徒に混じって潜入するという思惑は、成功したと思う。
     村山・一途(硝子罪躯・d04649)はマントの裾を気にしながら、仲間達を見た。皆今日は私服だ。灼滅者達は、自然に登校中の生徒に紛れ込んでいると言って良いだろう。
    「ヴァンパイア学園は目障りだけど余計な事をしてやぶ蛇になることだけは避けたいわね」
     イリス・ローゼンバーグ(深淵に咲く花・d12070)が頷く。武蔵坂学園の事を悟られぬよう、言動にも気をつけなければならない。
     それにしても、と、イリスが風で揺れた長髪を手で抑えた。
    「ダメ教師をわざわざ説得なんて馬鹿らしいわよね」
     元々ヴァンパイアに簡単に唆されてしまうような意志の弱さだ。不正を続けることの不利益が大きいときっちりと分からせることが出来れば、手を引くのではないだろうか。
     その言葉に、八祓・れう(先生のたまご・d18248)が複雑な表情を浮かべた。
    「私は、将来、先生になることが、夢ですから……、こういう話を聞くと、色々と、複雑ですね……」
    「れうは教師志望か。心強いねェ」
     ま、俺は脅すくらいしか出来ないんだけど、と、塵屑・芥汰(お口にチャック・d13981)。
    「このナリなんで不良サン役がぴったりなんじゃないの」
     前髪から鋭い目が見え隠れする。ヘッドフォンに手を当ててみた。その姿は、いかにも真面目な学生、とは言いがたい。とは言え、”勉強しましょうネ”なんてこと、言える立場でも無いのだが。なんとも。若干耳に痛いお話ではある。
     その隣で、ルーウィン・アララギ(愚直なまでの信念・d18426)はラフなシャツの裾を摘みながら、少々着心地が悪いと感じた。普段から制服に慣れているためだ。
     ルーウィンは「父親」「指導者」どちらにも尊敬の念を抱いている。
     だからこそ、金村を放って置けないのだ。
    「ヴァンパイアに付け込まれるのは当人たちにも原因があると思うけど、だからって、それをさせるわけには、いかない、よ」
     不正は嫌いだと、桜木・和佳(誓いの刀・d13488)は思う。やらないでできないのと、やってできないのは、違うと。
    「夏休みに補習に出たくないからと言って、何万円も包む……やれやれ、全くもって理解出来ん」
     モーガン・イードナー(灰炎・d09370)がため息をつく。
     その金で、残った休みを存分に満喫すれば良いのではないだろうか。呆れる金の使い方だ。
    「あそこが自習室じゃないかしら?」
     イリスの指さした教室から、ざわざわと騒ぐ声が聞こえている。
    「確か、追試のための勉強、と言う名目で登校しているはずだが」
     モーガンの言葉に、和佳が困ったように首を傾げた。
    「……、随分にぎやかだね」
     真面目に自習をしているわけではない様子だ。
    「皆さんには、しっかりと、改心して頂き、山田さんに、撤退して頂きましょうっ……!」
     やはり、しっかりと反省して貰いたい。れうがぐっと親指を上げた。

    ●自習室
     自習室ではいくつかのグループが出来上ており、それぞれ楽しげに話し込んでいる。
     室内はかなり騒がしい。
    「よぉ。はかどってるか?」
     哲が声をかけたのは、雑誌を囲んでいる男子グループだった。
    「あー、これ? 懸賞クイズ。でも難しいし、無理っぽい」
     振り返った男子生徒が、雑誌を指さす。
    「いや、試験勉強はどうだろうか、と」
     ルーウィンが控えめに本題へ話を戻した。
     すると、学生達は顔を見合わせどっと笑い声を上げる。
    「シラネーの? ベンキョーしなくても、点数取れるよ」
    「取れるっつうか、買うっつうか」
     金で点数が買えるのだと説明される。
     世間にはそういう世渡りの仕方もあるかもしれないが、あまりに馬鹿馬鹿しいとモーガンは思った。
    「たかが補習を免れたいが為に5万円も包むとは……、その金は一体誰が稼いでくれているのか、よく考えることだな」
     モーガンの言葉が冷たい響きになるのも致し方ない。
    「誰って、そりゃ、親に決まってんじゃん」
     男子達はむっとして笑顔を消した。
     不穏な空気が流れる前に、一途が会話に加わる。
    「確かに、その方法なら、お金があれば楽ができますよね。その気持も、分かります」
     優しく語りかけると、男子達の空気も和らいだ。
    「でも、お金を用意するのも簡単じゃあありませんよね? 勉強よりきっとそのほうが大変ですよ」
     成績というのは、努力の果てにある指標だ。一時的に金銭で手に入れたとしても、それが何かをもたらしてくれはしない。真面目な調子で訴えかける一途。
    「うーん。まぁ、けどなぁ……」
     男子達は一途とお互いを何度か見比べ、困惑の表情を浮かべるだけだ。
    「ここで楽をしていたら、後々さぼった分が積み重なって、取り返しのつかないことに、なってしまいますよ……!」
     個人的には、心から反省して貰いたい。そう思い、れうも説得に参加する。
    「たかが試験じゃん! な、なんか、暑苦しいよー?」
    「あー、……あ、それより、この雑誌さ……」
     居心地が悪くなったのか、男子達は言葉に詰まりながら話題を変えようとした。
    「仮に今が楽できたとして、将来それを後悔しないって言い切れる、の?」
    「……」
     そんな不正は気に入らない。話題を逃さぬよう和佳が静かに語りかけると、男子達は返す言葉を探しそわそわと視線を泳がせた。
     だが、今ひとつ煮え切らない。
     その様子を見て、芥汰が最終手段ラブフェロモンを繰り出した。
    「あのさ、教師に払う金もったいねーし、親の金使うのもどうかなって、思わねぇ?」
     そう話し始めると、男子グループの他、教室内の騒いでいた生徒達も皆、芥汰へ注目した。
     効果は絶大だった。
    「教え合いとかで補習乗り切って遊びに使う方が賢いだろ」
     最後にそう締めくくると、一般の生徒達はうっとりと芥汰を見つめ、芥汰の意見に全面賛成の姿を見せた。
     注目を浴びながら、芥汰は……、ラブフェロモンの効果が自分に似合わなさすぎて、ひっそりと震えた。
    「それじゃあ、先生のところへ行きましょうか」
     ひとまず生徒の方はこの辺で良いだろう。イリスの判断に、仲間達は頷きあった。

    ●職員室
     職員室に金村は一人きりだった。
    「しつれーします。質問あるんだけど」
     芥汰が声をかけると、金村は驚いて振り向いた。
    「質問に来る生徒がいるとは」
    「それは、勉強する必要がない、ということか?」
     モーガンがそう言うと、金村は警戒したように表情を固くする。
    「金村先生がお金で点数を売ってるって小耳に挟んだのよね」
     ズバリ、イリスが切り出した。
    「点数がほしいのなら、手筈通りに……」
     金村は、自分達のことを点数を買いに来た生徒だと勘違いしたようだ。
    「だっからセンセイっつーのに俺らが反感持つんだよカスが」
     鋭い言葉を哲が投げつける。
     だが金村は、驚きはしたが、哲の言葉に気圧されなかった。
    「そうか。まぁ、教師に反抗したい年頃だな。君達にだって良い所はあるよ。ただ勉強ができないだけだね? ええと、……君達どこのクラスだったかな?」
     金村は身体を哲の方へ向け、穏やかな口調で話し始めた。哲達を、勉強をするために登校している生徒だと思ったようだ。
    「君達の正義感は分かった。だが深入りする必要はない。質問がないならもう行きなさい。追試の対策については、自分で考えるように」
     それは相手を煙に巻くためだけの言葉だと感じる。
    「お前らセンセイって卑怯くせーよな」
     吐き捨てるように哲は言った。清く正しく道徳的に生きましょうっつってる同じ口で、大人だから許されるっつークソみたいなこともチョロっとやりやがる、と。
    「「頑張れ」って言う立場のお前が今回言おうとしてるのは「楽して点を取りましょう」だろ。ふざっけんなよバカじゃねーのか」
     だが金村は、即座にカッとなるようなことはなかった。腐っても教師。普段から多数の生徒を相手にしているだけのことはあるのだろう。
     その様子を見て、イリスがまっすぐ金村を見据える。
    「つまり、点数を売っていることは、認めたわね」
    「何が言いたい?」
     金村が低い声を出した。
    「あんたのしていることが絶対に校外にバレないとでも思っているのか?」
     モーガンの言葉に、金村の眉がぴくりと動く。
     イリスは金村を威圧するように、ESPを使った。
    「たとえ今はなんとかなっても生徒の内でこれだけ噂が広がっていればバレるのも時間の問題よね」
    「バレる?」
     金村が途端に落ち着かない様子になる。
    「少しでも疑問を感じた生徒が、外部の人間にこの事を話せば……」
     畳み掛けるようにモーガン。
    「そうそ。あ、その生徒って、先生の目の前にいる俺達かもよ? ガッコーのもっと偉い人にバラすって手もあるし?」
     芥汰が茶化すように言うと、金村はぎくりと表情をこわばらせた。
    「バレればどうなるか分かるわよね?」
     イリスが見下すように金村を見た。
    「そ、それは……」
    「分かっているんだろう。クビどころじゃ済まんぞ」
     不安になり始めた金村に、モーガンが落ち着き払った声で事実として突きつけた。
    「先生も、本当はこんなことがしたかったわけじゃないですよね。生徒のためを思って、苦しいけどがんばってきたんでしょう?」
     言葉を失った金村に、一途が優しく声をかける。
    「でも。家族のためにも、お金と休みがあれば……、そんな風に、少し迷ってしまっただけですよね?」
     恫喝からの、優しげな言葉。金村ははっと顔を上げた。
    「あなたは教師だろう。大切な家族もいるかもしれない。事実が明るみになったとき辛い思いをするのは誰か。責任の重さ」
     ルーウィンは真剣な表情で金村を説得した。
     親や教師とは、子を導くもの。どうか我が子までを失望させるような存在に落ちぬようにと。
    「しっかりと考えてくれ……引き返せるうちに」
     願いを込めて、金村を見る。
    「子供のことを、言うか」
     はじめて、金村が苦い表情を見せた。
    「もし自分の子供が親の目ェ盗んで金払って点数買ってたらどう思う? んでアンタは金を受け取っちゃってる側でさ」
     芥汰は言う。
    「親としちゃ、どうなんすかね」
    「それは……」
     金村の机に、まだ幼い子供の写真が見えた。
    「人間ですから、お金に目が眩んでしまうのも、仕方のないことかもしれません。でも、あなたは、生徒の皆さんの見本となるべき、先生なのですっ。お願いですから、そのことに、誇りと、責任を持って下さい……。“先生”は、わたしの、夢なのですからっ……!」
     もう一息だ。れうは思う。しっかりと反省して、正しい道を歩んでもらいたい。
    「大丈夫。まだ間に合いますよ」
     一途が点数を売ることをやめるように訴えた。
    「皆が今楽して、将来困って、先生がお金受け取ったから悪いって、責められることだって、あり得ると思う」
     和佳の言葉に、金村が苦笑を浮かべる。
    「だが生徒は、楽をしたいと選んだ」
    「辛くても、努力は無駄にならない。糧になるよ」
     和佳が首を振る。
    「それでも、私がこれを続けると言ったら……?」
    「やってみろや。今後一生末梢、お前を尊敬してお前を目指す生徒なんて一人たりとも育たねぇだろうよ」
     哲が金村の弱いところを切り捨てるように、バッサリと宣言した。
    「お前みてーな「先」に立つ「人」なんざいらねぇよ」
    「はっきりとモノを言う。だが、それが身にしみるよ」
     金村が力なく立ち上がった。
    「今一度どうするのが本当に賢い方法なのか良く考えてみなさい」
     最後にイリスがそう語りかけると、金村は肩をすくめて最後に頷いた。

    ●山田・愛姫
     金村は茶封筒の束を取り出した。
    「返金するよ。まだ手は付けていない」
     前回の試験の金のようだった。返金すれば、生徒の間で混乱が起きるかもしれない。もしかしたら、学校に知られて処分されるかも。
     だが、もう金村は金を受け取ることはないだろうと、皆は感じた。
     金村が職員室を出て行く。
    「これで、大丈夫、でしょうか……?」
    「しっ」
     金村の背中を見ていたれうの言葉を、ルーウィンが静かに遮った。周囲を警戒していたのだ。
     仲間達も、扉の向こう側に誰かいる事に気がつく。
    「やってくれたわね。貴方達、何者?」
     扉を開けて職員室に入ってきたのは、ヴァンパイアの山田・愛姫だった。探るような視線を向けてくる。
     下手なことは言えない。
     灼滅者達は黙って敵と距離を取り、いつでも戦えるよう体勢を整えた。
    「なに? もしかして、戦うっていうの?」
     愛姫が片手をかざすような仕草を見せる。すると、れうの身体を引き裂くように逆十字が現れた。
    「……っ、こんな事、もう無意味ですっ」
     金村はもう金を受け取らないし、生徒達だって努力するだろう。れうは一般人を遠ざけるよう、身体から広範囲に殺気を放った。
     間髪入れず、芥汰が魔法の矢を解き放つ。
     よろめいた愛姫を見て、畳み掛けるように哲がロケットハンマーで殴りつけた。
     ルーウィンのビハインドが、霊障波を放つ。その間に、ルーウィンはれうの傷を癒した。イリスが更にオーラを癒しの力に変え、れうに掛かった催眠を回復させる。
    「ふん。なるほど、戦いの心得はあるのね」
     変わらずこちらを窺うような愛姫に、しかし和佳は必要以上のことは何も喋らず槍を向けた。
    「あなたも楽がしたいの?」
     何故こんなことをするのか理解できない、という表情で短く問う。
    「そんなこと知らない。だって、苦労したことないし」
     笑いながら、再び愛姫が片手を上げた。
     だが、モーガンがミーシャ(ライドキャリバー)に機銃掃射させ、敵を足止めする。
    「これ以上この学校には居られないだろう」
     自身はシールドで殴りつけながら、愛姫に撤退を促す。
    「この場で戦ってあなたに得るものはありますか? 私達を倒しても同じ手は通用しないと思いますが」
     指輪から魔法弾を放ち、一途も退くよう声をかけた。
    「……」
     一時、沈黙。
     愛姫は振り上げた手をピタリと止め、灼滅者達を見る。
    「ま、いっか。私戦いに来たんじゃないしぃ」
     そう言うと、愛姫はあっさり手を下ろした。
    「ねぇ、貴方達、本当に何者? どこから来たの?」
     愛姫の問に答える者はいない。武蔵坂学園について何も気づかれないよう、徹底してきたのだ。
     こちらが何も話さないと分かると、愛姫は踵を返し姿を消した。

     敵の気配が消え、灼滅者達も緊張を解く。
     廊下は静まり返っていた。生徒達は勉強を始めたようだ。
     それを確認し、灼滅者達は私立至高ヶ上高校を後にした。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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