京ごよみ ~夏の夜の七夕祭り~

    作者:西宮チヒロ

     西の稜線を朱がなぞり始める頃、京の街には漸く涼が戻ってくる。
     蝉の音、ひぐらしの声。長く伸びた格子の影は暮れゆく景色へと重なり、石畳の孕む熱はじんわりと夜風に蕩けてゆく。
     ぽつり、ぽつり。
     代わりに軒先でともるのは提灯たち。家や人、一本入った路地(ろーじ)の口を柔らかな光が灯し始めると、嗚呼、京の宵だ、と実感するのだと、小桜・エマ(中学生エクスブレイン・dn0080)は懐かしさを瞳に滲ませる。
    「一緒にどうですか? 京都の夏の夜」
     カナくん、前、京都に行ってみたいって言ってましたから。言葉を添えるエマに、面白そーじゃん、と多智花・叶(小学生神薙使い・dn0150)も興味津々、身を乗り出した。
    「で、何して遊ぶんだ?」
    「そうですね……今なら、七夕祭りなんてどうでしょう?」
    「七夕? って、もう過ぎてねーか?」
     不思議そうにきょとりと首を傾げる叶に双眸を細め、エマは語る。

     それは、光と願いの集う場所。
     二条城沿いの堀川通には、一筋の小川。光と水に揺らいで艶めく華やかな京友禅の先、ほろほろと零れる光の雫を過ぎれば、そこにはアーチ型の竹とランプでつくられた光の天の川。その足下に流れる小川には、水に触れると点るほの青いランプが幾つも浮かび、天上と地上を光の川で幻想的に彩る。
     片や鴨川やみそそぎ川の畔には、竹籠に入った風鈴をランプで照らした、幾つもの『風鈴灯』。納涼祭の屋台が軒を連ね、川岸に並んだ光の笹が淡く灯り、零れた光が水面に揺れる。
     願うのならば、『絵はがき短冊』へ。笹に結んだ想いたちもまた、ゆらりひらり夜風に靡く。
    「屋台屋台! たこ焼きにー、焼きそばにー……あ、もしかして箸巻きもあるか!?」
    「多分あると思いますよ。県人会の屋台ですから、京都以外の都道府県の名物も、たくさん」
    「まさに夢の世界だな……」
     瞳を煌めかせてごくり喉を鳴らす叶に、思わずひとつ、ちいさな微笑。

     夏の夜の古都。
     さあ、ゆるりとまいりましょう。


    ■リプレイ

    ●宵の鴨川
    「「屋台だ!」」
     鴨川沿いに弾む、百合と一都の声。
     たこ焼き、焼きそば、箸巻きにかき氷。シロップ全かけの混沌めいた黒には言葉を失いながらも完食して。
    「2週目行くの?」
    「これで終わるわけがないだろう?」
     さあ折り返すぞ、と微笑みながら歩き出す。
     初京都の3人男子。浴衣姿のアザミに、黒に龍だぜと笑う龍哉の隣、まずはと牢也が箸巻きチョイス。奢りじゃないと言いつつ結局奢れば、
    「ろーちゃんありがと! 次はアザミが奢ろう!」
     射的を望んだ2人の腕引くアザミに連れられ、いざ勝負!
     世界の摂理で俺が一番。
    「何とかなるって俺の中の魔王が言ってるし」
    「魔王サマにも負けねースよ」
     食って遊んで。青春の思い出ひとつ、作っていこう。
     臙脂に白金魚。山吹色の片蝶結びを揺らす香乃果と、桃色に白桜舞う浴衣のるりか。堀川の光川や鴨川の風鈴灯に光笹も楽めば、小さく鳴るるりかのお腹。
    「私はたこ焼きとベビーカステラを買おうかな……」
    「ボク、どっちも大好き」
    「2人で分けっこしながら食べようね」
     ふわり幸せも分け合いながら、林檎飴片手に続きの散歩。途中でエマにも声をかけ、花めく笑顔を咲かせて宵をゆく。
     互いに相手を想いながら、花柄浴衣の藺生と青作務衣の灯夜が手を繋ぐ。屋台へと逸る気持ちも、浴衣を着慣れぬ藺生と合せてゆっくりと。
     焼きイカ、タコ焼き、フランクフルト。「藺生も浴衣、似合ってるぜ。灯夜は初めましてな!」挨拶がてら叶オススメの箸巻きを食べた後は〆の林檎飴。
     俺は赤くて一番でっかいやつ。姉ちゃんには中くらい。
     並んで甘さに浸りながら──また、来年も。
     手を繋いで食巡り。あーんと食べたかき氷は、青い舌にびっくりと笑顔。射的では草灯の浴衣を掴んでアスルがねだる。
    「ルーはほんとくまさん好きねぇ」
     笑って、数回。
    「そび、ありがと。なの!」
     見事貰えた熊さん貯金箱をぎゅっと抱きしめる笑顔に、どう致しましてと微笑して。そうしてまた、手を繋ぐ。
     地元でもそんなに見た事ないだろう、とエマを誘って。周達は橋の上から水辺の彩を眺めて笑い合う。
    「カナフ、写真撮っとくのはどう? 思い出残しとくのはいいぞ!」
    「そーだな。なら、みんなでさ」
     カシャリと1枚。思い出ひとつ。
     乙女の胸の内知らず、元気づけんと空哉がリード。初金魚掬いに奮闘する様をにまにま眺めれば、熱中を誤魔化さんと由良が誘う。
    「高坂、これやるよ」
    「な、何だか悔しいですのっ……!」
     容易く掬った金魚を譲り受け。拗ねる由良の手元で、大きな紅がくるりと踊った。
     おもちゃ箱のような、色溢れる水風船。
    「これがいいんじゃないか」
     少しお前に似てるしな。迷う様を見かねて薄青に光を透いたそれを喬市が掌に乗せれば、宝物だとゆずるも笑う。
     輪郭さえも揺らぎそうな儚さが──問われても返せぬ言葉は、そっと胸に秘めたまま。
    「さーぎりー? ほんとに迷子になるよー」
     浴衣の裾翻し、野に灯る柔らかな天の川を渡る背を呼べば、なりませんよーだ! と返る笑い声。
    「ねね、センパイ。金魚掬いやりません?」
     狭霧に笑顔で裾引かれ、望むところと壱も袖捲り。お手柔らかにとはにかむけれど、結果なんて二の次で。
     この楽しい刻がずっと続きますように。織姫と彦星へ、願いを紡ぐ。
     濃紺に躑躅花。黒に咲く紅白牡丹と、白黒ミニスカゴスロリ。
     密の誂えた女物浴衣に、意外と乗り気な湊と渋々受け入れた黒々で始まる金魚掬い競争!
     湊はこっそり強いポイで挑むも結局散々穴を開け、同位の密と黒々に大惨敗。それでも救えた1匹にジョセフィーヌと名付けたら、並んで川辺でのんびりと。
     沢山の屋台食に、大きなぬいぐるみと狐のお面。
     思い出も戦利品も目一杯。また来年も──みんなで。

    ●鈴灯り
     丸竹籠で仄かに灯り、宵に囁く風鈴灯。
    「見て、こっこせんぱい!」
    「綺麗なのじゃなあ」
     本当はちょっと怖かったなの、なんて杏子が言えば、同じ気持ちは胸に秘め、はぐれぬようにと心桜も手を繋ぐ。
     これからも一緒に、いっぱいの楽しさを。
     願いを抱いて仄かに灯る、水面の光に想いを託す。
    「ああ、こーゆう優しい光、好きだわ」
    「思ったより綺麗だな……なんつか、落ち着く」
     作り方を問うかまちに、七が興味深げに瞳を細む。白黒の市松に紅花咲く浴衣は、彼も褒めてくれたもの。
     先の戦いから数日。綿飴、おでんに水ヨーヨー、チョコバナナ。今日はゆっくり、羽伸ばし。
     誘いの礼を一言告げれば、私も嬉しいです、とエマも並ぶ。
     川縁にしゃがんで、夜風を纏うアインホルン。
     たくさんの光達。色とりどりの浴衣の人達が魚みたい。
     光の橋と、光の川と、色んな魚。まるで絵本の世界のような景色で、揺れる浴衣は可愛くて。瞳を細めて、ぽつり。
    「……いいなぁ……」
    「着てみますか?」
    「!」
     慌てて口を塞いで首振る娘の愛らしさに、エマもふわりと笑み零す。
     七夕に乗りはぐってたから。そんな理由の誘いはいつもの事で、どーもと茶化しながら静樹は風鈴灯を眺め見る。少し年寄り臭くても、慌ただしい日々の小休止だ。
    「偶には悪くないと思いません?」
    「年よりくせーとか言うな。年下の割に」
     のんびりするのも、いいと思うから。途流はそう、けらりと笑う。
     夜風に揺れる澄んだ音と、ぬくもりの彩。
     東京では中々食べられないからと、箸巻き片手に浴衣姿でのんびりと涼む蓮曄の傍。笹の葉擦れに耳を傾けながら、ギルドールは黒蜜たっぷりの葛きりをお伴に良く識る星々へと瞳を細む。
     川のせせらぎと、風鈴の二重奏。
     まるで1つの鈴のような灯りが描く、不思議な影模様は何だか楽しい。
     今なら解る良さに、大人になったとしみじみ言えば、お前が言うか、と鼻で笑われて。
    「お前のピンクは町の外観を著しく損ねてるよ!」
    「おめーは騒音計の測定値振り切って──」
     リンとひとつ響く音に、いつもの口喧嘩も途端に終了。気を取り直してつつく豆腐田楽の美味しさに、鈴は仄かに微笑を浮かべた。
    「……父さん死んでから、家族だけがオレの世界だった」
     大切な彼女達に心配かけまい。そう紡ぐ稲葉に、護れる力があるのは幸いだと直人も思う。
     彼の実家。温かな人達。そして、亡き父の浴衣。
    「自分も大切にしてくれよ……?」
     家族になれたようで嬉しいからこそ、傍らの親友に囁き願わずにはいられない。
     夜風に音色を零して満ちる、光の鞠達。
     そっと掌に触れた熱に、結理はつい惚けていた視線を移した。
    「ジョーの瞳も綺麗」
    「まんまお前にお返しするぜ」
     嗚呼、灯りごと橙の瞳に閉じ込めて掻っ攫いたい。
     火照る頬。見つけた表情を確かめんと触れてくる指先に、錠は愛おしさを滲ませ微笑んだ。
     市内巡りの後、鱧寿司片手に、マキナは小花の髪留めを揺らしながら川縁に座る。
     友禅流し、がま口ポーチに短冊の願い事。団扇で運ぶ風。弾む話。肩に触れた秀憲の掌に、マキナもそっと身を寄せた。
    「また遊びにおいでな」
     囁く声に頷き反す。
     センパイの故郷。もっともっと、教えて。

    ●笹短冊
     夜空を伝って響く祭囃子と笑み声に、蘇る記憶。
     はしゃいで困らせた母、父の背中。戻らぬ夏祭りの景色に瞼を伏せて、賑わう声と空を仰ぎ歩き出した蒼侍の傍らを、玲が過ぎる。
     顔知らぬ家族の墓参り。生きていたらと思うも頭を振って、己の無事を伝えた。今日はほんの少しだけはしゃごう。そう、賑わいへと踵を返しす。

    「叶君ー!」
    「お、穂純。桃色の浴衣、可愛いな」
     人混みの中で笑顔を交わし、2人短冊綴りへ。
    「『たくさんお友達が出来ますように』」
    「なら、おれは『みんなが笑ってられますように』」
     勿論、穂純もな。
     紡がれた縁を喜ぶ少女へ、少年も一層笑み深くする。
     浴衣も葉書も、互いの瞳と同じ色。分け合った焼きそばの味を思い出しながら、『ずっと一緒に』イリヤと昴、それぞれ自国の言葉で同じ願いを短冊へ。
    「ぜってー見せねーから!」
    「なら僕のも見せないよ!?」
     永遠なんて信じられないけれど。でもあの時の約束は信じたい。
     高校3年間を好きな人と──儚くとも願わないよりはずっといい。
    「叶えばいいな、叶うといいな」
     アイリスが色んな想いを込めて音にすれば、隣の笹を土星人専用に見立てた璃理が、土星の平和と地球征服と、いつか土星人が現れますようにと、土星に向かって願いを飾る。
     あり得ぬとて、願う事は自由だから。
     行くぞと引かれて繋いだ掌には、静かな驚き。嵐の描いた似顔絵と鳥鴎の横に、鴎は永久の幸せを丁寧に綴る。
     その横顔に嵐が願うのは彼の楽しい1年間。荒々しい字の短冊は、見なくとも、見るなよ? と念押して。屋台の食い物を買い占めていこうと、帰路を誘う。
     ましろは桜の蝶を、茜は淡い彩を裾に踊らせて。林檎飴と風鈴灯に瞳緩ませ、笹の葉、絵葉書、さらさらと。
    「何かいたのかな~?」
    「わ、わたしは……ひみつ、だよ」
     また共に遊びに来たいと綴った願いは、大好きな人達とずっと笑顔でと記した隣へ。茜に引かれて、2人清明神社へ散歩の続き。
    「これは世界征服をする図ですよ」
     自作絵に対する司の答えは、優華も予想外。不意に見られた手を繋ぐ学生2人の絵は謎の球体の絵に並べて飾り、帰りは鯛焼き半分こ。
     世界半分なんかなくたって、幸せにはなれるから。
    「手、繋ぎますか?」
    「……ありがと、司」
     向けられた微笑みに、恐る恐る掌を触れる。
     風鈴と灯りの共演に見惚れたまま、掌握り反す丞に緩むミオの頬。永遠の日々を願う丞へと、後ろ手に隠していた短冊を見せれば、『タスクと一緒に楽しむ!』と書かれた裏に、別の文字。
    『我喜歡你』
    「これって……?」
     意味を問えば、そっと抱きしめたミオが囁く、甘やかな答え。
    「──好き」
    「って、み、みお!?」
     驚くも、答えは一瞬。丞は浮かんだ想いのままに、強く、強く抱きしめて紡ぐ。
    「俺は……」
     ──お前が、好きだ。

    ●祈り星
     叶と初めましての言葉を笑顔で交わして、都璃とエマは堀川通へ。浅葱に花の、白に薄紅の花の浴衣娘達は、のんびりと光路をゆく。
     学園祭のお礼には、こちらこそと返る笑顔。
    「意外な一面も見れたし楽しかったよ」
    「……あれは味覚の新境地だった、かも」
     娘2人、花めき笑う。
     珍しくも似合いの浴衣を着たオデットが見上げた先には、夜に浮かぶ荘厳なる二条城。歴史を重ねた灯りが胸に点す願いの光。新たな伝統の始まりへの立ち会いは、感慨深い。
     京の夜 願いを光に託すれば 心に星を灯す七夕。
     天の川 京に灯るは 君が笑み。
     短冊に歌認める娘達。華丸も鵲代わりの送り火へと心を託し、千早も一句を端に添える。
     今日ばかり 星の舞台を舞う君に 逢わしてよとやかささぎにこふ。
     古の 都の空に輝くは 人の灯した希望の星影。
     人が灯したこの光のように。心に誓った願いは──きっと。
     美しくも鮮やかな友禅や天の川を思い返して息吐きながら、かしこは祖父母の、誠士郎は友の無病息災を願う。
     増えてきた人波にふと不安になって顔上げれば、微笑み差し出された誠士郎の掌。
     恥ずかしがりながらも確りと重なる温もりに、誠士郎は柔らに微笑んだ。
     勉強はダメでも京都の事なら。地元の祭に由乃と参加できる歓びに白兎の足取りも軽い。煌めきく天の川を見上げていると、手にした抹茶ソフトの事も忘れてしまいそう。
     水にたゆたう友禅の色を楽しんだら、短冊綴り。願うはひとつ。この時間が永久に、幾重にも続きますように。
     お姫様お手をどうぞ。そう言ったナオに文句を零して掌触れれば、夜兎の鼓動さえも伝わってしまいそう。光のアーチの先で願うのは、沢山から選んだ1つだけ。
     知らないうちにいなくならないで。ずっとずっと、傍にいて。
     それはまだ互いの胸に秘めおくけれど──同じだったら、幸せ。
     天に水面に満ちる光は、届かぬとて手を伸ばしたくなる程。
    「エマさん、あの水に浮かぶランプ、どこかでもらえないものでしょうか」
     金銭を代価に得るものではない気がするから。そう尋ねた紅緋に、それならとエマも瞳を細める。
     ──青い星光の対価は、願い事。
     今度奢るねと叶と約束した響斗は、永久の仲を託した星をアリスと共にそっと水へ。
     流れてゆく青い光は、まるで本当の天の川。
    「でも、光に照らされているアリスちゃんはもっと綺麗だよねー」
    「よくも易々と……!」
     天然発言には照れ隠しの凄み顔に、響斗は思わずびゅんと駆け出した。
     薄紫の浴衣に下駄響かせて、一等見たかった光の天幕を静かに仰ぐ。足許の青も相まって煌めく幽玄な世界。その作り手に、柚羽はそっと感謝する。
    「祈り星、やってみませんか?」
     紗雨に誘われ綴った願い。まだ内緒と言いながら、同じであれば良いと風樹は思う。
     星が好きな彼の為に、紗雨が選んだ光の川。好みが似てるかもと微笑んだ先、ゆるりと振り向いた浴衣姿の紗雨が織姫のようで、風樹はふと心を緩ませる。
     白に咲く薄桜を踊らせて、陽桜は青星に願う。
     今も未来も大切なもの全部全部、護れるように強くなりたい。頑張るから──お星様も、見守っていて。
     てのひらの星に託すのは、胸に秘めた願い事。人の願いを抱いて流れる、青く優しいひかりは愛おしくて。
     どうか、叶いますように。音にせぬまま、ハナは祈る。
     星の数は、願いの、そして希望の数。
    「なぁ、片付けは終わったんか」
     不意の問いに、返る瞠目。己の事で精一杯だったけれど、これからは他の人を支えたい。そう紡ぐ想希を、笑顔の悟が抱きしめた。
    「お帰り、おかん」
     少し恥ずかしげに頷いて、来て良かったと零れる礼に、色々知りたいと悟も思う。想希の悩みも、何もかも。沢山話して、皆を思える人で在りたい。
     手始めにクラブをもう一度。そして次は──皆で。
     恵理が差し出したのは、糺の森の守り鈴。深い森の夜の輝きを籠めた鈴音は、エマと叶にもきっと聞ける筈。
     澄んだ鈴音に、天上の光の波もほの揺れる。
    「ところで、貴女程の女性がだらけ過ぎなんて」
     優しく諭す恵理には詫びと感謝を。また見つけないと。そう囁いて、右指に触れた。
     見覚えのある桜の簪を褒め綻べば、口許隠した煉も同じ言葉を紋次郎へ。
     手を重ね、見上げればほろほろと零れそうな光川。足許の水面に揺れる七彩の友禅に青い星は、この世のものとは思えぬ程。
     星空を泳ぐように散歩したら星を流しにいこう。来年もまた共にと、願う為に。
     溢れんばかりに集う光よりも気になるのは、己の見立てた浴衣を纏う愛おしい人。
     祈り星を流してみたくも、エイダには解る──願いは、いつも彼が叶えてくれる。
    「勿論だ。俺はアディの彦星だからな!」
     天上の2人のように離れぬよう、彼女の幸せを護ると誓う青士郎に応えるように、エイダが掌を握り反した。

     空をゆく無数の星。
     川をゆく願いの星。
     大切な願いをかけた人の想い達が、どうか空に届きますように。

    作者:西宮チヒロ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月7日
    難度:簡単
    参加:79人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 21/キャラが大事にされていた 0
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