廃宿怪奇譚

    作者:立川司郎

     ざわざわと吹き込む隙間風は、まるでヒトの声のようであった。
     縁側に座り、相良・隼人(高校生エクスブレイン・dn0022)は何やら古びた書物に目を通している。
     灯りは、側に置いたあんどんだけであった。
     一人、ぶつぶつと呟く隼人の背中を、クロム・アイゼン(高校生殺人鬼・dn0145)はじっと見つめていた。
     声を掛けるでもなく、隼人の仕草や声を聞いている。
    「……何も聞かねぇのか?」
     隼人が聞くと、にたりとクロムは笑った。
     聞いてほしかったのか?
     いや、聞いて欲しそうに見えなかった。
     クロムがそう言い返すと、隼人はこちらに向き直って書物を見せた。それはどうやら、この朽ちた宿にまつわる書物であるらしい。
    「この宿が最後に人を迎え入れたのは、もう30年も前だ。未だにこうして、立て壊されずに残っている」
     ずいぶんと古い日本家屋の宿であるから、一時期は文化財として保存しようという動きもあったという。
     だが、結局立ち消えになった。
    「ずっと昔、この宿を酷く気に入っていた旅役者が居てな。その役者はいつも巡業の際にこの宿を使っていた。とろがこの役者、旅先で奈落に落ちてそれっきり。……以降、この宿に旅役者の霊が現れると言われている」
     役者は『いつか舞ってみたい』と思っていた京鹿子娘道成寺の赤い着物を着て、宿の中を徘徊するのだ。
     そこで、だ。

    「肝試しをしないか」

     それはまあ、ずいぶん趣味悪いな。
     クロムはそう隼人に言うと、笑った。隼人は扇子で扇ぎながら、目を細めて庭を眺める。
    「30年人が来なかった宿に、灯りが点る。広い日本庭園は雑草だらけだが、あちらこちらで季節の花が咲いている。枯れた池もまた、風情が良かろう。畳は朽ちているが、状態はそれほど悪くない。……おっと、靴を履いて上がった方がいい、掃除はしてないからな。玄関から入ったら右正面に階段。一階には女将の部屋や女中の部屋、ぽっちゃんトイレ、囲炉裏、風呂などがある。二階は三間ほど客室があり、離れとして広い部屋が一階二階と一室ずつある」
     玄関で蝋燭台を渡して宿帳に名前を書く、一階からぐるりと回って離れに行き、二階離れに上がってそこから本館に戻って帰ってくる。
    「さて、お前はどこに身を隠す?」
     隼人はクロムに聞いた。
     隼人は……。
    「俺は……俺は女将さ」
     こんにゃくに火の玉に、それから鏡。
     ちょっと懐かしい肝試しの道具を、取りそろえてみようと隼人は悪戯っぽく嗤った。 


    ■リプレイ

     門前にキャリバーを置き、そろりと水面は足を踏み入れる。
     出迎えるは、赤い着物に前掛け姿の隼人であった。
    「おいでなさいまし」
     差しだされた蝋燭を手に取り、怖々と歩き出す。
     どこかで聞こえた悲鳴に、びくりと水面は足を止めた。
     どうやらそれは、真実の声のようである。突然血の利付きの白衣姿で飛び出した真実に驚き、紋次郎は投げ飛ばしてしまった。
    「すまねえな」
     灼滅者だから大丈夫だろう、と言いたげな紋次郎の苦笑に眉を寄せる真実。
    「勘弁してくださいよ…」
     先をゆく七は、その悲鳴を聞いてビクリと鶴一の腕にしがみつく。
    「やっ…ちょっと何今の?」
     別に怖いのではない、と言い訳する七。
     しがみついた七の様子に鶴一、
    「さっきから腕にしがみついて何言ってんだ、可愛いな!」
     しかし七に気を取られていた鶴一は、鏡に映った自分に驚き絶叫。
     七と二人、駆け出した。
     そして入る前から既にリタイア気味の春陽。
     月人に手を引かれて入るはいいが、他組の悲鳴や物音ひとつでびくりと震える。
    「もういやあああ」
     余りに怖くて座り込んだ春陽を、月人はひょいとお姫様抱っこした。
    「後続の邪魔だろうが」
     こっちの方が、ずっと緊張。

     編み物研究部では、既に先頭争い。
     主に譲り合う面で。
    「こういうの、男性やリーダーが先導するものだ」
     と都璃が押しつけ気味に、織兎を押し出す。
     しっかり服は握り。
    「夜の庭園も綺麗だな」
     当の織兎は、楽しむ余裕すらあった。
     それが頼もしく、仁奈は好弥に手を差しだす。
    「肝試しをすると、本当に来るって言うよね」
    「呪われますよ。お化け役の中に、一人だけ本物が…」
     そろりと歩きながら、好弥が仁奈に話す。
     突如足を踏み外し、二人は悲鳴を上げて駆け出し織兎の背に衝突。
     二人に手を差しだしながら、那由他はくすりと微笑んだ。
    「足場に気をつけてください、古い建物ですから」
     おっかなびっくりの三人を見守り、那由他は最後尾を歩く。

     お屋敷に目をきらきらさせていたアリシアも、中に入ると震えていた。
    「手…繋いでいい?」
    「はーい!」
     嬉しそうに一子は手を握り、震えるアリシアを見下ろす。
     むしろ、もっと彼女を脅かしてほしい!
     一子の妄想に気付く様子の無いアリシアであった。
     離れへの渡り廊下は薄暗く、恋も日高の手をしっかり握って歩く。
    「何があってもオレが守ってみせる」
     強気の日高に、恋は顔を赤くしてぎゅっと抱きつく。
     しかし次第に手に力が入り、突然の物音に二人揃って声を上げた。
     バツの悪そうな日高に、恋はちょっと親近感。
     さくらえも平気な顔をしていたが、小さく肩は震える。
     そんな彼の様子に、涼子はどこか楽しそう。
    「怖く…なんか」
    「わっ!」
     後ろから脅かされ、さくらえは座り込んだ。
     大丈夫、守ってあげるから。
     そういった涼子に、思わず泣きながら抱きついた。
     離れに隠れた脅かし役の時兎と聡士、それぞれ死に装束と黒服で。足音やマネキンの足で、聡士は行く人を驚かす。
     折角だからと時兎は、髪で背後からこっそりと聡士の首筋を撫でた。
    「ははっ、びっくりした」
     でも聡士は全然驚いた顔じゃなさそう。
     テディを抱いて入り口で迷っていた紅葉は、祀十朗に声を掛けられ決意。ぎゅっと目を瞑り、祀十朗の服を掴む。
    「大丈夫、お兄さんが居るから怖くねぇぞ~」
     転がってきたマネキンに驚き、紅葉は思わずテディで叩く。
     でもちゃんとゴールに到着した紅葉を、祀十朗はそっと撫でてくれた。
     井戸に興味津々の千慶に、鈴は少し距離を空けて立つ。
    「ゾンビは平気です。蜘蛛は気持ち悪いけどまだ平気」
    「なー鈴ちゃん見てみ、絶対中から何か出てくるよな」
     覗き込む千慶の服を、鈴はがっちり掴む。
    「井戸は駄目だよ怖い所で井戸は絶対近づいちゃあああ!」
    「でけぇ声出すな、びっくりするわ!」
     やはり鈴もリタイア寸前のようだ。

     りんと鈴が鳴り響く。
     十織が皆に配った鈴である。
    「ゴールまでに多く慣らしたヤツが優勝な」
     笑顔で十織は、罰ゲームの算段。
     ひやりと頬を冷たいモノが、アストルを撫でた。
    「わわっ、冷たっ、何か居る! チセ、一樹先輩大丈夫!」
     心配しつつ、アストルは蓮二の背に隠れる。
     押され、蓮二はいつしか先頭に。
    「おいおい、俺を盾にすんじゃないよ」
     横にいたはずのゆずるは、後ろを振り向いて一浄の様子に驚く。
     ペンライトで顔を照らした一浄は、驚く皆にからから笑ってみせた。
     こっそりシキテと耳打ちしていたチセは、逆にびっくり。
    「チーはん、転ばんよにねぇ」
     霊犬にしがみつくチセを、一浄は気遣う。
     紳士として努める一樹はゆずるに手を差しだす。
    「大丈夫?」
    「大丈夫…じゃない、かも」
     よろりとふらつき、ゆずると呟く。
     それにしても気になるのは、この鈴である。
    「ああ、僕はまだ十六回だね」
    「うん、なんか、鳴りっぱなしなんだけど」
     どうしてかな?
     ゆずるは、じっと鈴を見つめた。

    「ホントは…怖いの苦手なんだ」
     灯倭が肩を寄せながら藍にいうと、藍もまたこくりと頷く。
     二人で克服しようと誓い合い、霊犬の一惺と柴も巻き込み一歩一歩進んでいく。いつしかしっかり手を握りあい、平然としているのは柴と一惺だけ。
     驚かせようと、何だかとてもグロい着ぐるみ姿で璃理は天井からジャンプ。
    「ふっふっふ、ロープが絡まって断末魔の悲鳴を上げると、驚いた人々が…うごっ、く、くるし…」
     何だか真実味のある悲鳴が響く。
     よく分からないまま参加したディアナは、璃理の騒ぐ物音に驚いて悲鳴を上げる。
     ただ暗い建物を歩くだけではないのだ。
    「待って翼、置いてかないで!」
     翼の服を、しっかり握る。
    「やれやれ、刺激が強すぎたようだな」
     ひょいと抱え上げ、翼はさっさと歩き出した。
     秋夜を先頭に、清純、途流、清樹と数珠つなぎで廃宿を歩く。
    「押すなよ、絶対に押すなよ!」
    「秋夜先輩、それじゃ押してほしい前振りです」
     清樹はさりげなく間に二人挟み、最後尾。
     恐怖を押さえながら、秋夜はちらりと幽霊の尻を見る。
    「今のお化け、すげえいいケツだな」
    「ぎゃあああ先輩成仏してくださいい」
     喚きながら、清純は秋夜を蹴った。
     途流は怒鳴っているし、静樹は哀れみの眼差し。
    「ケツなら幽霊でもいいのか恨まれんだろうが!」
    「みっかい先輩、口調乱れすぎです」
     四人の大声で、幽霊も逃げ出しそう。

     二階の窓辺に、ちょこんとクロムが腰掛けていた。
     錠は蛇のオモチャに火の玉も用意して、楽しげに。
    「よぉクロム、勝負しようぜ」
     どっちが怖がらせるか。
     錠の提案に、クロムはにんまり笑う。
     ガラスに女形の姿を映したアイナーの目論見は、見事に成功。
     小さく声を上げた依子は、よく出来た仕掛けに興味津々。
    「旅芸人さんの幽霊、見れたらいいですね」
     依子は少し楽しそうで、確かにアイナーもちょっと見て見たいかも。
     朽ちた宿に灯る火が、呼んでくれるかもしれない。
     女中部屋の呉羽は、古典的な衣装で身を潜める。
     しかし皆は驚いたのに流希は、平然と。
    「小さな男の子が教えてくれたんですよ」
    「そうだったんですか」
     にこりと笑った呉羽に、逆に流希が驚かされる。
     どうやら彼女にこの手は通じそうに無い。
     離れの二階からは、庭がよく見える。
    「中々風情のある所ですね」
     涼しげな九里に対し、イブは落ち着きが無い。
     大得意と言っていたけど、本当は苦手。
     そっと首に巻いた橙色の布端を差しだすと、イブは眉を寄せた。
    「…ずるいです」
     ぎゅっと掴み、イブは俯いた。
     壱は全ての隙間と物陰を確認して回る。
     対して璃音はふらりと動じる事なく歩く。
    「何が出てもおかしくない雰囲気ですよね」
    「脅かさないでよセンパーイ」
     壱の文句を聞き流すと、クロム蛇を踏んづけて驚いた壱に手を差しだし。
     センパイは勘違いさせるタイプだね、と壱が呟く。

     クラブの仲間同士、それぞれペアで回ろうと提案。
     怖いの大好きなあいりも、最初ははしゃいでいた。
     そこに現れた御言が、ジェルを付けた手でひやりとあいりに触れる。
    「お客さんも儂の舞台に出ないかね」
     着流しに血しぶきのペイントで、御言が囁く。
     白いワンピースを着た彩華は、同じくジェルをつけた両手で撫でた。
     とたんにあいりはもう大変。
    「うわぁん!」
    「落ち着けあいり!」
     バタバタ空を掴もうと暴れるあいりを、そっと抱きしめて落ち着かせる。
     撫でても宥めても泣き止まなかったあいりが、ぴたりと泣き止んで見上げた。
     皆の姿が見えなくなると、みはるは恐怖でパニック寸前。
     エスコートしながら由布は『人間の恐怖』について語るが…。
    「もうダメー!歩けない-!おんぶしてー!」
     座り込んだみはるの傍に、そっとしゃがんで由布は背を向けた。
    「あなたを背負う位の力は、僕にもありますよ」
     常に紳士であれ、ですからね。

     生憎クリスは廃墟が大好き。
     嬉しそうに古びた家屋を眺めるクリス。そんな様子にちょっとだけ嫉妬して、桃夜は驚いた振りで頬にキス。
    「トーヤ、君全然見てないだろ」
     怒るクリスの足を、何かが掴んだ。
     悲鳴を上げたクリスに抱きつかれ、桃夜は満足。
     さて、夏海とレインも肝試しは平気。
    「い、いや怖いとか全然無いし」
     言いつつ、レインは夏海の服を握る。
     冷や汗を掻くし、夏海は乾いた笑いをあげた。
    「どうしたんだ怖いのかレイン」
     言い訳しあう二人の足下に、何か生暖かいモノが。
     悲鳴を遺し、二人はダッシュ。

     隼人に軽く挨拶をし、優志は晴香と出発した。
     今日はクラスの仲間との参加。
    「古典的な仕掛けが廃墟によく合って…っと、稲垣大丈夫か」
     手を差しだすと、優志の後ろに居た晴香はすっと背筋を伸ばした。
    「こ、こういう時は男子に華を持たせないと」
     強がりを言うけど、優志の事をちょっと見直していた。
     さて彼らの後ろから次々脅かして追っていた翔。
    「うらめしや~」
     そして追う。
     追いかける。
    「きゃあああ」
     誰歌は悲鳴を上げ、逃げ出した。
     蒼香が発見したのは、離れの片隅。
    「手でも繋いでいきませんか?」
     蒼香は手を差しだすと、先行して歩き出した。
     それは何だか、子供扱いされているみたい。
    「あ…綺麗」
     窓から、月明かりの庭が見えた。
     先行く仲間を思い歩く双葉は、ファリスの物と思われる靴を目に留める。
    「…どうしてここに…」
     恋姫は、震えながら双葉にしがみつく。
     ひょいと拾い上げた二人の後ろから、冷たい感触がヒヤリ。
    「キャー!」
     悲鳴を上げて抱きついた恋姫を落ち着かせながら、双葉は後ろから忍び寄ったナノナノとファリスを笑って見返す。
     ひょいと靴を受け取り、ファリスは悪戯っぽく笑う。

     先頭にしたはいいが、人一倍反応の多い時春。
    「うわあっ、何すかアレ!何か触った、触った-!」
    「トッキー何ビビってんのよー」
     後ろの周は、騒がしい時春の後ろを行く。
     そんな周にもうじきアレが来る…と徹太は予測していたが、案の定蒟蒻攻撃に周が声を上げる。
    「怖くねえと思ってたけど、やっぱビビるわ」
    「何なに、何が出たんすか!!」
     しかし時春の反応はデカい。
     東はそんな様子をおもしろがりつつ、平然とした徹太と周の様子は面白くない。
     何か、膝かっくん的なもので驚かしてみたい。
     こっそり後ろに回る東であった。

     『怖い』『助けて』
     血文字が浮かび上がり、生じに広がってゆく。
     ぴしゃりと扉が閉まると、誰かが駆け抜ける。
     悲鳴が上がると、デジカメ片手にばっちり撮影体勢の千架。
     美樹と並ぶように歩いているのは、背後に司がしがみついている所為だ。
    「しってやすか?肝試しをすると本当に出るって都市伝説」
     背後の司に千架が言う。
     そんなの聞きたくない、聞いてない。
     拒否する司を、面白そうにカメラで撮る千架。
    「怖いねー、あの部屋の隅とか出そうだね」
     やや棒読みで、美樹が更に脅す。
     確かにその部屋の隅には、赤い着物の影が。
     コロリと下駄をならし、引きずり歩く。
    「ギャー」
     叫んだ司の攻撃を躱し、赤い着物の芭子が庭に飛び出した。
     攻撃される前に、撤退すべし。
    「芭子さんと一緒の着物の人が居たね」
     最後にぽつりと観月が言うと、芭子は首をかしげた。

     BOSSである筈の璃依は、へっぴり腰で詩音に続く。
    「さ、シオン怖いだろう、アタシが付いてるぞ」
    「…今赤い着物の」
    「ひにゃっ!?」
     シオンの言葉にびくりと振り返る璃依。
     デモノイドの力を使えば粗方位置が分かると、セツトは全然平気。
     むしろ、三人をアシストしようと…。
    「い、今後ろから物音がしませんでした?」
    「奇妙な生物なら見ました」
     と、奏は震えつつ進む璃依を見下ろす。
     さて、セツトの言う事が本当なら…と奏は少し興味を惹かれたように、周囲を見る。
     奏も、恐怖を味わいたい。

     エルと綴の家も、割と古い家屋。
     二人とも話し続けるのは、恐怖の裏返しかも。
    「役者の霊だっけ、俺舞とか分かんないよ。見てあげないと怒ると思うけど」
    「見てあげないとって何言い出してんの!」
     話しているうち、次第に怖くなってきた。
    「止めろほんとに来ちゃうだろ!ぎゃっ、今何か出た」
    「何エル何見たの?!」
     押し合うように、駆け出す。
     二人が去ると、幽霊に分した史明が姿を現した。
     背後から朔が寄っているのは気付いている。
    「おイタをするのはこの手かな」
     保冷剤を持った朔の手を捻り上げ、逆にその背にピタリ。
    「くっそ~全然可愛くねえよ」
     悔しがる朔。
     でも冷えた朔の手に、史明の手は温かかった。

     一歩足を踏み入れた瞬間、稲葉。
    「帰っていい?」
    「お前達、いざ入るとなるとソレか」
     直人は、先ほどまで威勢の良かった稲葉や由宇を眺めて呆れる。
    「うち、エクソシストやけ怖くなかよ!」
     由宇はしっかりロザリオを握り締めて答えた。
     そろりと進むうち、稲葉はふと気付いた。
     …居ない。二人ばかり。
    「なあ、二人ほど…」
    「ひうっ、なななな何なの?」
     ビィン、と弦が鳴る音が屋敷に響いた。
     砌は直人にしがみつく稲葉の背にくっついて悲鳴を上げる。由宇は横にぴたりと体をつけ、四者一体で。
     更に、どこからともなく笑い声が響いた。
     不気味に高らかに笑う謎の幽霊。
    「何ば出たと?」
    「ただの風だよ!」
     喚く三人の前で、直人は迦月と目が合った。
     少し怖がらせ過ぎたかと迦月はくすりと笑う。
     すると、声をかけようとした迦月の口に何かが飛び込んだ。
    「もぐもぐ…こんにゃく?」
     オリキアは更に蒟蒻を投じる。
     今度は直人の口に。
     どうやら最後の幽霊さんはノーコンのようである。

     手を繋ぐ事、お化けに会ったらぎゅっとする。
     真綾に教えられた事を、瞭はちゃんと守り手を繋ぐ。あんまりいい子だから、つい真綾もほろりと来てしまう。
     景さん、嬉しそう。
     瞭はほっと息をつく。
    「ゴール!」
     ようやくつくと、笑顔の間綾につられて瞭もふと表情を和らげた。

    作者:立川司郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月8日
    難度:簡単
    参加:93人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 15
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