熾烈な殴打の不協和音が響く。固く握られた拳が鼻を砕き、脂肪だらけの腹部に鋭い蹴りが叩き込まれる音。
「ぐ……ふぅ……」
「舐めてんじゃねぇぞ、オッサン」
地面に這いつくばり、大した間もなく血反吐を吐いて満身創痍になってしまった中年の教師を見下ろして、高校の制服を指で肌蹴させた青年が意地の悪い笑みを浮かべていた。
この校舎裏に、こうして教師を拉致して暴行した理由を上げれば、この教師が自分に対して苛立たしい態度をとったから。つい先ほどこの教師のつまらない授業をおちょくるように潰してやったのだが、その直後になんとこの教師はクサい台詞と共に自分の頬を張ってきたのだ。
なるほど、涙を誘うような唾棄すべき展開だ。それで感動して、こちらが反省するとでも思ったのだろうか。教師はいやに満足げで、こちらの反応を待っている様子だった。
その顔は思い出しただけでも腹立たしく、青年の神経をひどく逆撫でした。
「ドラマじゃあるまいし」
青年は唾と共に呆れた文句をそこらへ吐き捨てる。ダークネス……ヴァンパイア学園から転校してきた青年にとって、ただの一般人に頬を張られるなど我慢できる屈辱ではない。その余裕ぶった顔面を今すぐ苦痛と恐怖で歪ませてやろうと怒りが渦巻くのにさして時間は必要ではなかった。
「なぁお前ら、この中年サンドバックをそろそろ楽にしてやれよ」
ふと、青年が首だけで振り返る。後ろには同じように制服を着崩し、派手な髪色をした男子高校生たちが、表情を青ざめながら居並んでいた。
「いや、これ以上はマズいって……!」
「はぁ 今更何言ってんだよ、お前らだってこのオッサンウザかったんだろ?」
当初は青年の言葉に手を叩いて同調し、先陣を切って教師を拉致した男子高校生たちだったが、その後に青年が嬉々として繰り出す暴力を目の当たりにして、自分たちが仲間に引き入れたこの青年に今更ながら畏怖を覚え、痛烈な後悔に苛まれていた。
「やれ」
青年は苛立たしそうに唇を尖らせ、男子高校生の一人に肩を回す。その言葉に逆らえば、今しがた目の前の教師に振りかかった運命が自分たちにも巡ってくる事は想像に容易かった。
「やれよ!」
「……!!」
逆らうなど出来ない、男子高校生は勢いのままに、手にしたバットを、目を見開いた教師の顔面へと振りかぶる。
直後、平穏な真昼の空に、教師の断末魔が轟いた。
「また、ヴァンパイア学園に動きがあったようです」
ターゲットがヴァンパイアであるという情報のみを聞かされて油断ならない空気を醸していた灼滅者達に、教室に現れた五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は説明を切り出した。
「予見したところ、どうやら一般人が通う高校に転校生として潜入したヴァンパイアが、その学園を乗っ取ろうとしているようなのです」
「潜入? 何故そんなことを……」
「目的は、高校生たちの闇堕ちでしょう」
間髪置かず姫子は答える。闇堕ちした高校生をヴァンパイアの陣営へと引き入れ、または協力体制を強いて、自分たちの組織をより強力なものにする計略らしい。
「今、ヴァンパイアほどの強力なダークネスと完全に敵対するのはあまりに無謀です。しかし、転校先でのトラブル程度ならば戦争に発展することもないでしょう。 そこで、皆さんに高校生に扮して頂き、その企みを阻止してきていただきたいのです」
「お、俺たちが?」
自らに指をさして不思議がる灼滅者に、姫子は力強く頷いた。
「今回は学園に潜入したヴァンパイアの灼滅が目的ではありません。だからこそ、戦わずに学園支配の意思を挫くことが出来れば、それが最良の結果となるでしょうが……」
相手がダークネス、それも強力なヴァンパイアである以上、戦闘を回避するのが難しいのもまた事実である。姫子は少し俯いたのち、今回のターゲットであるヴァンパイアについて説明を始めた。
「予見では、学園に潜入したのは宵咲 大牙(よいさき たいが)という若いヴァンパイアです。成績不良な高校生たちを取り巻きにして、彼らに教師や他の学生たちを無理やりに襲わせているようです」
そして、植えつけられた畏怖や嗜虐の念はやがて膨らみあがり、毒が回るように闇堕ちを進行させる。このまま放っておけば、彼らはヴァンパイアたちの手足となるダークネスと化してしまうかもしれない。
「宵咲 大牙(よいさき たいが)について細かなデータは今からお配りしますが、作戦を妨害しようとするこちらの意思に気付かれれば、彼は即座に襲い掛かってくるでしょう。そうなれば戦闘は避けられないにしろ、灼滅者を倒したところで作戦を継続できない、もしくは、このままでは自分が倒されると悟れば、彼は迷わず撤退を選ぶようです」
なので、できるだけヴァンパイアを灼滅しないように、事件を解決に導いて欲しいと姫子は続ける。ヴァンパイアの灼滅による作戦の失敗は、その高校の未来だけでなく、ともすれば武蔵坂学園にとってヴァンパイア学園との完全な敵対の可能性をも意味する。現時点でそれだけは絶対に避けなければならないと姫子は真剣な目で言い放った。
「以上になります。複雑な依頼になりますが、私は皆様ならできると信じております」
真剣な表情は崩れないまでも、姫子は灼滅者に頭を下げ、ほんの少し微笑みかけた。
参加者 | |
---|---|
七咲・彩香(なないろのこころ・d00248) |
月翅・朔耶(天狼の黒魔女・d00470) |
仰木・瞭(朔夜の月影・d00999) |
穂照・海(自らを灼いた少年・d03981) |
成宮・杏里(ペトルーシュカ・d08273) |
屍萩・理成(無色の音色・d13897) |
王・龍(ぶっ飛ばされるの慣れてきた・d14969) |
春夏秋冬・那由多(中学生ダンピール・d18807) |
●
「……そうですか、ご協力感謝します」
高校内の廊下。引き留めた女子学生への質問の後、仰木・瞭(朔夜の月影・d00999)がにこやかな笑顔を返す。その甘い表情に女子学生たちは酔いしれた様子で、はしゃぎながら教室へと戻って行った。
(……やっぱり、転校してきてから相当悪目立ちしてるみたい……)
瞭と共に聞き込みをしていた、瞭に抱きかかえられていた猫……変身した成宮・杏里(ペトルーシュカ・d08273)が、行き交う学生たちを眺めながら情報を整理する。今回のターゲット、宵咲 大牙について他の学生から情報を収集していたのだが、素行不良、バカ、喧嘩っ早いなど、学生の答えは一様に似通ったものであった。
(もっと聞き込みしたいけれど……皆はもう現場に待機しているもんね)
ふと杏里が瞭の顔を見上げる。感情を移さない猫の瞳でも、杏里の言いたい言葉には大方の予想がついた。
「ええ、私たちも現場に向かいましょう」
校舎裏には予見された通り、瀕死の教師と、恐怖におののく学生たち。そしてその元凶、ヴァンパイアの宵咲 大牙がいる。
教師への暴行は収まらず、今まさに教師の命が危ぶまれる状況にあった。
「やれ」
そして、大牙が低い声を荒げる。身悶えしている学生の肩に腕を回し、教師への暴行を扇動する。
「やれよ!」
「そこまでだよ」
歯切れの悪い学生に苛立つ大牙が吠えた、その直後。背後から風を切る音。リボンと花で飾られた杏里の杖がサイキックを纏い、大牙と生徒を引きはがすように振るわれた。察知した大牙は咄嗟にその場から飛び退き、学生は腰を抜かして地面に崩れてしまう。
「そこのヤンキー諸君! その人はもう脂まみれです!」
「あ? 何者だテメェら!!」
杏里に続き、王・龍(ぶっ飛ばされるの慣れてきた・d14969)が腰に手を当てて校舎の影から現れる。突如向けられた攻撃、そして謎めいた言葉に、大牙は不機嫌そうに首をひねりつつ吠えてかかった。
「教師を暴行するとは感心しない」
「!」
大牙、そして満身創痍となっている教師を見据え、月翅・朔耶(天狼の黒魔女・d00470)が携えた弓の弦を引く。弓がはじけ、サイキックにより構成された光の矢が大牙の頭に向かって放たれる。大牙は目を見開きつつも、咄嗟に首を振ってそれを回避した。
機敏な反応を見せつけ、大牙はしたり顔を浮かべたが、矢の飛んで行った方向へと振り向くやそれは消え失せる。矢はその先にいた教師に着弾し、その体を柔らかな光で包んだ。
「しまっ……回復かよっ!」
「大丈夫ですか、さぁこっちへ……」
その瞬間に矢の意味を理解し、大牙が呆然としている隙に、春夏秋冬・那由多(中学生ダンピール・d18807)が教師を逃がすべく肩を貸す。朔耶のサイキックで回復したとはいえ、これまでダークネスの暴力にさらされていたのだ。すぐに歩けるような状態にはならない。
「おいっ! どこに連れてく気だコラッ!」
「宵崎・大牙」
那由多と共に去ってゆく教師を睨みつけ、大牙が駆けだそうとする。しかし穂照・海(自らを灼いた少年・d03981)がその間に割り込み、拳の骨を鳴らしつつ立ち塞がった。
「お前が目障りだ」
「敵は私たちだよ。 一般人を相手にするなんて、貴方は弱い人だね」
「……っ!」
突き刺すように睨む海と、舌を出した杏里が逃げ行く教師を庇うように仁王立ちする。その言葉は、大牙の好戦的な性格に火をつける挑発には十分だった。
●
「上等だコラッ!! テメェらから片つけてやるよ!!」
大牙は苛立ちのままに叫んだ。全身に黒いサイキックを纏い、拳を握って身構えた。
「う……うわぁぁ!」
それを見て、ついに学生が錯乱のあまり悲鳴を上げた。今までの光景は、サイキックを知らない者の目にもただの人間の所業でないことは明らかで、動転した学生たちはいずこかへと駆けだしてしまう。
「お友達、行っちゃいましたけれど……?」
「知るかっ! それに友達じゃねぇ、ただの舎弟だ!」
「もうっ、それがいけないんですっ!」
大牙の繰り出してきた拳をかがんでやり過ごし、七咲・彩香(なないろのこころ・d00248)がサイキックを練りつつ必死に訴えかけた。
「力だけで従え、気に入らないものは潰すだけ。そんなのは不良じゃない、ただの外道です! あなたは外道のままでいいのです?!」
言葉と同時に、彩香の装着していた指輪が輝く。彩香の手から放たれた呪いの光が蝕むように大牙へと伸し掛かった。
「うぐっ! テメェっ!」
「悪いけど、足止めさせてもらうよ」
自身の鞄からヴァイオリンを取り出した屍萩・理成(無色の音色・d13897)が、同時にその弦を指で弾く。音色と共に放たれた鋼糸は大牙の腕や胴に絡みつき、瞬く間にその動きを縛り上げた。
「お前は少し、痛い目を見たほうがいいな」
「!、がっ……」
動きを縛られたその瞬間、大牙の目の前に海が肉薄する。大牙が反応する間もない速攻で、サイキックを纏った海の手刀が大牙の腹部へと打ち込まれた。鳩尾への衝撃に息が詰まった様子で、大牙は苦しげに目を見開く。
「……チッ、なめんじゃねぇぞっ!!」
「いや~ヤンキーがきたー! 襲われる~!」
力なく俯き、少しは弱ったかと思った次の瞬間、顔を上げた大牙に鋭く睨まれ、海は一端後退し距離を稼いだ。大牙は舌打ちと共に身体を振るって、乱雑に理成の鋼糸を断ち切ってしまう。拘束から解放された大牙とふと目があって、近くにいた龍はそそくさと逃げ回った。
「待てコラっ! ガンくれやがって!」
「うわ~もうダメだ~……。
なーんちゃって」
弱々し声を上げて逃げ惑う龍だったが、大牙によって服の襟を掴まれてしまう。大牙が龍の喉元を狙って牙を剥いたその瞬間、しかし龍は振り向き、意地悪げな笑みを浮かべる。
「!?」
まさに隙ありだった。龍の影が変形して大牙の背後へと迫り、糸状に立体化して見事に大牙を縛り上げた。
「くそっ、またかよ! 離せコラッ」
「……教師を襲うのは、今時の不良ではやりませんよ」
気が付けば那由多が戻ってきている。教師の避難が完了したのを横目に見て、瞭は肩を竦めつつ呟いた。
●
影により構成された二刀の剣を構え、龍の影を無理やりに引きちぎった大牙へと瞭が接近する。
「っ、じゃあ今時の不良って何なんだよ!」
「……生徒と殴り合っているのをよく見ますね」
こんなふうに。二刀の影の剣を手繰り大牙と接近戦に応じながら、瞭が目を細めて答える。嘘を説くのは胸に引っ掛かりを感じたが、ダークネスとの格闘中に懺悔している暇などありはしない。
「確実に勝てる喧嘩をするのが冴えてる不良だ。自分が苦労するのを我慢して勝とうとするなんて優等生な事は似合わないぞ」
瞭による攻勢の合間を縫って、那由多がギターをかき鳴らす。サイキックを乗せた音色は衝撃波となり、大牙は耳を抑えて表情を歪めた。
「ぐぐ……うっせぇな! 俺はまだ負けてねぇ!」
「っ!!」
那由多の音撃が落ち着いた後、頭を振るって耳鳴りの余波を払うと、大牙は両の手を交差させるように宙を引っ掻いた。ギルティクロス。鮮烈な赤いオーラの逆十字が、前方にいた瞭へと刻まれる。
「ふぅ……少しはやりますね」
「瞭くん、少し待ってね」
攻撃を食らい一歩後退した瞭を確認して、彩香は近くに控えていた霊犬のシルキーへと声をかける。彩香から合図を受け、霊犬の瞳が青白く輝くと、治療の光が瞭の体を覆い尽くした。
「君にこの学校を荒らされるわけにはいかないんだ。悪いけど出て行ってくれないかな?」
勧告して、理成が弓と弦を滑らせるようにしてヴァイオリンを奏でる。音色は乗せられたサイキックにより攻撃の波動となって、大牙の身体へと押し寄せた。
「あぁ!? 俺に指図すんじゃねぇ!」
「それなら……刹那、頼むよ」
那由多の声で、傍らに控えていたビハインドの刹那が動き始める。ヴェールをかぶった少女のビハインドは何も語らず、ただその掌を敵へと突き出す。直後、雷に似た衝撃波が大牙の背を貫いた。
「ぐぅ……。くっ、くそっ……」
大牙が膝に手を置いて、荒れた呼吸を整える。まさかここまで自分が追いつめられるとは思わなかったのだろう。教師や学生に向けていた当初の強気は失せ、意外そうな表情を隠していなかった。
「私、弱い者いじめは嫌いなんだ。そんな人はカッコ悪いよね」
「な……っ……」
そっぽを向きつつ杏里が言う。それは挑発でもなんでもなく杏里の本心からの言葉であったが、大牙はその言葉に怒るでも嘆くでもなく、ただその場で固まってしまった。
「お、俺が、カッコ悪い……?」
そんなことは初めて言われた。杏里の言葉に目を見開いて震える大牙だったが、直後その脳天に、頬を膨らませた杏里の杖による殴打と、同時にサイキックの爆発が叩き落とされた。
●
「いってぇっ!!……くそっ!」
心身ともに厳しい一撃を受けて、大牙は脳天を抱えつつ、目の端に浮かんだ滴を指で拭い取る。
「……まだ、やるのか?」
「あぁっ!?」
朔耶の霊犬であるリキが追撃を加えようと身構えたが、大牙の様子を鑑みて朔耶が寸前でセーブをかけた。戦闘ならもう十分であろう、朔耶は真摯な瞳で大牙へと問いかける。
「勝てないと思ったら逃げるのが不良として賢い選択だろう。もっと痛い目に遭いたいのか?」
「何をっ!!」
冷ややかに目を細めた海からの宣告に、大牙は目を吊り上げて躍起になったが、それでも荒れた息や疲労の色は隠せない。それは未成熟とはいえヴァンパイアと戦っていた灼滅者たちも同様であったが、どれほど楽観視したとしても多勢に無勢なのは、大牙の頭でも理解に容易かった。
「……。お前らみてぇな奴がいるなんて、聞いてねぇぞ……」
視線を落とし、そして拳も下ろす。それでも、負けを認めるなどは悔しいし、許されない。大牙はぼそりと呟くように吐き捨てて、校舎の壁へと寄りかかった。
「……負けを認めたら、俺の事殺すんだろ?」
「ここから出て行ってくれるなら、べつにどうとでも?」
「っ?」
大牙の戦意がひとまず落ち着いたのを見計らって、理成も武器であったヴァイオリンを下ろす。理成の言葉に、大牙は意外そうにして目を丸めていた。
「こちらは無理に争う事はしたくない。必要がなければ、そちらだってそうだろう?」
「その通りですっ!」
武器である弓を下ろした朔耶の言葉に、その背後に隠れていた龍が飛び出てきて同調する。自分たちが灼滅者だとは明かせないまでも、ヴァンパイア学園とは交遊を取るべきだと朔耶は考えていた。
「ていうか、私のメアド教えとくので……その、よろしければ今度……個人的にお会いできないでしょうか……?」
だが、龍の思いはその範疇を明らかに超えていたようであった。メモを突き出してくる龍を前にして大牙と一同は呆気にとられたが、大牙はすぐにそっぽを向いてしまう。
「……お前らが誰かは知らねぇけど、俺が、俺を負かした奴らと仲良くするわけねぇだろうが」
「……ですよね~、アハ、アハハハ……」
予想はしていたものの、突き離すように拒否されて龍は頭をかいてごまかし笑いを浮かべる。大牙はちらとだけ龍の顔を覗き見た後、唇を尖らせた。
「その傷……。カッコいいじゃねぇか……コラ」
ただ、反骨的な趣が好きな大牙だからこそ、そんな感想をぶっきらぼうに述べると、歩きだし、はっとした様子の龍の横を通り過ぎた。
「チッ、仕方ねぇからここは諦めてやる……けどっ、勝った気でいるんじゃねぇぞ! テメェらの顔覚えたからなっ!」
ありったけの負け惜しみを叫んで、大牙は大きく跳躍した。人を軽く凌駕した身体能力で壁を飛び越え、この場から去ってゆく。まだあれほどの体力が残されていたあたり、半人前とはいえやはりヴァンパイアだということだろう。
「いじめなんて最低、本当は灼滅したいくらいだったけど……」
「仕方ないよ、ここで灼滅すればいろいろと面倒だ」
大牙は行ってしまった。頬をむくらせて、憤りを隠せないでいる杏里に、那由多はその思いに同調しつつも肩をすくめてたしなめた。
「さて、いるのでしょう?」
「うわっ……!」
戦闘もひと段落し、瞭の穏やかな声色で、やや離れた校舎の影から顔を半分ほど覗かせていた学生たちが身体をびくつかせた。彼らがこれまでの戦闘を含め、一部始終を見ていたことは疑いようがない。
ならば、対処は一つ。灼滅者たちを代表して彩香が遠巻きに見ていた学生たちへと歩み寄る。すっかり足がすくんでしまっているのか、怯えている様子はあれど、逃げる様子はなかった。
「ごめんなさい♪」
彩香が愛らしく微笑んだその直後、学生たちの瞳に、彩香の開かれた口と迫ってくる牙が映った。
作者:ゆたかだたけし |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年8月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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