夏と言えば触手の季節

     小川・晴美(ハニーホワイト・d09777)は、こんな噂を耳にした。
     『触手で衣服を剥ぎ取り攻撃してくる巨大イカ型都市伝説が存在する』と……。
     都市伝説が確認されたのは、とある廃病院。
     この場所は肝試しスポットとして知られており、カップルが良く訪れていたのだが、ここに都市伝説が潜んでいるようだ。
     都市伝説は暗がりから触手を伸ばして相手の動きを封じ込め、男は八つ裂きに、女は服を引き千切って、玩具代わりにしてしまうらしい。
     そのため、余計に『この場所には何か出る』という噂が広まり、肝試しに来るカップルが増えているようである。
     それが原因で被害者は増加の一途を辿っており、これから肝試しシーズンになるため、事態が深刻になるのは確実。
     そうなる前に都市伝説を倒す事が今回の目的である。
     ただし、都市伝説は暗がりに潜んでおり、獲物を待ち構えているため、発見する事は困難。
     確実に見つけようと思うのであれば、誰かが囮にならなければならない。
     そうなれば、エロスの展開になる事は必至。
     ここで空気を読まずに野郎だけで突っ込んでいくという選択肢もあるが、そんな事をすれば八つ裂きパラダイスになる事は目に見えている。
     その事を踏まえた上で、依頼に参加してほしい。


    参加者
    柳谷・凪(お気楽極楽アーパー娘・d00857)
    神座・澪(和気愛々の癒し巫女・d05738)
    皇樹・桜夜(家族を守る死神・d06155)
    大宮・百華(肉体機械化少女・d06723)
    瀬良・花苗(滲む白の記憶・d07641)
    小川・晴美(ハニーホワイト・d09777)
    高倉・奏(拳で語る元シスター・d10164)
    吉野・妙子(刹那主義・d16877)

    ■リプレイ

    ●触手モノ
     誰かが言った。
     夏は触手の季節であると……。
     ……何故か?
     ただ何となく、思いつきで、はたまた前世の因縁で。
     その理由は定かではないが、とにかく触手の季節なのである。
     故に触手モノが増える。万が一、少なかった場合は、増やすまで。
     夏はウナギの季節。ウナギ、バカ売れ。
     ウナギがなければ、アナゴを食べればいいじゃない。アナゴ、バカ売れ。
     そうやって歴史は作られていくのである、多分……。
    「……なんで来てしまったのでしょうか」
     都市伝説が確認された廃病院に辿り着いた皇樹・桜夜(家族を守る死神・d06155)は、魂の抜けた表情を浮かべて溜息をついた。
     廃病院の中は真っ暗闇。懐中電灯がなければ、前に進む事が出来ないほど。
     こんなところに来れば、間違いなく恥ずかしい目に遭ってしまう。
     それが本能的に分かってしまうほど、全身に鳥肌が立っていた。
    「おい誰だよ、こんな噂した奴ら・! 廃病院にイカってどう考えたっておかしいでしょうよ! ……ていうかエロスって何!? もう訳分かんねーよ!」
     未だに信じられない様子で、高倉・奏(拳で語る元シスター・d10164)がツッコミを入れていく。
     そもそも、イカとエロスが繋がらない。
     おそらく、触手繋がりだとは思うのだが、何故ここまでイカにこだわっているのか、理解する事が出来なかった。
    「えへへ、ウチ、イカ大好きや♪ イカ美味しい!」
     満面の笑みを浮かべながら、神座・澪(和気愛々の癒し巫女・d05738)が軽くステップを踏みつつ、楽しそうに鼻歌を歌う。
     だが、都市伝説はイカの姿をしているだけで、本物のイカではない。
     最悪の場合はイカの味さえせず、残念な気持ちになってしまう事、間違いなしである。
    「いや、そう言う問題じゃないから。最悪の場合はこっちが食べられちゃうかもしれないし」
     思わず想像してしまい、奏が顔を真っ赤にする。
     脳裏に浮かぶには、18禁な目に遭っている自分の姿。
     それだけは何としてでも、避けなければと思っていても、運命の女神が悪戯心を働かせて、酷い目に遭う可能性もあるのだから……。
    「廃病院でイカとかよくわかんないけど、とりあえず迷惑だから退治するんだよ」
     タンクトップにダメージジーンズ姿で、柳谷・凪(お気楽極楽アーパー娘・d00857)が気合を入れる。
     ノーブラなのも、気合の表れ。絶対に襲われないという気持ちの表れである。
    「イカをナメちゃ駄目よ。吸盤が吸い付くタコ足と違って、イカ足の吸盤は噛み付いて引っ掛けるの。つまり、服破りに関しては天賦の才を持っている!  恐ろしい相手よ……」
     仲間達に対して警告しながら、小川・晴美(ハニーホワイト・d09777)が汗を流す。
     どこからか視線を感じる。まるで舐めるような、いやらしい視線を。
    「……とは言え、女性は玩具代わりにされるって話だけど具体性に欠ける情報ね」
     事前に配られた資料に目を通した後、吉野・妙子(刹那主義・d16877)が懐中電灯で辺りを照らす。
     都市伝説によって襲われた被害者は沢山いたが、どの相手も事件の事に関しては頑なに口を噤んでいた。
    「こ、怖いけど……お、男として皆を守らないと……!」
     色々な意味で身の危険を感じ、瀬良・花苗(滲む白の記憶・d07641)がゴクリと唾を飲み込んだ。
     都市伝説に襲われた被害者達の中には男性もいたのだが、みんな尻を押さえて『お前達も気をつけろ。奴は男も女も関係ねえ。特に男相手には無茶をする』と言って涙目になっていた。
    「それにしても……、暗いね」
     光すら飲み込むそうな暗闇を眺め、瀬良・花苗(滲む白の記憶・d07641)が先頭を歩く。
     この状況で都市伝説が不意打ちを仕掛けてきたら、間違いなく毒牙に掛かってしまうだろう。
     それが分かっていながら、先頭を歩く事はかなり勇気のいる事だった。
    「みんな、張り切っていきますわよ」
     しかし、大宮・百華(肉体機械化少女・d06723)のテンションは高かった。
     Y字型のスリングショット姿で、暗がりなどモノともせずに進んでいった。
     そのため、都市伝説も期待に応えるようにして、無数の触手を伸ばすのだった。

    ●蠢く触手の中で
     触手文化を紐解くと、遥か昔まで遡る事が出来る。
     ある地方の村では忌み嫌われ、生贄を捧げている村があった。
     また、別の村では神として崇め、夜な夜なエロスな宴を繰り広げていた事もあったらしい。
     そこから触手文化が人々の心に根付いていき、縄師という存在を生み出した……訳がない。
    「……あっ! 危ない!」
     都市伝説の存在にいち早く気付いたのは、晴美であった。
     すぐさま仲間達の前に陣取って壁になろうとしたが、無数の触手が華麗にスルー!
     まるで『もっと美味しいご馳走がある』と言わんばかりに、晴美の横を通り抜けていく。
     それはある人が見れば、海を真っ二つに割ったモーセのように見えたかも知れない。
     また、ある者が見れば、晴美のまわりに結界的な何かが見えたかも知れない。
     だが、確実に言える事は、無数の触手が晴美を避けて通ったという事だった。
    「こ、これぞハニーホワイトの危機回避スキルよ!」
     何故か、晴美は泣いていた。
     ボロボロと溢れんばかりに涙をこぼしていた。
     理由は……、よく分からない。
    「さあ、百華の肉体、存分に味わいなさいませ!」
     それとは対照的に百華のまわりには触手が群がっていた。
     そのたび、胸の先端と股間につけた鈴がリンと鳴り、爆乳がぶるんぶるんと揺れまくる。
    「うにゃ、こ、このエロ触手めー! はにゃっ!? うにゃぁぁぁ? そ、そこだめにゃぁぁぁ?」
     タンクトップの隙間から胸を攻められ、凪が恥ずかしそうに声を漏らす。
     しかし、触手は荒れ狂う波の如く、凪達を激しく攻め立てた。
     それでも、薄れゆく意識の中で澪に助けを求めたが、彼女はもっと凄い事になっていた。
    「ふや、ァ……ッん! そないな、トコ……」
     触手によって巫女服は引き千切られ、むっちりしたふとももや、豊かな胸に絡みついている。
    「あぁ~ん、そこぉ?? もっとぉ~ん」
     その横にいた百華は抵抗する事さえ忘れ、欲望を貪るようにして自らの体を擦り合わす。
     それに応えるようにして、触手も百華が鳴らす鈴の音に導かれ、重点的にその部分を攻めたて、乱暴に水着を引き裂いた。
    「ふあ……おいた、はぁ、ッ! ……アカ、ンぅ……え……?」
     そのため、澪が無数の触手を払い除け、百華を助けに行こうとしたが、胸の谷間を貫いて触手の先端が口の中に入ってきたため、激しく咳き込んで尻餅をついた。
     その途端、無数の触手が澪の体に絡みつき、大量の粘液が雨の如く降り注ぐ。
     それを浴びた澪がとろんとした表情を浮かべ、我を忘れて甘い声を響かせた。
    「……って、えっ? やめっ……! 離して……! 離して下さい! ひっ……! ちょ、何処触って……っぁ……! やだやだやだぁ……! たす、け……! 助けて……! レイ、ン、さん……!」
     奏が叫ぶ。
     思わず口に出た名前は、恋人の名前。
    「僕は男だもん、皆を守らなきゃ……!」
     そんな中、花苗は身動きひとつ取れなかった。
     だが、触手は容赦なく花苗を襲い、敏感な胸を刺激され、そのまま意識を失った。
    「どうせ女性とイカしかいないんだし、気にせず戦うわよ」
     服を破られても気にせず、妙子が神薙刃で触手を切り裂いていく。
     その一撃を食らって触手が暗がりの中に消え、『覚えていろよ!』とばかりに真っ黒な墨が吐き出された。
    「まさか、逃げるのか? さあ、狩りの時間だ!」
     それと同時と桜夜がスレイヤーカードを解除し、黒死斬で都市伝説の体を切り裂いた。

    ●触手は文化
     大抵の場合、触手に襲われると、自我を失い、快楽の虜になってしまう。
     例えるなら、水戸黄門一行がバッタバッタと悪党どもを薙ぎ倒し、印籠を出すまでの流れ。もしくは、魔法少女の変身シーン、ニューハーフの髭剃り、ムダ毛の手入れ。
     そのくらい省いてはいけないシーン。それを理解せずに省くようであれば……、ちょっと寂しい。ションボリしてしまう。
     しかし、そう言ったお約束を退け、都市伝説を倒す事が今回の目的。使命であり、果たすべき役目。
    「ほぉぉ……たまりませんわぁ……」
     そんな中、百華が千切れた触手をぺろりと舐め、幸せな気持ちに浸っていた。
     本来ならば、都市伝説を倒さねばならないのだが、押し寄せる快楽の前ではどうでもいい事。何となく覚えていれば、いいだけのモノ。
     それは触手モノとして、理想的な姿であったが、都市伝説の方は桜夜に攻撃されて、すっかり萎えてしまっていた。
    「……イカそうめん食べたいわね」
     先程、スルーされた事を根に持ち、晴美が都市伝説の懐に潜り込み、ブレイドサイクロンで触手状の足を切り裂いていく。
     これには都市伝説も悲鳴をあげ、伸ばしていた触手をすべて引っ込めた。
    「エロエロなイカ触手は全部イカそうめんにしちゃうんだよ」
     だが、そんな事を許す凪達ではない。
     すぐさま霊犬のマトラが都市伝説に噛みつき、凪が戦艦斬りで都市伝説の触手をズンバラリン。
     その事で完全に戦意を喪失させた都市伝説が、真っ白な粘液が撒き散らせて、這うようにして逃げていく。
    「また妙な気を起こすなよ」
     仲間達に対して警告しつつ、桜夜が真っ白な粘液を避け、都市伝説にギルティクロスを炸裂させた。
    「……き、気持ちよくなんてないんだから……!」
     恥ずかしそうに胸元を隠し、花苗が制約の弾丸を撃ち込んだ。
     その一撃を食らった都市伝説の動きを封じられ、モップの如く触手が垂れた。
    「このまま、あの世に逝ッちまええええええええええええええええ!!」
     半ばキレ気味に都市伝説を睨みつけ、奏がフォースブレイクを叩き込む。
     次の瞬間、都市伝説が真黒な墨を吐き、それが粘液と入り混じる中、
    「は……ぁ……なんか、スゴ、かった……凄く、らぶ、感じた……え♪」
     都市伝説が消滅した後も、澪がしばらく余韻に浸っていた。
     まさか、こんな幸せな気分になれるとは、夢にも思わなかったため、都市伝説の触手に対して、愛おしさすら感じていた。
    「とりあえず、これを着なさい。何も着ないよりはマシでしょう?」
     そう言って妙子がほぼ全裸であった仲間達に対して、笑顔を浮かべて水着を手渡すのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月2日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 11/キャラが大事にされていた 6
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