シコウするキョウキ

    作者:蔦草正果

     ひと気のない山中のトンネル。
     入ってすぐ傍に停められている青い乗用車。
     薄暗い口の奥から、濡れた肉の音がとめどなく溢れ続けている。
     ――キィン。
     古びたコンクリートの上に金属の音が落ちると、それは余韻も残さずに止んだ。
     痛いほどの静寂の中。
     切り裂くというには頼りなく、エンジン音とヘッドライトが訪う。漆黒の闇に向かって。
     余談ながら運転手である中年の男はそもそも、入り口に無人の車があったことに疑問を抱いていた。
    「え、あ、……人?」
     進路の脇に佇んでいたのは青年。
     殺風景な景色のひとつに紛れて後方へ流れていったが――。
     彼の身体も手も口も足元も真っ赤に見えたのは、アレか、こういうところには付き物の幽霊か。身震いをして、アクセルを強く踏み込む。
     が。
     ふと顔を上げた先。
     バックミラーに映った青い巨体。
     ありえない化け物。
     追いかけてくる。
     迫って、迫って、迫り――。

     再び戻った静寂に、歳若い青年の声がけぶった。
    「人間は僕の餌なんだ。……不味くても餌ならさ。逃げちゃ、駄目だよ」
     

    「皆ニュースとか見る? この事件知ってるかな」
     そう言って須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)が黒板に貼り付けたのは、地方新聞の小さな切り抜き記事。
     某県で起きている二人の女性の行方不明事件。
     死体などは一切見つからず、失踪を物語っているのは状況証拠のみ。
     まりんの顔は苦いものでも食べたような神妙さをほどけずにいた。
    「……一般人が闇堕ちしてデモノイドになる事件。は、皆も知ってるよね。でもその中でデモノイドの力を使いこなす人も出てきたんだ。デモノイドロード。基本的にはデモノイドヒューマンと同じ能力なんだけど、大きく違う点があるんだよ」
     自分の意志で闇堕ちし任意で戻ることが可能。自在にデモノイドと化すばかりではなく、異形の状態でも狡猾な知性を保ち続けられる。
     その原動力は――デモノイドよりも凶悪で強大な、悪の心。
    「うん。この記事の犯人がそうだっていう予測を、アウトプットしたんだよ」
     デモノイドロードであるその男が抱いているのは、悪心と選民思想。"自分は特別な力を与えられ"、"普通の人間ではない"からこそ"権利"がある、という結論。
     その"権利"は異常嗜癖も含まれているのかもしれない。
     発見されていない女性達の遺体が、もし発見されたとしたら――見た者は紛れもなくこう思うだろう。『一部が消失したかのように無造作に欠けている』。
    「なんでか分かる? う、分かっても言わなくていいよ」
     うえ、とまりんは不快さを隠さずに呻いた。
    「詳しい場所はこのあと資料として渡すけど、トンネルの中。長いし暗いしで近所では心霊スポットで通ってるみたい。青い乗用車が止まってるからすぐに分かると思う。既に連れ込まれてる女性がいるよ」
     加えてその十五分後、トンネルの中に一台の軽トラックがやってくる。
     その男が人間を人質にしたり殺すことに何の呵責もないだろう。
     しかしそこへ意識を傾けると、今度は逃亡する可能性がある。それだけは許してはならない。
    「危機に陥るとデモノイド化するけど、話をしてみるのも手のひとつだと思う。悪の心が薄まれば、抑制してるデモノイド寄生体が活性化して知性のない通常のデモノイドになるから。少し楽に戦えるようになる、かな……?」
     けれど――連続猟奇殺人犯、それも特殊な嗜好の持ち主に説得をかけるというのも、なかなか危険な真似かもしれない。
     彼の思想に賛同こそなくとも、共鳴するところも生まれうるかもしれない灼滅者であるならば、尚更に。
    「うん。私、皆が無事に帰ってくるの、お菓子とか用意して待ってるよ」


    参加者
    田所・一平(赤鬼・d00748)
    弥堂・誘薙(万緑の芽・d04630)
    織元・麗音(ブラッディローズ・d05636)
    ジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)
    九葉・紫廉(紅狼咆吼・d16186)
    朱鷺崎・有栖(ジオラマオブアリス・d16900)
    望月・楓(図南鵬翼・d17274)
    オリヴィエ・オーギュスト(小学生デモノイドヒューマン・d20011)

    ■リプレイ

    ●人を喰った話
     欠けた月が浮かんでいる。
     トンネルの中を通り抜ける風が灼滅者達を煽った。不思議と微塵も清涼感のない風に充満する湿った臭気は、望月・楓(図南鵬翼・d17274)とオリヴィエ・オーギュスト(小学生デモノイドヒューマン・d20011)の特殊な嗅覚を刺激する。染み付いた血臭と業が絡み合う粘ついた馨。
    「同じ力の持ち主でも、こうも違うなんてね」
     皮肉げな溜め息を零した楓の隣で、オリヴィエは押し黙っている。
    「緊張しているのですか」
     宵闇に織元・麗音(ブラッディローズ・d05636)の鈴のような声が鳴る。オリヴィエははっと顔を上げ、ゆるく首を横に振った。
    「いえ、大丈夫です」
    「私達は『セイギノミカタ』ですから。自信を持って行けば問題ありませんよ」
    「そう、ですよね」
    「じゃあ、私達は先に行くわね」
     楓とオリヴィエが瞬く間に黒猫へと転じる。その色はトンネルの闇にたやすく溶け込み、軽やかで微かな足音と共に吸い込まれていった。
     近くで樹木の倒れる音。
    「聴く人間次第で含みのある言葉よねー」
    「なにか?」
    「アタシもあんな時代があった気がするわ。ジンザちゃん、ご苦労さまー」
     真偽定かならぬ応答をした田所・一平(赤鬼・d00748)がトンネル傍の山肌に声を投げると、ジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)が肩を回しながら降りてくるところだった。
    「ありがとうございます。こんなところでしょうか」
    「完璧じゃない?」
     折よく殺界形勢を放ち終えた朱鷺崎・有栖(ジオラマオブアリス・d16900)がさっぱりとそう評す。
     一同が佇むトンネルの前に、木々が何本も倒れてバリケードを成していた。青い乗用車はその向こう、対向車線でオブジェのように横転している。きっと物理的通行止めの良い目印になってくれるだろう。トラックの運転手は守られた。
    「……中の女性も助けましょう」
     弥堂・誘薙(万緑の芽・d04630)が静かな決意を含んで暗闇を臨むと、九葉・紫廉(紅狼咆吼・d16186)が拳を掌に打ち合わせて気炎を吐いた。
    「――んじゃァ、行くか」

    ●暗夜潜行
      光源は後方に遠く遠く。DSKノーズが感知する、胸を悪くする臭気だけを視覚の代わりにして、楓とオリヴィエが古いコンクリートの上を走る。
     確かに人の気配がその先にあった。最低限と言うに相応しい懐中電灯の明かりもあった。それはそうなのかもしれない。自分達デモノイドヒューマンとデモノイドロードの違いは、デモノイドの力を抑制するものが善か悪か、それだけだ。
     光の届かぬギリギリの位置で楓が接近を止め、オリヴィエもそれに倣った。
     確かに、その青年はいた。普通の人間には嗅ぎ取れない芬々たる臭気をまとい、壁に押し付けた女性と温度差のある眼差しで向き合っていた。
     彼のポケットに入ったままの右手が何を意図しているのか、考えるまでもない。
     オリヴィエが焦れを隠さず無言のまま楓を窺う。楓は首を横に振る。――まだ、皆が注意を惹くまで動いちゃ駄目。
     己の状況をもっとも把握していない女性が、己の腰を抱く男の首の後ろで手を組み合わせ、笑み混じりに囁いた。
    「お化けが出るんだって、ここ」
    「そうらしいね。さっきも入り口の方から物音がしてたし」
    「ふふ、やだぁ」
    「……何か出ても悲鳴は上げないで欲しいな。黙って堪えてるほうが好きで」
     六名分の靴音が古びたコンクリートに反響する。
     幽霊にしては主張が強く、速足で、まるで隠す気のない足音が。
     やってくる光から顔を背けるようにして二匹の猫は反対側に回る。対照的に、ふたりの顔と意識がそちらへと向かった。
     キャリバーのものを含んだ複数のライトとランプ。石壁を照らし、六人分の影を映して踊らせ、――猫を闇から暴き出さぬ距離で、止まる。
     ただの通行人ではないと判じるのは容易い。
    「やあ、どうも。お食事前のトコ失礼」
     立ち止まった一行に横目だけ向けていた男は、いかにもフランクに掛けられたジンザの台詞に皮肉げに笑う。
     ――返答もせずその右手が動いた瞬間、真っ先に地を蹴ったのはオリヴィエだった。楓が追随する。
     一瞬のことだった。
     猫変身を解いたオリヴィエが男の右腕を掴もうと手を伸ばす。
     不足していたのは距離。目と鼻の先の掌中でひらめいたナイフが女性の左肩を躊躇なく刺した。
     双方を引き剥がすために楓が咄嗟に鬼神変を放つ。男は確かに驚きに目を瞠り、笑っているような、けれど温度のない表情を晒してそれを受けた。
     女性の腰に腕を回した状態で。
    「……ッ」
     息を飲んだのは楓だ。大きくよろめいてたたらを踏んだ男は、己の腕から逃れかけた女性の襟首を掴んで引き戻した。抱き込む。
     整った顔に笑みさえ湛え、彼は辺りを一瞥する。ごく近くで掠れ震える人質の呼吸は確実に耳に入っていない。
    「悲鳴を上げると恐怖が薄れちゃうのよね」
     有栖がどこかアンバランスな、味わうようなニュアンスで口火を切った。共感で包められた、甘やかに嘲る響き。
    「さすがにグルメはよく知ってるわ。生き物って恐怖を感じている瞬間が一番美味しいのよ」
    「恨みでも、金に困ってるわけでもねぇのに、どうして殺す?」
     まっとうな憤懣に翳った一平の言葉に、青年は軽やかに笑った。
    「特別だからさ」
    「特別? テメェが?」
     ハッ、と見下しも明らかに嗤う。
    「頭たりてねぇやつは不幸だねぇ。テメェくらいの人間なんてゴロゴロいんだよ。そう、たまたま通りかかった俺らが同類なようにな」
    「ああ。やっぱりそうなんだ」
     挑発された男は憤るどころかむしろ笑みを深めていた。曖昧な違和感を感じて誘薙は眉を顰める。自分の足元にいる霊犬・五樹はただ敵を見据え押し黙っていた。
    「他と違う特別な力があるから人間を餌にする、ねえ。それってむしろ獣の論理だろ。人間以下かよお前は」
     吐き捨てるように紫廉が言うと、彼は緩々と、教え諭すような風情で首を横に振る。
    「支配は人間の論理だろ? 僕達は能力のない人間達とは違う。君達なら――同類と称する君達なら、分かってくれるね」
    「分かる、とは」
    「この嗜好も」
     男は晴れ晴れとした顔で言った。
     鬱屈するほど溜め込んでいたコンプレックスを吐き出す清々しさがそこにあった。
    「こんな力を持つことになってたから、僕はこんなに歪んだ嗜好を持って生まれたんだ。さながら薬の効能に対する副作用のように。だから決して異常なんかじゃなかった。そうだろ?」
     Quiet、とジンザが切り捨てるような抑揚で封印解除コードを呟いた。
    「……僕の知ってるデモノイドはヒトを食べたりなんてしてませんでしたけどね」
     何でまたそんな食癖になったのか。寄生体の影響ではないなら、ならばそれは恐らく生得だ。後天的に与えられた力は何の関係もない。
     ――空から降ってきた言い訳というところでしょうか。
    「あなたの理論を持ち出すのも嫌ですが」
     誘薙が緩々と首を振る。見据える瞳にあるのは拒絶。拒否。
    「あなたが仰るとおり僕達が"特別な存在"であるなら、悪を狩る権利もまた、あります。僕達はあなたが救いようのない悪だと判断したまでのこと。――同類かもしれませんが対極にある、それが僕達とあなたの違いです」
     男の眼の奥から笑みが消える。薄ら開かれていた唇が閉じた。
    「た、……たすけ、て。たすけて、助けてッ、嫌、死にたくない!」
     人質の声で思い出したように瞬きをし、男は首を横に振った。
    「そう。じゃあ、喧嘩別れだね。穏便に帰らせて貰うよ。――穏便にね。君達はこの弱くてどうしようもなくて美味しいモノを、死なせたくないんだろ?」
     誰かが、淡く重い溜め息をついた。
    「その人を離せッ!」
     果敢に叫んだのはオリヴィエひとり。
     続くものはない。
    「み、皆さん……?」
     男は人質に突き立てたままのナイフに手を掛けた。掻き回して引き抜く。
     一拍遅れて上がった悲鳴がトンネル内に反響する。血飛沫が殺風景な場を禍々しく彩った。なおも止まらず溢れ続ける血は勢いが止まらない。そう時間も掛からずに致死量の失血を果たしてしまえるであろうほどの傷口。
     ナイフを携えた右手。そのシルエットが前触れなくぬるりと歪む。
    「さあ。どうする?」

    ●嗜好する狂気
     全員を制するよう真っ先に動いたのは誘薙だった。ただし好戦的な意味ではない。
    「五樹、お願い!」
     霊犬が浄霊眼を女性へ向けて放つ。流れ続ける血が途切れる。
     それとほぼ同時に、石壁に投影された影が人質を抱えた男へ向けて不自然に伸びた。影縛りの使い手――有栖が歌うように囁く。
    「でも、逃がすわけにはいかないのよね」
     ――だって、こんな処に自分から連れ込まれる女なんて、知ったことないじゃない?
     その不穏さを不穏と感じ取ったのは、この中の何名ほどだっただろう。
     影の束縛が解かれる前に一平が距離を詰める。その手には妖の槍。
    「やめッ、」
     悲鳴混じりの楓の声は届かなかった。否、届いたとて意味はなかったのだろう。
     あくまで男への狙いを定めた螺穿槍。だがその悪鬼が人質を見せつけるように盾にすることも、想定出来ないわけがない。
     見た絶望と刺し貫く手応えは乖離していた。
    「謝らねぇぜ。思う存分、恨んでくれ」
     男は息絶えた盾を打ち捨てると同時、寄生体の宿る右腕を一平へ向けて振るった。風を断ち切る剣閃。
     紫廉が的確なタイミングでワイドガードを展開しその衝撃を軽減。
     一平とは正反対の方向、敵の後方を位置取ったジンザが放つマジックミサイルもまた、研ぎ澄まされた精度があった。
     間髪と入れず駆けた麗音の髪が颯爽と靡く。細腕で振り回される龍砕斧の残影に似てしなやか。
    「ふふッ。これでまともに殺し愛が出来ますわね――?」
     跳躍。DMWセイバーへと正面から噛み付き火花を散らす。
     弾かれるや追撃回避のため後方へ離脱して、彼女はなおも笑っていた。
    「素晴らしい手応え! お強いですね。それだけにとても残念です、――自身の本能のままに弱い者へ力を振るい、盾にして、悦に浸っているだけだなん、て。ね、……狩られる気持ちは、いかがですか?」
     ナイフを握りこんだ異形の右腕がヴェノムゲイルを撒き散らす。
    「オーギュスト!」
     楓に叱咤混じりで名を呼ばれ、半ば放心状態だったオリヴィエが身を竦ませる。
     守れなかった。それは知っている。だが悔やむのは後だと、『兵法家』はその一言に込める。
     ぐ、と込み上がる胸のつかえを息ごと飲み込み、少年は顔を上げた。
    「僕は、ッ、名前に恥じないパラディンになるんだ……!」
     仲間の命を守るためのリバイブメロディが戦線を回復させていく。
     キャリバー・カゲロウが機銃掃射を放ち終えた瞬間、紫廉が駆けた。
    「この程度じゃッ、痛くも痒くもねえんだよ三下ァ!」
     シールドバッシュを全力で打ち込む。
     フォースブレイクで続いた有栖が、高らかに嗤った。
    「貴方の悪意はその程度なの? まだまだいけるでしょう? ねえ、そっちの方が楽しいからもっと狂いなさいよ。そして私を楽しませなさい! さあ、楽しい楽しい殺し合いをしましょう!」
    「……ああ。やっぱりほら、君達も。狂ってるよ」
     呟いたのは他でもない。
     トンネル内に霧が立ち込めていく。

    ●思考する凶器
     急激に不確かになっていく視界の中、目標とは一定の間合いを置いていたジンザが地を蹴った。
     躊躇なく夜霧を縫った忍者は人間ならぬシルエットの行く手を遮る。
    「逃げるのですか。Mr.Lord?」
     零距離で振るうガンナイフ。手応えの直後浴びせかけられた巨大な刀をかろうじて受け止めたが、その衝撃の重さが冗談のようだ。
    「捕食者が上位の存在と。もしそう思ってるならソレ、ただの勘違いですよ。だって」
     眉間を顰めたように見えたデモノイド。その身体が揺らぐ。
     背へ与えられた斧の打撃を皮切りに、影が躍り、ペトロカースが動きを鈍らせる。
     デモノイドは背後へと振り向きざまに、その丸太のような腕を振るった。紫廉が率先して前に出、受け止める。悲鳴を上げる腕。
    「どうして。おいで、こっち側へ。だってこれは、とても幸福だ」
    「うるせぇ」
    「君達だってその女を見捨てたじゃないか。僕と何が違う!」
    「うるせえ!」
     張り上げた声はどこか悲鳴じみた。
    「俺達は救えたかもしれない命を、お前を灼滅するために見捨てた。ああ、認めるさ。責められたって仕方ねえ。恨まれても甘んじて受けとめる。けどな――お前にだけは責められる謂れは、ねぇッ!」
    「僕達はアナタのようにはならない。……それだけの話ですよ」
     諭すような声はどこか願いじみた。
     劈を携え一平が駆ける。まっすぐに。
    「どうしてだ! 君達なら分かってくれると思ったのに!」
     軋み響く異形の訴えは、大きく振りかぶって為されたフォースブレイクに断ち切られた。
    「――先に地獄で待ってろよ、クソ野郎」

     女性の遺体を見つめて黙する楓へと、麗音が歩み寄る。
    「折角力を得られたというのに、如何せんやり方が下手でいけませんね。やりようは幾らでもあったでしょうに」
     独り言の声量でもあった。楓は薄く息をつき、少し考えてから応える。
    「やりようがなかったのよ。きっと」
     敵は最後まで理解を求めていた。デモノイドロードと化したことで、その歪んだ悪の心における根拠と力が与えられてしまった。
    「確かにこの力は特別なものかもしれないわ。でも、正しいことに使われない力に意味なんてものはないのよ。それがあの男には分からなかっただけ」
     強者には強者の義務がある。
     だから私達は無力な人々を守る。力と、力を持つが故に安易に手が届く欲望を抑制し、義務を失した強者を討つ。
     犠牲を払うことがあるとしても、それをも負い続ける義務。
     この信念だけは明確な違い。
    「『セイギノミカタ』ですね?」
     優美に小首を傾げてみせた麗音に、楓は確かに頷いた。
    「そうね。これもきっと、『正義の味方』ね」

    作者:蔦草正果 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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