自分磨きは大切だとか

     アルファリア・ラングリス(蒼光の槍・d02715)は、こんな噂を耳にした。
     『自分を磨きが大好きで、ナルシストな甲冑都市伝説がいる』と……。
     都市伝説が確認されたのは、廃墟と化した洋館。
     この洋館はかつて甲冑コレクターが住んでいたらしく、屋敷の中には沢山の甲冑が並んでいるようだ。
     このうちの一体が都市伝説と化し、暇さえあれば自分の体をキュキュッと磨いているようである。
     そのため、相手の顔が映るくらいにピッカピカ!
     都市伝説はそんな自分にウットリしているが、少しでも汚れたらブチ切れ!
     まわりにあるものをすべて破壊し尽すまで、暴れる事を止めないらしい。
     洋館の中には甲冑泥棒3人組もおり、放っておけばあっという間に血祭り。死体の山。
     しかも、甲冑泥棒3人組は仲間を犠牲にしてでも甲冑を持ち帰り、金にしようとしているため注意が必要である。


    参加者
    土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)
    アルファリア・ラングリス(蒼光の槍・d02715)
    神凪・燐(伊邪那美・d06868)
    十束・御魂(天下七剣・d07693)
    護宮・サクラコ(猟虎丫天使・d08128)
    斎場・不志彦(燻り狂う太陽・d14524)
    綺堂・妖(小学生妖術使い・d15424)

    ■リプレイ

    ●自分磨き
    「……妙な噂もあったものですね。元来、鎧は身を守るもので、傷など当たり前のものですが……。芸術の側面ばかりが強調されましたか」
     アルファリア・ラングリス(蒼光の槍・d02715)は事前に配られた資料を眺めつつ、都市伝説が確認された洋館に向かっていた。
     元々、この洋館に飾られていたのは、観賞用として作られた西洋の鎧。
     それ故に都市伝説も自分磨きに拘って、自らの芸術性を高めているという噂が広まったのだろう。
     だが、逆に言い方をすれば防御面に特化していないため、とても脆く傷つきやすい事を意味していた。
    「西洋鎧に宿る魂か。日本には昔から九十九神が居るから、別段不思議には思わんが……。やはり何処にでも現れる物じゃのぉ。恐ろしきは人の持つ欲か」
     やれやれといった感じで、綺堂・妖(小学生妖術使い・d15424)が溜息を漏らす。
    「……とは言え、自分の体を磨いて悦に浸る都市伝説、って言うと何か凄いですね」
     そう言って十束・御魂(天下七剣・d07693)が、都市伝説の姿を想像した。
     何となく、鎧の中に花も恥じらう乙女的な何かが入っている姿が思い浮かぶ。
     もちろん、相手は都市伝説。
     そのため、中の人などいない可能性が高かった。
    「自分磨きって、お稽古事をしたりして、自らを高めるっていう事ですよねい? その……自分を磨いちゃうんですねい、この都市伝説さんは。何故か、はげたおっさんが自分の額をつるつるに磨き上げている幻覚が見えましたが……」
     それとは別の中身を、護宮・サクラコ(猟虎丫天使・d08128)が想像する。
     こればかりは中身を確認してみない事には分からないが、知ったところで倒す事には変わりがないので、逆に知らない方が幸せかも知れない。
    「よく居るよね。特に結婚適齢期を超えて焦っている女性とかさ。理想に近づこうとする努力っていうのは大事だが、下心というか必死っぷりが透けて見える、醜い所をペンキで隠そうとするようなさ、考え方に問題があるように思うのさ。まあこの依頼には全然関係ないけど……」
     自分なりの考えも付け加えつつ、斎場・不志彦(燻り狂う太陽・d14524)が答えを返す。
     だからと言って逆に焦らなければ、『オバちゃんね。今日いい話を持ってきたのよ。いや、別に無理にって訳じゃないのよ。ただ会うだけでいいから。ほんのちょっとだけ。……と言うか、もうセッティングしちゃったから』と強引に見合いを勧められたり、『そろそろ孫を抱っこしたい』と両親に愚痴られたり、『お姉ちゃん、ごめん。私……、もう待てない』と妹に泣きつかれ、兵糧攻めの如く逃げ道を塞がれるのがオチである。
     もちろん、結婚したからと言って必ずしも幸せになれるとは限らない。
     そのため、こんな状態で結婚したとしても、トラブルのタネになるだけだが……。
    「まあ、価値あるものなら泥棒に狙われるのも当然ですねえ」
     警戒した様子で辺りを見回しながら、神凪・燐(伊邪那美・d06868)が洋館に入っていく。
     洋館の中には西洋鎧がズラリと並んでいたが、しばらく手入れをしていなかったせいか、その大半が光を失って錆びついていた。
    「とりあえず、泥棒を何とかしませんとね」
     奥の部屋から何やら物音が聞こえてきたため、マーテルーニェ・ミリアンジェ(散矢・d00577)が物陰に隠れて息を殺す。
     どうやら、奥の部屋に泥棒達がいるらしく、何やらヒソヒソ声が聞こえてきた。
    「むむむむむぅ……、正義の魔砲使いとしては、泥棒を助けるという行為にいささか腑に落ちない所がありますが、命は粗末にするものじゃないですもんね! この人達は常習犯かな? ならば警察に突き出しちゃうのが正解ですね☆」
     複雑な気持ちになりながら、土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)が奥の部屋へと進んでいく。
     そこにいたのは、古風な泥棒スタイルに身を包んだ三人組であった。

    ●三馬鹿トリオ
     泥棒達にとって、ここは宝の山が眠る理想郷であったのに違いない。
     廊下にあったものと比べて、奥の部屋にある西洋鎧はどれも状態が良く、細長い顔をした泥棒が見えないそろばんを弾くほどであった。
     リーダーと思しきボサボサ頭の男が、四角い顔をしたガタイのイイ男に指示を出しているが、売り物になると分かっているためか、かなり慎重に扱っていた。
    「盗みとは不届き千万タヌ! そんな事をしてると、お仕置きするタヌよ!?」
     タヌキの着ぐるみ姿で颯爽と登場し、アルファリアが王者の風を使う。
    「なんだ、お前は!」
     その途端、泥棒達が本能的に確信する。
     コイツはヤバイ。
     関わったら、間違いなく酷い目に遭う、と……。
     それが本能的にわかってしまうほど、アルファリアはヤバかった。
     例えるなら、背中に死神を纏うタヌキ。禍々しい力を持ったタヌキ的なモノ。
    「そこまでですよ、悪の泥棒達よ! たとえ夜に浮かぶお月様が許しても……、土星が貴方を許さない!! 魔砲少女・真剣狩る☆土星! 土星に代わって成敗ですよ♪」
     続いて璃理もピシィッとポーズを決める。
     こっちもヤバイ。色々な意味でヤバイ。
     間違いなく、これは悪役のヤラレパターン。
     ここで璃理をフルボッコにする事は、空気の読めない悪役として、ブラックリスト入りするようなもの。
    「なんでわざわざ糞重い甲冑なんて泥棒しようとする発想になるんだか知らんが、三流臭せぇなぁ」
     そんな泥棒達に生暖かい視線を送り、不志彦が呆れた様子で溜息をもらす。
    「お、俺達が三流だと! ふ、ふざけるな!」
     リーダー格の男が反論する。
     だが、涙目だった。泣いていた。
     途端にまわりの手下が『いや、ボスは何も悪くないから』、『悪いのは世の中だから』とフオローを入れる。
    「でも、コイツがっ! コイツが!」
     それでも、リーダー格の男は泣いていた。
     そのため、手下の泥棒達がジト目で、不志彦を睨む。
    「ひょっとして、僕が悪いって言いたいの?」
     辺りには微妙な空気が流れていた。
     それはまるで『ほら、不志彦君が酷い事を言うから、リーダー格子ちゃんが泣いちゃったでしょ』と言った感じでクラスの女子達から責められている時の空気に似ていた。
    「ちょっと、リーダー格子ちゃんを保健室まで連れていくから」
     そんなお寒い芝居をしながら、四角い顔の泥棒が逃げようとする。
    「逃がすと思うたか、この痴れ者共がッ!! ……盗みは大罪、八熱地獄に堕とされても文句は言えんぞ? この中で仲間を犠牲にしてでも生き残ろうと思った者は前に出るが良い。そっ首叩き斬って、そこの甲冑と一緒に並べてやるわ」
     しかし、妖がその行く手を阻む。
    「い、いや、俺達は保健室に」
     細長い顔の泥棒が、気まずい様子で汗を流す。
    「まさか、その空気を呼んでくれと言わんばかりの雰囲気に飲まれて、逃がすと思っていましたか? それならば……、甘いですね」
     嫌悪感をあらわにしながら、マーテルーニェが泥棒達に当て身を放っていく。
     その一撃を食らった泥棒達が『ぐえっ!』と声を漏らして、その場に重なり合うようにして倒れていった。
    「この人達……、泥棒になる前は何をやっていたんでしょうね」
     気絶した泥棒達を縛り上げ、燐が深い溜息を漏らす。
     彼らが何をやっていたのか分からないが、おそらく盗みに入ったのは、これが初めてだろう。
    「ところで、こんなところに甲冑なんてありましたっけ?」
     いつの間にか見慣れぬ西洋鎧があったため、御魂が不思議そうに首を傾げる。
     何故か、他の鎧と比べて無駄にピカピカしており、まるで誰かが手入れをしているようだった。
    「こ、これは、都市伝説でいす!」
     次の瞬間、サクラコがスレイヤーカードを解除し、都市伝説から離れるようにして間合いを取るのであった。

    ●輝き一番
     都市伝説は意識を持った時から、自分の体を磨いていた。
     何故、そうしていたのか、分からない。
     ただ、ひとつだけ言える事は、そうしなければ気分が悪いという事だった。
     それまで自分が何をしていたとか、どうやってここまで来たのか、記憶はない。
     気が付いた時には、この場所にいた。
    「そこまでタヌよ! たぬ王国からの使者、タヌファリア只今推参タヌ! 自分にうっとり変態ナルシスト甲冑、そんな奇妙奇天烈意味不明な怪物は、鍋に代わってお仕置きタヌ!」
     それはアルファリアであった。
     高いところに立ってビシィッとポーズを決め、傍にいたサクラコを感動の嵐に包み込んでいた。
    「なんだ、貴様らは! ここが俺の聖域だと知っての狼藉か」
     都市伝説が叫ぶ。妙にこもった声で。鎧の奥にぽっかり浮かぶ赤い目を光らせて。
    「中身がないよろいが勝てると思うなでいす! 灼滅!」
     それと同時にサクラコが仲間達と連携を取って、都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
    「おい、やめろ! 俺は平和主義者だ!」
     しかし、都市伝説が右手を突き出して、激しく首を横に振る。
     おそらく、鎧が汚れたり、傷ついたりするのが嫌なのだろう。
     サクラコ達が迫ってきた事で、あからさまに動揺しているようだった。
    「そんなに傷つくのが嫌か。なんなら、鬼神変でベッコベコにしてやってもいいぜ」
     含みのある笑みを浮かべ、不志彦が都市伝説に鬼神変を放つ。
     その途端、都市伝説の全身から刃物の如く鋭く尖った殺気が辺りに放たれる。
    「貴様、俺の鎧を傷つけたな。この俺の……鎧を!!!!!!!!」
     都市伝説が怒りを爆発させる。
     こうなると、鎧が傷ついたり、汚れたりしても関係ないらしく、ただ怒りだけを不志彦達にぶつけている。
    「甲冑がナルシズムはちょっと……!」
     そんな都市伝説にドン引きしつつ、御魂も鬼神変を叩き込む。
     そのため、都市伝説の鎧がベッコベコ。
     それが原因で我を忘れて怒り狂い、まったくまわりが見えなくなっていた。
    「がちゃがちゃと、凄いうるさいですね!?」
     両手で耳を塞ぎたい気持ちになりながら、御魂が都市伝説の攻撃を避けていく。
     だが、都市伝説は鎧の関節部分が外れそうな勢いで、ブンブンと拳を振り回す。
    「……とは言え、隙だらけですね」
     都市伝説の死角に回り込み、マーテルーニェが影縛りを発動させた。
     それと同時に都市伝説の動きが封じられ、室内に唸り声だけが響く。
    「どれほど硬い鎧であろうと、私の魔砲が貴方を貫く! 私のこの手が碧に光る。獲物を壊せと、轟き唸る。逝くよ、必殺シャァァイニングナァァァックル!!」
     次の瞬間、璃理の必殺技が炸裂し、都市伝説の体が木端微塵に砕け散った。
    「とりあえず、泥棒達を警察に突き出してから帰りましょうか」
     都市伝説が消滅した事を確認した後、燐が夢の世界に旅立った泥棒達に視線を送る。
     未だに泥棒達は夢の中。だが、次に目を覚ました時、すべてが悪夢であったと思うかも知れない。
    「ならば、わしは廃墟の写真でも撮って帰ろうかのぅ」
     そう言って妖が納涼ついでに、洋館の奥へと進んでいった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 8
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ