ラーメンは投げ捨てるもの

    作者:柿茸

    ●徳島県徳島市
    「やー、長旅だったなー」
    「新幹線ないから意外と遠いね」
     8月。学生にとっては夏休み。
     それを利用して、徳島に遊びに来た大学生が2人。徳島駅からおりて、夏の日差しを感じつつ辺りを見回す。
     と、その腹が、2人同時になった。
    「それにしても腹減ったな」
    「もう昼飯時だしなぁ。とりあえずなんか食うか?」
     だな、と相槌を打つ。取り出したるはグルメマップ。ぱらぱらと捲るページにはラーメンの文字。
    「やっぱ徳島なら―――」
    「うどん」
    「そうそう、徳島―――」
    「うどん」
    「いやラーメンでしょ」
    「ラーメン以外ないって」
     2人揃って、後ろから合いの手気味にいれてくるうどんの声に振り返る。
     その頭に、揃って丼が被せられた。熱い汁と具材とラーメンがひっくり返った丼から流れ落ちる。
     響く絶叫、熱さにのたうち回る大学生から雲一つない青空へと顔を上げ。
    「徳島はラーメンじゃなくてうどんじゃああああああああああああ!!」
     誰ともなしに叫ぶ、『徳島うどん』とでかでかと書かれた前掛けを付けた少年がいた。
     
    ●教室
    「徳島と言えば?」
     徳島ラーメン、とラベルに書かれたカップ麺を啜る田中・翔(普通のエクスブレイン・dn0109)。
     そりゃラーメンだろ、とラベルを見たり見なかったりしながら集まった灼滅者が応える中、月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)の思考に電流が走った。
    「……うどん?」
    「正解」
     えっなにそれ脳内クイズ。
    「正確にいうと徳島と言えばうどんだろっていうご当地怪人への闇堕ち者がでたんだけどね」
     うどんと言えば隣の県に取られがちだし。悲しいね。あとラーメン美味しいね。
    「じゃあ今回は、その闇堕ち一般人の対処ってことだね?」
    「うん。まぁ、まだ元に戻れるからできれば灼滅せずに救ってほしいかな。名前は徳山・牛島(とくやま・うしま)」
     あと、今回はちゃんとした人間だから食べれないからね。と、そこは重要な情報なのだろうかと言うことまで口に出す翔。
    「食べられないかー」
     何故か残念そうな顔をする玲。
     それはそうとして、と翔は話を続ける。
    「対象は徳島駅の駅前によく出没するっぽい。ラーメン食べに来ましたって雰囲気だすとラーメンの丼を頭に被せてくる」
     中身入ったままで。
    「勿体ないよね!?」
    「しかも出来立てアツアツ」
    「勿体ないよねっ!!」
    「うどんは自分で食べる」
    「広めようとしてないよね!?」
     ところで、そのうどんは美味しいの?
    「食べた本人は極上の味って顔する」
    「おのれダークネス!!」
    「闇堕ち一般人だけどね。それと、後衛にはおでん投げつけてくる」
     あれ? おでんとばっちりじゃね?
    「ほら、讃岐うどんだとおでんもうどん屋にあるからさ。多分そんなことせずにうどん一本でいけってことじゃないかな?」
    「いや、そんなこと言われても」
     ちなみに、ラーメンもおでんも凄く熱い。物理的に燃える程度に熱い。
     うどんは、食べると体力の他に自分が受けている悪い効果みたちどころに治してしまうらしい。
    「うどんすごいね」
    「物理的に燃える方がどうかしてると思うんだけど……」
     ラーメンをすすって、そして翔は続ける。
    「闇堕ちしたとは言え、まだ彼は戻れる可能性がある。っていうか倒したら戻る」
     でも、うどんの素晴らしさに同意して、でも他の食べ物との両立を説くとかで戦闘力が落ちたりとかなるんじゃないかな。
    「それで、救い出せたら、うどんを食べに行けばいいんじゃないかな。そこまでうどん推ししてる子ならお勧めのうどん店知ってるだろうし」
     それじゃ、皆頑張ってね。と、食べ終わったカップ麺のラベルを剥がす。それを説明終了の合図ととり、玲は集まった一同に振り向いた。
    「ようし! それじゃ徳島にラーメン……じゃなくてうどん食べに行くわよ!」


    参加者
    ミレーヌ・ルリエーブル(首刈り兎・d00464)
    佐々・名草(無個性派男子(希望)・d01385)
    堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)
    綾木・祇翠(紅焔の風雲・d05886)
    月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)
    十五夜・名月(自称月のヒーロー・d16530)
    朱鷺崎・有栖(ジオラマオブアリス・d16900)
    ソフィ・ルヴェル(カラフルキャンディ・d17872)

    ■リプレイ

    ●有名過ぎるものが近くにあると、意外と埋もれちゃう美味しいものって沢山あるよね!
    「あ、そもそも徳島自体が埋もれてるとかは言っちゃ駄目だよ?」
     いきなり失礼なことを言う月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)。多分そんなこと思ってるのあなただけですから!
     咳払いして一度仕切り直し。
    「怪奇!? 食べられないダークネス!?」
     我々取材班はしょーもない堕ちかけが居ると聞いてここ徳山までやってきたのだ!
    「しょーもないは同意するケド、食べられるダークネスの方が怪奇ダヨ!?」
     堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)のツッコミが入る。
     現在、徳島駅前。ぐるりと見回す玲の視界には、グルメマップを持つ灼滅者達の姿。それと少し離れて、立ってこちらをガン見しながらうどんをすすっている怪しい人がいる。
     その怪しい人をガン見返しながら、じゅるり、とミレーヌ・ルリエーブル(首刈り兎・d00464)が涎をすすった。
    「独り占めして他人に食べさせない位美味しいうどん……。これはぜひ口にしてみたいわね」
     救出する前に何とかしないと。ってミレーヌさん何を言ってるんです?
     その隣では、綾木・祇翠(紅焔の風雲・d05886)が額に手を置いて悩んでいるというか、呆れているというか、そんな表情をしていた。
    「俺は富山伝統の氷見うどんもブラックラーメンも好きだが……。徳島のうどんとラーメンも仲良くできないものかねぇ」
     元ストリートファイター、現在は地元富山のご当地ヒーローであるの祇翠は嘆く。どうしてこうもご当地怪人は……、と。でもあれですよ、闇堕ちすればきっとその気持ちは分かるはず。分かりたくないでしょうけど。
    「どこへ行こう? やっぱりラーメン?」
     と、佐々・名草(無個性派男子(希望)・d01385)がグルメマップから顔を上げて皆を見渡した。うどんをすすっていた怪しい人が猛烈に反応するが、そうだよねー、と朱那も同意した。プルプル震えて箸を握り折る変な人。
    「徳島って言ったらー、やっぱ鳴門の渦潮、それと美味しいラーメン!」
    「そうそう。徳島といえばやはり徳島ラーメン……楽しみだなぁ!」
     さらに十五夜・名月(自称月のヒーロー・d16530)もうんうんと頷いていた。あ、変な人こっちにずかずか歩いてきた。
     それを横目に見ながら、朱鷺崎・有栖(ジオラマオブアリス・d16900)は、んー、と少し悩んでから口を開く。
    「私的にはそうね、別にどっちでもいいのだけど、ラーメンよりはうどんの方が好きだと思うわ」
     ピタリと、怪しい人の歩みが止まる。涎垂らしながらガン見しているミレーヌの目に、まるで見ちゃいけませんと言いたげに祇翠の手が被さった。
    「特に何か理由があるわけじゃないけどね。……和風っぽさが強いからかしら?」
     腕を組み、軽く首を傾げながら紡ぎだされた言葉に、そうそうそれだよそれ! よく分かってるじゃん! とか思念を飛ばしながら変な人が猛烈に頷く。
    「そうですの?」
     そんな有栖に、ソフィ・ルヴェル(カラフルキャンディ・d17872)が目を瞬かせながら尋ねた。
    「ラーメンもうどんも食べたことがありませんので二つとも気になりますね……」
    「じゃあまずラーメン食べに行こうか」
     それに反応した名草。そんなあくまでも変な人、もとい牛島を煽る提案をした直後。
     頭に、逆さまになった丼が被せられた。燃え上がりながら零れる中身。地面を転げまわる名草。カードデッキを取り出すソフィ。
    「も食べ物を粗末にするのはいただけません……。ここはヒーローとして懲らしめてあげませんと……!」
     ヒーローかどうかはともかく、前半に関しては皆同じことを思っていた。

    ●うどんとラーメンが交差するとき物語が始まるかもしれないし始まらないかもしれない
    「我が前に爆炎を!」
     既に燃えてるラーメンが目の前にありますが、解除コードだから言わずにいられない玲。
    「月昂! うどん愛ゆえの過ち……私達が正してみせる!」
    「ご当地怪人は私達が相手です、変身! さぁ、ブランメテオール、力を貸してくださいね」
     ご当地ヒーロー的に格好良く変身の声を上げないと気が済まない名月とソフィ。
    「その地の有名なものって事で徳島ラーメンだろ、夏なんだし冷麺にするとか気が利かないものかねぇ……」
     一方の祇翠は箸を構えた。祇翠の霊犬の紫雲が歯をむき出しに牛島の頭に向かって飛び掛かる。
    「さあ、ナグサ。転がってないで早く起き上がって。私の壁になりなさい」
    「はいっ! 轟天行くよ!」
     有栖の女王様ボイスに燃え上がりながらも元気に立ち上がり、ライドキャリバーの轟天に跨る名草。
    「食べ物を粗末にしない!」
     そしてそのまま、轟天を突撃させながら説得にかかる。唸るタイヤを、頭を霊犬に齧られつつもラーメンでがっしりと受け止める牛島。
    「粗末にするくらいならうどんをアピールしてよ! うどんを振る舞うとか美味しいうどん屋さん教えてくれるとか!」
    「徳島うどんの素晴らしさも知らぬ県外民に教えられるか!」
    「矛盾してますよね!?」
     ライドキャリバーのブランメテオールに乗って二重の意味でツッコミながらもソフィがワイドガードで前衛の守りを固める。流石にバイク2台を止められず弾き飛ばされる牛島。
    「とりあえず殴り倒せばいいわよね」
    「説得は!?」
    「そんなもの私がするわけがないじゃないの、他の人にお任せするわ」
     有栖は潔すぎるぐらいに朱那の言葉を一蹴しつつ、フォースブレイクによる説得(物理)で飛んできた牛島を地面に叩き付ける。ちらりと見やった視線の先、玲が任せとけと言わんばかりに頷いた。大きく息を吸う。
    「勿体無い! 実に勿体無いよ!」
     ラーメンも勿体無いけど、徳島うどんを広めようとしないその中途半端な闇堕ち、勿体無いよ!
    「勿体無い闇堕ちってどういうことですか!」
    「人生に何度も無い経験だよ? 君の地元愛はそんなものなのかな!」
    「闇堕ちが人生に何度もあってたまるもんか!!」
    「周りがもっと迷惑するくらい広めなきゃ!!」
    「迷惑させたら逆効果だろう!」
    「食べられるうどん触手みたいなの出してみてよ!!」
    「人間やめてるヨネそれ!?」
     仲間から総ツッコミを受ける説得のような何かをする玲。
    「聞いているのかね徳山牛島くん!!!」
     指を突き付けた玲の先、うどんをすすってる牛島の姿があった。
    「うどんうめぇ!」
    「聞けぇー!!」
     炎を纏う玲の蹴り。闇堕ち怪人を、うどんを見て獲物を見る目つきになった連中に蹴り飛ばす。受け止める朱那。
    「そもそも!」
     牛島をビンタ。
    「自分ばっかり食べてズルイ……」
     じゃなく食べ物粗末にするのヨクナイ!
     誤魔化すように往復ビンタ。もとい閃光百裂拳。
    「あたしにも食わせろ!」
     本音と共にとどめのビンタ。錐もみ回転しながら再び地面に倒れる牛島に、一度咳払いして朱那は説得を始める。
    「でもね、キミの言いたい事もわかるンだ」
     あんなに美味しいのにね、何だっけあの……。
    「……ばけつうどん?」
    「たらいうどん?」
    「そうそれ」
     台無しだった。美味しいなら美味しいと、自信持てばイイんだよ、そんな風に無理強いしたら、伝わるモノも伝わらナイヨ! とか良い事言ってるけど台無しだった。
    「間違えるぐらいならバケツラーメンでも食ってろ!!」
     起き上がりながら牛島がブチ切れるのも無理はないと思います。
    「んー。温めてよし、冷やしてよし。カレーうどんや月見うどんが出来たように、うどんには全てを受け入れる包容力があるわ」
     名月の月見ビームが、合いの手のように飛ぶ。
    「それにうどん以外があるのも悪い話じゃないよ。うどん以外があるから、うどんがそれらとは別の物として特徴を感じられるんだ。たとえばあっさりしたものが食べたいな、とか思うときとかね」
     ようやくまともな説得がはいる。ミレーヌさんとそれに乗っかる名草さんマジ天使。牛島も、名草の言うことになるほど一理あると頷きつつ、地獄に垂らされた1本の蜘蛛の糸を見つめるような目で見てる。
    「だからラーメンうどんがあってもいいわよね。ラーメンライスとかあるし」
     ラーメンをおかずにうどんを食べる、ありだと思います。
     ミレーヌの言葉に、蜘蛛の糸が切れた。
    「ラーメンでも食ってろ県外民!!」
     前衛陣に火の雨、もといラーメンの雨が降り注ぐ。
    「ナグサ、壁」
    「はいっ!」
     有栖はしっかりと名草を壁にしていた。マジ女王様。
    「はふ、はふはふ、あ、あふぃ。けど美味しい……」
     名草は零れ落ちるラーメンを一生懸命食べていた。マジいやしんぼ。

    ●うどんたべたい
    「人も食も様々な出会いや助け合いにより更なる高みに至るものさ」
     氷見うどんには白エビかき揚げや鰤の刺身がある……独り身が悲しいからって八つ当たりは駄目だぜ?
     格好良く、箸を構えながら決めた祇翠のアツアツのこんにゃくが飛来する。箸で掴もうとするものの、つるりと滑って顔面に良い音を立ててぶち当たった。
     燃えながらも、軽く目と口の端をピクピクさせながら詰め寄る。牛島の頭を齧りながら憐れみの眼差しを向けていた紫雲が、そのままの目で主人を見つめた。炎が鎮火する。
    「うどんは好きだぜ? ……だが食い物は大切にしな!」
     腹に掌を打ち込み、そこから零距離ご当地ビーム。くの字に体を曲げながら牛島が吹き飛んだ。その先にいるのは説得の心を剣に具現化させている名月。
    「地域によって全く別のうどんになる……その多様性こそが徳島うどん!」
     うどんを広める為にラーメンやおでんを貶めるキミの行為は、すなわち徳島うどんを否定しているも同然!
    「真に徳島うどんを愛しているならば、全てを受け入れられるはずだ!」
     ムーンライトソード・きつね斬り!!
     大きく切り付け、さらに続けざまに朱那が、炎には炎を! とレーヴァテインをぶち込む。
    「どうしてこんな事をするのでしょうか……?」
     機銃掃射をするブランメテオールの座席を蹴り上がり、ソフィは空中で一回転。
    「どちらも徳島の美味しい食べ物じゃないですか!」
     綺麗なフォームで真摯な思いと共にご当地キック。蹴りを受け止めるものの、その鋭さと、言葉の重みに片膝を突く牛島。そこに玲が再び口を出す。
    「アピールするならもっと方法があるでしょう!!
     スダチが特産ならそれとコラボするとか。
    「それこそ、アレだよ! 最近徳島駅周辺で、年に何回かアニメ?のイベントか何かやってるんでしょ!」
     そんな時に屋台を出してアピールする所からはじめないと! ミニうどんとか出せば、他の屋台の食べ物と意外な組み合わせが誕生するかもじゃん!
    「もっと頑張ろうよ!」
    「初めからソレだけ言ってヨ!」
    「それだけなら説得として凄く良かったのにさっきの言葉が台無しだもんね!」
     良いこと言ってるのに周りから色々と非難が飛ぶ。普段の行いによって見られ方が変わる良い例ですね。
    「酷いよ皆!? 私は説得を頑張って戦闘は適当に頑張るから、皆戦闘を頑張ってよ!」
    「有栖と真逆な方向にダメだこいつ!」
     やっぱ台無しだった。
    「ぐっ、確かに一理ある……だがしかし……、ええいここは、うどんを食って落ち着く!」
     頭を抱えて悩む牛島だが、どこからかうどんを取り出して一心不乱にすすり始める。途端、幾人の目の色が変わる。
    「……それとさっきから自分ばかりうどん食べてずるいぞ! 私にもよこすんだ!」
    「だが断る!」
     名月に向かってきっぱりと言い放った牛島の後ろ、ゆらりと、いつの間にか回り込んでいた人影が揺れる。
    「闇堕ちしてでも、うばいとる」
    「な、何をするきさまー!」
     うどんへの想いのあまり瞳孔は血走り、白目は若干黒ずみ、半笑いのまま後ろから思いっきり、腕で首を絞めたミレーヌ。それでも根性でうどんを手放さない牛島の目の前に、導眠符を掲げる。
    「アナタはうどんを食べさせたくなーる食べさせたくなーる……さあ、そのうどんをこっちによこしなさい」
     耳元で囁くことで効果はドン。
    「催眠というか催眠術だよな!?」
    「うどん食えよ!」
     手に持っていたうどんを、虚ろの目のままミレーヌに差し出す牛島。
    「効きました!?」
    「ズルイ!」
     周りから羨望の視線が集まった。凄く美味そうな顔でうどんをすするミレーヌ。目の色もちゃんと元に戻っています。
     と、ミレーヌから牛島が引き剥がされる。
    「投げていいのは投げれられる覚悟のある奴だけだ!」
     そしてそのまま、玲が地獄投げで牛島を投げ飛ばし、名草がデッドブラスターで狙い撃つ。同時に、跳躍していた名月と有栖がそれぞれ腕を異形化させ、影を纏わせて振りかぶった。一歩遅れ地面を蹴る祇翠。
    「私にもうどん! じゃなくて」
     釜揚げナックル!
    「結局、説得と言いつつ殴るのが手っ取り早いんじゃないの」
     トラウナックル!
     振り下ろされた拳に、おのれラーメンめええええええ! とトラウマを刺激されて叫びながら地面に叩き付けられる牛島。
    「丼もの怪人は頭に丼を乗せて食えるってのが通説だろ?」
    「そんな通説あるんですか!?」
     祇翠は足を曲げ、勢いを溜めながら告げる。素直に驚くソフィ。
    「……俺はお前を認めないッ!」
     そして、ご当地キックが牛島に突き刺さり。
    「うどんばんざああああああああああああい!」
     反動に身を任せバク宙し離脱する祇翠の下。盛大に大爆発を起こす牛島だった。
    「お前の敗因はただ一つ……頭にうどんがなかった事だ」
    「それと、食べれなかったことね」
     もうもうと煙が立ち込める中。祇翠と玲が奇妙な決め台詞を呟いていた。

    ●さっさと正気に戻ってあたし達を美味しい店に連れてくとイイんじゃナイかな!
    「と言うことで起きる!」
    「起きてますっ! 美味しいうどんの店を紹介するんで許してください!」
     駅前で、灼滅者に囲まれて正座させられている牛島。盛大に爆発したけど無事でした。名月が一生懸命、クリーニングで皆のラーメンの油汚れ等を落としている。
    「徳島のうどん屋さんって系列が色々あるんだって? どこがおすすめなのか、教えてくれるとうれしいな」
    「白糸が如き輝きと強靭なこしを所望させて貰うぜ」
     名草と祇翠の言葉に顔を上げる牛島。うどん食べてもらえるんですか!? と目が言っている。
    「そりゃもちろん! 俺お勧めの店があるんでそこ行きましょうよ!」
    「さっきのうどんより美味しい?」
    「不味かったら承知しないわよ」
    「美味しいうどん屋教えてねー」
     詰め寄る女性陣。美味しいですよ! 具体的にどう美味しいかと言うと、そこの店はですねー。と事細かく、その店のうどんを説明し始める牛島。
    「そうなのですか、別の場所で食べたのとはまた違うのですね……」
     牛島の説明を受けて感心するソフィ。そして一行は歩き出す。
    (……でもラーメンもちょっと食べてみたいような、気になります)
     その最後尾を歩きながら、そっと、そんなことを思うソフィだった。

    作者:柿茸 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 7
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