臨海学校~サマースケート! サマーボウル!

    作者:西宮チヒロ

    ●dringend
    「んー……夏だからこそ、このひんやり感がたまらないー……」
    「遥、スケート上手いねぇ。やってたの?」
    「うん、小さい頃ちょっと──」
     言いかけて途切れる声。瞠目したまま前へと倒れる友人に、夏帆は言葉を失い後ずさる。
    「はりきってえええええええ、ころしたああああああい!!」
    「いやっ……何!? きゃ……!」
     血塗れのナイフを持った青年から逃れようと踏み出すも、唯でさえ足場の悪いスケートリンクに不慣れな靴も重なり──逃げ遅れた少女をも手に掛けた男は、次の獲物へと視線を向けた。
     
    ●gaiement
    「──事件を起こすのは、眷属や強化一般人、ましてやダークネスではなく……ただの一般人です」
     事の概要を語り終えると、小桜・エマ(中学生エクスブレイン・dn0080)はそう、言葉を添える。
     夏休みに実施を予定していた臨海学校。
     その候補地のひとつであった九州で大規模な事件が発生することが判明したのは、つい先ほど。とは言え、相手は普通の一般人。灼滅者なら解決もそう難しくはない。
    「ただ……この事件の裏には、組織的なダークネスの陰謀があるようなんです」
     敵組織の目的までは解らない。けれど、無差別連続大量殺人なぞ、あってはならない。

     くだんの一般人は、謎のカードに操られて事件を起こすらしい。
     故に、事件が起こる前に何らかの方法で彼を捕まえ、カードを取り上げる。そうすれば直前までの記憶を失い気絶するから、後は休憩所あたりに運んで立ち去れば良いだろう。
     応酬したカードの分析や敵組織の狙いの調査は、その場ですぐに解るものでもないため、学園に戻ってからだ。

     これが彼の外見です、とエマが見せた写真には、冴えない気の弱そうな青年が映っていた。
    「本来の性格も見た目通りみたいなので……EPSを上手く使えば、即解決もできそうかもです」
     刃物を持って彷徨いている人物は、誰が見たって異様なもの。
     それに、そもそも現地レジャー施設自体が危険物の持ち込みを禁止している。予めスケートリンク上や周囲に張り込み、刃物を出してリンクに現れたところを、さくっと威圧でもして捕まえれば良いだろう。禁止されていることを咎めようとしているのだから、誰も非難する者もいはしない。
    「あっ、それと。今回の依頼は、臨海学校と同時に行われるんです」
     現地のレジャー施設は、西日本最大級のスケートリンクの他、ボーリング場も備えている。事件解決後は、ひんやりと涼みながらスケートを楽しむのも良し。ボウリングでハイスコアを狙ったり、仲間と得点を競い合ったりするのも面白そうだ。
    「ふふ、楽しみです」
     事件解決のお手伝いはできないけれど、とびきりのアイス珈琲を持って待ってますから。
     そう密やかに胸を弾ませると、少女はミルクティ色の髪を揺らしてふわりと笑った。


    参加者
    鳳凰院・那波(朧月姫・d00379)
    神薙・弥影(月喰み・d00714)
    宇佐・兎織(リトルウィッチ・d01632)
    レニー・アステリオス(星の珀翼・d01856)
    紫堂・紗(ドロップ・フィッシュ・d02607)
    領史・洵哉(一陽来復・d02690)
    笙野・響(青闇薄刃・d05985)
    ルコ・アルカーク(錯綜エゴイスト・d11729)

    ■リプレイ


    「涼しくて気持ち良いわねっ」
    「本当じゃな」
     透いた銀盤を前に、笙野・響(青闇薄刃・d05985)と鳳凰院・那波(朧月姫・d00379)が声を弾ませた。茹だるような日差しを忘れさせるほどに、ここはひんやりと心地良い。
    「夏真っ盛りにスケートを楽しめるなんてびっくりだよ。リンクも広いし、すごいや」
     感嘆を洩らすレニー・アステリオス(星の珀翼・d01856)の隣で、紫堂・紗(ドロップ・フィッシュ・d02607)も海色の瞳を煌めかせる。
    「スケート、スケート! ……じゃなくて、事件だねうんうん」
    「早く遊ぶためにも、まずは血迷った青年を正気に戻さないとね」
     微笑むレニーに、頑張るよう、と紗も拳をぐっ。腕の中のナノナノ・ヴァニラが円らな瞳で見上げて雫型のピアスを揺らせば、紗ちゃんとお揃いの可愛いですね、と小桜・エマ(中学生エクスブレイン・dn0080)もこそっと微笑んだ。
    「まだのようですね」
     領史・洵哉(一陽来復・d02690)が視線を巡らせるも、開店直後だからだろう、それらしき男の影はなかった。行く先々で事件が起きるのもフラグを立てすぎたせい、なんて。冗談めいて洵哉が苦笑を見せれば、仲間たちにも笑いが広がる。
    「それにしても、夏休みまでダークネスさんは忙しそうですねえ」
    「全くね……普通の一般人を使ってなにをしようとしてるのかしら?」
     涼やかに目許を細めるルコ・アルカーク(錯綜エゴイスト・d11729)に、響も声を潜ませ疑問を零す。
     敵の目的、謎のカード、スレイヤーカードとの関係性──尽きぬ疑問を抱く響へ、那波はひとつ頷き笑みを見せた。
    「いずれにせよ、まずは止めねばな」
    「「あ」」
     出入口を見張っていた神薙・弥影(月喰み・d00714)と宇佐・兎織(リトルウィッチ・d01632)の声が重なった。反射的に皆も視線を追う。
     辺りを見渡しながら入ってきた男。
     黒髪短髪。冴えない目許。気の弱そうな風体──。
    「えーと……あの人? 刃物持ってるし」
     零した紗を囲んで、一斉にその手元の写真と見比べる。間違いない。
     那波の金の双眸に己の信が映る。互いに見合って頷くと、皆、弾かれたように飛び出した。サウンドシャッターを展開する弥影の傍らを、うさ耳フードを靡かせながら兎織が跳ねるように駆け抜ける。
    「デュエルしようぜ! なのです」
    「うわああああああっっっ!!!!」
     ずびし!
     突然飛び出して来た小学生に懐から何かを取り出され、青年は驚きのあまりもんどり打った。那波としては過度の刺激は控えようと思っていたが、些細なことでも過剰に反応する臆病な質らしい。
    「弱……」
     思わず半眼で呟くルコ。その声を聞く余裕もないまま、男は両手に握りしめた真新しいナイフを兎織へと向ける。
    「おおおおおおお前がチャカでも俺にはこれが……!」
    「それ、ただのゲームカードですよ」
    「へ?」
     兎織が突き出しているカードと、洵哉。双方へともう一度視線を巡らせた男は、再び口端をつり上げ爛々とした双眸を見開くと、
    「ふざけやがってええええええええええええ殺してや」
    「君、何を持ってるんだい?」
    「え」
     レニーがずい、と前に出て、
    「それナイフよね? 銃刀法違反よ」
    「ちょ」
     並ぶ弥影からは指摘を受け、
    「公共の場に刃物持って来ちゃ危ないよう!」
    「待っ」
     あげく、年の離れた紗からも至極真っ当な言葉を向けられたじろいだその瞬間。
     ──男の思考は、眩くも清らかな光に包まれた。

    「本当に申し訳ございませんでしたあぁぁ……」
     レニーと弥影の放った改心の光によって悩める善人となった青年は、ナイフを手渡すと慌てて土下座した。デュエルしようぜ──思わずカードを取り出しちゃう魔法の言葉──でもカードを見せない男に、
    「とにかく! 早くカードを出すんだよー」
     兎織が直球で迫れば、那波も凛とした声音で続く。
    「お主には無用の物じゃ。素直にわたしてくれんかの?」
    「カード……?」
    「そう、懐にある黒いカードです。……知らないとは言わせませんよ?」
    「ひぃっ」
     ルコさんが微笑みます微笑んでいますが目が笑ってません完全に脅しです。
     怯えた青年は咄嗟に上着の内ポケットを探り、指先に触れたカードをルコへとぷるぷると震える指で差し出した。
    「そのカード、どこで手に入れたの?」
    「誰にもらったか、なぜもらったか、話してくれるかしら?」
     弥影と響の問い掛けに、レニーが更に細やかな質問を加えるも、男の答えは不明瞭なものばかり。
    「良く覚えていない、と。……本当ですね?」
    「ほっ、本当です赦して下さいいいいい!!!」
     再びルコの笑顔を受けて怯える青年は、押しつけるようにカードを渡すと一目散にその場から逃げ出した。灼滅者でも目を見張るほどの、それはそれは見事な逃げ足だった。
    「行っちゃったわ……」
    「せっかく来たんだから遊んで行けば良かったのに」
     ひとつ瞳を瞬かせて、響とレニーが残されたカードへと視線を落とす。
     疑いようもなく、はっきりくっきりと記された『HKT六六六』の文字。
    「……結構自己主張激しいですね」
    「ですね」
     一瞥したルコから受け取ると、洵哉は苦笑交じりに懐へとしまった。


    「皆さん、お疲れ様でした!」
     他の皆と一緒に待機していたエマは、戻ってきた灼滅者たちを笑顔と手製のアイス珈琲で出迎えた。レニーが用意した鞄へとカードを厳重にしまったら、待ちに待った臨海学校の始まりだ。
    「……昔、幼馴染みでボールを後ろに飛ばしてきた奴がいてな」
     誰のことかはさておいて。見かけた織兎も誘って、都璃とエマはボール選び。
    「確かに、するって抜けちゃうかも」
    「だろう? 折角綺麗にしている爪も痛めてしまうぞ」
    「爪……」
     都璃の言葉にちいさく見開かれる瞳。微かに浮かんだ憂いは瞬きと共に笑顔に変えて、ありがとうとふわり笑う。
     小気味よい音を響かせて、画面に踊るストライクの文字。ベンチへ戻ってくる織兎に拍手を送れば、次はエマが立ち上がる。
    「真ん中の目印向かって投げるといいらしいよ~」
    「レーンの三角模様を通過させるつもりで、腕をまっすぐに振るんだ」
     頷いて慎重に転がしたボールは、吸い込まれるようにレーンを転がり──ひときわ良い音。
    「エマ、ストライクだ……!」
    「おお~エマちゃんやったなー!」
    「ありがとうございます! おふたりのお陰です……!」
     笑顔で3人、ハイタッチ!
     お疲れ様の労いには笑顔交わして、いざジュースを賭けたボウリング勝負!
     コースは逸れるも勢い上々に数本倒せば、なかなか上手くいきませんねえ、と貴明も苦笑い。
    「俺、こう見えてスポーツは得意なんス!」
     ようは玉投げ、負けるつもりはない、と意気込むルコの一投。
     そいやっさー!
     ぶぅん!
     どごん!
     ごろごろ……ガコン。ごろろろろ……。
    「ガターですね」
    「きりっとした顔で言うな」
     友達と遊びに行くなんて以前は数えるほど。だから余計に嬉しくてけたけたと笑う勇貴に、つられて増えるふたつの笑顔。
    「るーこ先輩! お疲れやっふうういい!!!」
     かっこーん!!
     一人遊びマイスターには馴れ合い無用! と隣の独占レーンで見事なストライクを決めた絢矢はドヤ顔でサムズアップ。
     そう、決して構ってほしいわけじゃ──。
    「ンン? あややもしかしてぼっち? ぼっちなの?」
    「……ルコ先輩構って構って構って構って構って!!」
     じたばたと全身で突撃してくる絢矢に、ルコもくすり。
     一投、一投。
     競って笑って。
     結果、奢ることになっても──皆の笑顔が見られる幸せに、貴明はもうひとつ笑みを重ねた。
    「今日は誘ってくれて有難うね、旭おにーさん!」
     デートに誘ったつもりだけれど、きっと気づいていないのだろう。初めてのスケートが楽しみだと笑うアキラに、そろそろお兄さん卒業してえ、と旭は心で項垂れる。
     滑る人たちを眺めて、何となくできそうな気もして踏み出した一歩。
    「運動神経は結構あるから簡単に……ってうわぁっ!?」
     銀盤に足を乗せた途端、盛大に尻餅をついたアキラに、思わずくすり。
    「ほら、大丈夫かアキラ」
    「うん」
     差し伸ばした掌に重なるぬくもり。触れた指先に、旭はきゅっと力を込める。
     各々の服に薄手のジャケットとフィギュア用の靴を合せると、桔平と花梨菜は氷上へと滑り出した。
     長野では冬はいつも滑っていたという少年の、その見事なスピンに思わず見惚れれば、
    「かりなちゃん、スケートはじめてさん?」
    「あっ、はい……実は……」
     引け腰のまま答えた両の手を、ふわりと桔平の掌が包んだ。優しく紡がれるアドバイス。向かい合って滑る様はまるでダンスのよう。
    「あっ……!」
    「だいじょぶ……?」
    「ありがとう、ございます……」
     崩れかけた身体を抱き留める腕。向けられる愛おしい笑顔に、花梨菜は頬染めながら微笑んだ。
     今日の誘いに感謝しながら、ラインは洵哉の手を遠慮がちに取った。触れた指先から、この高鳴る鼓動までも伝わってしまいそう。
     ゆっくりと滑りながら、怖い思いをしていないかと仰ぎ見れば、ふと交わる視線と柔らかな笑顔に、一層胸が大きく跳ねる。
    「グリュック王国で闇堕ちしていた時は、心配をかけてしまって済みませんでした」
     憂いを帯びた声。こうやって戻れてとても嬉しいと添えられた気持ちも、この時間が楽しいと思う心も、ラインもまた、同じだから。
    「迷惑でなければ、その……また、どこかへ」
     あなたと、一緒に。


    「あわわわ……。な、なんかふらふらなのです……」
    「兎織ちゃん、そのまま、そのまま……」
     正面で見守るエマの隣からは、レニーの細やかな助言。
    「レニーさん」
    「ん?」
    「……そういえば滑り方が判らないんだっ……わっ」
    「弥影っ……!」
     踏み出した途端につるん。慌てて手を差し出したエマとレニーに支えられて立ち上がるも、
    「きゃっ……!」
     再びつるん。
    「レクチャーをお願いできないかな……」
     恥ずかしいなんて言ってられない。一から特訓だ。
     転んで立って、おっかなびっくり進むようになってくれば、気になるのは華麗に滑る人たち。よーしボクもー! と試してスピードを上げてみれば、
    「みぎゃー!?」
     すってん。
     見事に転んでしょげる兎織の手を取って、ゆっくり滑って向かった先。リンク沿いのベンチでエマのアイス珈琲と兎織のクッキーをお伴に一息つけば、那波と響も合流する。
    「調子はどう?」
    「私はそれなりに。刃物の扱いには慣れてるから、ねー♪」
    「ふふっ……ウィンタースポーツはあまり得意じゃないんじゃ……」
     レニーからの問い掛けに澄んだ声で答える響と、苦笑めく那波。慌ててついていこうとして転びそうになったのは、何回あっただろう。
     ごちそうさまでした、なんて。その度にフォローしていた響は笑顔で手を合せると、
    「今度はリンクを流してみない?」
     再び那波の手を取って。見合ったふたりは笑顔を交わす。
     リンクとベンチ。クラスメイトの砌と桐が振る手へ応えるように小さく振り返し、一息ついた紅緋はエマを誘って氷上へ。滑って転んで。ようやく解ってきた、滑るという感覚。
    「Vの字でペンギンさんみたいに歩いてみるといいよー」
     砌の言葉にふたり頷き、桐の手も借りてゆっくりと進むも、
    「あっ……!」
    「っとと、大丈夫? 立てるかな?」
     たまにはちゃんと男の子らしいところも。しっかり支えた砌と見合って、思わず零れる笑顔たち。
     慣れた頃合いに4人で躍り出た銀盤の上。手を繋ぎ、スピードに乗る砌と桐はまるで踊っているかのよう。
    「さすが桐ちゃん」
    「東京に来る前はよく滑っていたからね!」
     それでも、こんなに広いところは初めてで。何だか不思議と張り切ってしまう。
    「──って、あ。有貞! ……あれ?」
     手を振るも、気づかなかったかな、と小首を傾げる桐の視線の先。
    「どうかした?」
    「いや……」
     クラスメイトにアホなことやってると知られないよう、こっそりひっそり気味の有貞の合図で始まる、スケートリンク1周勝負!
     お互い初スケートなのに飄々と滑るヒョコの姿。可愛げのねえ奴。内心驚きながらも有貞は負けじとスピードを上げ、
    「って、大統領そのコースはねえよ」
    「ズルではない。これは戦いだから」
     ギリギリアウトなインコースを走るヒョコに、ならばと前に出てコース妨害。繰り広げられる死闘の結果──、
    「しばらく俺のことはボスって呼べよ? まじ旨いわー……っていてててて」
     勝者の笑みの有貞の頬を、無言半眼のヒョコがくいっと抓りあげた。
    「1人じゃやっぱ限界だよう。桐人さん手ー貸して!」
     紗だけではなく、初対面の桐人にも慣れてきたのか、必死に羽をぱたぱたさせお願いするヴァニラの前では、女性が苦手とて断れはしない。
     硬直、無言な桐人の心中を知らぬまま、頑張って慣れてきた頃合いにヴァニラへ笑顔を向けた瞬間、
    「……大丈夫か」
    「ありがとうっ、私は大丈夫!」
    「……っ!」
    (近い、距離が近い……っ!)
     崩れた体制を咄嗟に支えたものの、心配げに覗き込む瞳は至近距離。
    「……ってヴァニラ大丈夫!?」
     間に挟まりつつも、ぱちりと目を開けたヴァニラを紗がぎゅ。──赤面したまま硬直する桐人が元に戻るのは、もう少し先のこと。
     幼少時に置いてきた感覚。転びかけた所を咄嗟に支えた悟の手を借り感覚を取り戻すと、想希はエマをリフトへ誘う。
    「大丈夫です。最初は悟くんで練習を……って、重!」
    「重いってなんや!」
     むくれながらも、こうやろ! とひょいと想希を持ち上げる悟。若さの差やで! なんて笑顔を向けられたら、複雑だけれど笑みを反してしまう。
    「お手をどうぞや、お嬢さん」
    「ありがとうございます……いきますっ」
     滑り出し、勢いついた頃に繋いだ悟の手が離れて想希の許へ。
     ふわりと浮く感覚。驚きと高揚感に思わず笑み零すエマをエスコートし終えたら、今度は悟にバトンタッチ。
    「俺? 想先輩より上手いで!」
    (想先輩、『食うて』へんな)
     軽すぎや。──浮かんだ言葉を胸にしまい、悟はいつもの笑顔を見せた。
     手を繋げばバランスが良くなるみたい。けれどそれ以上に、一緒に滑りたい。
     ふらふらと滑っていた香乃果からの誘いに、エマも笑顔で手を取って。
     手袋の上からでも伝わるぬくもり。隣に支え合える人がいれば大丈夫。それはいつだって言えること。
     笑顔の花綻ばせれば、視線の先、エマの名を呼ぶ周の姿。
     滑れない周はエマにも意外だったけれど、ファイアブラッドには流血沙汰は大惨事。それでも恐れず加速して。転びかける度ふたりでわたわたするのも、高校最後の臨海学校の良い想い出だ。
     来年もまた、変な事件がセットになりそうだけど。
    「まあ仲間が助けるだろ! アタシも助けるがな!」

     みんながいるから。
     だから、私も此処にいる。

     今日溢れた笑顔に、感謝を重ねて。
     エクスブレインの少女は、そっと柔らかに微笑んだ。

    作者:西宮チヒロ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 6
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