臨海学校~HaKaTa灼滅衆

    作者:柿茸

    ●海水浴
     夏だ! 海だ! 水着だ! 人ごみだ!
    「危ないですので砂浜は走り回らないでくださーい」
    「やっだー、もう冷たーい!」
    「ビール1つ」
    「ママァあぁぁぁ!砂山崩れたぁぁぁぁあ!!」
    「そぉい!!」
    「あぢー……」
    「おっちゃん! 焼そば1つ追加!」
    「ライフセーバーさん助けて! お父さんが酔いつぶれて起きないの!」
    「寝かしてあげて!」
     ……まぁ、真夏真昼の人だらけの海水浴場なんてこんなものですよね。
     
    ●そしてここは海水浴場傍の路上
     それから時刻は進み午後3時をまわったあたりのこと。引き上げる客も出始めて徐々に砂が見える面積が広がってくるころに、突如として、奇声が上がった。
    「張り切って、殺し、たい!」
     H! T! K!! H! T! K!!
     言葉だけ聞けば一体お前は何を言っているんだという状態だが、声を聞いていざ後ろを振り向けば、そこには血に塗れたナイフを振り回し、誰彼かまわず切り裂きながら突き進む男の姿。
     体中に返り血を浴び、瞳孔を完全に開かせながら突き進むその光景に、民衆がパニックに陥るのに数秒とかからなかった。
     警察が到着するにも人並みに押されて近づけない。そも、警察と言えどもどうにかなるものなのだろうか。
     その間にも被害は広がり、辺りに血飛沫が舞い散る。
     その中心でナイフを振り回し返り血を浴び続ける男の首には、『HKT六六六』と書かれたカードがぶら下げられていた。
     
    ●教室
    「もうすぐ臨海学校だね」
    「で、それとワシらが呼び出されたことは何か関係あるんかの?」
    「うん」
     冷麺を啜る田中・翔(普通のエクスブレイン・dn0109)。その隣の机に腰かける竜蜜・柑太(蜜柑と龍のご当地ヒーロー・dn0114)の問いに頷き、冷麺のカップを置いて集まった一同を見渡した。
    「臨海学校の候補地、いくつかあったんだけど。まぁ、その候補地の1つだった九州で大規模な事件が発生することが分かってね」
     今年の臨海学校は福岡の博多で決まりだって。
    「大規模? こないだ戦争があったばかりじゃろ?」
    「大規模と言っても、事件を起こすのは一般人」
    「一般人?」
    「そう、一般人」
     オウム返しに聞き返した柑太に対して、翔は自分自身を指さしながらさらにオウム返しで答える。
     つまり、大規模な事件を起こすのは本当に『普通の一般人』達なのだ。強化一般人でもなんでもない。
     そして、それが故に、ただの一般人達が何故か無差別連続大量殺人を起こすという。組織的な、おそらくはダークネスであろう、何かの陰謀は感じられる。
    「その組織があったとして、目的は分からないんだけれども」
    「無差別大量殺人は止めんといけんのぉ」
     その殺人を犯す一般人であるが、何かカードのようなものを所持しており、それに操られているようだ。凶行を止め、カードを取り上げれば直前までの記憶を失って気絶するところまでは視えている。
    「そうそう、それとね。やっぱり操られていると言っても、強化もされていないただの一般人だから」
     一般人にしか効果がないESPの効果はばっちり受けるみたい。
    「使い方によっては戦闘にすらならないかもね」
     そして麺を一口。
    「事件が起こる場所なんだけれども」
     博多湾周辺にある、海水浴場傍の路上。人が多い真っ只中で、急に暴れ出すみたい。落ちてたカードでも拾ったのかな?
    「まぁ、ちょっとそこまでは分かんなかったけれども。人避けは必要かもね」
     あまり強引なのはダメだけど、多少なら……ほら、雰囲気出すとかで人を遠ざける程度なら、人命が失われるよりは随分ましだからさ。
    「うん、まぁ。すんなりと近づきやすくする工夫はしたほうがいいかも」
     カードそのものの分析や、後ろに組織があったとして、その狙いの調査については皆が戻ってきてから行うことになる。流石に、現場ですぐに調べられるようなものではない。
    「だから、止めた後は臨海学校楽しんできてね」
     海水浴場傍だし。夕方近いけど泳いで来たらどうかな。
    「海じゃな! 久しぶりでワシわくわくしとるんじゃ!」
     柑太が勢いよく立ち上がった。そしてふと疑問を頭に浮かべる。
    「翔はどうするんじゃ?」
    「街中で美味しい物食べ歩きしようかなって」
     皆、海楽しんできてね。そう言って、再び冷麺を啜る翔だった。


    参加者
    外道院・悲鳴(千紅万紫・d00007)
    森本・煉夜(斜光の運び手・d02292)
    ミルフィ・ラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・d03802)
    敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073)
    椎葉・武流(牙の勇者プアファング・d08137)
    星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)
    宮守・優子(はがんばらない・d14114)
    綾河・唯水流(雹嵐の檻・d17780)

    ■リプレイ

    ●H
    「臨海学校とは何だったのか」
     移動中に真顔で呟いていた敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073)。
    「ああもう、めんどくせえのが出たなあ……」
     頭を押さえて人が大量に動いている、海水浴場手前の道を眺める。
    「本当ですよ、せっかくの臨海学校なのに……なんてことしてくれるんだか、まったく……」
     隣でぶつぶつと文句を言う綾河・唯水流(雹嵐の檻・d17780)。じりじりと暑い日差しが一般人の人々や、この場に集まっている灼滅者達の肌を焼き、体中に汗を流させる。
     もう昼はとっくに過ぎているというのにその項垂れるような暑さに眉間をこれでもかと言うほど寄せていたのは外道院・悲鳴(千紅万紫・d00007)。
    「HKT六六六は名前からして、アイドルグループのようなものと思っておりましたが……」
    「HKT六六六……一体どうなってるんすかね?」
     カードで一般人を操るなんて。
     そんなミルフィ・ラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・d03802)、宮守・優子(はがんばらない・d14114)の言葉にも耳を貸さず、ぐぬぬ……と周囲の一般人をも威嚇する勢いで唸っている悲鳴。
    「いつもなら軽井沢の別荘で涼んでおるところじゃのに……。」
     気になった森本・煉夜(斜光の運び手・d02292)がそれとなく耳をそばだててみたら、そんなリッチな言葉が聞こえてきた。実に羨ましい。
    「ったく、さっさとぶっ飛ばして遊ぶぞ!」
    「そうだな、易々と被害を出させるわけにもいかん」
     気を取り直し、雷歌の言葉に同意する。それに言葉を呈したのは、手で日光を遮りながら辺りを見渡していた椎葉・武流(牙の勇者プアファング・d08137)。
    「それにしても人多すぎだろ。プラチナチケットとか使うにしても、この中からどうやって探すんだ?」
    「お任せください」
     ずいっと出てきたのは、こんな暑い日なのに探偵コートを被っている星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)。
    「ナイフ、または首からカードを提げている人を見つければいいだけの話ですね。捜索は探偵の仕事、ちょちょいと見つけてみせますよ」
    「凄くフラグっぽい台詞っす」
    「まずは予想をつけましょう。HKTカードを持ってる人は……大体あの辺りにいますね!」
     探偵の勘が告げています! ととある一点を指差す綾。灼滅者全員の視線が一斉にそこを向き、そして唯水流が直ぐに呆れ顔で綾へと顔を戻す。
    「いや、それアテにならないような」
    「ま、ちょっと行ってくるっすよ。なんにせよ探さなきゃいけないっすしね」
    「とりあえずは探偵の勘を頼ってみるか」
     優子と煉夜が旅人の外套を使用して人混みの中に潜った、直後。
     H! K! T!! H! K! T!!
     そんな奇声が綾の指が示す方向からあがった。
    「本当に当たった!?」
    「これが探偵の実力です」
    「ドヤ顔してないでさっさと行くぞ!!」
     そして灼滅者達は走り出した。

    ●K
     でかい黒柴が人の足をすり抜けて走る。プラチナチケットを用いてライフセーバー、およびその関係者として行動する他の者達を置き去りに、先に人混みに潜っていた旅人の外套使用組をも抜き去って、一直線に声の元に。
     上げた視線の先、振り上げられたナイフが太陽の光を反射した。
    「ヴァフッ!!」
     気合を込めた吠え声、黒柴(大型犬)がじゃれつくように、ナイフの持ち主の腹にダイブ。
     その一撃に身体をくの字に曲げた男の足に優子の足が引っかけられる。仰向けにひっくり返る男の後頭部に、煉夜の膝が直撃した。衝撃で手からナイフが零れ落ちる。
    「お帰りなさいませ、ご主人様♪お荷物と、そちらのカードをお預かり致します……わ!」
     さらにそこに追い付いたプラチナチケット組。すかさずミルフィが当て身を当てる。衝撃に、首から下げたカードが大きく揺れた。
    「ごふぅ!」
     奇声を上げながらもまだ意識は飛んでないらしく、痙攣しながらも身動ぎしようとする。
     そこに、唯水流の追撃の拳が鳩尾に突き刺さって男はついにガクリと項垂れた。
    「大丈夫ですか?」
     そしてしれっと声をかける唯水流さんマジ腹黒い。

    ●T
    「お、おい、大丈夫か?」
     明らかなオーバーキルに武流が本気で心配しながら声をかけたが、気絶してるしもちろん返事はない。隣にいる黒柴も呆れ目で、犬なのに顔に汗を垂らしているように見える。
    「お主か、ここで騒ぎを起こそうとしておるのは……ってもう終わっておる!?」
     そこに一歩遅れて追いついた悲鳴さんでした。
    「はいはい、皆さん離れてくださいねー。今チェック中ですけど多分熱中症の方です」
     綾がざわつく辺りの一般人を、ライフセーバー然として落ち着けていく。ついでに男を運び出しやすいように道を開けさせた。
     運び出す時にナイフとカードを取り上げて、そのまま海水浴場の救護室へと運ぶ灼滅者達。
    「これが人を狂わせたカード……しっかり保管しないと」
     唯水流はまじまじと、取り上げた『HKT六六六』と見ている。他の灼滅者も、なんでしょうねそれ、ただのカードのようにも見えるけど、などとカードを見ながら色々感想を言っている。
     一方、犬変身を解いて戻ってきた雷歌の目に飛び込んできたのは、気絶した男の頬を力なく往復ビンタしていた悲鳴の姿。
    「……何やってんだ?」
    「ムカついておるでの、多少の気晴らしにはなるかと思うて」
     ぱしーんぱしーん。
    「……苦悶の表情で気絶しておったから、魂鎮めの風も使うたのじゃが」
    「叩かれて幸せ、みたいな顔になってるっすね」
    「なるほど、犯人はマゾですね」
     雷歌の後ろから顔を出した優子と綾。カードから目を離して、違えし! と武流が突っ込んでいた。
    「……ま、あれだな」
     半端な覚悟で。
     勝てるほど。
     てめえは強かねえ。
    「ってことだ。災難だったな?」
    「HTK、で上手いこと言ったって感じですわね」
    「ドヤ顔ならさらに倍率ドンだったんですが」
     そっぽを向いた雷歌だった。

    ●海水浴!
    「もう耐えられん! 妾は宿に帰るのじゃ!」
     悲鳴がそう告げて、止める間もなく宿に帰ってしまった後。
    「竜蜜せんぱーい! スイカ割りするっすよー!」
    「竜蜜ー! 戻ってこいスイカ割りするぞー!」
     優子と雷歌が海で元気に泳ぎ回っている竜蜜・柑太(蜜柑と龍のご当地ヒーロー・dn0114)に声をかける。その後ろではスイカ割りの準備をしている面々。
    「よし、ビニールシートとスイカはありますね」
    「調味料も万全です」
    「それじゃ後は割る物……」
    「目隠し用の布と……割る物、というと日本刀っす?」
    「なんでだよ!!」
     首をかしげた優子に入るツッコミ。見ると海の家から雷歌と煉夜が戻ってきていた。その手には人数分の焼きそば。それと煉夜の手には丸ごとのイカ焼き。
    「何か焼きそば、色が全部違いますね……」
    「ああ、なんか店主がやたらと焼きそばにこだわっていてな、色んな味の焼きそばを売ってた」
     唯水流の疑問。答える煉夜。綾の目が探偵色に光る。
    「ふむ、ラーメンとかうどんとか、麺類にうるさそうな店主なんでしょうね」
     海の家の方から、俺は焼きそば派だー、と言う声が聞こえた気がした。聞こえたと思うけど大体の人は気のせいにした。
    「ま、とりあえずはスイカ割りの前に、これで腹ごしらえしようぜ」
    「ふー、間に合ったようじゃな。っと、おお、焼きそば! ワシの分も―――」
     そこに竜蜜が戻ってきた。焼きそばに目が行き、その奥に見えた物体に目を移して動きが止まる。頭に疑問符を浮かべながら振り返った雷歌の目に、砂浜に突き刺さっている釘バットが目に入った。
    「おい誰だ釘バット持ってきたの!?」
    「割る物といえば釘バットですよね♪」
     嬉しそうに手を上げる唯水流の姿があった。

     ―――しばらくの間、宿に戻って涼をとりつつお茶を楽しんでいる悲鳴さんの姿をお楽しみください―――

    「あー、それじゃ、気を取り直して、だ。一番手やりたい奴」
     釘バットを没収して仕切りなおす雷歌さんマジ班長。雷歌の視界の端、若干高い位置から上がる手。
     オヤジこと、迷彩服に身を包んだビハインドの紫電だった。いい年して凄くわくわくしている表情のオヤジに、煉夜が棒と目隠し用の布を手渡す。
    「……」
     あれ? ビハインドって普段から目隠ししてね?
    「そして普段これで普通に戦っているんだがこれは」
    「目隠し……意味あるんですかね?」
     ……。
     無言で棒と布を奪い取る雷歌。
    「オヤジ、見学な」
     そして告げられた言葉に、本気でショックを受けて地面に両手をついて項垂れる紫電は置いといて。手を上げていた唯流水に回収した棒と布を渡す。
    「よし、行きますよっ」
     気合を込めて目隠しを。煉夜が棒を持たせ、ぐるぐると回転させて。
    「おー、右だみぎー。しかし焼きそば美味いな」
    「いや、左っすよー。イカ焼きも美味しいっすね」
    「いきなりアドバイスが真っ二つなんですけど!? というか食べてる!?」
     ダメだ、アテにならない……! ここは集中して……スイカの気配を読み取って……。
    「お、近づいてるっすね、あ、もうちょっと右っす」
    「いい感じですね、そのまま後3歩ほど」
     その時、唯水流が豆電球的に閃く。ここだ、と。
    「てやぁぁぁぁ!!」
     振り下ろした棒に確かな手ごたえ。周りから上がる歓声。目隠しを外してみたら、見事に割れたスイカが視界に飛び込んできた。
    「……よしっ」
    「流石だな」
     後ろから聞こえた煉夜の声に振り向けば、そこには軽く笑うマンボウがいて。
    「えっ」
     マンボウ?
    「ん? どうした不思議そうな目で見て、俺は最初からこの格好だっただろう?」
     ぶるんっ、とマンボウの着ぐるみのヒレを震わせながら真顔で煉夜が告げる。
     戸惑って周りを見ても、ニヤニヤ笑いながら、夢でも見てたんすか? と言う優子。セーラー帽を目深に被って表情を見せないままパイプでボールを浮かす綾。あえて見ないように項垂れている紫電に顔を向けて元気出せってと声をかけている雷歌。焼きそばに夢中の柑太。
    「えっ」
     ま、マンボウだったかな、うん、マンボウだったってことにしておこう!
     一人無理矢理納得する唯流水から布を返してもらい、煉夜が次に渡したのは綾。セーラー帽を押し上げて、ふっふっふと不敵な笑みを浮かべる。
    「探偵の探偵力の前では、目隠しなど無意味。ビシッと割ってご覧に入れましょう!」
     ドヤァ。ぷーっ、と高く浮き上がるボール。
    「そういや、いつもの探偵コートは着てないっすね」
    「え、だってコートとか暑いじゃないですか」
     優子とそんな会話をしながらも目隠しをして、大人しく回される。
    「張り切ってどうぞー♪」
     唯水流の言葉をスタートとして、綾は進む。周りの声など気にせず、一直線に。
    「私の推理が正しければ……」
    「ハフハフ、ずずっ……ん? 何じゃ?」
     焼きそばを啜っていた柑太が、自分に落ちた影に顔を上げる。そこで、雷歌が綾の手に収まっているものに気が付いて立ち上がる。
    「スイカはここです!」
     柑太の脳天目掛けて、釘バットが振り下ろされた。

     ―――しばらくの間、目隠しをして棒をばっさりと振り下ろすマンボウの着ぐるみの姿をご堪能ください―――

     砂浜に、砂塵が舞う。それを突き破り、黒い円柱状の刀身を逆手に構えた武流が飛び出して来た。
     対するメイニーヒルトは素早く後ろに下がる。数ミリ手前の空間を、回転する武流に従いしなりながら流れていく剣を見つつ、同じくしなる、黒い刀身を手に添え、居合の如く抜き放つ。
     着地点を予想して放たれた黒い剣筋。着地した武流は、だがしかし、着地の勢いそのままに両手足が付くほどに、砂浜に埋まるように屈みこむ。頭上を通過し、返される剣。
     地面からせり上がる剣とぶつかりあう。打点がずれ受け流しの形となり、互いに空中に、そして地面に突き刺さる。
     瞬間、互いに素早く身を引く2人、再びの砂塵が辺りを覆う。
    「ところであいつら何やってんだ?」
    「スポーツチャンバラ、って言ってたっすね」
    「私の知ってるスポーツチャンバラと違うんですけど」
     そんな言葉も砂の向こう側。メイニーヒルトが、来る、と直感し、手を鞘に、居合の構えをとった。
     直後、今度は地を駆けて武流が砂の壁を破ってきた。砂の残りをたなびかせながら大きく一歩踏み込み、身体を大きく回転させる。
     抜き放たれる剣、回転の勢いのままに薙ぎ払われる剣。太陽が、髪留めを、ネックレスを光らせる。
     互いの刀身が真正面から激突し、そして、大きな音を立てて打点から、真っ二つに破裂した。
     互いの真剣な顔が、破裂し辺りに飛び散るスポーツチャンバラ用の剣の中身の向こうに見える。と、メイニーヒルトの顔が綻んだ。それを見て、武流の顔も笑う。
    「やっぱ、武流は流石だなぁ」
    「そういうメイニーもな。剣……壊れちまったけど」
     そもそも灼滅者の仕合いに耐えれるような作りじゃないですからね!
    「そういえば、向こうでスイカ割りやってるんだよな、スイカ、食べようぜ」
    「スイカか、いいね」
     そして2人は、互いに笑いながらスイカ組の元へ歩いて行った。

     ―――しばらくの間、海の方向で舞い上がる砂に疑問の目を向けている、悲鳴さんの麗しい姿をご覧ください―――

    「お帰りなさい、ミルフィ。無事に、戻ってきて下さったんですね……♪」
     事件も無事に終わったということで、アリスの元に急いでもどったミルフィ。
    「はいっ、何ともなしに無事に終わりまし、きゃぁっ!?」
     言い終わらないうちにアリスに抱き締められる。心配していたのだろう。
     しばらくしてから体を離し、アリスはミルフィのホルターネックビキニ姿を見て、ふふふと微笑む。
    「ミルフィの水着……大胆ですけどとっても素敵ですっ♪」
    「ありがとうございます♪ アリスお嬢様の水着も、とってもお可愛らしいですわ……♪」
     対するアリスの水着姿は、空色基調のフリルチューブトップビキニであった。
     軽く日が傾きかけているとはいえ、人がまばらになりかけた海岸にかわいらしい美少女2人はよく映える。遠くに映る、釘バットがー! とか、馬鹿野郎! とか、メディーック! とか騒いでいる人たちは見えない。
    「それにしても、何だか貸切みたいですね……♪」
    「そうですわね♪ さぁアリスお嬢様、楽しみましょう?」
     そして、こちらは2人でスイカ割りを楽しんだり、海の家の食べ物を堪能したのであった。
     ……こちらはこちらで目隠ししたミルフィがスイカと間違えて、安全地帯まで避難していた柑太の頭を叩き斬りそうになって、アリスが慌てて止めたという事態があったけど!

     やがて海岸もオレンジ色に染まり、宿へと戻ってくる灼滅者達。それをロビーで相変わらず寛いでいた悲鳴が片手を上げて出迎えた。
    「……ところで柑太の姿が見えぬが」
     押し黙る一同。
    「……いやな、事件でしたね」
    「誰のせいだと思ってるんだよ!」
     ちなみにトイレで一足遅れただけでした。

    作者:柿茸 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 9
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