靴司田・蕪郎(靴下は死んでも手放しません・d14752)は、こんな噂を耳にした。
『ストッキング一枚で出歩く男の都市伝説がいる』と……。
都市伝説が確認されたのは、夜の繁華街。
「お前……、見ているな。この俺を!」
「い、いや、見てないっす! ビックリして、視線を逸らしたくらいだし……」
「ま、まさか、俺をチラ見するとは……。この変態がァ!」
「いや、変態はお前だろうがっ! 何だよ、その恰好は! 全裸にストッキング一枚って、格好的にあり得ないだろうが!」
「ふっ……、甘いな。全裸にストッキング一枚の方が……グッと来るだろ?」
「いや、来ねーから。そもそも、どういう意味だよ。グッと来るって。どんな物好きだよ。そこまで変態趣味の奴がいたら、見てみたいくらいだよ」
「やはり、俺を見たかったんじゃないか」
「いや、分からねーから。お前の存在自体、理解不能だよ」
「ならば、教えてやろう。その体に直接、な!」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
という事になり、全裸にストッキング姿の男達が増えているようである。
彼らは心と体に深い傷を負っており、もはや元には戻れない。
「そう思っちまうほど、俺の体は汚れちまったんだよ、ううっ……」
と口走ってしまうほどのダメージ。
それ故に彼らは人を襲う。ひとりでも、多くの人間を仲間にするために……。
しかも、都市伝説はその道のプロ!
気が付いた時には、服を脱がされ、ストッキング姿になっているほどの早業。
最悪の場合は全裸にストッキング姿で醜態をさらす事になるので要注意である。
参加者 | |
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玖珂峰・煉夜(顧みぬ守願の駒刃・d00555) |
葉山・一樹(ナイトシーカー・d02893) |
黒鶫・里桜(おねえちゃんらぶ!・d05408) |
エリ・セブンスター(今だけちょびっとヒーロー・d10366) |
阿久沢・木菟(汚いでござる忍者モドキ・d12081) |
村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・d12998) |
東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925) |
橋本・月姫(中学生魔法使い・d18613) |
●ストッキング・ストリート
……変態。
それは荒んだ街に現れた清涼剤的なモノ。
例え、まわりが認めなくとも、本人がそう思い込んでいる。
それ故に彼らは反省しない。どんなに叱られても、モノともしない。むしろ、興奮する!
それが変態。変態紳士!
「都市伝説も色んなのがいるなぁ。……わざわざこんなものを見つけなくてもいいだろうに。……っていうか見つけた人の名前も、すごく気になるんだけど!? ……ひたすら悪い予感しかしないのは気のせい?」
東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925)は、朝から嫌な予感しかしなかった。
黒猫が横切り。靴紐的なものが切れ。電線にカラスが並んでいる等々。
楽観的に考えても、死亡フラグが立ち過ぎている。
それこそ、ここで迂闊な事を言えば、そのまま鬱ルートに突入しそうなくらい危険な雰囲気が漂っていた。
「それ以前に、意味が解らん、理解不能。何名か暴走気味のようだし、やっぱあれか? 太陽が眩しい的なやつか? もういい、どうでもいい、終わりにする。変態死すべし」
葉山・一樹(ナイトシーカー・d02893)も頭を抱えて、考える事を止めた。
おそらく、ここでマトモに考えたところで、時間の無駄。
気が付いたら、自分達のいた場所が未来のニューヨークだった的な結末が待っているのならまだしも、今回の関しては無人島に漂流したと勝手に思い込み、わずかな食料を奪い合って殺し合いをしていたら、普通に人が住んでいる場所で、しかも半島だった時くらいのションボリ感。
いや、俺達さっきまですげえ殺伐とした状況で殺し合いを続けていたんですけど……。あ、あれ? 探索に行った奴らが帰ってきていないのは、そう言う事だったの? つーか、見慣れたコンビニの袋を持って、今頃帰ってくるなよ、オイ! ……くらいの残念な結末しか待っていない。
「へんたいさんだめ、ぜったい!! きっと、このまま放置したら、おねーちゃんがそーぐーしちゃう可能性があるのよ。そんなのだめ、だめ。ぜ――ったいだめなの! おねーちゃんを守るために、りおはたちあがるのよ」
そう言って黒鶫・里桜(おねえちゃんらぶ!・d05408)が、キリッとした表情を浮かべる。
まだ頭に被らないだけマシなのかも知れないが、それでもこんな使い方は間違っている。
ここで都市伝説を正しておかねば、『これが都会のニュースタイルか』と勘違いされ、密かなブームを巻き起こしてしまうかも知れないのだから……。
「寛子もストッキングは大好きなの。……でも、なんかいろいろ、間違ってるの。……それを正すの!」
村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・d12998)が白いミニのナース服に白いストッキング姿で気合を入れる。
これなら、都市伝説に狙われても怖くない。
「うっ……、もうだめでござる。限界でござる」
そう言って身に着けていた着ぐるみを地面に叩きつけたのは、阿久沢・木菟(汚いでござる忍者モドキ・d12081)。
対都市伝説用の対策を施したつもりであったが、この暑さで着ぐるみの中は蒸れ蒸れ。
しかも、汗を吸い取って重くなっているため、歩いているだけでもストレスが溜まるほどだった。
「何やら、お困りのようだな」
それは都市伝説であった。
いや、全裸にストッキング姿で現れ、都市伝説でなかったら、それこそ困る。
幸い都市伝説の股間は、背後で輝く太陽の光によって見えなくなっているが、ビジュアル的にマズく、想像以上にヤバかった。
「どうみてもただの変態です、本当にありがとうございました。……容赦なく潰そう」
玖珂峰・煉夜(顧みぬ守願の駒刃・d00555)が、キッパリと言い放つ。
この状況で手加減をする必要はない。というよりも、情けをかける必要はない。容赦なく叩き潰して、すべて無かった事にするのが、色々な意味で幸せになれる近道である。
「はぁ……、変態さんが相手とか。……ど、どう付き合っていいのかさっぱりわからないです……か、帰りたい……」
そのためか、橋本・月姫(中学生魔法使い・d18613)は、薄っすらと涙を浮かべて、あたふたとしていた。
本音を言えば帰りたい。家に帰って、すべてが夢だと思いたい。
そんな衝動に襲われつつ、都市伝説から視線を逸らす。
だが、都市伝説は絶妙なアングルになるようにポージングを繰り出し、月姫をどんよりとした世界に誘った。
「こんな危険な都市伝説を野放しにしておくわけにはっ!!」
色々な意味で危機感を覚えつつ、エリ・セブンスター(今だけちょびっとヒーロー・d10366)が都市伝説と対峙する。
気のせいか、準備した着替えごと、服を消し飛ばされそうな予感がした。
もちろん、そんな訳がない。あり得ない。と思いたかったが、そのたび妙なフラグを踏んでいるのか、ピコーンと甲高い音が脳裏に響いた。
●フェチを極めし者
そもそも、ストッキングとは何のために存在するのか?
あの者は語る。それは被るためだと。
またある者を語る。それは愛でるため、おかず的なものに使うため。蒸れてこそ、真の力を発揮すると。
そして、ある者は語る。そもそも、あんな伝線しやすいものを穿く時点で、プレイに挑む覚悟が出来ているのだと。
それを見た者は、きっとこう思うに違いない。
失せろ、変態共と……。
「上半身裸で下にレギンスなあの人のフォロアーみたいな人ですね……に、二番煎じは受けないとおもいま……ひぃ、なんでもありません!」
月姫は恐怖で都市伝説を直視出来なかった。
しかも、脳裏に浮かぶ、あの人の姿。
もしかすると、都市伝説はあの人の守護霊的な存在かも知れない。
例えるなら、傍にいるモノ。立ち向かうモノ。
「確かに……うわっ、無理。これって間違いなく、狙われているわよね。さっきからこっちをチラチラ見ているし」
そんな事を言いつつ、桜花が都市伝説に視線を送ると……目が合った。
一瞬、他人が狙われるよりもいいかと思ったが、だからと言って襲われるつもりは微塵もない。
「つーか、なんできちんと処理をしているんだよ。確かに、そう言う処理をしてこそプロだと思うが、もっと気にする事があるだろうが! だから『どうだ!』とばかりに見せつけてくるなよ! 目に毒だろうが!!」
そう叫んだ後に、煉夜が気づく。
胸元に風が。妙な違和感が。
おいおい、ちょっと待ってくれ。これはどういう意味だ。いや、何となく意味は分かるんだが、さすがにそれはあり得ないだろう、と……。
しかし、胸元があらわになっていた。
これがうら若き乙女であれば、『きゃあ』と悲鳴を上げて、顔を赤らめつつも、胸元を隠している事だろう。
だが、煉夜は違った。
すぐさま、その怒りを拳に込めて、都市伝説をぶん殴ろうと思ったが、そこで気づく。
何故、俺はストッキングを穿いているのだ、と。
しかも、無駄にセクシー系を。
それ以上に困ったのが、似合っていた事だった。
つまり、都市伝説のコーティネートは完璧。これで飯が食えるレベル。
そのため、余計に腹が立った。何だかよく分からないが、悔しかった。
「とっとと消滅させて記憶から消さないと。あれはトラウマものだろ……」
そう言いつつも、一樹が気まずい様子で視線を逸らす。
一瞬でもムラッと来た自分が憎い。
考えてもみろ、あれは男だ。紛れもなく、男だ。なのに、どうして、俺はムラッと来たんだ、こん畜生と思わずにはいられなかった。
おそらく、夏のせいかも知れない。この暑さが頭の中にある大切な何かをショートさせてしまったのだ。きっと、そうだ。そうに違いない。
「……コロス」
その時には口の端から流れていた。
おそらく、最後に残った理性が『そっちに行っちゃ駄目だ。まだ早い』と警告してくれたのだろう。
「まさか、女の子にはしないでしょう? ……しないよね?」
そう言ってエリがゴクリと唾を飲み込んだが、都市伝説は不敵に笑うばかり。
その時、風が桜花の頬を撫でた。
「……えっ? ええ!?」
桜花がその事実に気づいた時には、既に穿いた後。
一瞬、何が起こったのか分からず、戸惑う桜花。
「にゃー!? やめて、ちょ、だめぇっ!? 見るなぁぁ!? 見ちゃだめぇっ!? やだ、そこまでっ!? いやあああああああああああ!」
だが、その事実をすべて理解した時、桜花は悲鳴を上げずにはいられなかった。
「アリ! アリでござる!」
木菟が握り拳で叫ぶ。
マズイ。このままでは何かに目覚めそうでござる。開眼してしまうでござる状態。
「うう、いけない、一歩間違うと清純派アイドルの看板に傷がついちゃうの……」
寛子は色々な意味で身の危険を感じていた。
だが、都市伝説はスルー。どうやら、ストッキングを穿いている相手には、あまり興味がないらしい。そのおかげで最悪の事態は免れたが、ちょっぴり寂しい気分。いやいや、別に期待していたわけではないが、何となくである。
「そういえば『へんたいさんなんかに近寄ったら、だめでしょう?』っておねーちゃんが言ってる気がするけど、おねーちゃんのためなら、りおは、危険もいとわないのよ」
そう言って里桜が都市伝説と対峙する。
だが、都市伝説達が寄ってくる。腰を揺らして寄ってくる。
何故なら、それが都市伝説の使命だから。
どんなにドン引きされても怖いものなどないのだから。
●靴下とは違うのだよ、靴下とは!
あるストッキングフェチは語る。
エアーストッキングや、パウダーストッキングは、ストッキングであって、ストッキングではないと。
そもそも、ムレない、伝線しない、被れないの要素を満たさず、何がストッキングか。いますぐ我々に謝れ、土下座しろ、と。
一時は不買運動にまで発展したようだが、結果は散々。
『お前達こそ、今すぐ消えろ。この世から!』と汚い言葉を浴びせられ、フェチの世界から足を洗う事になったとか。それはそれで世の中が平和になった気もするが、そう言った無念から都市伝説が生まれてしまったのかも知れない。何となく。
「変態さんに何を言っても聞かないと思うので……、精神的に屈服させるのが一番ですよね……うふふふ……。その、ストッキングって貴方の存在意義にも等しいんですよね。……だったら、それ破壊しちゃったら……ど、どうなりますかね……?」
月姫が不敵に笑う。
「もちろん……、興奮する。それこそ、歯止めが利かなくなっちまう!」
だが、都市伝説は生粋の変態であった。
そうしている間にも興奮状態。
ご家庭の雰囲気が気まずくなるレベルで大興奮。
「灰音、あんまりさわっちゃダメなのよ? へんたいさんがうつるかもなの」
里桜が霊犬の灰音に警告する。
灰音も都市伝説とは関わりたくないのか、無駄に距離を置いていた。
「うぅ……泣いていいかな?」
その光景を目の当たりにして、桜花が薄っすらと涙を浮かべる。
とりあえず、早く着替えたい。こんな格好から、オサラバしたい。その一心で。
「変態狩りの時間……いや、処刑の時間でござるな」
警戒した様子で後ろに下がり、木菟がスレイヤーカードを構えた。
これ以上、迂闊に近づけば、間違いなく全裸にストッキング!
一瞬にして花も恥じらう乙女の如く、悲鳴を上げるハメになる。
「ふっ……」
都市伝説もそれが分かっているのか、容赦なく迫る。
その餌食になったのは、エリであった。
「男はこっち見るんな! 向こう! 向こうに集中してっ!!」
こうなるとストッキングを胸に巻いて誤魔化すしかない。
そもそも、本当に脱がされているのか怪しいところ。
もしかすると、幻かも。だったら、この格好のまま、と思ったが、違っていたらシャレにならない。
「この手の奴は喋らせるだけ無駄だな。ボコボコにして黙らせるしかない」
しかし、一樹がオーラキャノンを撃ち込んだ。
その一撃を食らって都市伝説が尻餅をつく。
「お前が! 死ぬまで! 殴るのを! やめない! 砕けろ!!」
それと同時に煉夜が鬼の形相を浮かべ、都市伝説に飛び乗った。
都市伝説は何か言おうとしていたが、口を開ける余裕すら与えずフルボッコ。
「お、俺はこんなところで……死ぬ訳にはいかないんだ」
それでも、都市伝説は逃げた。後先考えずに。
「これでとどめ!」
次の瞬間、寛子が一気に距離を縮め、都市伝説めがけて札幌時計台キック(ご当地キック)を炸裂させた。
その一撃を食らって都市伝説が派手に吹っ飛び、『俺はまだ死ぬたく……うわああ』と叫んで跡形もなく消滅した。
だが、都市伝説が消滅した後も、寛子の心には彼の艶姿が焼き付き、決して消える事がなかったようである。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年8月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 5/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 1
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